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2008.01.25

宣伝:1月26日土曜日、ジュンク堂書店池袋本店のトークセッションに出演します

 このところ、きちんとイベント告知できているなとうぬぼれていたら、うわあ、明日のイベントを忘れていました。

 明日1月26日、ジュンク堂書店池袋本店で、「昭和のロケット屋さん」発売記念のトークセッションに出演します。

 「昭和のロケット屋さん」発売記念トークセッション
 出演:垣見恒男・林 紀幸・松浦晋也・笹本祐一・あさりよしとお

1月26日(土)19時から

場所:
ジュンク堂書店池袋本店 4F喫茶 地図
〒171-0022 東京都豊島区南池袋2-15-5
TEL 03-5956-6111 FAX 03-5956-6100

入場料:
ドリンク付きで1000円。

以下、ジュンク堂HPから。入場方法です。

☆申し込みは池袋本店1Fサービスカウンターで承ります。(電話:03-5956-6111)
☆入場料はドリンク付きで1000円です。当日、会場の4F喫茶受付でお支払いくださいませ。
※トークは特には整理券、ご予約のお控え等をお渡ししておりません。
※ご予約をキャンセルされる場合、ご連絡をお願い致します。(電話:03-5956-6111)

 ということです。

 よろしくお願いいたします。

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2008.01.24

呼びかけ:「「宇宙開発に関する長期的な計画」に関する意見募集」 に意見を送って下さい

 ここでは「はやぶさ2」の件以来、何回も呼びかけを行ってきた。

 またの呼びかけだ。皆さんの声を文部科学省に届けて下さい。

 「松浦は狼少年か」と思われそうではあるのだけれど、残念ながら、一回の意見だけで動くほど日本の意志決定システムは機敏ではない。ねばり強く、機会を捉えて何度でも声を政治家や官僚、宇宙開発関係者に届けていく必要がある。

 そして一般国民からの声は、国民が思っている以上に効く。「どうせお上のやることになにいっても無駄さ」ということはない。声が一つならなしのつぶてになることも多いが、数が増えるとお上といえども無視はできなくなる。

 今回のテーマは重要である。文部科学省が「宇宙開発に関する長期的な計画」に対するパブリックコメントを募集している。締め切りは一週間後の1月31日木曜日だ

 「宇宙開発に関する長期的な計画」について(中間とりまとめ)を読んだ上で、意見を文部科学省に送る。

 「宇宙開発に関する長期的な計画」がどんなものかは、以下の通り募集要項に書いてある。

「宇宙開発に関する長期的な計画」は、独立行政法人宇宙航空研究開発機構法第19条に基づき、宇宙開発委員会の議決を経て主務大臣が定めるもので、今後20年~30年の将来の我が国の宇宙開発利用の在り方を展望しつつ、10年程度の期間を対象とし、同機構が果たすべき役割を定め、同機構の平成20年4月からの中期目標のもととなるものです。

 つまり、この文章が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の中期計画、つまり今年4月からの5ヶ年計画を規定する。逆に言えばこの文章に入らなかった項目や、実施に向けた強い文言が入らなかった計画は、5ヶ年計画の途中でどんなに必要になったとしても、後で割り込ませることは非常に困難だ。

 非常に理不尽な話だが、日本の官僚システムは硬直化した制度で動いているために、そういうことになってしまう。

 ここで間違えると、今後5年間、日本の宇宙開発は間違えっぱなしになり、さらには次の5ヶ年計画では間違いの後始末に追われ、新しいことができなくなる。

 資料の「『宇宙開発に関する長期的な計画』について」は30ページもある官僚の作文であり、読み解くのが面倒かも知れない。それでも少しでも多くの人に読んでもらいたい。全部読み切れない人は、自分の興味のある部分だけでもいい。

 官僚の作文である以上、この文章の全ての部分には意味がある。

 まず、項目の記載順番はそのまま重要度を示すものと思って良い。表向きは「平等」ということになっているが、重要だと考えるものから順番に書いていくのは、新聞記事などと同じである。
 なぜなら、そうしないと財務省や政治家への説明で困るからだ。

 具体的なアイテム名が入っているものは「絶対やるもの」だし、具体的な名前が記入されていない項目はそれよりも優先度が落ちる。はっきり書くならば、この文書に「はやぶさ2」というアイテム名が入れば、もう実施は確定となる。

 語尾が「実施する」「取り組む」「習得する」と具体的なアクションを示す動詞であるなら、その項目は優先度が高い。一方、語尾が「推進する」「努める」というような抽象的動作を示す動詞、あるいは「必要である」というような現状認識を示したに過ぎない場合は、その項目の優先度は低いと書かれているに等しい。公文書に記載されただけまし、ということになるわけだ。

 以上のようなことに注意して、まずは読んでもらいたい。その上で、「この部分の実施するは、推進するに落とすべきだ」、あるいは「この推進する、は具体的な計画名にまで触れて実施すると書くべきだ」と考え、それをパブリックコメントとして投稿してもらえればと思う。

