独占について考える
今回、父の追悼文集を作るにあたって大阪にあるプリントオンデマンドの印刷会社を使ったのだが、仕事の素早いことよ、中一日で試し刷りを送ってきた。
時間が逼迫しているのですぐに朱を入れて返送する。合わせてこちらに残っているデータファイルにも校正を反映させて送信。宅配便会社とADSLによる高速通信回線があればこそだ。
こうなってくると印刷会社などはわざわざ家賃の高い東京にいる理由はない。電話を多用するサービス窓口を請け負う会社が、賃金の安い沖縄にコールセンターを作ったという話を聞いたのは。もう5年近く昔だったはずだが、ますますその傾向は進行しているのではないだろうか。
国家安全保障という面でも分散は好ましい。新潟の地震災害を目の当たりにして、自宅の防災を考えている人は多いだろうが、もしも今、東京をあの地震が襲ったら、国家機能は麻痺する(うるさく既得権益にしがみつく中央官庁が全滅すれば、地方分権にちょうどいいという話はさておく)。国家システムは適度に分散していたほうが、打たれ強くなるのだ。
そう考えていくと、ヤマト運輸を率いて郵政省と戦った小倉会長は、実に尊敬すべき愛国者ということになる。で、うだうだと利権にしがみついた郵政省の郵便屋共はどいつもこいつも日本の国のためにならない国賊だ、と。
ホントかよ。でも、論理から言えばそうなる。
同様の論理的帰結として、孫正義率いるソフトバンクグループは、実に愛国的ではないかという結論が導かれる。そして、日本へのADSL導入にうだうだと抵抗したNTTグループは国賊の集まりだと。
ホントかよ。
でもそうなるのだ。「ヤフーBBでーす」のかけ声もさわやかに、老若男女の区別無くモデムを押し売りし、個人情報だだ漏れはおろか、孫会長自らスパムメールと見まごうメールを全ユーザーに送った、そんなソフトバンクグループだが、ことADSLの普及と低価格化という一点では、日本の通信事情を良くするのに大きく貢献した。
政府がe-Japanとかなんとかいってせっせと投資しているが、日本のIT事情を良くしたのは決して日本政府じゃない。既得権益にぎゃんぎゃんかみついたソフトバンクグループと、こりゃいかんと押っ取り刀で立ち上がったライバル事業者のおかげだ。
だから私は、昨今の携帯電話の利用周波数帯を巡るソフトバンクグループと、その他のグループの綱引きを興味深く見守っている。NTTドコモは完全に既得権益にあぐらをかきたくって仕方ないのが見え見えだ。au-KDDIも、DDI発足当時の意気は薄れ、むしろNTT以上のでろでろ独占事業体だった(なにせ国際通信を独占していたものなあ)KDDの体質が強く出てしまっているようだ。
これは是非、かませ犬ソフトバンクにかみついて貰い、奴らの尻の肉ぐらい削り取って貰わねばならぬ。いやいや、すねの骨一本ぐらい持っていってもいいかもしれない。
だが、たとえソフトバンクが携帯電話事業に参入するにしても、私が利用することは決してないだろう。独占をうち破るためとあらば多少の不便は忍ぶ決意ではあるが、個人情報をだだ漏れにされたらたまらない。
ちなみに私は東京デジタルフォン時代からの、ボーダフォンユーザーである。
愛国者とか国賊とか、本当は軽々しく使うべきではない言葉だ。しかし、こういうどきつい言葉を投げつけないと、自分がなにをしているか理解できない連中が存在することも事実である、
お前だ、お前!、INS64のサービスが始まったとき、申し込みに行ったら(パソコン雑誌で記事を書いたのだ)「アイエスディーエヌってなんですかあ。うち、そんなサービスやってないんですけど」と抜かしたNTT九段局の窓口おやじ!。あの時は他の選択肢が無かったから、耐え難きを耐え忍び難きを忍んで契約してやったんだぞ。
お前、OCNエコノミーが始まったときにやはり申し込みに行ったら(これまた記事のためだった)「おーしーえぬってなんですかあ。うち、そんなサービスやってないんですけど」と言ったよな。あの時はすでに日本テレコムのODNが立ち上がっていたので、即刻日本テレコムに電話したのであった(ちなみに日本テレコムの営業さんは迅速に対応してくれた。そのテレコムも今やソフトバンクの傘下だ。ああ)。
独占の弊害かくの如し。難は雲霞のごとく多々あれど、それでも私はソフトバンクに期待しているのである。使わないけれども。
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Comments
おお、町田さんの著作。某経済新聞社兜クラブ出向時代に、この方には大変お世話になり(=ご迷惑をおかけし)ました。(会社を辞めた)先輩達は、活躍してる方が多いなあ。
Posted by: yama | 2004.11.22 at 05:20 PM
町田さんはそういう方だったんですか。この本は非常に優れたドキュメントだと思います。
もうひとつNTTには「NTTを弱体化させれば、日本の技術開発が弱体化する」として擁護する議論もあります。
が、その擁護もNTTが消費者の立場で振る舞ってこそ、というのが私の意見。
Posted by: 松浦晋也 | 2004.11.23 at 10:07 PM