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2008.08.25

8/23:JAXAタウンミーティング@岸和田

 8月23〜24日、大阪府岸和田市で開催された日本SF大会「DAICON7」に行ってきた。大会ゲストとして、4つの企画に出演してきた。
 DAICON7では、JAXAのタウンミーティングが同時開催された。SF大会と同時開催というのはJAXAも味なことをする。

 これまでJAXAタウンミーティングを見たことがなかったので、途中までではあるがのぞいてきた。


 以下はSF大会DAICON7とともに開催されたJAXAタウンミーティングの様子。

まず舘和夫広報部長からJAXAの説明。

 「JAXAを知っている人?」、という質問に4割ほどの人が手を挙げる。

舘:驚きました。毎年JAXAは無作為抽出で国民にアンケートをしているのですが、そこでは0.1〜0.2パーセントの正答率です。1000人に一人とか二人ですから、この会場はすごいですね。

 以下舘部長よりJAXAの説明(省略)

 小澤秀司理事から個別のプロジェクトについて説明(省略)

 
質疑応答
Q:「はやぶさ2」の予定はどうなってるんでしょうか。
小澤:はやぶさが戻ってくるのが2010年です。その次については色々な検討をしているますが、これからの5年間ではちょっと予定はありません。その次の5年間に打ちたいと思っています。
阪本成一・JAXA宇宙科学研究本部教授(対外協力室長):何年頃に打つというはとうてい言えないのですが、しかるべき時に打つということで着々準備を進めています。

Q:JAXA独自の技術について。はやぶさでは独自の姿勢制御を使っていると聞いていたのですが、どんなものか。
小澤:はやぶさはホイールによる姿勢制御を行っている。トラブルが出たら地上で同じ部品を使っているかどうか調べる。
阪本:ご質問があったのは太陽の輻射圧を使った姿勢制御だと思う。太陽電池パネルに光を受けることで、重心周りに発生するトルクを姿勢制御に使っている。

Q:実用衛星で失敗は困るけれども探査とか先進的のことでは失敗は込みと考えるべきではないだろうか。かぐややはやぶさは見ていて大変興奮した。サンプルリターンは日本が世界の最先端を走っているのだから、次の探査機を全くやる余地はないのだろうか。
小澤:実用衛星に関する考え方、先進的な衛星とは分けて考えるべきという提案と受け取った。ありがたいことだ。そうしなければチャレンジの気持ちが萎えてしまいます。
 マルコポーロだとかはやぶさ2については、一生懸命やっている。制約条件が2つある、お金と目標天体だ。この2つが2008年〜2012年の5カ年計画ではうまく合わない。欧州かとの協力を含めて考えている。

Q:日本のロケットではやぶさ2は打ち上げられないんでしょうか。
小澤:お金の問題と全体計画の中のバランスだ。皆さんの声は届けたい。

Q:日本のロケットは無理なんでしょうか。
小澤:色々なオプションはあります。全部日本でやる話もあるし、絶対に欧州とやるという話でもないです。決して外国ありきではないです。

司会の舘部長から「はやぶさ以外で何か質問を…」

Q:広報活動がごく普通の人に届いているとは思えない。広報の充実についてはどう考えているか。
舘:なによりの広報は衛星ロケットすべてがうまくいくことだと思う。私たちは、テレビ報道においてJAXAの話題が何秒間放送されたかという調査をしているが、星出飛行士シャトル搭乗のニュースはコマーシャルとして2億円の価値があった。マスメディアの一般への影響力ではまずテレビ、そして新聞という順番になる。講演や展示の影響規模は小さい。まずマスメディアである。どうやってマスメディアに情報を提供できるかを考えている。
 今回の会場は女性の方が多いが、女性の認知度が低い。これをなんとかしたいと考えている。

Q:惑星探査など、つまるところお金の話になるわけだが、チャレンジングな惑星探査などでは寄付や宝くじ方式の活用は考えているか。国の予算を使って失敗を恐れて、萎縮するのは宇宙開発ファンとして悲しいものがある。
小澤:確かにそういう国民の皆さんの支持があればできるのかもしれませんが、まだ「宇宙宝くじ」という発想には行き着いていない。今考えているのは実用衛星のほうで、研究開発目的で通信実験衛星を上げる時に、通信ビジネス会社と一緒にやって、折半できないかということを検討している。これから色々考えていけると思う。
阪本:宇宙科学の分野は魂を揺さぶる部分があって、寄付金の申し出もあります。年1万円未満なら出すよという人は多い。しかし、私は国立天文台勤務時代、そういう申し出があると断っていた。宇宙科学が寄付金で回るということになると残りの基礎科学全体は痩せてしまう。そのことを恐れている。

Q:スペースシャトル後継機としてのオファーが日本にあったという報道があったが、具体的に何があったのか。
小澤:宇宙ステーション補給機HTVのことだと思う。2010年にシャトルが引退する。シャトルの運んでいる物資を何を使って補給するかが問題になる。アメリカはシャトル引退後、新しい宇宙船を作ろうとしている。その過渡期で、今世界で使えるような補給船はないか、という話があったことは事実。しかし新聞報道にあったようにシャトルの後HTVをアメリカが使うという話にはなっていない。

