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2008.03.31

日本語で読める新型インフルエンザ関連の情報ページ

 新型インフルエンザ、パンデミック関連の情報が集まっているページを紹介する。

鳥及び新型インフルエンザ直近情報
 日本語で情報を集めようとすると、情報の速さ、量、正確さの3点で、このページが一番である。小樽市保健所長の外岡立人氏が個人のボランティアベースで更新を続けている。防疫のプロだけあって、情報の分析も的確。

Berita Flu Burung (インドネシア 鳥インフルエンザ情報)
 インドネシア・ジャカルタ在住の相木渓成氏が、インドネシア現地のメディアに登場する高病原性鳥インフルエンザ関連のニュースを、インドネシア語から抄訳しているページ。患者が多数発生しているインドネシアの現状を、もっとも素早く知ることができる。

 ほか、いくつか個人ベースのまとめサイト、まとめblogが存在する。2ちゃんねるにの関連スレッドが存在する。

個人・家庭の新型インフルエンザ対策

 2ちゃんねるについては批判も多いが、私は人々の知恵や知識を撚り合わせて集合知を形成する有力な場であると考えている。

鳥インフルエンザに備えて

 今のところ、公的機関の情報提供よりも個人のボランティアベースによる情報収集活動のほうが、ずっと質が高い。私は、このことが、日本の現状を象徴していると考える。

国立感染症研究所・感染症情報センターの高病原性鳥インフルエンザの情報ページ
 基本的に世界保険機構(WHO)の鳥インフルエンザ情報ページの翻訳である。

国立感染症研究所・感染症情報センター「インフルエンザパンデミック」
 パンデミックに関するQ&Aや、個人で用意しておく装備などのまとめが掲載されている。

厚生労働省、新型インフルエンザ対策報告書
 今現在の、日本政府の取り組みを象徴している報告書。とにかく一読することをお薦めする。現在の高病原性鳥インフルエンザは強毒型であるにも関わらず、弱毒型だったスペイン・インフルエンザのパンデミックをモデルケースとして対策を立てている。
 また、基本的に対策を国ベースではなく、地方自治体ベースで行うものとしており、国は指針を出すのみという形式。つまり具体的に何をどうするかについて厚労省は責任を持たず、地方自治体に丸投げとなっている。

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2008.03.28

国立感染研・田代部長へのインタビュー

 日経BP社のホームページSAFTY JAPANで、新型インフルエンザに関するインタビューを担当した。

新型インフルエンザの“リアル”を語ろう
田代眞人氏
国立感染症研究所 ウイルス第三部部長
世界保健機構(WHO) インフルエンザ協力センター長

 このところ新型インフルエンザ関連の書評仕事がきっかけで、高病原性鳥インフルエンザ、そして鳥インフルエンザから出現すると予測される強毒型の新型インフルエンザの取材をしている。取材をするほどに、「これはひょっとすると、世界をひっくり返すほどの大事になるのではないか」という印象が強くなってきている。

 なにはともあれ、上のリンク先を読んでみてもらいたい。

 新型インフルエンザの問題の難しさは、「高病原性の新型ウイルスの出現が確率的」というところにあると思う。出るかも知れない。出ないかも知れない。何時出るかもはっきりとは分からない。明日かも知れないし、10年後かも知れない。
 準備をせずに出たら惨事だし、準備をして結局出なかったら、騒いだ者が後ろ指指されることになる。出ても大したことはなかったという可能性もある。

 しかし田代部長の言うように、強毒型の新型ウイルス出現の確率はじわじわと高まっている。準備なしにパンデミックが起きれば、とんでもない悲惨なことになるだろう。

 原理的には国が主導してのプレパンデミック・ワクチンの集団接種と、パンデミック発生後に急速にワクチンを製造・接種する体制の確立が最高の対策ということになるだろう。

 しかしわたしたち一人一人が、国をあてにして手をこまねいていてはいけないだろう。できることをできる範囲でしていくことはとても大切だ。

 「知識のワクチン」という言葉がある。ひとりひとりが新型インフルエンザ・ウイルスについて正しい知識を持ち、正しく恐れず、正しく恐れ、準備を進めれば、たとえパンデミックが起きても被害を軽減することができる。
 その準備は、多分に災害全般に汎用のものとなる。だからパンデミックがたとえ来なくとも、その他の災害に対する備えとして機能することになるだろう。決して無駄にはならない。

 今後、新型インフルエンザについて書くことも増えるかと思うので、新たに「新型インフルエンザ(H5N1)」というカテゴリーを設けることにした。取材の傍ら知り得たこと、自分で考えたこと、個人的に試したこと、ニュース記事を書くだけの情報が集められなかったが気になることなどを。当blogで書いていくことにする。

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2008.03.27

MRJへの不安

 国際宇宙ステーション日本モジュール「きぼう」を巡って、野尻抱介さんにたまには元気の出る記事も書いてやりましょうよ>松浦さん。と書かれてしまった。

 いや、まったくその通り。私だって辛辣な話ばっかり書きたい訳じゃない。現場の人たちが頑張っていることは分かっている。「きぼう」関係者の皆さん、ごくろうさまでした。

 が、「きぼう」開発と運用の現場が、なんとか目的を達成しようとして努力しているということと、国際宇宙ステーション計画が妙なところにはまり込んでにっちもさっちもいかなくなっているということは別問題だ。

 どんなに耳に痛いことでも、事実なら書くしかないし、指摘すべきことがあれば指摘するしかない。私のような立場の者が、よいしょに走れば、事態はもっと悪くなるだろう。

 と、大上段に振りかぶってから、またも「暗くて後ろ向きの話」を。

 この半月ぐらい、「MRJ、三菱リージョナルジェット」の検索で当ページを訪れる人が急増している。去年の秋に書いたMRJ、大丈夫か?続・MRJ、大丈夫か?が引っかかるらしい。

 三菱重工業が開発を目指す国産旅客機「MRJ」を巡る情勢は急速に動いている。本日、全日空が25機を発注してローンチカスタマーになると発表した。ベトナムや中東への売り込みを行っているというニュースも流れている。

Mrj この写真は、地下鉄浅草線の車内広告。携帯電話で撮影したので画質は悪い。三菱重工業の航空部門が大々的に求人を出している。人まで集めるとなると、これは開発開始確定だろう。

 YS-11以来の国産旅客機の開発だ。もちろん喜ばしい。

 しかし、私にはどうにも引っかかることがある。それは「三菱の技術者は本当に旅客機を設計できるのか」ということだ。

 「何を失礼なことを言っているのか」と怒らずに、以下読み進めて欲しい。三菱の航空技術者の質を疑っているわけではない。経験値が足りているかどうかを気にしているのである。