 委員会などを傍聴していると、文書表現の問題点を指摘する委員に対して、官僚側は「そのことはここに書いてあるので」と答えるのをよく見聞する。
 もちろん本当に書いてあるわけだが、よく見ると具体的計画名の有無や語尾のニュアンスの強弱で、微妙に書き分けてあるわけだ。
 結果、物事が進行してしまってから「この計画のほうが重要ではないか」という状況が発生しても、「『宇宙開発に関する長期的な計画』においては、こちらは『実施する』アイテムでして、一方こっちは『推進する』アイテムです。どちらかといえば、『実施する』のほうを重視しなければならないわけでして…」などと現状追認を迫られたりするのだ。

 今回のパブリックコメント募集は幸いなことに文字数制限がない。問題点をきちんと指摘するコメントを投稿することができる。

 できるだけ多くの人に、コメントを投稿してもらえればと思う。

 もちろん私もする。これは今後5年間の日本の宇宙開発を決める文書なのだ。

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2008.01.23

宣伝:2月3日(日曜日)、ロフトプラスワンのイベントに出演します

 いつの間にか「ロケットまつり外伝」というタイトルが付いてしまいましたが、日本電気で多数の衛星に関わった小野英男さんが語る、日本衛星開発初期の話、第3回です。今回は東大衛星に続いて小野さんが関わった最初期の宇宙開発事業団の衛星について話して貰う予定です。


宇宙作家クラブpresents
ロケットまつり外伝「衛星まつり3」
〜日本で一番多く人工衛星を設計した男〜

40年前、衛星開発に挑んだ本人が、日本の人工衛星開発のはじまりを語る、1回目の熱気を残したまま語る3回目

【Guest】小野英男(日本で一番多く人工衛星を設計した男)
【出演】浅利義遠(漫画家)、松浦晋也(ノンフィクション・ライター)、笹本祐一(今度こそ来ます!)

2月3日(日曜日)
Open18:00/Start19:00
¥1000(飲食別)

場所:ロフトプラスワン(新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2 03-3205-6864、地図)

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ベロモービルの可能性

Goone
写真はgo-one3。出典はこちら

 18日は阿佐ヶ谷ロフトAにいらっしゃった皆様、どうもありがとうございました。楽しんでいただけましたでしょうか。

 新しいシリーズの立ち上げということで、ネタを用意しすぎたようで、終演時間が遅くなった上に、一部のネタは話すことができませんでした。どうも申し訳ありません。次回がありましたら、もう少し手際よく進行できるよう注意します。

 以下は、私が話したベロモービル(velomobile)関連のリンクを掲載する。

 ベロモービルは、流線型のフェアリングを付けた人力の乗り物だ。フェアリング付きリカンベントといってもいいかも知れない。私は、全天候で渋滞知らず、省エネな乗り物としてベロモービルに注目している。

 ベロモービルの存在を知ったのは、A-Bikeについて調べていて行き当たったなるほどれおなるほどというblogからだった。このblogを手がかりに色々検索し、情報を仕入れた。どうも御世話になりました。

 拙著「コダワリ人のおもちゃ箱」に、SDVという自転車が登場する。脚の動きを円運動ではなく直線運動にして、効率を上げようという仕組みだ。開発者の織田紀之さんは、この仕組みを使ってフェアリング付きの全天候対応の人力乗り物を造る希望を語っていた。
 執筆時、私はベロモービルの存在を知らなかった。リサーチ不足だといえばその通りと言うほかない。

 遅ればせながら気が付いて正直びっくりしたのだ。「織田さんが言っていたのは、このベロモービルではないか」と。

 ニュートンの運動法則によれば、動いている物体はその状態を維持しようとする。もちろんこれは運動エネルギー損失がゼロの理想状態においてであって、実際には空気抵抗がかかったり車軸やタイヤの損失があったりで減速し、止まってしまう。だが、抵抗を可能な限り減らし、軽量化すれば、ごく小さなパワーでも日常十分な程度の加速と最高速度、そして航続距離を達成できるのではないか——織田さんはそう考えていたわけだが、欧州では一足先に、同じ発想がビジネスになっていたわけだ。

 もちろん、ロフトでのトークでも出たように、今のベロモービルは完全なものではない。季節によっては内部が暑くなるのではないか、とか、雨の時の前方視界をどう確保するかとか。
 社会的には、汗をかきながらベロモービルで移動した後、人に会うというのはいかがなものか、という問題もある。

 その一方で、大きなメリットも存在するように思える。

 都市交通では、自動車に一人で乗るというのが大きな問題となる。ひと一人ならば30cm四方でも立つことができるが、自動車は大ざっぱに見積もっても2m×5m程度の面積を必要とする。それだけ道路を占有するわけだ。また、70kgの人間を運ぶのに1t以上の自動車も一緒に動かなくてはならない。昨今の自動車は大きく重くなりつつあり、普通乗用車でも1.5tという数字が珍しくなくなっている。人間1人を、20人分の重量がある自動車で運ぶことにある。燃料の大部分は、人ではなく入れ物である自動車を移動させるために使われる。

 ベロモービルは、少なくとも近距離において、この問題を解決する一助になるのではないだろうか。それは、燃料の使用削減につながるし、個人の家計という点では自動車維持にかかる諸経費の節約になる。そしてもちろん、日常に組み込まれた適度の運動によって、健康増進も図ることができる。

 「そんなうまいこといくか!」という声が聞こえてきそうだが、突っ込んで検討する価値はあると思うのだ。

 私としては、このようなベロモービルにハイブリッド技術を適用すべきではないかと思う。上記リンクにあるTWIKEは、人力とモーターのハイブリッド動力で、最高時速85km/h、航続距離200kmを実現している。これは半世紀昔の360cc軽自動車に匹敵する。

