« 知られざる「祝典序曲」を紹介する | Main | 用意しているネタを先出しする »

2005.10.05

飛行機の脚を愛でる

 ある種の男の子にとって、メカニカルな構造は愛玩の対象だ。もちろん私はその「ある種」に属しており(もう男の子、ではないが)、機械の仕組みに多大な興味を抱き続けている。

 で、こんなページを見つけた。

 ・飛行機の脚

 いやあ、これは楽しい。飛行機の脚の引き込み方法は古今東西様々な工夫が凝らされている。それをこうやって動きも込みでまとめて見ることができるとは。インターネット万歳だ。

 そこで思い出したサラリーマン時代の先輩が話してくれたエピソード。その先輩はサスペンションのカヤバで働いていたことがあり、ボーイングB-767旅客機の脚開発で、一時期ボーイングに長期出張したことがあった。そのときの話。

 完成した767用の脚が、テストでうまく引っ込まなかったのだそうだ。引っ込みかけた脚が、どうしても機体側と干渉してしまう。蒼白になった先輩の肩をボーイングのベテラン技術者が叩いた。なんでもB-29の脚を設計したという練達のおっさんだったという。
「心配ない。明日、Yシャツのパッケージに入っている厚紙を持ってこよう」
 Yシャツは型くずれしないように、ボール紙の型紙を挟んで売っている。そのボール紙を持ってくるといったのだそうだ。
 先輩は何を言っているのかさっぱり理解できなかったという。
 翌日、ボーイングのベテラン技術者は、本当にYシャツのパッケージに入っているようなボール紙を持ってきた。そして、ボール紙を脚の干渉する部分に当てて、マジックインキでハッチングをすると「この部分をこれぐらい切り取ってくれ」と指示を出した。

 これでOK。何事もなく、脚は引っ込むようになった。

 何しろ酔った時に聞いたので、このエピソードが本当かどうかは知らない。でも、いかにもありそうな話ではある。今でこそ、部品の干渉はコンピューターでシミュレーションできるが、767の開発をしていた1980年代前半ぐらいまでは、干渉を避けつつ可動部品を設計するということは、名人芸の領域だった。

 その後767の脚は、ノースロップのB-2ステルス爆撃機に流用された。その先輩は酔うと、よく「B-2の脚を設計したのは俺だー」とのたまったものである。

|

« 知られざる「祝典序曲」を紹介する | Main | 用意しているネタを先出しする »

おすすめサイト」カテゴリの記事

メカニズム」カテゴリの記事

Comments

 ディスカバリーチャンネルで放送されたA380製造のドキュメントでは、主脚がすんなり出ないという問題を、当りそうなところにオイルを塗ったくって作動試験、じっさいに当ったところを確認、というアナログな手段を取っておりました。実際に画面に流れたし。
 まあ、ドキュメンタリー向けのやらせ画面かも知れないんですが、ボール紙を当てて干渉部分を、みたいな現場合わせの職人芸とは符合しますな。

Posted by: 笹本祐一 | 2005.10.06 at 11:04 AM

 1990年代以降はCAD/CAMが当たり前になったので、そう言った職人業も(大企業では)失われつつあるようですね。
 CAD/CAMが普及し始めた当時、試作機を組み立てたら部品が全部一発で合って、現場合わせの必要が無かった、と感激混じりに報道されていたりしましたが、素人衆にはその感激は伝わらないでしょうねえ。

Posted by: ROCKY 江藤 | 2005.10.06 at 01:44 PM

 いまも現物合わせは生きているんですか。そりゃそうだな。コンピューターはガベージイン、ガベージアウトが基本だからな。

 しかしつくづくディスカバリーチャンネルは使えますねえ。それに比べて地上波民放の(以下略…)。

Posted by: 松浦晋也 | 2005.10.06 at 11:50 PM

 全く逆の話ですが、最近の自動車の足回りの設計で、CAD画面上では動かないのに実際に組むと動く、ってのがあるみたいです。
 要は取り付け元の剛性の問題なんですが、そこを見込んでコンパクトに作るのが現在の『職人芸』という話が。

Posted by: 三十郎 | 2005.10.07 at 07:32 AM

|しかしつくづくディスカバリーチャンネルは使えますねえ。

 まったく。ジャンボジェットの特集では無く、その組み立て工場の特集番組なんてものまでありますからね。今日も、鉄板から駆逐艦一隻建造するまでのドキュメントがあるようです。

Posted by: 林 譲治 | 2005.10.07 at 12:26 PM

脚といえば先日、ノーズギアが横向いちゃったエアバス機ってのがありましたね~。離陸時には問題無かったわけで、飛んじゃってからステアリングアクチュエータが誤動作しちゃったのかなあ、わかんないけど。

設計時には、タイアが横向いた状態での着陸を想定した強度までは考えていないと思いますが、ほぼ折れずに着陸できたのは行幸でしたね。

それと最近、気になっているのが、飛行機の脚の空気抵抗です。下ろしている時には、ほとんど胴体と同じくらいかそれ以上のの空気抵抗があると聞いたことがあります。はい。

Posted by: canoe | 2005.10.11 at 08:32 PM

 おお、お久しぶりです。

 あの緊急着陸はパイロットの腕がよかったんでしょうね。ぎりぎりまで前脚を設置しないように操縦していましたから。

 空気抵抗はおっしゃるとおりです。だからミス・ビートルは淋代離陸後、脚を落としたわけですし。最初に引き込み脚はノースロップ・ガンマだったかな。
 コラーニは、そもそも空力パーツとして機能する、引き込む必要がない脚というのを提案していますね。ルータンの一部の機体、例えばホワイトナイトの前脚などはそのアイデアを使っています。

Posted by: 松浦晋也 | 2005.10.14 at 10:56 PM

先日の宴会でちょっとお話いたしましたが、脚構造については広津萬里さんの「飛行機の脚構造」というそのものスバリの名著があります。残念ながらトウの昔に絶版なのですが、航空図書館で読むことが出来ます。著者の広津萬里さんは戦時中のヘリコプタ「特殊蝶番レ号 」の研究をしたことで有名な人です。
あと、細かいことですが、太平洋横断機は「ミス・ビードル」号です。ややこしい名前で間違いやすいのですが。ビードル号の脚投下に関しては言うまでもなく重量軽減の意味もあります。

Posted by: おうやん | 2005.10.15 at 09:06 AM

 失礼しました。Miss Beedleか。Miss Beatleじゃなかったか。

 航空図書館ですね。行ってみます。あそこ、本当にやる気を感じないところなんですよね。あるだけましとも言いますが。

Posted by: 松浦晋也 | 2005.10.21 at 10:25 AM

ディスカバリーチャンネルでやっていたA380の特集、CAD/CAMに関しても面白い場面がありまして
設計図上では完璧に接合できるはずの各国のセグメントが
実際に工場に搬入されると実にピッタリと組み合わない
結局は現物合わせで微調整というのを繰り返してましたよ

Posted by: Naka | 2006.08.25 at 02:35 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/19821/6272072

Listed below are links to weblogs that reference 飛行機の脚を愛でる:

« 知られざる「祝典序曲」を紹介する | Main | 用意しているネタを先出しする »