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2005.03.03

市民運動とメディア・リテラシーについて、大岡みなみ氏にコメントする

 しばらく潜航している。

 その間にロフトプラスワンに出たり(今回は絶句するだけではすまなくて、林さんの言葉で壇上に突っ伏してしまった。あんなことが出てくるとは)、種子島に行ってH-IIロケット7号機の打ち上げを取材したり、ひたすら原稿を書いたり——とかなんとか忙しくしていた。今も忙しい。いかん、税金の計算もしなくては。

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 気になっていたことを書く。新年早々、記者のblogが炎上(この言葉もネットではすっかり定着してしまった)件を書いたが(1月6日付「ネットのマツリを目撃する」)、その後2月の頭に、もう一つの記者blogも炎上し、消失した(この件をまとめたblog「幻影随想」2005年2月5日の記事)。

 簡単にまとめるならば、記者を名乗って運営されていたblog「しがない記者日記」(現在は消失)に1月23日付けで

「NHKと朝日新聞がやりあっている。というより、明らかにNHKがひどい。番組を流す前に政治家に見せて意見を求めたら、それはもう検閲でしかない。」

と掲載された。それに批判的な内容が付いたところ、「しがない記者」氏は、「アカ」「サヨ」「プロ市民」といった言葉を使った挑発的な反応を示した。するとそれが2ちゃんねるに転載されて一気に「マツリ」状態となってしまった。その中で氏が朝日新聞の地方局記者であることが判明してしまう。NHKとのトラブルの渦中にある朝日新聞の社員が、身分を明かさずにNHKを批判していたというのでますます批判が加速。
 そこで「しがない記者」氏はまたも対応を誤り、さらに批判が殺到し、ついにblogを閉じてしまったのだった。

 私は、この件は前回と同様、blog開設者のメディア・リテラシーがあまりに低かったために起きたと考える。特に渦中の会社に勤務する者がその事実を明かさずに自分の所属組織を擁護する書き込みをするというのは致命的だろう。

 本題はこの炎上自体ではない。この件はあちこちのホームページでコメントされたのだが、その中に大岡みなみ氏のページ「サード・インパクト」があったのだ(大岡氏は実名を明かしているが、ここでは氏のネットにおけるハンドルである「大岡みなみ」と記述する)。

 大岡氏は、フリージャーナリスト。司法と教育、司法などを専門としている(氏自身によるプロフィール氏の著作)。
 私は以前から氏の日記である「身辺雑記」を読んでいた。政治的態度は私とかなり異なるが、アクティブに私にはできない仕事をしているという意味で評価している。

 その大岡氏がこの記者blog炎上について2月6日と2月8日付けの「身辺雑記」(このリンクは最新版。近いうちに過去ログに入るはずなので自分で探して欲しい)で取り上げている(注:氏のページは直接日付へのリンクが出来ない構造になっている)。

 その内容が、私から見ると、どうにも氏の仕事からは考えられないほど根拠薄弱なのである。

 大岡氏は2月6日付の「記者ブログへの暴力的攻撃」で以下のように書く。

 友人の新聞記者が個人的に開設しているサイトのブログが、いわゆる「ネット右翼」に荒らされて開店休業に追い込まれた。ブログでNHKの番組改変問題を批判的に取り上げたところ、某巨大掲示板で一方的な非難が始まり、続いてブログに書き込みが集中した。それだけでなく、ネット検索やリンク先や記事内容からあっという間に本人が特定され、勤務先や本名などの個人情報が掲示板やほかのいくつものサイトで暴露された。さらには、職場に嫌がらせの電話までかかってくる事態にまで発展したという。

 「まともな論理」や「筋道立てたコミュニケーション」とはおよそかけ離れた世界で、しかも「集中攻撃」という形で一方的に誹謗中傷するのは、まさに言葉の「暴力」としか言いようがない。こういう袋だたきのバッシングはファシズムそのものだ。やっている連中はいっぱしの「言論」のつもりなのかもしれないが、こんなものは「言論」でもなんでもない。しかも、個人情報をさらして嫌がらせや脅迫まがいのことを平然とやってのけるとは、なんたる卑劣さだろう