閑話休題——

 オリンポスというとても小さな航空機メーカーがある。重工業系とは別の独立系航空機メーカーとしては、おそらくは日本で唯一の会社だ。八谷和彦さんのOpenSkyプロジェクト、通称「メーヴェのようなもの」の、機体を設計・製造したところである。

 宇宙作家クラブでは昨年、八谷さんの紹介でオリンポスの工場を見学し、さらに後日の例会で、オリンポス社長の四戸哲さんに講演してもらった。四戸さんは飛行機が作りたい一心で大学を出てすぐに自分で飛行機を作る会社を興してしまった(しかもこの日本で!!)という、筋金入りの方だ。

 四戸さんの話は、とても面白かった。「メーヴェのようなもの」の設計方針と具体的な機体の構造とか、同じ先尾翼機でもビーチ・スターシップはなぜ失敗し、ビアッジオ・アヴァンティは成功したのかとか、YS-11の設計の詳細部分「ここがこうなっているのは、こういう理由からで、そうなるにあたってはこの部分にこんな問題があったんです」とか——自分で手を動かしている人にしかわからないであろう、飛行機という道具の機微を色々と聞かせて貰った。

 四戸さんの話を自分なりにまとめてみるに、どうも、飛行機の設計に当たってには、自分で飛行機に親しみ、経験を積み重ねていかないと、どうしようもない部分があるようなのだ。自分で設計、開発することでしか得られない、航空機開発者にとって必須の“なにか”があるようなのだ。

 それが何に由来するものかは分からない。とにかく経験とか勘とかが、設計に非常に大きな影響を与えるらしい。


 ここでまた別の話、今度は三菱重工業のOBから聞いた話である。

 三菱重工がボンバルディアのパートナーとしてグローバル・エクスプレスの開発に参加した頃、というから多分1991年か92年か、そんな時期の話だ。

 三菱重工は、グローバル・エクスプレスにことのほか力を入れて、ボンバルディアに独自の設計案を提示しようとしたのだそうだ。三菱社内で検討して機体のアウトラインを作成し、YS-11の設計に参加したOBを招いて社内の審査会を開いた。

 やってきたOBは図面を一目見て言った。「この設計じゃダメだ。悪性の失速を起こす」

 失速というのは飛行機が機首を上げて迎え角を大きくしていくと、あるところで翼の上面の気流がはがれて、翼が浮く力——揚力——を発生しなくなる現象のことだ。詳細は省くが、失速には適切な機体コントロールで揚力を回復できるものもあれば、容易には機体のコントロールを取り戻せないたちの悪いものもある。

 この時の三菱の設計は、たちの悪い失速を起こしやすい——OBは一目で見抜いたのだった。

 ここで問題は、YS-11の設計に参加していたOBが一目で見抜けた問題を、なぜ三菱重工の現役技術者達が見抜けなかったのか、ということだ。同じ三菱に採用され、働いていた、あるいは働いている人たちだ、資質にそんな差があるはずがない。

 となれば、その理由は実際に飛ぶ飛行機を設計した経験の有無ではないかではないかと思われるのである。


 そういった航空機設計の機微の部分、すなわち設計者が持たねばならない感覚は、スポーツや楽器演奏における身体機能のように、日々の鍛錬を続けないと簡単に退化するのではないかという気がする。

 YS-11は、1962年8月30日に初飛行している。敗戦後17年という時期だから、かつて軍用機を設計、製造していた人材が沢山いた。それでもYS-11は空力特性が劣悪で、特に横安定の不足はどうしようもなかった。このため初飛行後、垂直尾翼の面積を増やし、さらに主翼上半角を増すなどの、機体設計の根幹に関わる部分の大改造を受けねばならなかった。

 航空機設計の経験者が集まってこの状態ということは、17年もの空白があれば、設計の機微の感覚は失われるということを意味しているのではないだろうか。ましてMRJは、2012年就航予定ということは、1964年就航のYS-11から48年もの空白があるのだ。

 もちろんその間、三菱重工としてはMU-2MU-300も開発したし、F-15のようなアメリカの機体の生産、さらにはF-2のような自衛隊向けの機体の開発を行っている。しかし、旅客機の設計となると、それらの経験が通じる部分と通じない部分とがあるだろう。
 果たしてボンバルディアやボーイングの旅客機で開発パートナーとして積んだ経験は、それら軍用機開発の経験に欠けている部分をどこまでおぎなえるのだろうか。


 経験不足を確実におぎなう方法は存在する。まず実験機を開発して経験を積み、しかる後に本番の機体を開発するのである。

 ホンダは航空機産業への参入にあたって、この手法を採用した。1986年から航空機事業への参入を目指した研究を開始。この前後に優秀な航空工学科の学生をかなり採用したそうだ。アメリカで実験機「MH02」を開発し、1993年に初飛行。



Mh02

MH02(ホンダミュージアムにて)

 この機体は現在、ツインリンクもてぎのホンダミュージアムに展示されている。炭素系複合材料を大胆に使用した機体だ。

 この経験の上に、同社はホンダジェットを開発し、ビジネスジェット市場への参入を果たしたわけだ。20年越しの息の長い開発プロジェクトだった。

 同じことを、ボーイングも最初のジェット旅客機「707」の開発で行っている。まず、実験機の「367ダッシュ80」を開発し、その成果に基づいて707を開発した。
 この前紹介したジョー・サッターの「747 ジャンボをつくった男」で、サッターはダッシュ80の開発がボーイングにとって大きな賭けであり、ボーイングはその賭けに勝ったと述べている。
 賭けというのは、開発に少なからぬ自己資金が必要であることを意味する。賭けに勝ったというのは、ダッシュ80を開発したことで得られた知見やノウハウが、707やその後の旅客機開発でライバルに対する決定的なアドバンテージとなるほどに役立ったということだ。

 三菱重工も1990年代に、若手の技術者を多数アメリカに派遣して実験機を開発し、実際に飛ばすところまでやっていれば、私は安心してMRJを見ていることができたろう。

 四戸さんによれば、実験機として最適なサイズは実機の75%だそうだから、全長32.8mのMRJの場合は25mほどの機体ということになる。決して小さくはない。
 その開発費は、三菱重工の経営にかなり重くのしかかることになったろう。しかし、得られる無形の財産はそれ以上のものになったのではないだろうか。

 実際問題として、1990年代の三菱重工の経営は、そんな贅沢を許すものではなかった。とはいえあの頃、本気で旅客機市場に参入するつもりがあったなら、通産省相手に補助金を要求する以外にもっと色々とできることがあったろうにと思うのである。

 長々と書いてきたが、私はMRJが失敗すればいいなどとは決して思っていない。おそらくMRJが失敗すれば、日本の航空機産業は半永久的に旅客機参入の機会を失ってしまうだろう。その意味では、MRJは失敗を許されないプロジェクトとなっている。

