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2005.05.29

代用ビールに怒る

beer

 アサヒビールが、「新生」という発泡酒を発売した。税法上は「その他の雑酒2」に分類されるビールテイストのアルコール飲料だ。酒税が低率で、その分販売価格も安い。

 一応この手の新製品が出ると一本は試してみることにしてみている。「新生」も一本だけ買ってきた。一本だけというのは、どうにも「地雷」のような気がしたからだ。

 地雷であった。

 発泡酒全般がビールの劣化コピーならば、こいつはドライビールの劣化コピーだ。ドライビールですら許し難いほどまずいというのに、その劣化コピーを堂々発売するとはどういうつもりだアサヒビール。

 ネットを観ていると「自分には発泡酒で十分」と書いている人は意外に多い。そう書いている文章をよくよく読み込んでいくと「自分にはビールの味が分からないし」という自己規定があるようだ。

 私思うに、そういう人は、きちんと味覚や嗅覚、口腔内粘膜の触覚などを使って味わっていない。「まあこんなもんだろう」という味覚の先入観というかフォーミュラというか、そんなものが脳内に出来ていて、味覚の刺激入力に対して、その先入観が発動してしまっている。先入観が味覚を始めとした入力をブロックしてしまい、代わりにあらかじめ生成されている「まあこんなもんだろう」という刺激が脳内を駆けめぐっているのだ。
 速水螺旋人さんの書くところの大脳食法だ。速水さんは、積極的に「大脳で食うべし」と書いているわけだが。

 つまり、ビールを飲んでいてもビールを味わっておらず、ビールは脳内のフォーミュラを発動させるトリガーにしかなっていないのである。ただのトリガーなら、より安い発泡酒のほうがいいし、さらに安いその他の雑酒はさらに好ましいということになる。

 考えてみれば。「とりあえずビール」という飲み方は、ビールを脳内フォーミュラのトリガーにしか使っていないということの証拠なのだろう。で、最適トリガーとしての地位を得た味が、ビール市場を制するわけだ。

 かつて私が就職した頃は、「ビールはやはりキリンでないと」というオヤジ世代はかなり多かった。当時の私の好みはサントリーのモルトであって、なぜオヤジ共がキリンにこだわるか理解できなかった。要は彼らの脳内にトリガーとしてのキリンがすり込まれていたということだったのだろう。
 やがて、アサヒビールが、「スーパードライ」を発売し、キリンの地位を奪った。何をどう味わっても「スーパードライ」は「キリンビール」よりもまずかった。が、刺激的な味で大多数の消費者の脳内トリガーの地位を奪った「スーパードライ」はアサヒを業界一位メーカーに押し上げた。

 そして発泡酒だ。同じトリガーなら安い方が良い。財務省が税金逃れだとして発泡酒の税率をアップした。ならばトリガーとして機能するもっと安い酒でシェアアップだ。そうして「新生」が出た。

 なあ、味は一体どこにいったんだ?

 ビール缶に入っているがこれはビールじゃない。発泡酒というような呼び方も事実を隠蔽する命名だ。これは「代用ビール」だ。なぜ我々は、十分に豊かになった日本で、大豆ペプチドなどを使った代用ビールを飲まねばならないのだろうか。

 税法が味覚文化を破壊するという面で見るならば、かつての日本酒がたどった道を、ビールも進んでいるように思える。太平洋戦争中の食料統制において、日本酒には等級制が導入された。特級、一級、二級という税法上の区分では、本物である純米酒が非常に造りにくい仕組みになっていた。貴重な米を酒ごときで消費するなということだ。
 ところが大蔵省は、戦後に米が余りだしても頑として税法を変えなかった。巷にはアルコール添加のまずい日本酒があふれ、「日本酒はまずいもの」という認識が一般に定着した。しぶしぶ大蔵省が税法改正に同意した時、そもそも人々の間から「日本酒を飲む」という習慣が失われており、様々な蔵元がおいしい純米酒を出すようになっても市場規模は回復しなかった。

 ドイツには「ビール純粋法」という法律があり、ビールには「大麦、ホップ、酵母、水」以外を使用してはいけない」と規定されている。コーンスターチやら米やらを使った日本のビールは、本場ドイツの定義ではビールではない。
 そしてドイツで飲んだピルスナーは、とてもおいしかった。


 写真は、ドイツに持っていっても「ビール」として通用する「エビスビール」と「新生」。もちろん「エビス」2本は、口直しに買っておいたものであり、新生を飲んだ後、私は「エビス」を買っておいて良かったと、つくづく思ったのであった。
 税金には腹が立つが、私はそれでもおいしい本物のビールが飲みたい。