 この記述には、朝日新聞記者が身分を明かすことなく朝日新聞を擁護する書き込みをネットで行うということに対する、倫理的な自省が見あたらない。
 大岡氏は2月8日付の「記者ブログへの暴力的攻撃 その2」で以下のように書く。

「 それからもう一つ。「所属している会社を隠して語った」ことがさも大問題であるかのように攻撃されているが、これは全く見当外れの不当な「言いがかり」だろう。サイトやブログの運営はあくまでも個人的にやっているもので、会社組織を代表して意見表明しているわけではあるまい。個人的な判断として「記者」の経験やバックボーンを明らかにしたとしても、だからといって会社員が会社をすべて背負って生活しているわけではない。これは、記者という職業に限らず、サイトやブログを個人運営している人たちすべてについて言えることではないのか。 」

 だが、言論組織に所属し、言論を仕事とする者が、自らの所属する組織を所属を明らかにすることなく擁護する言論をネットで公表するというのは、明らかに議論を一方向に誘導する行いではないだろうか。「しがない記者」氏が朝日新聞に所属しているという情報は、それを知っているか否かで、「しがない記者」氏の記事を読者がどう受け取るかを逆転させるだろう。

 つまり、「しがない記者」氏が朝日新聞の記者であるという情報は、本来的に「しがない記者」氏のNHK批判記事の一部なのだ。氏はそれを隠蔽してしまったのである。
 サイトや部録の運営は個人的にやるものだが、発言者は実社会における職業その他の属性から逃れられるわけではない。ましてジャーナリストの場合、仕事も言論、ネットで個人的に行うのも言論である。そこには相応の注意があるべきだったのではないだろうか。

 大岡氏は2月8日付け記事で書く。

「 もちろん、自分とは正反対の意見ではあってもきちんと筋が通っていて真摯に述べられている主張に対しては、ブログ主宰の記者もきちんと対応したと思う。少なくとも僕はそう理解しているし、そういう「真っ当な反論や批評」に対しては、それが「記者だから」などというのとは関係なく、人として誠実な対応をするべきなのは言うまでもない」

 その通りだ。私が思うに、「しがない記者」氏は、上記に大岡氏が主張することが全然実践できていなかったのである。

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 一ヶ月以上前の事件、それも事件そのものではなく事件に対する第三者のコメントに、なぜ今更のようにコメントするかといえば、先般私のところにやってきて削除された例の「高校生っぽい書き込み」以降、「一体なぜ、こうもネットで市民運動は攻撃されるのか」そして「なんでまたこう市民運動的な言論を展開する論者は、脇があまくてリテラシーが低いのか」を考え続けているからだ。

 自分はどうなんだと言われれば、あやしいものであることは重々承知しているが、それでも大岡氏の記事に、「この人にしてこれか」と感じてしまったからなのである。

 

 安易な一般化は禁物なのだが——


     
  • たまたまそういう者が目立つだけなのか。
     
  • そもそも市民運動が、そういういい加減なものだったのか。
     
  • 市民運動という運動形態が、構成者のメディア・リテラシーを向上せしめる環境を持たなかったのか。
     
  • 市民運動というものに、引き寄せられる体質というものがあって、そこにメディア・リテラシーの不足が刻印されているのか。

 馬鹿馬鹿しいものもふくめて色々な仮説を考えてはいるのだが、なかなか納得いく説明が見つからない。

 以下まとめだ。

 市民が声を上げていくことは重要だ。
 が、可能な限りのデータや事実を吟味する前に偏った主張で声を上げてはいけない(週刊金曜日から生まれたあの愚劣な「買ってはいけない」のように)。だから市民運動には、なにはさておきネットにおいても通用するメディア・リテラシーが必要なはずだ。

 しかし、私がネットを見ていく限りにおいて、市民運動系のページに、情報の扱いに不慣れに起因する思われるメディア・リテラシーの低さが目立つのである。

追記:
 例によって興味本位のコメントは自粛をお願いします。私としては、大岡氏ときちんと議論をしてみたいなと考えていることをここに表明しておきます。おそらく結論は出ないでしょうが、少なくとも私にとっては得るものがあるのではないかと思えるので。

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