ラジオを作る

ラジオを作った。といっても、自分で設計したわけではなく、学研「大人の科学」の鉱石ラジオを作っただけの話だ。小学校以来ひさしぶりにコイルを巻き、クリスタルイアフォンに耳を澄ませた。残念ながら電波の入りは良くなく、イアフォンからはかすかな音楽が聞こえるのみ。次はアンテナを工夫して少しでもはっきりした音を聞いてみたい。
30年から40年ほど昔に、小学生で工作好きだった人ならば、誰でも2つの通過儀礼を経てきているはずだ。ひとつがゴム動力の模型飛行機、もうひとつがゲルマニウムラジオ、世代が下がるとこれに水中モーターと田宮の「高速」と「強力」のギアボックスセットが加わる。
自分がゲルマラジオを作ったのは、東京は三鷹に住んでいた小学校五年生の秋だった。「子供の科学」に載っていた部品リストをメモして、吉祥寺の模型屋で、ダイオードやバリコンなどを買ってきた。当時は模型屋でも電気部品を置いていた。それだけ自作する小学生が多かったのだろう。
使ったハンダゴテは祖父がくれた確か60Wのもので、熱に弱いダイオードを付けるには明らかに大きすぎた。私は一度ダイオードを壊して、もう一つダイオードを買った。
はっきり覚えている。初めて自分の作ったラジオで音を聞いたのは風の強い日だった。確か台風一過の夜だったはずだ。チューニングするうちにイアフォンに飛び込んできたのは、気象通報だった。
その日、私は初めて「アモイ」という地名を知った。自分が見聞きする三鷹あたりだけではない広い世界が存在する事を知った。どこか自分の知らないところで自分の知らない雨が降り、自分の知らない風が吹いていることを実感した。
ラジオは今の小学生にも、世界への扉として機能しているのだろうか。そうであって欲しいと思う。すべての子供にとって、ゲルマラジオが世界への扉であるようにと切に願う。
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