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Comments

こんにちは。

じつは、私も「発泡酒≒ビール」と思っているクチです。すいません。
でも美味しいビールは「モルツ」と「ヱビス」だと思うんですよね。

そんなレベルの私でも、先日サンプル缶をもらって飲んだ「のどごし〈生〉」は、まずいと思いました。

いっそのことフルーツビールみたいなのだったら、まだ「まったく別の飲み物」でしょうけど、なまじビールに似せてるからいけません。

ビールもどきなんかに血道を上げずに、素直に麦酒造ればいいのに。

Posted by: 丹後ちまき | 2005.06.05 at 05:54 PM

普通のビールに馬鹿馬鹿しい税金をかけている大蔵省が、国民に正しい酒を奪っているとは思いませんか?

確かに本物のビールはうまい!特に麒麟のクラシックラガーとチルドビールは!!

しかし、我が家の家計は毎日のビールに多額の税金を支払うほど裕福ではない。
そんな金があれば、子供の絵本でも買ってやった方がましだ。(たまには買うが)税金の全てが有益であれば喜んで高いビールを買う気にもなるが、未来と弱者にひたすら冷たい国の現状には抗議の意味も含めビールは特別の飲み物にしておくことにする。

私は、たとえ”もどき”でも安いビールを飲ませてくれるビール各社の努力を歓迎したい。
決して彼らもまずいビールを作りたいわけではないと思う。みんなが買ってくれるビールを造りたいだけなのだと!

酒税が保険と教育のため真に有益に使われるなら無理でもビール買うぞっと。

Posted by: 野村俊郎 | 2005.06.07 at 01:14 AM

”苛政は猛虎より猛し”と言いますが、取れるとこから取っておこうという国税庁もさりながら、嗜好品を提供するより装置産業であるビール会社の方も、味で選んでもらうというより、資本系列で決められたりしては(三菱系は○○、住友系は××とか)、美味しい物より作りやすい、売りやすい方に誘惑されるのではないかと・・・(キリンラガーも一頃味が変わったのかと一人首を捻っていた所、クラシックなるものが出てきて、やはり知らぬ間に変わっていたのでした)、以前、イギリスのメーカーから来た人を接待した際、ご当地と言えば黒ビールかと思い、サッポロを勧めてみましたが、彼らが気に入ったのは、アサヒのドライでした_| ̄|○
やはりビールの事はドイツ人に聞くべきでしょうか?

Posted by: yossi | 2005.06.10 at 09:03 PM

私の両親や年配の親戚連中も麒麟を好みます。
どうやらあの世代はそういうものらしいです。
私自身はやはりヱビスを愛飲しておりますが、
昔と比べると味が変ってきた様に思います。
「地ビール」なるものが一時期流行ましたが、
なかなかこれはというものに当たりません。

ビールと言いますとドイツが筆頭ですが、
デンマーク・オランダ・チェコなどもなかなか味わい深い銘柄が在ります。
チェコの”本家”バドワイザは水っぽい米国のそれとは全く別物でした。
なにより残念なのは、
アミラーリ(東郷ビール)がフィンランドからオランダに製造元が変ってしまい、
とてつもなく不味くなってしまったことですね。
青島がまったくアサヒの味になってしまった事にもガッカリさせられました。

不味いビールを買ってしまった時はカクテルにして飲んでしまいます。
トマトジュースと半々に割ったり、
ジンジャエール(甘くないヤツ)割にしたりします。

代用ビール?
そんなもの飲むくらいなら私はホッピーに走りますよ。

Posted by: Tempelhof | 2005.06.11 at 01:33 AM

昨年、政府税調会長の石弘光氏の「第三のビールが酒文化を破壊する」旨の発言に腹を立て、僕自身も第三のビールについてブログに書いたことがあります。

たとえば、エビスといわゆる第三のビールを味で比較すれば、その差は歴然としています。
でも、一方で小売価格で比較すると、この2つはほとんど倍近い価格でもあります。
家庭に妻子があり、住宅ローンがあり・・・という普通のサラリーマンにとってはこの価格差は大きいです。毎日2本飲むと、つきに2箱あまり。タバコ代くらいの差は出てしまいます(個人的にはタバコは吸いませんが)

