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2007.09.28

ミームとバックドアの与太話

 アマゾンからこんなメールが来た。

 ご注文時に予定して おりました発送予定日となっておりますが、まだ下記の商品の調達が できておりませ ん。

 お待たせしており誠に申し訳ございませんが、継続して商品の調達を行いますので、今しばらく時間の猶予をいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。これに伴い現時点において目処となる発送予定日に変更させていただいております。

(中略)

"初音ミク HATSUNE MIKU"

 出遅れたかな。

 さて、昨日の、「神の恩寵を私の説こうとした若者が、なぜ悪魔のように去っていかねばならなかったのか」という話の続き。

 最近になって、4月のキャンパスで私に向かって「あなたなんか地獄に落ちますからね」と叫んだ若者と同じ印象を受ける振る舞いを、ネットでよく見るようになった。

 mixiには、「懐疑論者の集い-反擬似科学同盟」というコミュニティがある。ニセ科学をウォッチングするコミュニティだが、ニセ科学というか、トンデモの信奉者が入り込んできて論戦になることがある。「911テロはアメリカの自作自演である」とか。

 もちろん論理的にはコミュニティに集う強者に論破されてしまうわけだが、彼らはほとんどの場合に自らが間違っていることを認めようとはしない。逆に「なんであなた方はこんなことが分からないのか」「こんなことも分からないようでは話にならない」「議論の相手にもならないのでさようなら」と、一方的な勝利宣言をして去っていく。

 その発言が、どうにも私には「あなたなんか地獄に落ちますからね」という言葉と似ているように思えるのだ。

 mixi以外では、大阪大学の菊池誠教授が、自らのkikulogで、911陰謀論、マイナスイオン、血液型制作診断といったトンデモの信奉者と激論を戦わせている。
 ここでも、時折、ビリーバーによる「あなたなんか地獄に落ちますからね(私の勝ちだ)」的な発言をみることができる。

 さて、怪しげな推論を組み立てることにしよう。以下は話半分に読んでもらいたい。

 宗教の勧誘、エセ科学や陰謀論のビリーバーが、なぜ同じような罵詈雑言で撤退していくのか。それはなにか両方が、同じ現象に根ざしているからではないか。

 もう一歩、怪しげな推論を進める。宗教もエセ科学も陰謀論も、人間の脳の同じ働きによって発現しているのではないか。

 もっと怪しい話を考える。それはひょっとしてミームによる人間の脳のクラッキングの結果ではないか。つまり、人間の脳に実装された世界認識のシステムには、最初から宗教のようなミームが利用可能なバックドアが組み込まれているのではないか。

 ドーキンスも「神は妄想である」の中で、人間の認識の問題点について言及している。人間が世界を認知する仕組みは、人間の体のサイズに合わせ、人間が進化したサバンナという場所での生存に役立つように進化してきたの。だから、それ以外の世界、例えば極微の量子力学的現象や、光速に近い速度の相対論的現象などを直感的に理解するようにはできていない、というわけだ。

 そこで、もう一歩、怪しい方向に進んで、「そんな穴だらけの世界認識のスキーマに、クラッキング可能なセキュリティホールがあったら」と考えてみる。

 「人間はコンピュータ・ソフトウエアと違う」と言われそうだが、認知に関する現象には錯視の一部のように「魂」と言うものを持ち出さなくても、説明できるものが少なくない。とすれば、人間の世界認知システムを、ソフトウエアと考えてもいいのではないだろうか。


 思うに、このセキュリティホールは、人間が社会を営む生物であるというところに起因しているのではないだろうか。
 私たちには、社会を営む中で「周囲の人間に認められたい」といいう欲求が存在する。それはもちろん、認められることが生存に有利になるという理由から、進化してきたものだろう。

 しかし、実際問題として多くの人は、能力以上に認められることなく、社会に埋没していく。

 では「自分は特別であり、周囲に認められるべき存在である」と確信させてくれるミームが存在したらどうか。

 「特別であるべき自分」という欲求と、「特別ではない自分」という実際とのギャップに、バックドアが存在する。そこを突いてミームが入り込む。人間は酸素不足や睡眠不足、薬物などで幻覚を起こすハードウエアであるということも、ミームは利用する。神秘体験というやつだ。こんな神秘体験をした自分は特別である、というようにミームは自己認識を歪め、誘導する。

 ミームは集団に感染する。一人に感染しただけなら、ミームの創り出す「特別な自分」という認識は、現実の前に崩れるだろう。しかし集団に感染し、集団全体が「俺もお前も特別だよ」という幻覚を相互供給し合うなら、ミームは生存し続ける。

 集団感染は、ミームが生き延びる前提条件である。だからミームに感染した者は、ミームを広げるべく布教活動を始める。それは、宗教でもエセ科学でも、トンデモでも、マルチ商法でも、同じである。
 これらは、同じバックドアを利用するミームの変種なのである。

 ああ、なんだか書いていて、妙な気分になってきたぞ。

 でも、こんなことを思いつく俺ってすごいな。おお、息を止めると光が見えるぞ。わはは、我は解脱せり。ひれ伏せ!蛆虫めら!!(あれ?)


