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2005.11.18

「はやぶさリンク」:18日午後4時からの記者会見

 相模原で、午後4時から開催された川口教授記者会見の概要です。

 特に資料はなく、いきなり川口教授の説明で始まりました。

川口 前回の運用で、クリティカルな段階での地上側の相模原、NASA・DSNの切り替えを行うべきでないという教訓を得た、そこで着陸をイトカワ1自転、12時間延期し、DSNでの運用時に着陸することにした。

 着陸までには7〜8個の条件を設けており、いずれが引っかかっても着地せずに上昇する。

 はやぶさはすでに降下を始めており、降下開始時刻は降下の度合によって変わってくる。
 最終的な接近速度は3〜4cm/s。残り100mをこの速度で接近するので、着地時刻は1時間程度変動する可能性がある。

 20日の午前3時頃には最新状況をアナウンスする。午前5時にはGO NO GO判定をだす。

 最終的なタッチダウン時は探査機の姿勢を地形に垂直にする。こうなると地球からの通信はハイゲインアンテナを使えなくなる。この時、探査機の発信をキャリアモード(ビーコン)に切り替える。これにより探査機が降下しているか上昇しているかだけがドップラー変位で分かる状態となる。この状態で、自律機能によりタッチダウン。

 上昇してきた探査機は自律的にハイゲインアンテナを地球に向けて通信が回復する。まず行うのは上昇を止めること。次いでデータレコーダーのデータをダウンロードする。

 ただしこれは、探査機との通信が確保され、セーフモードに入らなかった場合のこと。

 途中、探査機が大きく姿勢を崩すと、探査機は太陽電池を太陽に向けて緩やかに回転するセーフモードに入る。こうなると姿勢の立て直しに半日かかる。臼田局の可視時間は、すべて姿勢立て直しに使うことになる。この場合はデータレコーダーのダウンロードは翌22日の臼田局からの可視ということになる。

 ターゲットマーカー分離時までは、通信が確保されている。だからターゲットマーカー分離はかなり早く分かるだろう。その後3つほどの条件が設けてあり、それを満たすと地形ににならう姿勢となって通信が切れる


#ここから質疑応答が始まりました。まず相模原側。

共同通信 関門は、ターゲットマーカーを出すまでが3つ、その後が4つか。それぞれどんな関門か。

川口 個数はだいたいのところだ。というのはアボートを判断するコンピューターは3つに分かれていて、それぞれ判断しているため。数え方によって数が変わる。

 ごく大まかに説明すると、まず地上からの通信が可能な状況では、予定到着地点上空の半径30mに到着出来ない場合は、地上からのコマンドでアボート。予定した範囲とは違う場所に降りてしまう可能性が大きくなるため。

 以後の自律降下においては。

 レーザー高度計とレーザーレンジファインダーが違う高度を示した場合は、自動的に上昇・帰還。

 4つのビームを出すレーザーレンジファインダーが2つのビームでしか高度を測定できなかった場合、自動的に上昇・帰還。3つのビームが高度を出力しないとイトカワ表面の傾斜を決定できない。

 太陽電池パドルなどの破損を防ぐために装着している障害物センサーが物体を検知した場合、自動的に上昇・帰還。

 ターゲットマーカーを見失った場合、自動的に上昇・帰還。

 他にもいくつかあるが代表的な条件は以上。

共同通信 探査機地形にならうとはどういうことか。

川口 サンプル採集ホーンが直下の地形に垂直になる姿勢をとるということ。イトカワの地形に合わせる。

月刊天文 20日にサンプル採取を行えなかった場合はその後どのようにするのか。

川口 戻ってきた状況を見て、可能な限りにおいて手順の修正を行う。ジェットによる姿勢制御を行っているので、どうしても5〜10mm/sの外乱がでてしまう。その場合、「予定到着地点上空よりも半径30mに着地出来ない」という結論が出る可能性もある。サンプル採取を諦めるか、それともリスクを承知した上でサンプル採取で粘るかは、また総合的な判断をしなくてはならないだろう。今の計画では、できるかぎり対策を行った25日に再度トライする方針。

月刊天文 20日がサンプル採取できなかった場合、25日以外の日程を確保するのか。

川口 再降下の日程を確保を希望する場合も、後ろを切られているという条件がかかっている。現在、帰還時にイオンエンジンをホイールが正常であることを前提とした制御則を使っており、帰還に当たってはこれをジェットによる制御を前提とした制御に書き換えなくてはならない。それをした上で12月上旬にはイトカワを離れなくてはならない。
 もちろんNASAのDSNも明日使わせてくれといって使えるようなものではない。

産経新聞 ターゲットマーカー分離後のトラップについては探査機が自律的に行うのだろうか。

川口 そうだ。電波の往復があるので、地上からは制御できない。

産経新聞 地球側ははやぶさの自律的な動きを見守るということになるのか。

川口 そうだ。

#ここから東京事務所にマイクが渡る。

NHK 成功時は「成功」と速報を流したいが、最終的に結果が分かるのがデータをダウンロードする20日午前10時頃でいいのか。

川口 それは探査機が着陸時に姿勢を失ってセーフモードに入らなかった場合だ。いかなる場合も午前10時に状況が分かるというわけではない。

NHK 成功した場合は午前10時には分かるのか。

川口 そうだ。

NHK 実際にサンプルを採取できたかどうかは午前10時に分かるのか。

川口 試料を採取できたかどうかのセンサーは付けていない。弾丸発射が行われた場合にはサンプルは採取できたということが前提。着地時にサンプラーホーンが破損したというような場合は、弾丸が発射されてもサンプルは取れない。

