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2008.05.09

かぐやハイビジョン映像のネット公開にあたって

 もう皆さんご存知だろうが、NHKが月探査機「かぐや」の取得した「地球の入り」「地球の出」のハイビジョン画像を、ネットで公開した。

かぐやアーカイブ アースウォッチャー

 今回公開されたのは、1280×720ピクセルの画像だ。オリジナルの1920×1080ピクセルではないのが残念だが、現在のネットの伝送容量と端末となるパソコンディスプレイの解像度を考えると妥当なところだろう。
 もちろん、伝送容量もパソコンの能力もムーアの法則に従って伸びていくものだから、NHKには1年後程度をメドに、フル解像度の画像を公開するよう望みたい。

 この件については、MIAUが、NHKに質問状を出し、それに対する回答が来たり、といくつかの動きが続いていた。私も、記事を書いている(「ハイビジョン月面画像を公開しなかったNHK」「日本ではダメなのにカナダではネットで観られる「かぐや」ハイビジョン画像」)。

 やっと、事態は良い方向に向かったと考えて良いだろう。

 今回の件に関して私は、記事を書いた際の感触から、NHK内部にも状況を正確に理解し、事態を打開しようとしている人たちがいることを感じていた。

 昨今の映像コンテンツの権利を巡るニュースをフォローしていると、なかなか「公開すべきコンテンツは公開すべき」という原則が、組織の中では通りにくくなっているだろうことが見て取れる。

 公開にまで持っていった「NHKの中の人」、本当にご苦労さまでした。MIAUもナイスプレーだったと思う。

 そして、公開に至るまでのNHK内部の手続きにおいて、あれこれと疑問を投げかけ、牽制したであろう「別の中の人」へ。

 これがあるべき姿なのですよ。最初からこうしていれば、「親方NHKは、あれこれ言われてから仕方なくやったんだろ」などと言われず、「さすがNHKは情報のあるべき未来を見据えている」と評価されたはずなのですよ。

 今回の件は、自分たちの収益の元となるハイクオリティのHDTV画像を、生データでネットに掲載してしまうことに対するためらいが、NHKにあったのだろう。
 このロジックは、もちろん通用しない。「地球の出/入り」の画像は、国民の税金で開発された探査機に搭載したNHKのカメラで取得された。NHKが独力で取得したものではない以上、探査機に対する出資者である日本国民、さらには全世界の人々への、ネットを使ったハイライト部分の公開は当然である。


 この問題を広く捉えるならば、ネットワークによって「デジタル映像コンテンツ」の流通はどう変わっていくか、という問題だ。

 音楽の世界では、ネット流通において違法コピーをどう避けるかという問題に対して、すでにアメリカの状況によって答えが出ている。「テクノロジーによる過度のコピー制限をしない」ということだ。

 まずiTunes Music Store。その成功に理由のひとつには、緩いデジタル著作権管理(DRM)がある。

 さらにiTMSでは、iTunes Plusという高ビットレート、DRMなしのサービスを行っているし、アメリカではAmazonがMP3フォーマット/320kbps、DRMなしの音楽ダウンロード販売を開始し、売り上げを伸ばしている。

 DRMは不要。それで十分ビジネスは回るというのがすでに実績として証明されているのだ。着うたなどで、DRMにしがみついている日本の既存音楽業界はいずれ衰退するだろう——私はそうみている。

 私は、この流れは動画像でも同じではないかと思う。コピーワンスもダビング10も、従来のビジネススキームに固執するあまり、にっちもさっちもいかなくなっているのではないだろうか。

 すでに台湾発で、コピーワンスを無効にする「フリーオ」というデジタル放送チューナーが出回っている。コピーワンスはテクノロジーの産物であり、後から来るテクノロジーに破られる——これは自明の理だ。だからといってこのようなチューナーの所持や利用を違法化したとしても、それは映像産業全体の活力を奪うだけのことだろう。

 まあね、例えばゴールデンタイムのテレビ各局、なかんずく民放各社が、コンテンツと呼ぶに値する、何度もの視聴に耐える番組を制作しているかといえば、私はノーだと思うのだよな。
 そしてこれは、本がデジタル化される近い将来、自分にも関係してくる問題である。「お前は本当に、意味のある情報を生産しているのかね?」と。

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2008.05.06

サロマ湖でもハクチョウの感染を確認

 5日、北海道で新たにサロマ湖で見つかったオオハクチョウの死骸から、鳥インフルエンザ陽性反応が出た。

鳥インフル:サロマ湖畔で1羽が陽性か(毎日新聞)

