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2005.11.15

「はやぶさリンク」:てらきんコラム、ステラナビゲーター、現時点におけるミネルヴァの評価について

 JAXAホームページで、寺薗淳也さんのコラム「3億kmの小窓『はやぶさ運用室』からの報告」が始まっている。寺薗さんは、通称テラキンさん。はやぶさ運用チームのメンバーであると同時に、JAXA広報の一員としてJAXAページの運用にも携わっている方だ。最新の宇宙探査関係のニュースを掲載している月探査情報ステーションは、寺薗さんの尽力で運営されている。
 現在第二話までが公開中。第五話までのタイトルが予告されている。

 アストロアーツの天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ Ver.7」が、はやぶさの表示に対応した。同ソフトは太陽系空間における惑星探査機の軌道を表示することができる。惑星探査機のデータ集「惑星探査機データ」にこのたびはやぶさのデータが追加された。データはこちらのページから無償でダウンロードできる。

アストロアーツによるはやぶさ特集


 ミネルヴァがはやぶさに搭載されるまでの経緯についてまとめておく。

MUSES-Cの大いなる挑戦〜世界初の小惑星サンプルリターンへ向けて——小天体探査フォーラム(MEF)内コンテンツ

 MEFははやぶさに続く小惑星探査ミッションの構想を、オープンソース的に一般人も参加し、討論しつつ構築していこうという趣旨の任意団体。JAXA/ISASの矢野創助手によって5年前に結成された。2004年に次期探査ミッションの概要をまとめている。現在は秋田大学の秋山演亮助手が中心となって、Webページには主にはやぶさ関連情報を掲載している。

 「MUSES-Cの大いなる挑戦」は川口淳一郎教授へのインタビュー。はやぶさ計画の来歴や開発の経過をプロジェクト・マネージャー本人が語っている。

 うちミネルヴァに関する部分。

MUSES-Cには当初NASAのローバーを載せる予定だったと思うのですが,それが中止になって,宇宙研のミネルバに変更した経緯について教えて頂きたいのですが? 中止になったのはNASA側の事情でして,まずは経費の問題です.予想外にお金が掛かるようになって来たので,それに投資するのはどうか,という議論の結果,中止することになりました.もう1つは,開発段階でローバーの重さが増え続けていったことです.一方,当初ミネルバは探査機全体の重量に余裕があれば載せるオプションとして準備して来ました.しかしNASAローバーが無くなった段階から,小惑星表面の直接観測を行うためにも,是非積んで行かなくてはならないだろうという判断に変わりました.

現状でのNASAとのgive and takeはどうなっているのでしょうか?NASAのローバーを搭載する代わりに何らかの取引はあったと思うのですが,それが中止になった現状では技術交換や施設の利用や試料の提供等の取り決めはあるのでしょうか?
サイエンスの協力関係はもちろんあります.何と何とがバーター(相互交換)になっているというのは大変難しいのですけが,例えばローバーを運ぶと事との取引は,NASAの深宇宙通信網を使用させて貰う事ですね.別な取引としては,採取試料の質量の10%をNASA側に提供するという話があります.この話しは元々,探査対象がネレウスか1989 MLだった時に出て来たもので,もし帰還カプセルを回収する際に米国ユタ州で支援して貰えるならば,その見返りとして,ということだったんです.ところがその後探査対象が1998 SF36に変わったために,ユタ州でカプセルを回収することは無くなりそうです.さらにローバーもNASA側からキャンセルされてしまったために,どちらのバーターも宙に浮いてしまいました.但し,既に話がまとまっていたバーターを相手が引っ込めたからといって,こっちも引っ込めるようなつまらないことをしてもしょうがありません(笑).探査対象を変えたのは宇宙研側の都合ですから,元々言っていた採取試料の10%は寛大にそのまま渡して,双方納得してもらえれば良いんだと思っています.