 日本は原付の登録基準が比較的緩いので、ハイブリッドのベロモービルを原付として登録して公道を走らせることができるのではないだろうか。もちろんそんな車両が増えるならば、同時に交通体系全体を考え直す必要もあるわけだが。

閑話休題
 ロフトのイベントがあった翌日、19日には、宇宙作家クラブの例会で、マイレッジマラソン世界記録を出したFC-Design中根久典さんの講義を聴いた。中根さんはマイレッジマラソン用の車両開発で、25〜30km/hの速度域における空気抵抗軽減のノウハウを豊富に持っている。

 色々質問してみると、現在のベロモービルは、まだまだ空気抵抗を軽減する余地があるようだった。写真を掲載したgo-one3なども、今以上に空気抵抗を減らせるようだ。

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2008.01.17

知っていることと知りたいこと、知らないこと

 12月の話だが、日経新聞の先輩Tさんと忘年会をした。科学技術報道の先輩なのだが、昨年、ひょんなことから2人ともクラシックファン、しかもショスタコーヴィチが好きということが判明し、「一度飲みますか」ということになった。

 昨年11月から12月にかけて、記念碑的コンサートが開催された。指揮者の井上道義がショスタコーヴィチの交響曲、全15曲を8回の連続演奏会ですべて演奏したのだ。

「日露友好ショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏プロジェクト」

 私はこれにすべて通った。Tさんも仕事が許す限り通った。「いやあ、すばらしかったね」とワインを飲みつつ盛り上がる。

 話は、テレビドラマやアニメで盛り上がっている「のだめカンタービレ」へと流れた。

「松浦さんねえ、クラシックの側から見た『のだめ』の功績って、ベートーベンの7番を一般に知らしめたことだと思わないか」

 ここでいう7番というのは第7交響曲のこと。5番の「運命」、6番の「田園」に続く曲だが、前2曲のようなニックネームを持たない。

「そうですねえ。みんな『運命』も『田園』も一応知ってますけれど、その次の7番を聴いたことがある人は意外に少ないですね」
「良い曲なんだけどねえ」
「大傑作ですよ。あのリズムの取り方はベートーベンが書いたロックとかダンスミュージックとか、そうといってもいいでしょ」

「本当になあ」
と、Tさんが言う。
「みんな知っているものは知りたがるんだ。知っているのに聴きたがるんだ」
「そして知らないものは聴きたがらない。知りたがらない」と私。
「5番の『運命』はじゃじゃじゃじゃーんで知っていて、6番の『田園』はたーらーたーたーららたったーで知っている。でも次に7番があるなんてことを思いもしない」
「ちゃんと9番『合唱』があることは知っているのにね」
「そうなんだ」
「8番も知られてませんね。いい曲なんですけどね」
「他人事じゃないよなあ。僕らの仕事も同じだ。知っていることしか知りたがらない人たちに、知らないことを伝えて行かなくちゃならない」

 2人でため息をつく

 Tさんはずっと科学技術報道に携わってきた。私は今、宇宙分野で物を書いてどうやら生きている。「人間、知っていることしか知りたがらない」というのはまったくもって実感だ。

 人間は本質的に保守的な生き物だ。知っていることを確認して安心することを好む。新しいことを知って楽しむ「好奇心」という属性も持っているが、どちらかといえば「知っていることだけを、知る」傾向の方が強い。

 例えばベートーベンの第5交響曲、通称「運命」だが、冒頭の「ジャジャジャジャーン」は知っているとして、あの曇天から晴れ間がのぞくような第2楽章のメロディを思い出せる人はどれぐらいいるだろう。なかなか格好良い第3楽章のフーガは、あるいは第3楽章からトンネルのような暗い接続部を経て、昂然と鳴り出す晴れやかな第4楽章の冒頭はどうだろう。
 知らないとしたらなぜ知らないのか。興味がないのか。「この道はどこに続いているんだろう」と同じような、「このメロディはどこにつながっていくのだろう」という好奇心がなぜ働かないのか。

 そう、たとえ冒頭の「ジャジャジャジャーン」を知っていても、その続きに好奇心が働く人はわずかだ。曲の全体にベートーベンが込めた深い創意にたどり着く人は、「クラシックマニア」と呼ばれてしまう。

 あるいは、「歓喜の歌」の第9交響曲。あのメロディは覚えているとして、では付点付きのリズムが力強い第1楽章冒頭はどうか。ティンパニのオクターブ跳躍が付点付き音符の3拍子で響く第2楽章は、あの天国的な平穏さに満ちた第3楽章は。あなたは覚えているだろうか。きちんと聴いているだろうか。
 ひょっとして、「あのメロディが出てくるまで退屈でたまらん」とか言って、演奏会に行くと寝てはいないか。そして第4楽章のバリトンが「おお友よ」と歌い出すところで、「やあ、そろそろだ」と起き出して、すでに知っているメロディを聴いてはいないか。

「だってつまらなそうだから」という人もいる。そんな人でもベートーベンが楽聖と呼ばれる存在であることは学校で習っていたりする。
 楽聖とまで呼ばれる男が全力を尽くして作った作品が面白いかつまらないか、試してみる。それだけの好奇心が働く人は、数少ない。