Q:日本の一般は基礎科学に興味がないが、マスメディアはそもそも基礎科学を理解していないのではないだろうか。広報はもう少しわかりやすくマスメディアに基礎科学を伝える必要があると思うがどうだろうか。
舘 なかなか科学には難しいところがあって、今まさに記者さんに伝える工夫を始めたところである。きぼうの実験で実験実施の前に記者向けの説明会を開始した。
阪本:研究者自ら時間を削って広報に出歩いています(拍手あり)。今後にご期待ください。

Q:今日入っているはSFの方なんで色々と特別なんかと思いますが…
 研究と仕事は別にしたほうがいいんじゃはいでしょうか。研究にはお金が必要です。糸川先生は「金を持ってくるのが良い研究者だ」と言っていましたけれど、阪本先生の寄付を受け取らないというのはあまりに後ろ向きじゃないでしょうか。
 今のプレゼンですけれど、宇宙開発事業団ばかりですよね。宇宙科学研究所の話はどうしたんでしょうか。この前S520ロケットの打ち上げの話もプレゼンに入っていませんでしたよね。
 内之浦でも最近はフェンスを張ってロケットをみんなに見せない方向に向かっています。もっと皆さんにロケットを見せればいいじゃないですか。
小澤:ロケットに触れないんじゃないかという話ですが、最近はセキュリティというのが大切になっています。世の中の流れとしてセキュリティを厳しくする流れがある。筑波や相模原に実物のロケットを展示していますから、そちらで見てもらいたい。

 ここで第一部終了。

第二部 阪本教授プレゼンテーション(略)。

以下質疑応答

Q:宇宙基本法の話。制定されても素性がまだよく分からない。今後JAXAはどうなるのか。GXロケットはどうなったのか。M-Vではなぜダメだったのか。
小澤:宇宙基本法は8/27に施行される。私なりの解釈になるが、議論の背景には日本の宇宙開発が研究開発中心だった。それを国の利益につながるようなものにすべきという意志が存在する。国の利益とは国民に役立つということ。そのうちのひとつとして安全保障が出てきている。
 効率的な宇宙開発としての国際協力。国の外交政策とマッチした国際協力を考えねばならない。
 JAXAの見直しも法文に入っている。今はまな板の鯉のような気分だ。
 GXは、今宇宙開発委員会で議論をしている。8月末の来年度予算の概算要求に間に合うように結論が出るはずが、まだ結論が出ていない。私個人の感触では、宇宙基本法の施行により舞台は宇宙開発委員会だけではなく、内閣府の宇宙開発戦略本部も含めた議論になると予測している。まだキャンセルという話にはなっていない。

Q:スペースVLBI衛星のASTRO-Gはもっと干渉計の基線長を伸ばす軌道に入れることはできないのだろうか。
阪本 高分解能の観測を行うためには基線長を伸ばすことと、観測周波数を上げるという2つの方法がある。ASTRO-Gは後者の手法を採用している。

Q:宇宙論的なダークマター、ダークエナジーのような観測は行っているのか。
阪本 高エネルギー物理が関連している。アメリカと共同で行っているGRASTというガンマ線観測衛星にも日本は関わっている。ダークマターの候補に未知の粒子があるが、その対消滅でガンマ線が観測される可能性が指摘されている。

——ここで私は参加企画があったので退席した。

 笹本祐一さんのレポートによると、どうやらその後で以下のようなやりとりがあったそうだ。

 この件については、笹本が質問して確認してみたところ以下のような答えを得ました。
小澤理事「今の中期、2006年から11年までの5年間のあいだには打ち上げ計画はありません。JAXAとしては、2012年から17年の次の中期においてはやぶさ2をぜひ打ち上げたいと思っています」
「なんでH2Aロケットではやぶさを打ち上げないんですか?官需だし、打ち上げ機会の増大にも繋がると思うんですが」
小澤理事「H2Aではやぶさ打ち上げというオプションも、もちろん検討しています。H2Aでさまざまな衛星を打ち上げたいと考えています。科学衛星も、ものによっては上げます。用途に合わせて効率良くロケットを上げていきたいと考えています」

 これはひょっとすると期待が持てるかも、だ。小澤理事は、経営企画と宇宙探査を担当している。その本人がJAXAとしては、2012年から17年の次の中期においてはやぶさ2をぜひ打ち上げたいと発言している。

 はやぶさ2の計画は当初2010年打ち上げを目指していたものが、予算が付かなかったり、海外の打ち上げ手段調達を実施条件に付けられたりで、ずるずると遅れている。

 私は、2014年打ち上げがタイムリミットと聞いている。これ以降になると今のところ適当な目標天体が存在せず、その次のチャンスが2018年になるのだという。こうなると、「マルコポーロ(はやぶさMark2)」と実施時期がかぶってしまうので、「はやぶさ2」は自動的に消滅する(8/26追記:つまり、はやぶさ2が消滅すると、日本の小惑星探査は2003年打ち上げのはやぶさから15年も空いてしまうということになる。あれほどまでの成果を挙げたミッションに対してあまりにひどい仕打ちだと思う。なによりも15年も空けてしまうと、はやぶさで蓄積した技術も、育てた惑星科学の研究者も散逸してしまうだろう。そしてもちろん、現状ではマルコポーロを2018年に打ち上げられる保証などない)。

