種子島で雌伏する
19日朝のフェリー「プリンセスわかさ」で種子島に入った。海は荒れており、錦江湾から出るとフェリーは揺れる揺れる。気分は映画「Uボート」だ。フェリーのトイレに取っ手が付いている理由が初めて分かった、とは同行者全員の実感。
そのまま宇宙センターに直行する。海岸に面したプレスセンター付近は風雨が強い。道が海岸から飛んできた砂に覆われている。プレスセンターはほとんど空っぽ。「今回も技術説明で来ました」という旧知のAさんがいたので、現状を聞く。一般向けの展示をしている宇宙開発館には、今回打ち上げる衛星ALOS「だいち」の熱構造モデルが展示されていた。
河内温泉センターにつかってから港のある西之表に戻る。宿は西之表のなじみの民宿。センターからは遠いのだけれど使い勝手がいいので大抵はここに泊まっている。いつも通りおばちゃんと猫共が迎えてくれたが、おばちゃん、20日から23日まで九州の方で結婚式があるとかで留守にするという。「後は適当に使って下さい」。のんびりしたものだね。当面、宿は我々の貸別荘状態。信頼に応えるべく心して住まわねば。
夜は飲み屋に出てきびなごと焼酎で酔っぱらう。店主のおやじさんが、途中から飲みに参加。サーファー米の顛末とか、種子島における町村合併の状況とか、色々と聞く。
「娘が福岡でデザインの仕事をしようとしているんだがものになるだろうか」と、娘さんが高校の体育祭で描いたという立て看板の写真を見せられる。
才能はあると思う。でも、高校で一番描けるというレベルの奴は、美大にいけばごろごろしている。その連中との切磋琢磨の中で、色々な出会いがあって仕事につながっていくといいのだが…
デザインと写真の仕事をしている同行Mさんの意見ははっきりしていた。
「東京に出なければだめですよ」
…それはあるなあ。現実として。
20日も雨。センターに電話すると、早々に打ち上げは23日以降に延期とのこと。
午後3時から、センター内の一般向けツアーに参加する。以前我々が打ち上げ後数日粘って見学したH-II7号機を、現在は無料の一般向けセンター内ツアーで公開している。事前の予約が必要だが当日、宇宙開発館の受付で申し出ればOKだ。宇宙開発館には「見学人数2万人まであと264人(数字はうろおぼえ)」という表示が出ていた。
マイクロバスに十数人の見学者が乗ってツアー開始。打ち上げがない時はH-IIA射点の敷地内にも入るそうだが、今回は外から見るだけ。
大崎事務所棟の倉庫で、4年振りにH-II7号機と再開する。先行した8号機の事故で、結局打ち上げずに終わってしまった機体。組み合わせるはずだった固体ロケットブースターは、すでに推進剤の経年劣化を調べるための燃焼試験に回してしまったため、もう打ち上げられることは金輪際ない。そもそも、射点設備もH-IIA用に回収されてしまっている。
横にはH-IIの射点での燃焼試験「CFT」に使った第1段も置いてあった。
精緻な構造が、かえってわびしい気分をかきたてる。もうちょっときちんとした展示はできないものだろうか。
この日も温泉。そして西之表で、スーパーの総菜を買い込んで宴会。種子島はスーパーの総菜であってもおいしい。ビールを飲みつつ、仕事。
目覚めて21日、センターに電話すると23日打ち上げ決定とのこと。
さあ、本番だ。
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