 知られていないから、皆知りたがらない。だからますます知られない――クラシック音楽はいつもこんなマイナスのスパイラルと戦っている。

 そして科学報道も。

 知らないものを知りたがらない人々に、新しい物を知らしめる方法は存在する。マスメディアでヘヴィ・ローテーションをかけて、無意識のうちにその情報にふれている状態を作り出す。つまり、知らないものをいつのまにか「知っていること」に割り込ませてしまうのである。

 音楽業界ではよく使われる手法だ。テレビドラマの主題歌タイアップというのもこの手法の一つである。ドラマを見ている人に、音楽を刷り込んでしまうわけである。

 しかし、科学報道で同じ手法は使えない。結局、Tさんも私も延々と匍匐前進を続けるしかないのだろう。

 「のだめ」でベートーベンの7番を初めて知った方は、ぜひともCDを買って7番の全曲を聴いてもらいたい。とても楽しい曲だから。あなたは、音楽を楽しむにあたっての、すばらしいチャンスを手に入れたのだ。

 その上で、できれば同じベートーベンの8番とか(冒頭、弦楽器が「あーくたびれたー」と演奏を始める。本当だよ!)、あるいは最終楽章でファゴットが超絶技巧を発揮する4番など聴いてみてもらえれば… ちょっとばかりうれしいね。

 ベートーベン7番だが、ここではベタにカラヤン・ベルリンフィルの1983年録音盤を推薦しておくことにする。クラシックファンはうるさ方が多くて、「カラヤンなんて流麗なだけで中身がない」という人も多いのだけれど、私はカラヤンの演奏をバカにしてはいけないと思う。
 流麗に演奏するのは実のところとっても難しいのだ。最初に聴く人には、彼のような演奏のほうがなじみやすいのではないだろうか。

 もう一枚、カラヤンと同時期に活躍したカール・ベームが壮年期に入れた録音を。この録音ではそうでもないのだけれど、晩年になるにつれてベームの演奏は、音楽の本質のみを取り出した、それこそ「音楽の骨格」としか言いようのないものになっていった。最後の来日時に演奏したチャイコフスキーの「悲壮」、私はNHKの放送でしか聴いていないけれど、あれはすごかった。本来ふくよかなはずのチャイコフスキーの音楽から、柔らかな表情が一切そぎ落とされ、ホネホネの厳しい、しかし音楽の本質だけが結晶したかのような響きだった。
 一説によると、最晩年になって体が動かなくなり、どんどん不明確になっていったベームの指揮棒に、オケが必死になって合わせていった結果そんな音楽になってしまったそうなのだが、本当にそうなのか、私は知らない。

 クラシック系の音楽は、知られていないが故に知られない、ということを実証した曲。ポーランドの作曲家ヘンリク・ミコワイ・グレツキの「交響曲3番・悲歌のシンフォニー」。1976年に作曲された。全3楽章で、ソプラノの独唱が付く。すべての楽章がゆっくりとしたテンポで、人生をおそう悲しみを歌う。第2楽章の歌詞は、ナチスの収容所の壁に残された犠牲者の言葉だ。巨大で、悲しく、最後に淡いなぐさめを感じさせる美しい曲である。
 この地味な曲は、傑作ではあるがそのままでは忘れ去れて終わりだったろう。しかしイギリスのとある放送局が番組のテーマ曲として、第2楽章をヘヴィローテーションしたところ、欧州を中心に人気が爆発し、1980年代半ばには世界的な大ヒットとなった。ウィキペディアにも一項目が立っているほどだ。
 そうだ、傑作はいつだって存在するし、聴かれるのを待っている。知っていることしか知りたがらない私たちの耳は、数多くの傑作を忘却の森の中に置き去りにしているのだろう。

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2008.01.16

はやぶさ2、ASIが正式検討を開始

 14日から今日までの日程で、沖縄で国際始原天体探査ワーキンググループ(IPEWG)という会合が開催されている。小惑星探査の世界的な連絡組織の立ち上げだ。JAXA/JSPECが、この分野で国際的な主導権を持つ国際協力をリードしていこうとしている現れである。

 取材に行きたかったが、どうしても行けなかった。それでも現地から情報はぼつぼつと入ってくる。

 イタリア宇宙機関(ASI)は、「はやぶさ2」打ち上げにベガロケットを使う検討を正式にはじめたことを公表したそうだ。

 さあ、面白くなってきた。

 見えてきたのは、「はやぶさ」が国際的にいかに高く評価されているかということだ。なぜ高く評価されているのかといえば、それまで誰もやったことがなかったこと、しかも大きな意味のあることを、独力で成し遂げたからだ。

 このことは、今後の日本の宇宙科学、それのみならず宇宙開発全体の指針になるのではないか。

  • 誰もやっていないことで
  • 本当に意味のあることを見抜き(はやぶさの場合は始原天体としての小惑星の探査。なかんずくサンプルリターン)
  • 持てる技術とリソースの範囲内で実現可能な計画にまとめあげ
  • それを独力で成し遂げること

 この観点からして、JAXAの次の中期計画はどう評価できるだろうか。「かぐや2」は? 準天頂衛星は? 防災衛星は? GXロケットは? HTVは?  H-IIBは?