 ただただ、心配なのだ。営業面も技術面も。

 旅客機産業は、コストを積み上げていけば自動的に5%程度の利益が上がる官需とは全く異なる、日々の経営判断が賭けの連続のような水物商売だ。そこに官需主体でやってきた三菱重工が参入しようというのだから、成功に向けてくぐらねばならない荒波は半端ではない。

 三菱重工は荒海に乗り出すつもりらしい。その意気や良し。すべからく企業というものは、そのように進取の気性を発揮すべきであろう。

 しかし事前にリスクを軽減できる方策があるなら、すべて打っておくぐらいの慎重さが必要だと思うのだけれど、どうもそうはなっていないところが非常に不安なのである。

 MRJが成功するなら、私は空港に行って土下座したっていいと思っている。私の土下座にいかほどの意味も価値もないことを知ってはいるけれども。

 新たな開発が始まる時には、過去の開発を振り返っておくことが、同じ失敗を繰り返さないためにも必要だ。YS-11については前間孝則氏が、いくつも著書を出している。とりあえず概要だけでも押さえるというのなら、この新書を読むといいだろう。YS-11を結局失敗に終わらせてしまった組織の問題まで踏み込んでいる。

 本格的な開発ストーリーとしてはこの上下二巻がお薦めだ。YS-11を作った人たちだけではなく、販売担当者や整備担当にまで光をあてている。ただし、YS-11開発の影の部分にまでは踏み込んでいない。

 こちらはYS-11開発の闇の部分に光を当てた本だ。初飛行当時、東京新聞記者としてYS-11関連の報道に携わった著者が、特殊法人という日本特有の無責任を生むシステムを分析し、それがどのようにしてYS-11の失敗につながっていったかを具体的に検証した本だ。

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2008.03.23

BD-Frog:ステムを交換する

Stem01

 BD-Frogの乗車姿勢に不満があった。もう少しハンドルを低くして前傾ポジションをとりたかったのだ。ハンドルの基部をステムという。BD-Frogのステムは二重になっていて伸縮可能なのだが、一番短くしてもまだ高い。

Stem02 以前、BD-1をリカンベント化した時に、ステムも交換したことを思い出した。リカンベントは後ろにもたれる乗車姿勢なので、ハンドル位置を後ろに持ってくる必要があり、純正オプションのアジャスタブル・ステムと交換したのである。

 そういえば、元からBD-1についていたステムが余っているはずだ。

 保管していたステムを取り出して、Frogのステムと取り付け部の寸法や形状を比較してみたところ、まったく同じだ。長さもよさそう。交換するとほぼこぶし一つ分ぐらいハンドルを下げることができるだろう。

 ここまでハンドルの位置を下げても、乗車ポジションに支障が出ないかどうか。やってみなければ分からない。ダメだったら元に戻せばいいだけだ。眠っている部品を活かすだけだから、追加投資も必要ない。
 これはやってみる価値があるだろう。

 というわけで、ステムを交換してみた。

 ステムは、折り畳み部分ヒンジを2本のピンで固定している。ピンは割ピンで抜けないようになっている。まず、先の細い電工ペンチを使って割ピンを抜く。するとピンはあっさり抜ける。割ピンは再使用不可能だから、ホームセンターで寸法の合う割ピンを買ってくる。

Stem04 さあ取り付けだと思ったら、ピンがうまく入らない。

 どうやら設計変更があったようで、ピンが太くなっている。ノギスで寸法を測ったところ、BD-1のステムの穴は直径6mm、それに対してFrogのステムを固定していたピンの径は6.2mmあった。仕方ないので、もう一度ホームセンターに行って、6.2mmと6.3mmのドリル刃を買ってきた。こんな径のドリル刃を次に使う機会があるかどうか分からないが、この程度の投資は仕方がないだろう。

 もともと6mmの穴が空いているところを0.1〜0.2mm広げるだけだから電動ドリルもボール盤も不要。ハンドドリルで十分だ。6.2mmの穴ではまだピンが入らないので再度6.3mmのドリル刃でさらに直径を広げた。今度はOK。ピンはぴったり入った。

Stem03 Stem05

 二重のステムが一体になるので、若干の軽量化が期待できる。料理用の計量スケールで重量を測ってみる。新しいステムは285.5g。一方これまで付いていたステムは474g。差し引き188.5gの軽量化だ。

Stem06 きちんと高さを合わせて比較してみる。かなりハンドル位置を下げることができた。これだけ下げることができれば大きく乗車姿勢を変えることができるだろう。




Stem07


 全体を見る。ハンドル位置が下がったことで、ちょっと精悍な印象になっただろうか。

 ステム交換後50kmばかり走ってみた。これまでトップから2段目のギアを常用していたが、足に力が入るようになり、トップがコンスタントに使えるようになった。姿勢が低くなったので空気抵抗も若干減っているのだろう。こうなると、フロントの歯数を増やすことを前倒しして真剣に考えないといけない。

 スピードが出るようになったFrogは、かなり印象が変わった。これはフラットバーのシクロクロスよりも良く走るといってもいいかも知れない。

 ただし一つ問題発生。サドルは割とクッションの厚いものが付いているので、前傾姿勢で足を回すと、腿に引っかかるのだ。そのうちにサドルも、より細いロード用に交換しなくてならない。

 軽量化もできたし、ステム交換は大成功だ。ただしこの方法は、背の高い人には使えないだろう。

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2008.03.22

書籍紹介:小林泰三「天体の回転について」「モザイク事件帳」

 書評の仕事をやっていてうれしいのは、どんどん読むべき本が送られてくることだ。一方でつらいのは、読みたい本を読む前に書評候補の本を読まねばならないこと、その結果読みたい本を読む時間をとれなくなってしまうことだ。

 色々と本を贈呈されることもあるのだけれど、どうしても書評仕事が優先してしまい、なかなか読む時間を作れないということが多い。

 申し訳ないので、今後本を贈呈された場合、読んでなくてもどんどんここで紹介していくことにした。まずは、最近続けて出版された小林泰三さんの本を2冊紹介する。

 「あの小林泰三が」「こんな萌え系表紙で」「地動説を主張したコペルニクスの著作と同じ題名の本を出した」——これだけで著者の性格の悪さは分かろうというもの。「僕って抒情派ですから、こういうものを書いちゃうんですよね」といってぐふふと笑う顔が目に浮かぶ。内容は「海を見る人」と同じ論理性を重視したハードSFのようだ。ああ、早く読みたい。

 などと読まずに言っていたら、きっと肩すかしを食わされるのだろうな。

 小林さんについては冬樹蛉さんが、小林泰三は、その明晰な論理性とクールなルックスに反して、根が“いちびり”なのだと、見事な分析を行っている。私からこれに付け加えることはない。いつぞやの牛祭り(分からん人には分からんでしょうが、そういうことがあったのです)における見事なマタドールっぷりは、彼の頭の良さと脱倫理性(反倫理ではないところに注意)、そしていちびりを余すところなく示していたと思う。