そして、味に2倍の差があるかというと、(主観的な味に定量的比較は無意味ですが)それほどの差があるとは思えません。

逆に、ここぞというときにエビスを飲むことで、本来のビールのおいしさがわかるというメリットする(詭弁ではありますが)あるとさえ言えるのではないかと思っています。

松浦さんも触れていらっしゃる日本酒の問題も僕も認識していいます。
以前、日本酒漫画として話題になった尾瀬あきら氏の「夏子の酒」では主人公を支える杜氏が、三造酒について、「毎日飲むにはやはり安い三造酒」という趣旨のことを言います。もちろん、この杜氏も三蔵酒がいかに日本酒の文化を破壊してきたかということはわかった上でのことです。

酒を嗜好品として捕らえると、実際の生活者の視点というのはこういうところもあります。
悪く言えば「酒は酔えればいい」ということです。

酒を単なる嗜好品ではなく、ひとつの文化として捉えるなら、それを支えるにはパトロンが必要といえるでしょう。
ひとつの極論を考えると、エビスが1本1000円しても、酒文化を支えるため、そしてその文化を自分が楽しむためにそのお金をいとわない層が必要なわけです。

しかし、現代社会、それも現代日本ではそういう人はなかなかいないでしょうから、ひとつの選択肢として第三のビールが出てきたのだと私は考えています。

第三のビールが出てきたことで、本来のビールがなくなったわけではありません。

第三のビール、発泡酒という言葉を知ることによって、初めて「ビール」の定義を知った人もいるでしょう。さらには、ドイツの純粋令について知った人もいるでしょう。

先日、妻とヨーロッパを旅行した際に、普段は主にダイエット生(価格的理由と、より大きいのはカロリー的理由のようですが)しか飲まない妻が、当地のビールをいろいろの見比べて、本来のビールのおいしさというものを知ったようです。

でもだからといって、発泡酒が飲めなくなるかというとそう言うわけでもなくて、おいしいビールを知って選択肢が広がっただけということのようでした。

われわれが食事をする際に、恒久フランス料理店に言った翌日の昼食がマクドナルドであってもおかしくないように、エビスと、新生が大くくりでの「お酒」としては一緒である一方、とりあえず、楽しむための新生、本腰を入れて楽しむためのエビスと分けて考えればいいのではないでしょうか。

どんな文化(僕はお酒には文化的側面があると考えるほうですので)も頂を高くしようと思えば、一方では裾野は広く、いろいろな選択肢があるほうが有利だと思うのです。

やや飛躍した結論でまとめれば、結局のところ、人間は(国民はといってもいいかもしれません)その器に見合った文化しか得られないし、今回問題になっているお酒では、酒税というものも絡み、自分に見合った政治家しか選ばず、その結果、それに見合った酒税法しか得られない問うことろもあるのではないかと思ったりしています。

Posted by: Eddie | 2005.06.13 at 12:00 PM

Eddieさんのご意見に概ね同意致します。
私の先のコメントにあります、
代用ビールを飲むくらいならホッピーに走る
というのも”極端な選択肢”であるわけです。
勿論、かの麦芽飲料を卑下する意図はありません。

味覚というのは嗜好の最たるものです。
厳選された素材と調理法で作られた味噌汁を
極上の米と水で炊き上げたご飯に掛けて食することを悪喰とするか贅沢とするかは意見の分かれるところでしょう。

Posted by: Tempelhof | 2005.06.13 at 07:19 PM

第3ビール、酒税問題など、ビール業界にも問題点はたくさんありますが、これらは一企業いや一業界の問題ではないと思います。
ここに現れていることは社会現象のひとつであり、社会現象をつくるだしている我々個人の問題になっていると思います。

というのも、第3ビールが不味い、いやそもそも日本のビール自体ほとんど不味いなど、簡単に言われているいるが、いつからビールはジュースのように味の安定した飲み物に変わってしまったのだろう。ビールは少しのことで味が大きく変わる飲み物であり、また美味しく飲むにはワインのように温度や注ぎ方、グラスの形状などを適切な状態にする作業がいります。もちろん缶ビールなんかもってのほかです。

つまり今のビールが不味くなったのではなく、飲む手順が拙くなっっているとも考えられないでしょうか。上で述べた適切な状態を実践して飲んでいる人はごく少数になっているように思われます。昭和の頃にはビールの種類も少なかったせいか、この適切な状態にする作業を忠実に守っている大人たちがたくさんいたように思います。

自分は買うだけで、美味しさは他人まかせな、今の社会がこのような第3ビールにまで発展していったような気がします。企業の姿勢より我々こそ、美味しく物を飲食するための姿勢を改めて見直すべきではないでしょうか。

Posted by: セロリ | 2005.06.14 at 03:20 PM

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