毎日新聞 アボート判断のところで、接近の1時間前から加速するというのはどういうことか。早い段階でのアボートの場合、再度同日にリトライするのか。ターゲットマーカーのイトカワへの着地はどうやって確認するのか。

川口、加速は10cm/s程度。これはマーカーを射出するため。この後探査機は減速する。よほどのことがない限り、ターゲットマーカーは着地するはず。同日中のリトライはしないつもり。

毎日新聞 ターゲットマーカー着地の証拠は取れるのだろうか。

川口 シナリオ通りに進めば、後で確認できると思う。

読売新聞 オペレーション成功後もセーフモードにはいる可能性はあるのか。

川口 あり得る。北緯30度あたりに着地するが、もしもこの場所の傾斜30度のところにタッチダウンすると、探査機と太陽の角度が60 度近くずれる。太陽電池の出力が下がるので自動的にセーフモードに入る。ただしこの条件は、緩和しようと考えている。

読売新聞 午前10時段階でセーフモードに入っていることは分かるか。

川口 分かる。

読売新聞 具体的な数値で何%ぐらい成功の目があると感じているのか。

川口 定量的には言えません。リハーサルで確認できているのはレーザーレンジファインダーが距離を測定できるというところまで。レーザーレンジファインダーの出力で姿勢を制御するのは確認していない。

読売新聞 半日から1日でセーフモードから復帰できなかったらば、どうなるのか。

川口 セーフモードは緊急ではあるけれども予想の範囲内の事態。過去にはやぶさは3〜4回、セーフモードに入ったことがある。

赤旗 降下が始まっているということだが、21時に降下が始めるというのはどういうことか。ターゲットマーカー分離高度は?

川口 降下開始の高度はだいたい2kmより低いところ。1.8km程度を考えている。スタートポイントへの探査機位置制御の精度次第。ターゲットマーカーは分離は40mを想定している。

朝日新聞 一番最後の段階は最後は自由落下させるということだが、接地速度は。

川口 10cm/s以下になるだろうと推定している。

東京新聞 ターゲットマーカーは、降ろせば着地と見なせると言ったが、その理由は。

川口 計り知れないことはあり得るのだけれども、ターゲットマーカーのバウンドを防ぐ試験は十分に行った。だから、下に小惑星があれば確実に表面に衝突する。

日経新聞 12日から今日までに改良を加えた点はあるか。

川口 レーザーレンジファインダーの反射は、地上で予想していたものと違うデータが出ていた。これに対応している。
 12日に行った接近方式では大きく誤差が出たので、接近方式を変えている。また、接近したことで表面重力加速度のデータが得られた。そこで関連の数値も見直している。

#相模原にマイク戻る

共同通信 降下の手順だが、1時間前、100mぐらいの高度で加速する。50mでGO NO GO判断。40mでターゲットマーカー放出。そこから地形になるモードに入り通信がビーコンモードに、ということでいいか。

川口 1時間前は、4〜500mのところにいる。その後は大体のところ、おっしゃるとおりでいいかと。

時事通信 岩を避けるためには横方向の制御が重要だが…

川口 はやぶさに岩を避ける機能はない。岩があると検出した場合にアボート(ミッションを中止して上昇すること)する機能はあるが、検出したのが本当に、岩かは分からない。ターゲットマーカー放出後は、例えターゲットマーカーが岩の傍に落ちたとしても、そこめざして降りていく。自律制御といってもそれほど賢いわけではない。

産経新聞 ホイールの故障で着陸は難しくなっているのか。難しさは何かに例えることができるか。

川口 ジェット噴射による姿勢制御では横方向に誤差が出る。誤差の速度が1cm/sであっても1時間では半径36mずれる。半径30mにおさまらないほどに、横方向に位置がずれてしまうということだ。
 1cm/sは言ってみれば虫が歩く速度。それを2億キロ以上向こうで制御している。
 垂直方向の速度はドップラー変位で分かるが、横方向の速度はホイールが使えなくなったために、撮像したイトカワ表面画像を地球で処理して求めている。そういう難しさがある。これは、ホイールが正常でも難しい制御。それが一層難しくなっていると理解して欲しい。


#マイクが東京事務所に移る

読売新聞 確認だ。着地前後にセーフモードに入った場合には、ターゲットマーカー分離はその前に分かるのか。

川口 分かる。テレメトリで分かる。

毎日新聞 その後ミネルヴァの状況は。

川口 新しい情報はない。再びはやぶさのアンテナの受信アンテナの範囲内入ってくるはずだが、まだそこまでは至っていない。

 記者会見は以上。 

 その後の川口教授へのぶら下がり取材で出てきたこと。

着地場所について:着地場所はミューゼス海。場所もそんなに大きくは変わっていない。ただ、タッチダウン時により垂直に近づけるように接地時刻をずらした(松浦注:延期のうち12時間はイトカワの一自転分。午後3時から4時が、午前6時になったのは、着地点がより探査機について垂直な位置に来るよう待つ分)。臼田からの接近では、臼田可視内で最接近するためにかなりイトカワ表面に対して斜めに近づいていた。

高分解能画像について:公開されているのは分解能2cm程度のもの(リリースでは6〜7mmのものが撮れているとしている)。もっと良い画像が撮れているが、サイエンス側の先取特権があるので現時点では公開できない。

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