 現状ではインフルエンザ・ウイルスが検出されたという段階で、強毒型のH5N1ウイルスかは不明。しかし、1)すでに死んでいる、2)韓国ではH5N1ウイルスが蔓延中という状況証拠から、強毒型ウイルスである可能性は高い。

 要するにこれまで野鳥をきちんと監視していなかったのだろう。それが、秋田県の事例でH5N1ウイルスが検出されたもので、あわてて監視体制を強化したら、すぐに次の事例が見つかったということではないだろうか。

 野鳥の防疫は、養鶏場の防疫よりもずっと難しい。鳥が死んでいるだけだから、危機感も抱きにくい。

 しかし、この段階できちんと食い止めないと、鳥インフルエンザが、渡り鳥のみならず国内の鳥類にも定着してしまう。そうなったら、ヒトからヒトへの感染を起こす新型インフルエンザが出現する確率が上昇する。もちろん、うっかり肺の奥深くウイルスを吸い込んで、人が鳥インフルエンザに感染する事例も出てくる可能性がある。

 実のところ、白鳥は感染すると死ぬので、ウイルスの拡大が分かりやすい。それだけ防疫もやりやすい。

 本当に注意しなければならないのはカモだ。

 カモは強毒型の鳥インフルエンザ・ウイルスに感染すると約3割が死亡する。しかし残る7割は、感染しても症状が出ない、不顕性感染となる。不顕性感染を起こしたカモの腸管内でウイルスは増殖し、糞の中に大量に排出される。糞は水に溶け、その水を飲んだ別の鳥に感染する。

 この春、渡り鳥のカモは、北に帰って行った。しかし今年秋にはまた日本に渡ってくる。それらカモの中に、不顕性感染を起こした個体がいて、ウイルスをまき散らしたら——。

 そうならないように、早急に、防疫体制を構築しなくてはならない。

午後追記;韓国では首都のソウルでも、鳥インフルエンザの発生が確認された。

2008/05/06-11:25 鳥インフル、ソウル市内でも=韓国:時事通信

 東京で鳥インフルエンザが確認されたら、と考えると、事態の深刻さを実感できるだろう。こうならないためには、今、しっかりとした防疫を行わなくてはならない。

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2008.05.05

死んだ白鳥をカラスがつついていた…

 昨日の記事のコメント欄に、秋田にいるkamiyaさんが見た、現地の状況がコメントされた。

近くに住む人が「死んだ白鳥をカラスがつついていた」と言っていたので、近くのカラスは保菌している物と考えられます。

 うわ…日本国内に鳥インフルエンザが定着することは、鳥インフルエンザによる死亡事例が相次いでいるインドネシアのようになるかもしれない、ということなのに。

 感染拡大が続く韓国では、地方自治体が情報を隠蔽したという報道が出ている。

韓国:鳥インフルエンザで虚偽発表 KBSテレビ

 この地方自治体の意識の低さでは、日本は韓国を笑えない。

 参考までに:以下は外岡氏がまとめたイギリスにおける対策だ。ここまでやるべきなのに…

2006年英国スコットランドでH5N1鳥インフル死亡白鳥事例集

5/5午後追記:野付半島で見つかった白鳥も、強毒型のHN1ウイルスが検出された。

朝日新聞

 北海道も色々と動き出した。鳥インフルエンザが定着などしようものなら、サミットもなにもあったものではないだろう。

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2008.05.04

やはり現地の防疫体制は不徹底のようだ

 鳥インフルエンザ直近情報をまとめている小樽市保健所長の外岡立人氏が5月4日付けの日記で、現地情報に基づいて秋田県など地方自治体の鳥インフルエンザ対策が、不徹底であることを嘆いている。

「幻想と現実の狭間にて」:外岡氏日記

現場への立ち入り検査の遅れ、現場周辺の消毒措置が行われない不気味さ、周辺を行き交う車両の車の消毒、人々の靴底の消毒、…。何も行われていない。

 どうも、秋田県以下、地方自治体は「養鶏場にウイルスが入らなければ大丈夫」と思っているように見える。養鶏場に入れば金銭的被害が発生するが、野鳥が死んでいる分には金銭的損失は発生しない。逆に厳重な対策をするほどに、地方自治体の財政に負担がかかる。