 そう、これは、かなりの過程を積み重ねた与太話である。「宗教の勧誘、エセ科学や陰謀論のビリーバーが、なぜ同じような罵詈雑言で撤退していく」ということのみを根拠で、論理を積み上げただけ。

 「人はひっかかりやすい生き物である」ということをごちゃごちゃ言ったに過ぎないような気もする。

 にわか作りだから、崩れるのもまた早いな。

 最後に、もう一つ妄想を積み重ねておくと、この手のミームの感染に対抗する免疫に相当するものがあるとするなら。それは「笑い」ではないかという気がする。

 池乃めだかの「今日はこれくらいにしといたるわ!」——あれですね。凝り固まった認識をすっとほぐすわけです。

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Comments

笑いにも、他者を笑って自分(達)の優越性・特別性を確認して喜ぶもの、
自分たちを笑って自己の問題点を受け入れ可能な形で俎上にあげようとするもの、
等いろいろありますね。

全く個人的な、何の統計も取っていない感覚的イメージとしては、
英米の「ジョーク」には、自分たちを笑いの対象にするものの比率が、他国より多いような気がします。

また、「空飛ぶモンティ・パイソン」のような世界になると、
「こういう異様・特別なものを笑うことができる自分たちは凄い」という
自己特別感があるような気もします。

とりとめの無い文ですみません。

Posted by: MUTI | 2007.09.28 at 12:59 PM

要はコミュニケーションだと

Posted by: gori | 2007.09.28 at 09:50 PM

ううむ、宗教・疑似科学ミーム仮説の「世界認知システムは脳のソフトウエア」も
ウッカリするとトンデモの領域に転がりそうな気もしましたね。
脳のように「よくわかっていないもの」にメタファーを適用するのはアヤウイと思います。

宗教の勧誘、エセ科学や陰謀論のビリーバーが、なぜ同じような罵詈雑言で撤退していくのかは、
古典的な心理学用語「防衛機制」でも説明できるのではないかと思いました。
彼らが自我を守るためにはそうするしかないのだと。

「この手のミームの感染に対抗する免疫に相当するものがあるとするなら。それは「笑い」ではないか」
これには大賛成です。

Posted by: CSN | 2007.09.29 at 12:04 AM

科学が「証拠に基づく合理的思考」という自分らの
フィールドに犠牲者を狩り出して論破するのは、ガリレオ裁判の
真逆でしかないですよ。あれらの書物は合理的思考によって
読み解こうとしても一文字も読めないに等しいです。科学論文を
「人を導くものか否か」という視点では読めないように。
私は松浦氏の本も「日経サイエンス」なども読んでいますし
理解しているつもりですが、神とはなんなんなのかも理解している
つもりです。私の見解では宗教を全否定するというのは世界を
半分しか見ていないのと同じです。「宗教は人を良い方向
に導く面があるからそれは認める」、という矮小化した理解は
良い落とし所のように思われますが、それもまるで違います。
「宗教と科学のありよう」、という視点ならば、ID
などの俗説に巻き込まれて「熱く」なってしまっている
ドーキンスの周辺を追ってもだめです。
この話題を追うのならばケン・ウィルバーでしょう。

Posted by: maimai | 2007.10.03 at 12:42 AM

ミームの話面白いです。でも私はバックドアではなくて基本仕様として入れるようになっているようなイメージです。別に疑似科学でなくても、ネット上ではまっとうな科学に関する議論でも似たようなことは起こっているように感じます。
疑似科学否定派の人達でもビリーバーのような人はいます。決して宗教のような非論理的な世界だけのものではないと思います。

Posted by: 半日庵 | 2007.10.03 at 11:58 PM

「笑い」の話で、チャップリンがヒトラーを茶化した映画「独裁者」を思い出しました。
ただあの映画、最後の演説で「自由」とか「民主主義」を熱烈に賛美するんですが、これが独裁者のパロディーみたいに見えて胡散臭いんですよね。

Posted by: ぬるぼ | 2007.10.04 at 03:59 PM

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