 そういえば、冬樹さんが作ったデビルマンの替え歌で「小林君」というのもあったな。「オバケのQ太郎」(最初のアニメ化の時の主題歌)の替え歌もあって、確かこんなんだった(作者は田中哲弥さんだったか)。



ぐ・ふ・ふー

こばやーし君

ぼーくは小林泰三

あたまーのてっぺんに

手が三本、手が三本



 いやいや、こんなことばかり書いてはいけない。ハードSF愛好家としては、同年代で野尻抱介林譲治小林泰三と3人の作家が活躍していることは、とてもうれしく、ありがたいことだと思っている。

 基本的に小林さんはハードSFの人だと思うのだけれど、その強固な論理性は当然のごとくミステリーにも発揮される。こちらはミステリー短編集。アマゾンの書評を読むと、マッドサイエンティストに記憶障害の探偵、超天才殺人者といった面子が探偵役を務めるらしい。「密室・殺人」では、空前絶後のとんでもない探偵を登場させた彼のことだから、この本でも色々とひねりの効いたことをやっているのだろう。


 やはり、読んでいない本を紹介するのは難しい。はやいところ仕事を片づけて、小林さんの本を読まないと。

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2008.03.21

美しい画面表示をするWindows版Safari

Safari

 アップルからSafariというWebブラウザーが出ている。これまでMacOSX用だけだったが、3月18日に初のWindows用Safariのバージョン3.1が公開された。もちろん日本語対応版だ。

アップル Safari:このページからダウンロードできる。

 私はMac/Win共にFirefoxを使っているが、MacOSXではSafariも併用している。Windows版と同時に出たMacOSX版バージョン3.1を使ってみたのだが、これが滅法速い。

 これは…と思い、WIndows版をレッツノートにインストールしてみた。

 おお、これはいい。非常に高速だし、文字がきれいに表示される。動作も安定しているようだ。

 とりあえず画面比較。冒頭に掲載した画像がSafari。




Firefox


 これがFirefox。




Ie


 で、こちらがInternet Explorer6。画面の見やすさという点では、Safariが圧倒的に良い。動作速度は、Safari>Firefox>>IEという印象だ。

 アップルが独自のWebブラウザーを開発すると聞いた時には、ずいぶんと驚いたものだ。しかもFirefoxに合流せず、KHTMLという別個のレンダリングエンジンを採用すると聞いた時には、「なんでまたそんなことを」と感じた。いくら自前のブラウザーが欲しいといっても、プログラミングにかかる労力は半端ではないだろう。しかも、互換性で問題が出てくる可能性が高いのではないか。
 どうせなら一番ポピュラーなFirefoxのオープンソースに合流したほうが合理的ではないか(3/22記:この書き方は誤解を招くかもしれない。KHTMLはUNIX上にGUIを実装するオープンソースプロジェクト「KDE」の一部として動いているオープンソースプロジェクトだ。アップルもレンダリングエンジンは、オープンソースコミュニティから採用したわけである)。

 実際、MacOSX上の初期のSafariは、私にはいまひとつ使いにくかった。どこか思い通りに動いてくれなかったし、表示がおかしくなるページもあった。

 しかし「ソフトウエアはバージョン3になると使い物になる」という経験則通り、Safari3はぐっと使えるソフトとなっていた。で、満を持して3.1でWindows版が登場したというわけだ。

 Windows版Safariの画面を見ていると、なるほどアップルが独自にブラウザーを開発した意味が理解できる。こういう美しく読みやすい画面表示へのこだわりは、確かに自前のブラウザーでなければ実現できないだろう。

 当面、レッツノートでもFirefoxとSafariを併用することにする。私のレッツノートは画面が小さいので、読みやすい画面表示は非常にありがたい。

 こうなるとほとんど出番のないIE6は7にアップデートせずに、デリートしてしまいたいと思うのだが、困ったことにIEでないと利用できないサービスがまだ存在する。
 私の場合はWindows updateと、Gyaoだ。Windows updateはともかく、Gyaoはブラウザー非依存にしてもらいたいものだが、マイクロソフトの著作権管理技術はIEが前提となっているらしい。こういうことをやるから、MSはM$などといわれるのだ。

 ブラウザーをそのままではなく、Sleipnirのようなレンダリングエンジンを借用するタブブラウザーを使っている人も多いだろう。技術的に可能かどうかは分からないが、そのうちにSleipnirでもSafariのレンダリングエンジンを利用できればいいなと思う。

 とりあえず、IEとFirefox以外に特色ある選択肢が一つ増えたのは良いことだ。

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2008.03.20

mixiから新規約案出る

 一度書いてしまったのでフォローをしておく。mixiの規約改正問題だ。

 3月19日付けで、新規約案が出た。肝心の18条は以下の通りとなっている。

旧18条

  1. 本サービスを利用してユーザーが日記等の情報を投稿する場合には、ユーザーは弊社に対して、当該日記等の情報を日本の国内外において無償かつ非独占的に使用する権利(複製、上映、公衆送信、展示、頒布、翻訳、改変等を行うこと)を許諾するものとします。
  2. ユーザーは、弊社に対して著作者人格権を行使しないものとします。

新18条

  1. 本サービスを利用して投稿された日記等の情報の権利(著作権および著作者人格権等の周辺権利)は、創作したユーザーに帰属します。
  2. 弊社は、ユーザーが投稿する日記等の情報を、本サービスの円滑な提供、弊社システムの構築、改良、メンテナンスに必要な範囲内で、使用することができるものとします。
  3. 弊社が前項に定める形で日記等の情報を使用するにあたっては、情報の一部又は氏名表示を省略することができるものとします。
  4. 弊社が第2項に定める形で日記等の情報を使用するにあたっては、ユーザーが設定している情報の公開の範囲を超える形ではこれを使用しません。

 私としては、まあいいかと思える内容だ。mixi内部のこの問題関連のコミュニティでは、活発な議論が続いているが、あまりmixiを追いつめて、この便利なサービスがつぶれてしまっても面白くない。

 今回のことは運営側とユーザーとの間の信頼関係で成り立っているサービスにおいて、信頼を壊すようなことをすると何が起こるか、というモデルケースとなったように思える。

 mixiそのものがコミュニケーションサービスなので、内部にこの問題を考えるコミュニティができて、様々な議論が行われ、問題意識を持つユーザーの間ですみやかに共通認識が形成されていった。その速度に、運営側が振りまわされたという印象である。おそらく運営側が突っ張り続ければ、ユーザーがどんどん退会していく事態となったろう。なにしろ関連コミュでは、mixiが態度を変えなかった場合に備えて、どこに引っ越すかという情報まで交換されていたから。

 しかし、ネット時代における信頼とはいったいどんなものなのだろうな。GoogleのDon't be evil.というモットーも信頼を確保するためなのだろうが、その割にGoogleはAdSenseで勝手なことをやっているようだし、そもそも検索の分野ではGoogle八分なんて言葉もできている。