 しかし、実際には養鶏場での発生と、野鳥での発生では対応策が異なり、それぞれ的確な対応をしないと感染拡大を防げないのだ。

養鶏場で発生

   ・飼育家きんの全殺処分

   ・発生源調査



 渡り鳥で発生

   ・発見地域における他の渡り鳥、家きんにおけるウイルス調査

   ・渡り鳥の飛行ルート調査(または推定)

   ・渡り鳥の感染地の特定(または推定)

   ・特定された地域での獣医学的疫学調査

   ・予想飛行ルートからさらなるウイルス拡大地域の特定

   ・特定された地域での獣医学的疫学調査



  上記作業は、推定される汚染地域への人の立ち入りを制限したうえで、作業員が感染しないような装備で行う必要がある。また基本的には発生から1週間以内に全ての予備的調査と対策を終了しなければならない。

  住民の危機管理対策も同時に進められる必要がある。

 繰り返す。どうも、秋田県以下、地方自治体は「養鶏場にウイルスが入らなければ大丈夫」と思っているように見える。

 冗談ではない。養鶏場に入ったら、鳥インフルエンザとしてはもはや緊急事態なのであって、本来的にはそれ以前の段階でウイルスを食い止めねばならないのだ。

 外岡氏の日記は以下の文章で締めくくられている。

 日本の当局者達が、これまでには野鳥からの感染が人で起きたことはないからと安易に考えていると、世界で初めての野鳥から人への感染が日本で発生ともなりうる。

 これは行政業務ではあるが、医科学的基本を背景にした業務であり対策なのである。感染症予防専門家が陣頭に立っている必要がある。失敗したなら彼の責任となるような権限と責任性を課する。欧米はそうである。

 SAFTY JAPANに、「H5N1―強毒性新型インフルエンザウイルス日本上陸のシナリオ」「パンデミック・フルー 新型インフルエンザ Xデー ハンドブック」書評を書いた。よろしければ読んでみて下さい。

 自分のための備忘録。5月2日の官報に、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び検疫法の一部を改正する法律」が掲載されている。5月12日施行。読んでおくこと。

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2008.05.02

新型インフルエンザ、4月下旬のまとめ:秋田と北海道で野鳥感染死を確認

 新型インフルエンザに関する10日毎のまとめだ。

 ついに日本でも感染死した野鳥が見つかった。韓国では防疫が失敗しつつあるようで、鳥インフルエンザの拡大が止まらない。これはまずい、日本もすぐに水際防御となると心配していたら、やはり来てしまった。

 しかも、地方自治体の初動対応が遅く、手ぬるい。鳥の世界でパンデミックになってしまい、インドネシアのようにウイルスが定着してしまったら、ヒトからヒトへの感染を起こす新型インフルエンザ出現の確率はぐっと上がる。鳥インフルエンザの段階で、厳重な防疫を行わなくてはならないはずなのに、最前線となる地方自治体は、何をしていいのか良く分かっていなかったような印象を受ける。

 全国の地方自治体はもっとしっかりしてほしい。あなたたちの機敏な行動が全日本国民を守ることになるのだから。


 まず、最初に発見された秋田県・十和田湖のケース。各種報道や秋田県ホームページ(発表文はこちら(pdf))によれば経緯は以下の通り。

・4月21日、白鳥の死体3羽と衰弱した白鳥1羽を回収。
・4月23日から有精卵に接種する手法でウイルスを培養、25日にA型インフルエンザウイルスと確定
・26日、県の家畜保健衛生所が周辺農家への聞き取り調査と注意喚起を行う。
・27日にウイルス検体を独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構・動物衛生研究所(茨城県つくば市)に搬入。同日夜、H5亜型ウイルスであることを確認。
・29日、ウイルスが強毒型のH5N1型であると発表。

 まず、ウイルス検査は、技術的には1日でできる。つまり現状では、地方自治体レベルでの迅速な検査態勢が確立していないことが見て取れる。21日に回収したならば22日には検査結果を出して、23日には防疫に入らなければいけないはずなのだ。

 さらに、韓国で強毒型のH5N1型鳥インフルエンザが蔓延していることは衆知の事実だ。だからA型ウイルス陽性と判明した段階で、H5N1型ウイルスであると想定して防疫体制に入るべきなのだ。つまりどんなに遅くても26日には本格的な防疫体制が動いていなければならない。