「それができたら、日本と是非とも協力したい。ロケットぐらい提供したっていい」と外国に思わせるだけのミッションになっているだろうか。

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2008.01.15

つくばりんりんロードを走る

 昨年末に発作的に青春18切符を購入した。1万1500円で5枚綴り。1日2300円で、どこまでも普通列車に乗れる「地上の銀河鉄道切符」だ。「カムパネルラ、僕たちはどこまでも行けるよね。鈍行だけど」

 ところが18切符の期限があと一週間というのに5日分のチケットをまだ1日しか使っていないではないか!

 どこかに行こうとあれこれ調べているうちに、土浦から岩瀬まで、茨城県道501号桜川土浦自転車道線、愛称「つくばりんりんロード」という自転車専用道があるのを思い出した。かつての関東鉄道筑波線が廃線となり、跡が自転車専用道になっている。全長約40km、Frogで走るにはちょうど良い距離だ。

 子供の頃の記憶が蘇る。母方の祖父母は土浦に住んでいた。そして祖母の故郷は、筑波線沿線の雨引だった。筑波線には何回か乗っている。

 よし、Frogを輪行して行って来よう。というわけで13日日曜日に走ってきました。

Start 自転車道路の始点。

Map こんなコースです。筑波山を回り込み、雨引観音をかすめて岩瀬へ。

Road 走り出してから気が付いた。西高東低の冬型気圧配置ではないか。つまり風は西から東に吹く。西に向かって走るということは向かい風だ。しまった、岩瀬から走るべきだったと思うも後の祭り。強い向かい風の中、軽いギアでひたすら脚を回して進む。

 風景はもう北関東の冬そのもの。空はあくまで澄んで、寒くて風が強くて、道はまっすぐ続いている。道路が遠近法そのものでまっすぐ地平線に消えているという風景を、東京の近場で楽しめるのだ。

 季節の良い時期は、自転車で一杯になるという道も、誰も来ない。道を独り占めというのはなかなか気分がよい。脚はつらいが。

Tower 空に伸びる鉄塔のなんと魅惑的なことよ。鉄塔武蔵野線の世界だ。

Kazari どんと焼きの準備らしい。

Minseisinnpoh 沿線には加波山事件の加波山がある。なにやら自由民権運動のにおいのする看板を発見。民声新報で検索すると色々出てくるが、これはたぶん小地方紙じゃないかなと思う。

Platform 筑波線のホームが、自転車用の休憩所となって残っている。横を走ると自分が列車になったような気がする。気分は「どですかでん」の六ちゃんだ。頭の中で武満徹のテーマ音楽を鳴らして、「どですかでん、どですかでん」と声に出して走ってみる。すると、近所の子供が「わーい、バカー」とはやし立てて追っかけてくる…ということはない。

Rail 廃線になって20年経つのに、まだこうやって線路が残っているところもある。

Ruin いい感じの廃墟。

Amabiki 母方の祖母の故郷、雨引。祖母は、大地主の六人兄弟の末っ子として生まれ、何一つ不自由せずに育った人だった。子供の頃はこのあたりの野山を思うがままに駆け回っていたそうだ。
 生前、色々と聞いた田舎の地主末っ子のワイルドライフ。
「カエルを捕ってもって帰っとな、女中さんがカエルの皮をプリっと剥いて醤油で焼いてくれるんだ。あれはおいしかったな」とか。
「アオダイショウふんずかまえっと、しっぽもって振り回して頭を石にぶつけて殺すのさ」(これも食ったんだろうなあ)とか。
「虫下し飲んだら、山で遊んでたらお尻の穴から長いのが出てきちまってよ、虫ぶらさげたまんま泣きながら山を走って降りて、家で取ってもらった」とか。
 その他サンショウウオも捕ってきて焼いて食べたとか。

Amabikikannnon1 せっかくなので、雨引観音に詣でる。急な坂を自転車を引いて登る。

 大学に入った年の春、「おまえのために取ってきた学業成就のお札を雨引さんに返すから来い」といわれ、祖母と二人で雨引観音に詣でた。筑波線で土浦から確か一時間以上かかったはず。
 祖母はぜいぜいしながら「雨引さん」への坂を登っていた。そのあと、祖母の長兄が継いだ実家に寄ったが、その長兄との会話が、生粋の茨城弁。もう何を話しているのかさっぱりわからなかった。
「ああ、楽しかった。年に一回。また来年来るさ」と祖母はにこにこしていたが、直後に急逝。雨引観音詣では祖母との最後の思い出となった。

Amabikikannon2 感傷的な記憶が残る雨引観音だが、お札を買おうとすると、キティちゃんの刺繍の付いた恋愛成就のお守りがなどというものが売っていた。なにか間違っている。なんだかがっくりしてしまい、買わずに下山する。

Sunset 雨引観音から見る日没。この、北関東のなにもなさというのは決して嫌いではない。

Iwasest 日没少しすぎに水戸線の岩瀬駅に到着。きちんと計ってはいないが、走行距離は雨引観音への寄り道を含めて46kmぐらいか。
 東北本線に出て湘南新宿ライナーで帰るつもりだったが、なにやら人身事故があったということなので常磐線経由に変更。