 それでも業界の巨人として君臨し続けるGoogleとmixiの違いはどこにあるのだろう。

 ともあれ、私の今後の対応だ。現在、mixiのプレミアム会員として月に315円支払っているが、これを続けるべきかどうか。

 自分の書いた日記をバックアップし、それからゆっくり考えよう。

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2008.03.19

いずれ星の世界へ

  1. 高名だが年配の科学者が可能であると言った場合、その主張はほぼ間違いない。また不可能であると言った場合には、その主張はまず間違っている。
  2. 可能性の限界を測る唯一の方法は、不可能であるとされることまでやってみることである。
  3. 充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。

      ——クラークの3法則——

 アーサー・C・クラークの訃報を聞く。享年90歳。小松左京と並んで自分に非常に大きな影響を与えた作家。

 いつのころからか、この人は死なないのではないかと思いこんでいた。そのうちしっぽが生えて2つに裂けて、オーバーロードと化すんじゃないかと。

 確か、2020年だったか40年だったかに、自分が月面であれこれしているというドキュメンタリーも書いていたはず。


 クラークとの出会いは小学5年生の夏休み。母方の祖父母の家に叔父が残していた銀背のハヤカワSFシリーズの「SFマガジンベストNo.1」に収録されていた。

 「太陽系最後の日」。クラークが作家デビューを飾った短編だ。

 太陽が膨張して最後の日を迎えた地球を探検する異星人達。地球人を捜すがどこにもいない。地球人はどこだ、灼熱の太陽から逃れて地下に潜ってしまったのか。
 そして地球人を捜し回る彼らが見た驚愕のラスト。

 処女作には作家のすべてが現れるというが、「太陽系最後の日」にも後のクラークを特徴付けるすべてがはいっている。正確な物理学的描写、壮大なヴィジョン、切れの良いアイデア、宇宙へのあこがれ、そして底抜けの楽天主義。

 叔父の残した「SFマガジン」バックナンバーで「木星第五衛星」を読んだのも同じ夏だったはずだ(今調べたら1964年10月号だった。東京オリンピックの頃の号だ)。こちらも私を深く魅了したが、そこで描かれた軌道運動を理解したのは大分後のことだった。

 本格的にクラークの作品を読み始めたのは、中学に入ってからだ。創元推理文庫の「地球幼年期の終わり」は何度読み返したかわからない。SFマガジンで「宇宙のランデブー」の連載が始まったのは中学2年の時だ。市立図書館に入っていたSFマガジンで毎回興奮しつつ読んだ。そこからはもうなんでもありだ。大学に入ってからはクラークの本とあればなんでも買って読んだ。

 人によって、薦める作品は違うだろう。「地球幼年期の終わり」もいいし、「都市と星」も「渇きの砂」も、「海底牧場」も「宇宙島に行く少年」もいい。

 でも私は彼が1970年代に発表した3つの長編が、一番印象に残っている。

「宇宙のランデブー」「地球帝国」そして「楽園の泉」。

 三重のエアロック。幼なじみとのペントミノの思い出。聖地に飛び来る蝶——読んでいない人にはなんのことかと思われるかもしれないが、ああ、思い出すと涙が出てくるではないか。

 彼ぐらいになると、彼の肉体が彼なのか、彼の残した情報が彼自身なのか判然としなくなる。

 だから、いかなる弔辞も無用なのだろう。クラークという名のミームはこれからも世間を巡る。

 そしていずれ星の世界へも。

 冬樹蛉さんによると、SFには茶筒SFというサブジャンルが存在するそうだが、その元祖。「圧倒的に巨大な未知がただそこにあるというだけで読者を魅了してしまう類のSF」というのが定義である。

 本作品の“茶筒”とは、はるか宇宙から太陽系目指して飛んでくる異星人の宇宙船のこと。円筒形をしているのだ。

 やってきた巨大茶筒宇宙船に、人類は探検隊を送り込む。どうやって中に入るか、内部はどうなっているのか、異星人とは接触できるのか——スリリングな状況とはうらはらに、ストーリーは淡々と進む。それがどういうわけか面白い。無茶苦茶面白い。

 後にクラークはジェントリー・リーとの合作で続編を3編書くがそちらは大して面白くなかった。「宇宙のランデブー」は、これ一冊で十分である。

 え?「地球帝国」は絶版なの?!なんてことだ。

 遙かな未来、土星の衛星タイタンの権力者が行う地球旅行を淡々と追っていくという一見単純な物語だが、しみじみと面白い、クラークらしさに溢れる作品。

 「軌道エレベーターを建設する」、ただそれだけの作品なのだけれど、この面白さをどう形容すればいいのだろう。

 軌道エレベーターとは地上と静止軌道を結ぶ長大な「宇宙と地上を結ぶエレベーター」のこと。途方もない巨大建築物だが、原理的には建設可能であることが検証されている。クラークは一人の技術者が人生をかけて軌道エレベーターを建設する様を淡々と描いていく。

 同時期、チャールズ・シェフィールドが同じく軌道エレベーターの建設をテーマとした「星ぼしに架ける橋」(ハヤカワSF文庫)を出版した。ストーリーとしてはこちらのほうが起伏に富んでいるのだけれど、面白さも完成度も圧倒的に「楽園の泉」のほうが上だと思う。

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2008.03.18

書籍紹介「747 ジャンボをつくった男 」

 ボーイング747“ジャンボジェット”——民間航空を根底から変えたこの傑作機の開発をボーイング社で指揮した男、ジョー・サッターの自伝が翻訳された。私は、巻末の解説を担当させてもらった。

 いやもうなんというか、「素晴らしき哉飛行機が大好きな男の子の一生」と形容できる本だ。シアトル近郊に生まれ、新興企業だったボーイング社の新型機が次々に初飛行するのを眺めて育ち、長じてはボーイング社に入社してついには747の開発を指揮するのだから、飛行機が好きな人にとってはうらやましいとしかいいようのない人生である。


 サッターの自伝がインサイダーの証言だとすると、こちらは外部のノンフィクション作家による747開発ストーリー。現在絶版状態のようだが、アマゾンにはかなりの数の中古が出ているので紹介する。
 この本も傑作だ。2冊まとめて読むと、747という機体がどのような経緯で生まれたかを、より客観的に理解することができる。

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2008.03.17

宣伝:3月20日(木曜日[祝])「かっこいい機械ナイトVol.2:回路〜Core Memory‐ヴィンテージコンピュータの美」、ロフトプラスワンにて開催

 こんなイベントがあります。「かっこいい機械ナイト」の初回は、私も出演しましたが、今回は出番はありません。多分客席にいると思います。


「かっこいい機械ナイトVol.2:回路〜Core Memory‐ヴィンテージコンピュータの美」

 好評を博した「かっこいい機械ナイト」早々に第二回を開催! 先頃オライリー・ジャパンより発売された『〜Core Memory—ヴィンテージコンピュータの美〜』を特集します。アメリカより著者のJohn Aldermanさん 写真家のMark Richardsさんも来訪。翻訳された 鴨澤眞夫さんが通訳としても登場。ヴィンテージコンピューター好き、機械好きの真昼のトーク!