 しかし実際には、26日からの初動防疫体制も不徹底だった。SAFTY JAPANに書いたのだけれども、今回の場合は不顕性感染を起こしたカモが、周囲にまだいる可能性があった。
 となるともっとも恐ろしいのは自動車のタイヤにウイルスを含む糞が附着して遠くまで運ばれ、二次感染を起こすことだ。すぐに検問所を設けて通行する自動車のタイヤを消毒しなければいけないのである。同時に、至急周辺地域から鳥の糞を採取してウイルス検査を行わなくてはならない。

 その後、北海道の野付半島で見つかった白鳥の死骸からも鳥インフルエンザウイルスが検出された。経緯は以下の通り。

・4月24日、観光客が白鳥の死骸を発見。
・4月27日、回収した死骸を中標津町の動物病院で解剖。キツネなどの捕食の痕跡なし(死骸を食べたキツネなどが感染し、さらにウイルスをまき散らす可能性もあった)。死後さほど時間が経ってはいなかった。
・5月1日、環境省釧路自然環境事務所が検体を持ち帰りウイルス検査。即日陽性と判明。環境省がウイルス陽性であったと発表。

 ここでも初動の遅れを見て取ることができる。おそらく秋田県の事例が出てきたことで、あわてて検査を行ったのではないだろうか。

 ちなみに北海道庁のページにはこの件に関する情報が見あたらなかった。わずかに別海町のHP短いリリースが掲載されたのみである。トップページに緊急情報として掲載した青森県の対応と対照的だ。大丈夫か?北海道。

 ヒト→ヒト感染を起こす新型インフルエンザの出現を阻止するには、鳥インフルエンザの拡大を防ぐことがとても重要なのだ。

 「ヒトにはめったに感染しないから安心して下さい」というのは事実だ。しかしこの段階での不作為はヒトに感染するウイルスを呼び込むことにつながる。いったんヒト型ウイルスが出現すれば、もう風評被害がどうのこうのなどといっておれる状態ではなくなる。

 まだ鳥インフルエンザが広がる前の段階だからこそ、大げさに思えるほどの防疫が、大きな効果を発揮する。感染拡大が進んでから大規模防疫を展開しても効果は薄いのだ。

 だからこそ、今回の初動の遅さは恐ろしい。幸いなことに今回は初動をもたついている間の感染拡大はなかったようだが、ひとつ何かの偶然が悪い方に出ていたら(例えば、ウイルスを含んだ鳥の糞が長距離トラックのタイヤに附着するというようなこと)、日本全国に鳥インフルエンザが飛び火していたかもしれない。

 韓国では危険な状況が続いているので、今後とも気を抜くことはできないだろう。以前のケースでは京都府と宮崎県の養鶏場で鳥インフルエンザが発生した。今回は秋田と北海道だ。つまり、日本中どこでも鳥インフルエンザが確認される可能性があると思わなくてはならない。

 例え感染の疑いがある鳥が発見されなくとも、鳥の集まる湖沼などでは定期的に糞のウイルス検査を行うぐらいのことをしなければならないはずである。


 その他、鳥インフルエンザ直近情報から、過去10日間の動きをまとめる。

●韓国での鳥インフルエンザ感染拡大が止まらない。どうも感染した鶏の移動を防ぐ手段がザルになっているようで、4月29日に確認されたウルジュ(蔚州)の農場の例では、21日に購入した120羽の鶏のうち104羽が死亡したという。
 5月1日付けで日本に近い釜山でも感染疑い例が出たと報道されている。日本にとってすでに対岸の火事ではなくなりつつある。

●インドネシア・ジャワ島では、4月23日に3歳男児が鳥インフルエンザで死亡した。同国での感染者は132人、死亡者は108人となった。これはもちろん確認された限り、であって、背後には相当数の未確認感染者・死亡者が隠れていると推定されている。

●オーストラリアは、パンデミックに備えてタミフルの処方箋なし薬局販売を検討している。感染初期にタミフルを服用できるかどうかが生死を分けるため、家庭備蓄を進める狙いがあるとのこと。

 日本でも、是非検討して欲しい。

●アメリカとトルコの研究チームが、鳥インフルエンザから回復した患者の骨髄細胞から抗体産生細胞を採取し、抗体を生産させることに成功した。

 新型インフルエンザ出現までの時間を稼げば、それだけ研究は進み様々な対抗策を実用化することができる。だからこそ鳥インフルエンザの段階での拡大阻止は重要なのだ。

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