Dentyu 途中、土浦駅で買った。我が心の菓子「吉原殿中」。水戸名物なのだが、土浦でも売っている。子供の頃、大好きでたまらなかったお菓子。

 本日現在で、青春18切符はあと2日分残っている。期限は今週末。さあどうしよう。


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2008.01.13

宣伝:1月18日金曜日、阿佐ヶ谷ロフトAに出演します

 前回、林紀幸さんと出演した場所です。今回は「かっこいい機械ナイトvol.1」と題して、出演者がこのメカがどう格好良いかをひたすら語り合うという、メカフェチ向けの企画…といっていいのかなあ。

 実はロフト・プロデューサーの斎藤さんが私の「コダワリ人のおもちゃ箱」を読んで、「こんな人たち呼んだら面白いでしょ、ね、ね」と言い出してひょうたんから駒が出てしまいました。

 今回はイラストレーターの寺田克也さんと初めての共演です。出る私としても楽しみです。また、ここでも時々紹介している驚異の蒸気機関車サークル羅須地人鉄道協会の相場事務局長が参加します。

 相場さんは、しゃべりもむちゃくちゃ面白い方なので、こちらも楽しみです。「何でも乗り」というあだ名を持っている人で、ハンドルが付いている乗り物なら何でも乗りこなすという特技の持ち主です。筋金入りの四駆の人だったりもします。

 八谷さんは、ここを読みに来る方ならば特に説明の必要もないですね。OpenSky Projectで「メーヴェのようなもの」を作っている方です。最近、飛行訓練用に本物の飛行機を買っちゃったらしいので、その話がでるかも。

 今村さんは、「コダワリ人のおもちゃ箱」の担当編集者です。実はImamuraの日記という軽妙な日記を書いている、はてなの住人でもあります。

 続くようでしたら、あんなメカこんなメカ、使っている人作っている人を呼んでくることになっています。どうぞおいで下さい。


「かっこいい機械ナイトvol.1」
ジェットエンジン、熱気球、蒸気機関車、etc
みんなでかっこいいと思う機械を愛で、語る会。

開場18:30/開演19:30
【出演】
松浦晋也(ノンフィクション作家/科学ジャーナリスト)
八谷和彦(メディアアーティスト)
今村勇輔(編集者/エクスナレッジ)
寺田克也(イラストレーター/漫画家)
相場二郎(羅須地人鉄道協会・事務局長)

1月18日金曜日
OPEN18:30/START19:30
¥1,200(飲食代別) <当日券のみ>

場所:阿佐ヶ谷ロフトA
:JR中央線阿佐谷駅パールセンター街徒歩2分
杉並区阿佐谷南1−36−16ーB1
地図
電話:03-5929-3445

 自分としても、編集者の今村さんとしても「面白い本を作った!」という実感があった本です。正直、売れ行きが今ひとつなので、2人で「面白いのになあ」とクビをひねっている次第。ともあれ、斎藤さんをびりびり刺激して、こんなイベントにつながったことを考えると、作って良かったなと思っています。

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2008.01.12

蛙の詳細

 かくして手に入れたBD-Frogである。現状の改造箇所は以下の通り。

  • 変速機:シマノ・カプレオ
  • ブレーキ:シマノ・カプレオ
  • タイヤ:シュワルベ・シティジェット
  • フロント・スプリング:サイクルハウスしぶやオリジナル・スーパーハード(ステンレス)
  • リアスプリング:同ハード(ステンレス)
  • グリップ:Ergon パフォーマンスグリップ
  • ライト:TOPEAK 「ホワイトライト」
Frogall
 全体はこんなもの。一見したところ、特にオリジナルと変わるところはない。

Frontsus Frogに限らずR&Mの自転車全般に言えることだが、サスペンションのスプリングをよりハードなものに交換しないとふわふわして長距離を走るのがつらい。サイクルハウスしぶやのスーパーハードスプリングはオリジナルの2倍のばね定数ということだが、Frogにはちょうど良いぐらい。海に近いところに住んでいるので、錆を警戒してステンレス製を選択した。

 バネだけではサスペンションにはならない。ダンパーも必要なのだが、それはフロントタイヤ支持部の回転部分がやや動きが渋く、その部分の摩擦がダンパーの役割を果たしているようだ。今のところサスペンションとしての機能は快調である。

Rearsus リアのスプリングはフロントと同じくしぶやオリジナルのハードスプリングのステンレス製。これはもっと硬いもののほうがいいようだが、リアのスーパーハードは販売されていない。こちらはもう少しダンパーが効いたほうがいいようだ。スプリングの中にブチルゴムを丸めて詰め込もうかと思っている。

 フロントとリアを合わせたサスペンションの感触は、まあまあだ。さすがにモールトンのシルキーライドとは比べるべくもないが、BD-1ストレートフレームモデルの、どことなくがさつな動きに比べると、こちらのほうがまだだいぶましである。

 ただし、私のBD-1は2001年モデルだ。2002年以降は大幅改良されたという話もあるので、あるいは現行のBD-1はずっと改善されているのかもしれない。

 どちらにせよ12インチのタイヤでどんどん走ろうと思えば、サスは不可欠。もしもサスなしにすると、スポークが折れるだろう。今後も躾けつつ、付き合っていくしかない。

Capreo 一番の特徴である、カプレオ8速の外装変速機。幅が足りないので9速全部を使うことができない。タイヤが12インチと小さいので、ディレイラーの地面からのクリアランスがけっこう厳しい。普通に走る分には問題ないが、ショップからは「路肩では気をつけた方が良い」と言われた。