 逆に言えば2013年か2014年打ち上げとなると、たとえ海外の打ち上げ手段調達が失敗に終わっても、H-IIAによる打ち上げがあり得るということだ。

 担当理事がタウンミーティングでそう発言したのだ。今後に注目しよう。

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Comments

> DAICON7では、JAXAのタウンミーティングが同時開催された。SF大会と同時開催というのはJAXAも味なことをする。

今回のタウンミーティングにて、JAXAとの折衝を担当しました。
そこで広報担当の方の話を聞いて感じたのは、一般の方に知っていただこうとしている熱意は非常にあるのですが、そのための手段であるタウンミーティングがそれが機能していないようでした。
タウンミーティングは実施したい団体からの申し込み制であり、JAXAとしては聞きたいテーマを言ってくれればいくらでも対応できる用意があるのに、どこも漠然としたテーマしか出してこないとのことで、SF大会は具体的なテーマを明確に指定してきたため、企画部門のトップを出してきたようです。

ISAS系の話が少なかったのは、翌日の宇宙探査企画とかぶらないよう大会で調整してテーマを指定したためです。

Posted by: 池田武 | 2008.08.26 at 02:15 AM

 池田さん、ご苦労様でした。

 なるほど、JAXAが「宇宙には夢がある」式の綿菓子のような広報をする背景には、「綿菓子のような宇宙願望しか持たない」一般の要請があるということなのでしょうか。

 でも、JAXAとしてはそれに甘んじていてはいけませんね。的川先生後継の阪本先生の活躍に期待したいところです。

 宇宙探査企画は大分脱線したので、タウンミーティングでISASの話がもっと多くてもよかったかも知れません。

「みんなはやぶさが大好きなんだな」と再確認できたタウンミーティングでした。

Posted by: 松浦晋也 | 2008.08.26 at 07:54 AM

 宇宙作家クラブニュース掲示板の記事を担当した笹本です。
 あちらは基本的にニュースを伝える掲示板なんで、出来る限り個人のコメントは避けております。なもんでこの場を借りて正直な感想をば。

「広報が広報すべき相手はマスコミじゃなくて国民だろ!」とかねがね思っていたんですが、当の広報がそう思っていない事が判明して脱力しました。だいたい今どきテレビが一番新聞二番、三時のおやつは博報堂なマスメディア調査をしてるところからして旧来の宣伝会社にいいようにもてあそばれてるんだろうなあ。

 JAXAは自前でサイトを開設しており、打ち上げの時にはJAXAテレビでのストリーミングも行っています。これは、すでにJAXAがマスメディアの一端を担っており、そのための手段も持っているってことなんだけれども、なんでそれをもっと有効活用しようと思わないのかなあ。何でもかんでもNASAの後追いをするのは反対だけど、こと広報に関する限りはもっとNASAを見習っていただきたい。

Posted by: 笹本祐一 | 2008.08.26 at 04:31 PM

JAXAの広報活動は昔に比べれば良くなっていますが、費用対効果の面で改善すべきところもあります。

またあまりハデに広報活動をして文部科学省から「お叱り」をもらうことを恐れるあまり、自己規制を働かせてしまう悪循環はないのでしょうか?

はやぶさがNSSや米国惑星協会から高く評価されているのに、国内では一向に「アメリカで評価されている」と伝えられないのと根っこは同じ気がします。

Posted by: DVDを見せたがる男 | 2008.08.26 at 09:52 PM

タウンミーティング最初の10分ほど聞いていました。紹介ばかりでつまらないので出てしまいました。質疑応答になるころにまた来ようと思ったのですが、結局行きませんでした。
なんか入り口で登録していますかとしつこく聞かれて、入るときにチェックまでされたうえに、何時までもその人達が入り口を見張っているので、入りにくいと感じました。広報活動の改善はここから始めないとダメですね。
それに、専門的な内容を広報する必要があるのにテレビが第一と言っているようでは広報担当者を変えた方がいいと思います。テレビは補助として正確な内容はインターネットなどで伝えた方が盛り上がると思います。

Posted by: 半日庵 | 2008.08.28 at 10:07 PM

うう、すいません。
事前申し込みでは参加者のハードルが高いから、なんとか事前申し込みなしにしてほしいとJAXAと交渉したのですが、原則事前申し込みで当日空席があれば入場可という条件にするのが精一杯でした。
チェックのスタッフはJAXAの人間ではなく、DAICON7から出してくれとの要請があったので、こちらから出しています。

事前申し込みにしても当日チェックにしても、SF大会では他の企画より少し手間が増える程度でやっていますが、イベント慣れしていない主催者だと対応が大変だろうなと感じました。

Posted by: 池田武 | 2008.08.29 at 12:29 PM

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