出演:寺田克也(イラストレーター)、船田戦闘機(メディア技術者)、伊藤ガビン
Guest:John Alderman(著者)、Mark Richards(写真家)、鴨澤眞夫(翻訳家)

場所:ロフトプラスワン(新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2 03-3205-6864、地図)
日時:3/20(木曜日祝日)
Open13:00/Start14:00-16:30頃まで/¥1200(飲食別)

前売はローソンチケットにて3/7から発売(Lコード:33077)ロフトプラスワン店頭でも3/7から発売

 前回は阿佐ヶ谷ロフト/Aでの開催でしたが、今回の会場は新宿のロフトプラスワンです。また今回は昼のイベントで、開場13時、開演14時となっています。

 今回の元ネタとなる写真集。タイトルの通りコアメモリーを中心に、コンピュータ初期に使われた様々な電子回路を美しく撮影した写真集だ。

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2008.03.05

mixi側から釈明出る

 記事を書いた以上、その後の報告を。

 3月4日午後、mixi運営事務局から釈明メッセージが出た。

特にお問い合わせの多い【第18条 日記等の情報の使用許諾等】に関しまして、誤解を避けるため、当社が想定している具体的な使用について補足説明をさせていただきます。

上記の条項につきましては、ユーザーのみなさまが『mixi』のサービス内で作成した日記、著作物等の情報について、従来どおりユーザー自身が権利を有することに変わりはありません。

また、ユーザーのみなさまが投稿した日記等の情報(公開している自主作成の映像やイラスト、テキスト等)の使用に関しては、当社の以下対応について同意いただくもので、当社が無断で使用することではありません。


1. 投稿された日記等の情報が、当社のサーバーに格納する際、データ形式や容量が改変されること。
2. アクセス数が多い日記等の情報については、データを複製して複数のサーバーに格納すること。
3. 日記等の情報が他のユーザーによって閲覧される場合、当社のサーバーから国内外に存在するmixiユーザー(閲覧者)に向けて送信されること。


なお、ユーザーのみなさまの日記等の情報を書籍化することに関するお問い合わせもございますが、こちらの点につきましても、従来どおり、ユーザーのみなさまの事前の了承なく進めることはございません。

なお、利用規約につきましては、今後もご利用いただくお客様にご理解いただきやすい内容になるよう引き続き検討してまいります。

 素早く釈明を出したことは理解できる。その内容がユーザーの権利を尊重するというものであることも評価できる。

 が、今行うべきは「補足説明」ではない。補足説明などということを必要とする、舌足らずの規約をきちんと書き直すことだ。

 「引き続き検討」の部分に期待して、こちらも引き続き様子見である。私は有料のプレミアム契約をしているが、解約も視野に入れておこう。

 mixiからの撤退を考えている人向けには、データをローカルに保存するツールとしてbackup mixiがある。

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2008.03.04

mixiの奇妙な規約改正

 私は大手SNSサービスであるmixiの利用者だ。知人との連絡や、個人的な日記など、便利に使っている。

 昨日、mixi運用事務局は、4月1日からの新しい規約を公開した。この中に、かなり非常識な条項が入っており、現在mixiユーザーの間に動揺が広がっている。

 問題の条項は以下の通り。

第18条 日記等の情報の使用許諾等

1
 本サービスを利用してユーザーが日記等の情報を投稿する場合には、ユーザーは弊社に対して、当該日記等の情報を日本の国内外において無償かつ非独占的に使用する権利(複製、上映、公衆送信、展示、頒布、翻訳、改変等を行うこと)を許諾するものとします。

2
 ユーザーは、弊社に対して著作者人格権を行使しないものとします。

 「日記等」とあるところに注目。mixiはユーザーが知人に向けて日記を公開する機能があり、かなりの数のユーザーがプライベートな内容を含む日記を書いている。それらの内容をmixiがすべて「複製、上映、公衆送信、展示、頒布、翻訳、改変等を持つ」と言っている。

 個人の書いた日記について、mixi側が複製したり上映したり、公衆送信したり展示したり、頒布したり翻訳したり、改変だってやるぞ、と明言してしまったのだ。

 ご丁寧に、直前の条項ではこんなことも書いている。

第17条 日記等の情報に関する権利

本サービスを利用して日記等の情報を投稿するユーザーは、弊社に対し、当該日記等の情報が第三者の権利を侵害していないことを保証するものとします。万一、第三者との間で何らかの紛争が発生した場合には、当該ユーザーの費用と責任において問題を解決するとともに、弊社に何等の迷惑又は損害を与えないものとします。

 「権利は持っていくけど、中身はそっちで保証してね」ということだろう。


 おそらくmixi側とすれば、「電車男」のようなコンテンツ二次利用を狙っているのだろう。しかし現状でこの規約が施行されると、例えば有名人が友人のみが読むことを前提でmixiで書いていた日記を、mixiが勝手に出版したり、それに基づくテレビドラマを売り込んだりできるということになってしまう。

 そもそもmixiはパーソナルスペースを提供するサービスであり、2ちゃんねるのような匿名書き捨ての場とは異なるだろう。皆、それぞれの日記を「自分のもの」という意識で書いている。

 mixiの日記は、mixiのものではない。書いたユーザーのものであると考えるのが自然だ。

 mixiの日記機能は、便利な日記帳のようなものだ。日記帳を売っている博文館が「うちの売った日記帳に書いた皆さんの日記は、うちの会社のものです。勝手に複製、上映、公衆送信、展示、頒布、翻訳、改変等しますのでよろしく」といったら、「なにをバカな」と言われるのがオチだろう。

 mixiはそういうことをしようとしている。

 こんなことをすればユーザーが反発するのは明白だ。インターネット上でSNSサービスを展開する会社としては、なんともうかつなことをしたものだと思う。

 この件は、今後mixi内で展開していくだろう。私としては場合によってはmxiを退会することも考慮しつつ、抗議をし、推移を見守ることになる。

 きちんと機能している素晴らしいコミュニティを、つまらないことで崩壊させるのは得策ではない。しかしながら過去数年にわたってmxiに書いた自分の日記を、あの会社に勝手に使われるような状態になるのは耐え難い。

 わざわざここに書いたのは、日本を代表するSNSの会社が、ずいぶんと稚拙なことをやってしまったという事実を、きちんと世間に知らせることで、mixiの株価に影響が出ることを期待してのことだ。

 道理が通じない者も、金絡みの株価には敏感に反応する。株価が下がれば、mixi経営陣も自分らが何をやってしまったのか考え直す——そう思いたい。

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2008.03.03

伊福部の「管絃楽法」、復刊!