 タイヤは、12インチでは唯一のスポーツ走行用であるシュワルベの「シティジェット」。ほとんどこのFrogぐらいしか使用しないタイヤなので、製造中止が心配だ。何セットか備蓄しておくべきか…

Offsetrear かなり無理矢理外装変速機を取り付けているので、リアタイヤは左にオフセットしてしまっている。このため、右にやや曲がる傾向があるが、乗って走っている分にはほどんと意識することはない。

 逆にこれだけオフセットしていても、すいすい走れるというのは新鮮な発見だった。人間はたいていの状況に適応してしまうものだということだろう。

Front クランク周りはノーマルのままだ。今後少しずついじっていくつもり。ギア比的にはフロントを60Tにするのがいいだろうと思っている。なるべく重量は増やさしたくない。逆にこの部分では減らしていきたい。軽量化のためには、シマノの最高級コンポのデュラエースに入れ替えるのが一番簡単だが、けっこうなお値段がする。

 SpeedDriveについても悩んでいるところだが、プラス1kgの重量増加となることを考えると付けない方が良いのかも知れない。財布にもやさしいし…

Handlebar ハンドルは、携行性を重視してバーハンドルのままにすることにした。その代わり、このエルゴノミクスグリップを付けてみた。なかなか具合が良い。シートと合わせて今後少しずつ調整していくつもり。

 もう少しハンドルは短いほうがいいのだが、このグリップを使う限り現状が限界だ。ショップでは「グリップを切りつめればいいんですけどね」と言われた。そこまでやるべきかどうか、検討中である。

Lightbrake ブレーキもカプレオに変更した。ブレーキの効きは良好。これはマストアイテムといえるかも知れない。シマノのコンポーネントが世界を席巻したおかげで、私達はあちこちのメーカーのコンポを選ぶという楽しみを失ってしまったが、シマノ製品が高品質であるというのもまた事実である。

 ライトはこれまた小型軽量を優先してTOPEAKの「ホワイトライト」を選択した。私の場合、機能を追い求めて重量増加を招き、気楽に持ち歩けなくなったら本末転倒である。

Brake 折りたたむ時はまずフロントのブレーキをはずし、前輪を取り外す必要がある。外装変速機を装着したことのデメリットである。ショップによると「新型のXTR(シマノのマウンテンバイク用最高級コンポーネント)のディレイラーだったら、前輪を外さなくとも畳めるかも」ということだが、現状本当にできるかどうかは不明。

 まあ、以前ランドナーで輪行していた時のことを考えれば、フロントタイヤを外すぐらい、なんということはない。

Fold1Fold2 畳む時の注意点。ディレイラーを持ち上げて、できた隙間にフロントを押し込む必要がある。

Fold3Fold4 こんな感じに畳むことができる。

 現状でだいたい10kgちょうど。今後は、ハンドル周り、シート、フロントのクランク周りを交換することで9kg前半まで軽量化できるだろうと踏んでいる。もちろん高価な部品を投入すれば、それだけ軽くできるはずだが、「気楽に使える道具」を目指すに当たっては自ずと限界があるだろう。  まずはシートを交換したいところ。オリジナルは自分のお尻にあわないらしく、すぐにお尻が痛くなってしまう。

 なによりも走るために購入した道具だ。せっせと持ち歩いて、あちこちを走ってみなくては面白くない。

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蛙の品定め

 私が赴いたのは、お花茶屋駅近くにあるサイクルハウスしぶやだった。ここは、Frogの改造を手がけており、シマノのカプレオによる外装変速機8段のモデルを販売している。試乗車を置いているというので、まずは乗ってみるか、ということだった。

 しぶやの試乗車は、カプレオだけではなく、フロントにSpeed Driveも組み込んであった。フロントに組み込む2段変速機である。「フロントは70T相当になっています」という話だった。

 この試乗でノックアウトされてしまった。

 良く走るのだ。

「こりゃ、走るフレームだ」と思った段階で、私はFrogを購入することを決めていた。

 サイクルハウスしぶやに発注する以上、カプレオ仕様だ。カプレオにすると前輪を外さないと折りたためなくなってしまうが、輪行用と思えば大したことではない。ギアの塊で重い内装変速機から、外装変速機にすることで軽量化も期待できる。

 調子に乗ってSpeedDriveも付けようかと思ったが、なにしろ車両価格と同じぐらい高価な部品なので断念。自分が必要最小限と考える装備変更に留めることにした。

 納期は約1ヶ月。というわけで年の瀬、輪行バッグを持って再度サイクルハウスしぶやに赴く。

 畳み方が変わるので、まずはそれを習う。外装変速機にしたことで、きちんとした手順で畳まないといけない、ややデリケートになってしまっている。

 そのまま店から走り出す。その日はお花茶屋から荒川に出て、東京駅まで走った。楽しい。なかなか楽しい自転車だ。これはしばらくの間、輪行と改造の両面で遊ぶことができそうではないか。

