「はやぶさ2」その1:来年度予算折衝の結果
「はやぶさ2」予算化の話だ。メール投稿を呼びかけた手前、これを書かないわけにはいかない。
昨年末、予算案が出た。
・予算要求約5億円に対して、2007年度予算で「次世代小惑星探査機」の名目で5000万円が付いた。
要求の1/10だ。この額をが出てくるにあたっての経緯は、私が聞いた限りにおいて以下の通り。
・JAXAと財務省の折衝の過程で、一度「はやぶさ2」予算はゼロになった。JAXA側が財務省に出す要求において、自発的に落としてゼロにした予算案を提出した。
・文部科学省が「はやぶさ2」予算を得るべく、財務省とねばり強く折衝した。
・しかしながら、一度JAXAが自発的にゼロとしたものを復活させるのは至難の業で、結局次世代小惑星探査機という名目で5000万円が予算化された。
これをどう解釈すべきか。
JAXAは、「はやぶさ2」に4番目の優先順位を与えていたが、実際問題として財務省との交渉過程で、取引の材料に使うための捨て駒として考えていたらしい。一端引っ込めたというところからして、「はやぶさ2の予算を引っ込めますから他の予算を通して下さい」という形で利用しようとしたと解釈するのが合理的である。
おそらく、「旧ISASは、ASTRO-Gの予算が通ればいいだろう」という、旧三機関縦割りの思考から脱していないものと思われる。内部で、どの予算項目が緊急かという評価ができていないのだろう。
文部科学省が押したのは、宇宙基本法絡みの思惑があったのではないか。宇宙基本法では、宇宙開発の中心は内閣府に移り、各官庁は独自に宇宙利用計画を進めることになる。そうなった暁、文部科学省に残る宇宙分野の管轄は、宇宙科学と技術開発のみとなる。ここで、宇宙科学を大きくしておかないと、文部科学省としては、権限縮小を避けられない。
とはいえ、単なる権益がらみではなく、本当に「はやぶさ2」を必要と思った官僚がいた、と思いたいところだ。本当に権益拡大のみを狙うなら、より多額の予算を消費する有人宇宙開発を前面に打ち出すはずだから。
予算要求の5億円は、輸出の事務手続きが難しく、先行して発注しなくては間に合わない部品を先行して発注するのに必要な額だった。5000万円では調査費程度にしかならない。
しかし「はやぶさ2」の2010年打ち上げが頓挫したわけではないようだ。私が会った関係者は、具体的なことを話してはくれなかったものの、誰一人として諦めてはいなかった。あの途方もない「はやぶさ」運用を続けている人たちだ。なにかウルトラCを考えているのだと思いたい。
実際問題として財務省査定で「次世代小惑星探査機」という項目が立ったことは大きな意味がある。これは「次の小惑星探査がある」ということを意味するからだ。
あちこちに送られたであろう、皆さんの「はやぶさ2」支援のメールが、どの程度の効果を発揮したかは分からない。しかし、この5000万円が出るにあたって、幾分かの力となったと思いたい。なにより、今まで宇宙計画で政治や行政に投稿が集まったことなどなかったはずなのだ。その意味は小さくない。
そしてここでお詫びしなくてはならない。私自身が投稿すると書いたにもかかわらず、私は予算案確定までに投稿することができなかった。
こういうことを書くと、「何思い上がっているのか」と言われそうだが、昨年後半から私自身のマスコミ露出が増えた。そんな者が市民として投書するのは悪しきプロ市民的ではないかとか、よりきちんと自分の職分であるメディアを通じて動くべきではないかとか色々考え込んでしまったためである。
その一環として私は、1月6日付けの朝日新聞「視点」欄に、小惑星探査の必要性を指摘した文章を寄稿した。
私は、これに終わることなく、様々なフォローをすべきだろうと思っている。その手始めとして年が明けてから、財務省に以下の意見を投稿した。
主計局文部科学省担当御中過日、小惑星探査機「はやぶさ2」の予算化を願うという投稿をした者です。
年末の予算折衝の経過を聞きました。5億円の要求に対して、5000万円とはいえ、予算原案において次期小惑星探査機への予算が付いたとのこと。御礼申し上げます。
おそらく、そちらには複数の「はやぶさ2」予算化を願う投書が届いたものと思います。一部は私が行ったインターネットでの呼びかけ(http://smatsu.air-nifty.com/lbyd/2006/10/post_eeef.html)に応じたものであるでしょう。
最終的にそちらに何通の投書が届き、それがどのように心証に影響したかは知りません。しかし、ここで強調しておきたいのは「過去の日本の宇宙開発において、財務省(旧大蔵省を含む)にこのような投書が集まったプロジェクトがあったか」ということです。
宇宙飛行士のスペースシャトル搭乗で、国際宇宙ステーションで、巨大ロケット開発で、巨大通信実験衛星や巨大地球観測衛星で、このような投書が集まった例がかつてあったでしょうか。
小惑星探査機「はやぶさ」で、日本の宇宙開発は初めて、真に国民の共感を集めるプロジェクトを為したといえるのではないでしょうか。
「はやぶさ」自体はひっそりと始まったプロジェクトでした。「はやぶさ」に共感した人は、たまさか「はやぶさ」に気が付いた人でした。それでも、財務省に複数の投書が届くほどの数の、専門家ではない、ごく普通の人々が「はやぶさ」に共感し、「自分も『はやぶさ』と共に、もっと遠くを、宇宙の彼方を見てみたい、行ってみたい」と思ったのです。
これはとても重要なことです。
今後「はやぶさ」を知る人は増えていくでしょうし、「はやぶさ」をサポートしようとする人もまた増えていくでしょう。それらの人々は財務省が何をするかを興味を持って見ていくことになるでしょう。
お願いがあります。今後とも、この分野、「はやぶさ」と、「はやぶさ」後継機の小惑星探査から始まる深宇宙探査を頭の隅にてあっても入れておき、常に意識して頂けませんでしょうか。
国家財政全体から見ればごく小さな額ではありますが、その小さな金額で作られた探査機が、かくも人々の注目を集めたことの意味を、考え続けてもらえればと思うものです。
ひとつ、気になる話を聞いた。どうやら財務省が、JAXAの予算要求に対してかなりの不満と不信感を抱き始めているらしい。「無駄な公共事業的仕事をしているのではないか」と考えているとのこと。
JAXAが財務省に対して、具体的にどのような説明を行っているかは分からない。が、「今後ともあのやり方が通ると思っているのか」というような話を聞くにつけ、JAXAの将来に不安が募るのである。
私自身、今回のことでは、様々な意見を聞いたし、また考えることも多々あった。そのあたりについては次の記事でまとめることにする。
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