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2004.10.30

在外邦人保護について考える

 イラクに入国した日本人、香田証生(こうだ・しょうせい)さんがアルカイダ系グループに捕まった事件は、10月30日午前現在、香田さんらしき遺体が発見されたというニュースが流れている。

 ここでは、香田さんの行動の是非は書かない。まず以下の記事を読んで欲しい。

 ・ニューヨーク総領事館、「期待できず」が9割近く(日経Biztech:現nikkeibp.jp、2001年10月)

 あの9/11テロの時、外務省のニューヨーク総領事館が在ニューヨークの邦人を助けるどころか、冷たい言葉をかけて追い返すなどおよそあべこべの対応をしたことを報ずる記事である。あまりにあまりの対応で、「我々はなぜ日本国に税金を払っているのだろうか」という気分になる記事だ。

 が、これが事実である。日本国、特に外務省は、海外に住む日本人も、海外を旅する日本人も助けないどころか、かえって足を引っ張る組織だということだ。海外に行く者は、このことをよくよく肝に銘じて置かなくてはいけない。

 外務省の機能は2つある。1つは外交儀礼(プロトコル)に代表される、諸外国政府とのつきあいと交渉。もう一つが在外邦人の保護だ。が、我々の外務省は外交儀礼に特化しており、在外邦人を保護するという機能はまったくあてにならない。ついでにいうと、外国との交渉という点もあてにならない。一部では「あてになるのは、政治家の視察旅行の日程調整だけ」などとも言われている。

 なぜそうなのかは、私も詳しくは知らない。おじゃるおじゃるの公家根性を今なお引きずっているからだという説もあるが、事実かどうか私に判断する材料はない。

 私は1980年代後半から1990年代半ばにかけての6年間、業界ニューズレター誌の記者として霞ヶ関官庁街の取材をしたことがある。その時の私的印象だが、雰囲気も一介の業界誌記者への対応という点でも、最低の官庁が外務省だった。
 外務省を取材したのは確か1990年だったか、当時は「情報衛星」の名称で現在の情報収集衛星に相当する衛星を外務省が検討していたので、その取材で数回通った。だから印象としても数回分の印象でしかない。
 しかし、門のところでの身分確認から省内の雰囲気、対応した官僚の態度に至るまで、すべてが私には「最低」という印象を与えるに十分だった。

 私は、6年間で、科学技術庁、文部省、通産省、郵政省、運輸省、気象庁、そして外務省、と取材をした。この中で、私的印象をもってダメダメの度合いを区分するなら、外務省がダントツの最低であり、ほぼ同程度のダメさで文部省が続く。

 その後、1995年のボスニア内戦の時、現地の人と結婚して住んでいた日本人女性が、外務省ではなくボランティアのカメラマンによって救出されたことを知った、そしてカメラマンが「文藝春秋」誌に手記を発表し、外務省の当てにならなさを嘆いていたのを読み、「やはりなあ」という思いを強くしたのである。

 ともあれ、海外に渡航する場合は、「事が在外邦人の保護に関する限り、日本国はあてにならない」ということを強く意識して行くべきだ。もちろんパスポート盗難や紛失、病気など、大使館のお世話にならねばならぬことはあり得る。が、その場合も「大使館はあなたがたのためにあるわけではないですから」ぐらいの言葉は覚悟しておくべきだろう。
 もしも親身な対応をしてくれたとしたら、それは大使館の機能ではなく、そこにいる館員の属人的なものだから、外務省や日本国にではなく、対応をしてくれた個人に感謝することである。

 ついでに言うと、政治家の親戚、後援会の大物、一言話を通してくれる知り合いの政治家がいる、などの条件によって対応は大きく変わるそうだ。

 悲しいことだ。しかし、そんな外務省を放置している政治家を選出しているのは、我々国民であることもまた意識しておこう。

#追記:10/30午後、発見された遺体は香田さんではないことが判明した。

#追記:10/31午前、別に発見された遺体が田さんであると確認された旨、発表があった。

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Comments

はじめまして、松浦さん。

後ろの下りは、霞ヶ関の官庁だけでは限らないんですよね。下とお偉いさん(マスコミ系も一部含む)への対応が180度違う時もあるし。あーあ。

香田さんの悲劇を生み出したのは外務省の責任だとこの文章を読んで確信しました。

Posted by: のっち | 2004.10.30 at 12:50 PM

 のっちさん、はじめまして。

>>香田さんの悲劇を生み出したのは外務省の責任だ

とは、私は思いません。本文で書かなかった個人的意見をコメントで書くのがいいかどうかと言うことはあるのですが――彼のイラク入りはあまりにうかつでした。


 危険地域に行くには可能な限り現地の人の格好をするというのが原則です。なのに、ヒゲもはやさず長髪で短パンで、というのは、まったくもって危機意識が感じられないです。

 偉いさんへの対応というのは、まさにイヤな部分ではありますね。オーウェルの「動物農場」は共産主義を皮肉った寓話ですが、日本社会にも通用するあたりが悲しいです。
「すべての納税者は平等である。しかし一部の納税者はよりいっそう平等である」…

Posted by: 松浦晋也 | 2004.10.30 at 08:51 PM

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