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2004.08.19

エンゲル係数を上げようと主張する

 忙しいのでまた他人の話である。

 昨日話題にしたやまけんのページ、人気はもちろん出張食い倒れ日記にあるのだが、私はもう一方の「俺と畑とインターネット」にアップされている「安全な食べ物は安くありません」という意見に深く首肯する者である。


食べ物を選ぶということは、自分の血や肉、細胞を構成する要素を選ぶということだ。近代栄養学では、食物を栄養素で分解しているわけだが、マクドナルドのハンバーガーのパンに使われている小麦と、無化学肥料・無農薬で生産された小麦とに差異を認めることはない。けれど、その両者の間には遙かなる隔たりがある。その隔たりの分、価格も違う。
 高いものと安いものがあり、それを選択するのは、買う人の自由だ。それは全く問題ない。けれど、

「食べ物は安全で、しかも安くあるべきだ。」

という論には僕は真っ向から反対である。

「安かったらいいな。」

であればいい。けれども「安全で安く」というのは横暴というものだ。


 まったくだ。

 42歳独身で、自炊を旨とする私は、近所のスーパーやら八百屋やらで買い物をしているが、私の目から見ると「みんななんでそんなものを買うのか」という食材が安いという一点だけでどんどん売れているのを良く見る。大変失礼なことではあるが、買っている人の服装を見ると、食うに困って安い食材を買っているという風でもない。「あーら安いわ」で、以後思考停止しているようなのである。

 やまけんも言うように、食は生の基本だ。その基本を、「安い」という価値基準だけで判断してどうする、と思うのである。

 ここからが私の意見となる。過度に安全性に執着する必要はない。消費者としてはむしろ、食材が素材として「うまいか/まずいか」で判断すべきではないかと思う。ハンバーガーのような調理済みの製品には通用しないが、野菜や肉といった素材では、「うまい」即安全で健康的、と考えていいのではないだろうか。もちろん、そのためには「うまい/まずい」をきちんと判断するための舌を常日頃鍛えておくことが条件となる。

 例えばだが、7人乗りの3リッター級ワゴンと、1.2リッター程度のコンパクトカーでは200万円ほど価格に差がある。現在、7人乗りワゴンは大人気だが、私はそれをコンパクトカーにとどめて、その分食費につっこむべきだと思う。どうせ盆暮れの帰省程度でしか7人乗ることはない自動車にカネをかけ、低い燃費でガソリン税払って排気ガスをまき散らすよりも、常日頃の食卓にお金を掛けた方がずっといいと思うのだ。
 贅沢な食事をしようというのではない。その分、良い素材を使って料理を楽しもうということだ。

 日本の家庭のエンゲル係数は、もっと高くていいのではないだろうか。

 「素材がおいしいかどうかは判断できない」という人は、とりあえず「可能な限り自分の住んでいるところに近い場所で生産された食材を選ぶ」ということをお薦めしたい。食材は新鮮さが第一だ。輸送に時間を掛けていない食材はそれだけでぐっとおいしい。中国産のスーパーの野菜ではなく、個人営業の八百屋を流通する路地野菜を食べよう。南米北米、果てはアフリカから輸入される魚ではなく、高くても近海物を食べよう。土用丑の日には、大量にスーパーに並ぶ、切り刻んだタイヤのような中国産ウナギではなく、高くとも国内産のウナギを食べよう――そういうことである。
 肉は、必ずしも新鮮さが命ではないのだが、でもそれでも本当に質のいい国産肉って食べたことありますか?高いけれどもおいしいですよ。

 安いだけではない食生活を多くの人が始めれば、流通も変わる。一体我々はわざわざマダガスカルから持ってきてまでタコを食べたいのだろうか。マングローブ林を切り刻み、地元のひんしゅくを買ってまで、東南アジアのエビを食べたいのだろうか。フィリピンあたりから持ってきてまで、真冬にオクラが食べたいのだろうか。それらはうまいのか?よく考えてみて欲しい。
 我々が買わなければ、流通業者も無茶をしないのである。

――という話をサラリーマン時代の後輩としていたら、「でも、そんなに舌を鍛えちゃったら、日頃の食事が楽しめなくなっちゃいますよ」と言われた。うわ、そういう形の知足安住の発想もあるか。でもね、だからこそ日頃の食事の質を上げよう、といっているのだけどなあ。

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