 というわけで、私は蛙の飼い主となった。どこをどう改造したかは、次回書くことにする。

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2008.01.10

蛙を選ぶ

 BD-Frogを選ぶに当たっての条件。

 もともと小径車を夢見るや、一気に自転車の試乗をするのあたりから色々と情報収集はしていたのであった。

 かくしてまとまった条件は以下の通り。

  • 輪行時に電車内で、そこそこ混んだ状態であっても他のお客さんのじゃまにならないこと
  • それなりの段数の変速機が付いているか後付可能で、長距離を気楽に走れること。
  • よく走る筋のいいフレームであること
  • なるべく軽いこと
  • AZ-1に搭載できる程度に小さいこと

 まず、BD-1ブロンプトンのような、スタンダードな折り畳み自転車ははずすことにした。これらはそもそもAZ-1に入らない。
 また、輪行となると意外に邪魔になる。少なくともこれらの自転車を持って通勤通学時間帯の電車に乗るのは避けたいところ。
 A-Bikeはかなり混雑した電車内にも持ち込める。そこまではいかないにしても、小さくまとまることは、それだけ利便性を向上させる。
 極論するならば多少重くても構わない。小さくまとまることが優先だ。

 村山コーポレーションのMC-1Aや、バイク技術研究所YS-11は、折り畳み後のサイズが微妙なので落ちる。YS-11は多段変速機を組み込めるかどうかも微妙だ。

 Smartcogantは、かなり理想に近い。しかし、折り畳み方法が輪行に特化しており、AZ-1には入らない。

 残った候補は以下の通りである(画像は楽天へのリンクになっている)。


 Panasonicのトレンクル6500:6.5kgの軽量自転車だ。多段化も和田サイクルなどでノウハウが蓄積されている。問題は多段化すると25万円程度と、財布直撃の値段になること。さらに、6.5kgというかなり軽量化のため、タイヤやタイヤチューブなどの耐久性が犠牲になっている。気楽に乗れる自転車に仕立てるにはさらなる投資を必要とする。


 ブリジストンのトランジットスーパーライト:重量は7.4kgだが、トレンクルよりもずっと安い。多段化の実績もあり。欠点は見かけが地味なことか。


 BD-Frog:重量は10.5kgと一番重い。デザインは一番斬新。ノーマルで3段変速だが、シマノのカプレオを組み込むと8段変速になる(リアの幅がきついので9段フルにはつかえない)。

 これらのうち、最初に落ちたのが、トランジットスーパーライトだった。理由は簡単。「見かけが好みではない」。機能とコストパフォーマンスという点では悪くないのだが、自転車は嗜好品だ。なによりも自分が持っていてうれしくなくてはいけない。走るだけではなく、眺めてニヤリ、というところがなくてはね。

 というわけで、しばらくの間、トレンクルとBD-Frogの間で揺れていった。

 Frogについてはイラストレーターの米田裕さんが開設しているFrogBlogがずいぶんと参考になった。

 米田さんのFrogは、購入1年後同2年後同3年後と大幅な改造を受けている。つまりそれだけ改造の楽しみがあるわけだ。

 だが、同時にこれらを見ているうちに一つの傾向に気が付いた。米田さんの改造は機能追求型で結果として重量増加を招いている。

 とすると、機能追求をほどほどにして、軽量化に注意していじっていけば、米田Frogとは違うFrogを仕立てることができるのではないだろうか。

 いくつかのホームページで、カプレオ装着のFrogについて「良く走る」と書いていることも気になった。ひょっとしてFrogのフレームは「よく走る」のではないだろうか。
 あれこれ自転車に乗っていると分かるが、自転車のフレームには明らかに「よく走るフレーム」と「そうではないフレーム」が存在する。よく走るフレームは、自分の踏み込んだ力がそのまま前進する力に変換されるという印象がある。折り畳み自転車で、良く走るフレームはなかなか難しいらしい。私も持っているBD-1(旧モデルのストレートフレーム)は、まあまあではあるが決して「良く走るフレーム」ではない。試乗した印象で語ってしまえば、ブロンプトンストライダも、どんどん前に出る「走るフレーム」ではない。

 Frogが、走るフレームを持っているなら、これは入手する価値があるのではないだろうか。

 Frogは、製品としては色々と中途半端である。

 R&Mは日本市場に向けて「BD-1よりコンパクト」というセールスポイントで売ろうとしたらしい。

 ところが、10.5kgという製品重量でも分かるように、Frogのフレームはやたらと頑丈だ。加えてシートポストは2段になっていて身長2m近くあっても乗ることができる。つまり設計は、体の大きなドイツ人が基準となっている。日本人に売りたければ、フレームをもっと華奢にしても軽量化を優先するべきだった。
 しかも、欧州では7段変速モデルを販売しているにもかかわらず、日本では3段変速モデルしか販売しなかった。
 10万円を超える製品だ。日本でのユーザーがマニア層になることは自明である。と、なれば7段変速を売るのが普通だろうに。

 これに加えて2007年モデル限りで製造中止だ。こういう「素材としては良いのだけども、製品トータルでみるとなんだかなあ」というものを、自分なりにその潜在能力を開花させるのは面白そうではないか。

 というわけで、昨年11月のある日、私は日暮里経由で京成電車に乗ったのであった。日暮里駅は改装中で、一部で有名になった修悦体の乗り換え案内が出ていた。

Syuetsu


 これだけで自転車好きなら私がどこに向かったかは分かるであろう。というわけで続くのです。

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