 ここで分かるのは、1)ローバーはオプション、つまり「重量的余裕が出たら搭載する」という扱いだった、2)米航空宇宙局(NASA)の新宇宙ネットワークを使用する代償だった、3)NASAのローバーは金額と重量の双方がかさんだためにキャンセルされた、4)最終的に「是非積んで行かなくてはならない」という扱いになった——ということだ。

 それでは、NASAは、どのようなローバーを開発するつもりだったのか。11月12日付のSpacefloght nowが、概要を伝えている。

Space probe rehearses landing dance with asteroid

In the early parts of the mission's pre-launch development, NASA had planned to build a slightly more advanced 2.2-pound rover for inclusion on Hayabusa. That vehicle would have carried a camera along with infrared and X-ray spectrometers, but it was canceled five years ago this month after rising costs above the original $21 million estimate.

 NASAのローバーは赤外線とX線の分光器(これは岩石組成を測定するものだ)を搭載した重量2.2ポンド(約1kg)のローバーを2100万ドル(ドル118円換算で、約25億円)で開発しようとしていた。

 はやぶさ本体の開発コストが127億円ということなので、NASAは本体質量がはやぶさの1/500のローバーに、1/5の予算をつぎ込もうとしていたわけだ。

 一方、ミネルヴァの開発コストは、私の手元に数字がないのだが、笹本祐一「宇宙へのパスポート2」の235ページに以下のような記述がある。笹本は打ち上げ前にIHIエアロスペースでミネルヴァの取材をしている。その時の記述。

なにせ正式のプロジェクトじゃないから予算もまともに付かず、惑星間を飛ぶ探査機に余分な荷物を持っていく余裕なんかろくにないから、与えられた重量はパッケージ全部で1キログラム、本体は500グラム。 「500グラム!1グラムもまけんぞ!」  しかも制作予算はない。しかたないので技術開発予算から持ってきて、それでも宇宙規格の高い部品を買う余裕はどこにもないので、民生品を買ってきて回路を作る。

 つまり予算項目に「ミネルヴァ開発費」という項目はなく、一般の技術開発経費から予算を引き出してミネルヴァは開発された。開発には5年かかっているが、予算規模200億円の宇宙科学が年間2000万円(これはアウトソーシングで技術者を一人、1年間雇う経費とほぼ等しい)以上を、この小さなローバーに割けるとは、私には考えにくい。
 このことと、宇宙用に比べて非常に安い民生部品を使っているということから推定するに、ミネルヴァは1億円程度。ひょっとすると数千万円オーダーで開発されている。

 正確な額は聞かなければ分からないが、つまるところNASAの1/20程度の予算で、なんとか成果を挙げられるローバーを、と工夫した結果が、ミネルヴァなのである。

 宇宙用の電子部品は、信頼性を追求するあまりに非常に高価になっている。同性能の部品が秋葉原で数百円で買えるのに、宇宙用となると100万円以上などということはざらだ。宇宙機に安い民生用電子部品を使う動きは、ここ数年やっと始まったというところである。それも、主に宇宙放射線が比較的弱い地球低軌道への適用が主だ。

 強い放射線にさらされる地球磁気圏の外に出て行く宇宙機への民生部品の適用は、ほとんど例がない。月探査を行ったクレメンタイン探査機(1994年)が、民生品のRISCプロセッサーを搭載したぐらいではないだろうか。

 ミネルヴァはイトカワへの着地に失敗した。サイエンス・ミッションとしては当初目的を達成できなかった。

 一方、宇宙業界の常識から言えば桁外れの低コストで民生電子部品を流用して開発したローバーが、放射線の強い惑星間空間での2年以上の航行に耐え、かつ放出後は18時間もの間きちんと動作した。
 これは、エンジニアリング面での成果と言えるだろう。

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Comments

NASAが開発していたのはMUSES-CN nano-roverのことですね。2000年11月にキャンセルすることにしたというNASAのプレスリリースが出ています。

この辺にメカニズムが紹介されていますが、小型の割にはかなり複雑です。企画倒れするのも納得。
http://www.asi-space.com/products/NanoRover.asp

P.S. 1度しかコメントしないつもりでHNを適当に書いたのですが、ちょっと後悔気味^^

Posted by: がんばれはやぶさ | 2005.11.17 at 08:56 AM

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Tracked on 2005.11.17 at 12:35 AM

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