 音楽好きには大ニュース。長らく絶版だった伊福部昭「管絃楽法」が復刊された。

音楽之友社HPの紹介

 作曲においてオーケストラの各楽器にどのような音を担わせるかという作業をオーケストレーションという。オーケストレーションにあたっては、それぞれの楽器の音域から始まって、音域毎の音色の特徴、発音原理や運指などから来る限界、さらには複数の楽器を組み合わせたときに得られる効果などを熟知している必要がある。

 そのようなオーケストレーションに必要な知識をすべてまとめた教科書的な本が、この「管絃楽法」だ。

 自らも魔法のようなオーケストレーションの腕前を持つ伊福部が、第二次世界大戦中、二十代の頃にから構想し、戦後執筆を開始。最初の判は1958年に出版され、15年後の1968年の改訂時にこれを「上巻」として、新たに下巻を加えて完成したという、とてつもなく時間を掛けた大著である。

 オーケストレーションの教科書は、古くはベルリオーズやリムスキー・コルサコフのものから、近代ではウォルター・ピストンのものなど各種ある。伊福部の「管絃楽法」は、それらの中にあっても、最高峰と評価される名著なのだ。

 今回の復刊にあたっては、著者自身が死の直前まで校訂し、その後伊福部門下が作業を引き継いだとのこと。上下二巻だったものを一冊にまとめると共に、内容をが一部追加されている。

 「専門的な教科書を紹介してどうする」と言われそうだが、私は買う。高い本だがそれでも買う。長年捜して、これまで手に入らなかった本だから。

 作曲家になりたくて勝手な音符を書き散らしていた高校生の頃、この本が読みたかったのだ。結局手には入らず、私は全音のポケットスコアに入っていた諸井三郎による薄っぺらい「スコアリーディング」に載っていた各楽器の音域表を頼りに、オーケストラの曲を書こうとしたものだ。もちろんものになるはずもなく、あの頃書いた音楽まがいの楽譜は後で全部棄ててしまった。

 大学に入ってからも、この本は見つからず、代わりにウォルター・ピストンの本を買った。だからといって、自由自在に作曲ができるようになるわけではなくて、結局私は理工学部を出て記者になり、今は皆さんがご存知の通りである。

 それが今になって、この本が買えるようになるなんて…複雑な気分ではあるが、なんと幸せなことだろうか。

 音大作曲科の学生なら買うべし、伊福部ファンなら買うべし。そして——

 ニコニコ動画あたりに初音ミクで投稿していて、なおかついつかはシンセの代わりに本物のオーケストラをがーんと鳴らしてみたいという野望を持っている人は買うべし。覚悟を決めて買うべし。そして、伊福部が書き残した技術を、知と情の両面で喰らい、咀嚼嚥下すべし。


 
 伊福部の技術が、「管絃楽法」に詰まっているとするなら、伊福部の精神はこの「音楽入門」に凝縮されている。本来はクラシック音楽初心者のため平易な入門書として企画された本だが、出来上がってみれば伊福部の音楽芸術に対する態度がはっきりと現れた本になった。1951年初版なので、まさに「管絃楽法」を執筆している最中に書かれた本である。
 「2万5200円なんて高い本、しかも音大生用教科書なんて買えるか!」という人はこちらの本を読もう。

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2008.03.02

非常に便利なAutoPagerize

 私はブラウザーとしてFireFoxを使用している。色々アドオンが出ていて、うまく使うと便利だ。

 最近知人にAutoPagerizeというスクリプトを教えて貰った。

 ものすごく便利だ。

 Googleなどで画面の一番下にでる1.2.3という数字をクリックして次ページに進むようなところで、下にスクロールすると次々ページ内容が追加されるようにページ構造を書き換えてしまうというスクリプトである。

1)まずGreasemonkeyというアドオンをインストールする。これは指定したサイトへユーザー独自のJavaScriptを適用するアドオン。
https://addons.mozilla.org/en-US/firefox/addon/748

2)次にGreasemonkeyで使用するスクリプトとしてAutoPagerizeをインストールする。
http://userscripts.org/scripts/show/8551

 取りあえずはこれでOK。

 Googleの検索結果やら、Amazonのリスト、さらにはmixiの日記などがクリックなしに次々画面の下に追加されていくのだからたまらない。使い始めて数日なのだけれども、もうこれなしの生活は考えられないぐらい快適だ。

 自分でスクリプトを書くと、対応ページを増やすこともできるとのこと。このあたりを参考にすればいいだろう。

 ちなみにこのスクリプトは、アップルのSafariや、Operaでも使用できるそうだ。Safariについてはこちらを参照のこと。


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2008.03.01

BD-Frog;3ヶ月目の報告

Frog_in_lakehamana

 忙しさにかまけていると、すぐに更新の間隔が一ヶ月単位で空いてしまう。

 リハビリも兼ねて、BD-Frogのことを書く。

 昨年の12月13日に入手して以来、なんだかんだで300kmほど走った。使い勝手は良好、極めて快調である。1日の最大走行距離は、浜名湖一周をした時の約70kmほど。30km程度なら構えずにごく普通の自転車のつもりで走ることができる。
 なにより走るのが楽しい。タイヤが小さいからだろう。出足がいいので、メリハリのついた走りをすることができる。なかなか良い買い物をしたと思っている。
 写真は1月に浜名湖一周したときのもの。
 

 以下、A-Bikeの時と同じく。Q&Aの形式でインプレッションをまとめる。

 前提条件として、私のFrogは走行の基本部分を改造していることに注意して欲しい。変速機はシマノ・カプレオで外装8速化してあり、前後のサスペンションは、サイクルハウスしぶやスーパーハードスプリング(フロント)・ハードスプリング(リア)に交換してある。ブレーキもカプレオだ。
 また、タイヤはオリジナルのものからシュワルベのシティジェットに交換した。シティジェットはFrogの開発元である独r&mが、わざわざシュワルベに作らせた専用タイヤ。なぜか日本では装着して販売してはいなかった。


よく走る?
 上記の改造が前提条件、少なくともサスとタイヤの交換(1万2000円コースだ。しぶやで車体を買うとフロントのスプリングは無料になる)は必須だが、その限りにおいてはとてもよく走る。ママチャリは軽くしのぎ、フラットバーハンドルのコンフォート系サイクルと同等以上といっていいのではないかと思う。

直進安定性は良い?
 明らかに普通の自転車よりも悪い。手放し運転は私には無理。走り始めは気をつけないとふらつく。ただし走り出せば気になるほどではない。

下りで飛ばせるか?
 かなり飛ばせる。もっともホイールベースが短く、安定性はどうしてもその分悪いので、長い坂をがんがんペダルを回して猛スピードで下るのは危険だ。お薦めしない。普通の自転車程度に普通に走る分には問題ない。

上り坂には強いか?
 現状では、ギア比がかなり低い。私の軟弱な脚でも平地風なしでトップから2段目を常用する程度。すこし脚に自信があればトップ常用になってしまうだろう。したがって上りはまず問題ない。私ですら一番低いギアを使うことはめったにない。逆に言えばフロントをもう少し大きくしてもいいだろう。ちなみに現状でフロントはオリジナルと同じ52Tが入っている。

段差に弱くはないか?
 太めのタイヤとサスペンションの効果だろう。舗装路を走る限り全く問題ない。歩道の段差も通常の26インチ以上の自転車と同じ感覚で乗り越えることができる。

ライディングポジションは窮屈ではないか?
 もともと身長2mのドイツ人が乗れるよう設計されたとしか思えないぐらいに、ハンドルもシートポストも延びるので、いかようにでも調整できる。逆に言えば一般的な日本人が乗るならば、オプションパーツの投入で、かなりの範囲で好みに調整することが可能。私はハンドル低め、シート高めにしてやや前傾ポジションにしている。

変な形をしたエルゴノミック・グリップは効果ある?
 これは、今回の大きな拾い物だった。やや前傾の姿勢を取ると非常に効果があり、手のひらが疲れない。多くの人にお薦めします。バーエンドの付いたものもあるので、今後少しずつ試してみるつもり。
私が使っているGP-1S。値段もお手頃。フラットバーハンドルの自転車にお薦め。

レースグリップGC2S。長距離を乗るには、持つ位置を変えられるので、こちらのほうが適当かも。折り畳み時に干渉する可能性あり。

エルゴン レースグリップ GX2 カーボン。とても軽くて無茶苦茶高い。

同マグネシウム。まだ高い。

普及モデルの同GR2。格好が同じなのに材質が違うだけで大きく値段が異なる。

がんがん漕げば飛ばせる?
 脚力とギア比次第では、と言っておこう。実際サイクルハウスしぶやのスピードドライブを入れた試乗車は「40km/hで走れる」との評判だ。フレーム剛性がかなり高いので踏み込んでもフレームがよれるような感覚は一切ない。
 またBD-1の欠点だった、フロントフォークの剛性感の低さも感じない。おそらくフロントフォーク自体がタイヤに合わせて小さくなっているので、結果として比剛性が向上しているのだろう。

乗り心地は良いか?
 意外なぐらいに良い。高剛性フレームにサスペンションというモールトンにも似た基本構成と、太めのタイヤの組み合わせが効果を上げているのだろう。もちろん価格差からも分かるだろうが、モールトンのようなシルキーライディングを期待してはいけない。あれに比べればかなりがさつではある。

ロードレーサーに対抗できるか?
 無理。事前の予想以上によく走る自転車だったが、所詮は折り畳み自転車だ。走ることにすべてを集中したロードバイクにかなうはずがない。ただし、乗り手の脚力とセッティング次第では、初心者の乗るロードバイクを追走するぐらいはできるだろう。

前輪を外す改造をしているけれど、畳むのは面倒ではないか?
 慣れの問題だ。慣れると、自転車の金属部分を一切地面につけずに、手でもったまま広げることができるようになる。畳むほうも問題はない。少々手間が増える程度と思って欲しい。

輪行は楽か?
 BD-1に比べるとかなり楽。BD-Frogは小さいくせにBD-1とほぼ同じ重量があるのだが、それでも輪行は楽。容積が小さいので、まず肩から輪行バッグを提げたままで駅の自動改札を通過することができる。また、座席に座る際も、自分の座った前のスペースに置いてもかろうじて邪魔にならない。もちろんラッシュ時に輪行するようなことは避けるべきだろう。
 輪行の容易さは重量だけでは決まらない。軽いことに加えて、容積が小さいということも物を言う。

AZ-1に搭載できるか?
 すいません。まだやってません。やったら報告します。

 BD-Frogは、昨年で生産を終了してしまったモデルだ。すでに楽天では売り切れてしまっている。店頭在庫はまだ残っているようで、サイクルハウスしぶやのHPでは在庫あり。人気のルミナスグリーンだけが「3月下旬入荷」となっている。

「よく走る自転車のようだし、自分も欲しい」と思った人に、「これは絶対お薦めです」と言えるかとどうか。
 言えない。なぜならば、消耗部品の供給に不安があるからだ。BD-Frogは、12インチのタイヤを装着している。このサイズのタイヤは子供用の自転車ぐらいでしか使用しない。世界的に見ても本格的な自転車は、このBD-Frogぐらい。それ以外ではブリジストンのワンタッチピクニカぐらいしか、私には思い浮かばない。

 ここで問題になるのはタイヤの「シティジェット」の供給がどうなるかだ。「よく走る」というインプレッションは、シティジェットあってこそなのである。BD-Frogが生産中止になった今、シュワルベがいつまでこのタイヤを供給してくれるか分からない。

 その意味では、BD-Frogは「このスタイルがいい」「どうしてもこれに乗りたい」「これに乗れるなら多少の苦労なんて」という人にしかお薦めできない。私の場合は「とにかく可能な限り小さくなってAZ-1に載り、なおかつ良く走る折り畳み自転車が欲しい」というところからBD-Frogに行き着いたが、そもそもABCC(AZ-1、ビート、カプチーノ、コペンの軽スポーツカー達)に折り畳み自転車を載せたいなんて人はそうはいないだろう。

 単純に「よく走る折り畳み自転車が欲しい」ならば、同じr&mのBD-1なり、ジャイアントMR-4Fなり、ダホンバイクフライデーの一連のシリーズをお薦めする。「小さくなる折り畳み自転車」ならブロンプトンもあるし、バイク技研のYS-11も、いい自転車だ。軽さを追求するなら、パナソニックのトレンクルだってある。

「どうしてもBD-Frogが欲しい」という人にのみ、「この自転車は良く走りますよ」と自信を持ってお薦めする。ただしその場合も、最低でもサスとタイヤの交換という1万2000円コースの出費はついて回ると思ってもらいたい。

 結局のところ、BD-Frogは、売り方を間違えたばかりに、傑作になり損ねて終わった自転車という印象だ。開発元のr&mが悪かったのか、日本輸入代理店のミズタニ自転車が悪かったのかは知らないが、なぜ日本国内で、7段変速を備えた車体にハードサスとシティジェットを装着して売らなかったのだろうか。そうすれば、おそらくFrogの評価は一変していただろう。

 欧州では内装7段の「インター7」変速機を装着したモデルを販売していたのだから、なおさらそう思う。


 私としては当面BD-Frogで楽しく走れると思うと、それだけで十分である。シティジェットだけは、なくなる前に何本か入手しておかなくてはならないだろう。

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