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2009.06.19

MikuMikuDanceとオリジナリティ

 アイマスMad、ミクオリジナル曲とくると、最後はMMD(MikuMikuDance)なのだが、これは前二者とは違って、ちょっと問題含みかなという気がしている。

 ソフトウエアとしてのMikuMikuDanceは、どんどん進化している。作者は3Dモデルに対する物理シミュレーションを入れ込んでいるようで、開発途上のバージョンによる動画も公開されている。使用できるモデルもどんどん増えており、可能性は以前よりも大きくなっている。これは間違いない。

 ではなにが問題なのか。まずは、以下の2つの動画を見てもらいたい。


 Love & Joyでミクとチビミクが踊る踊る。爽快の一言に尽きる。


 ブリトニー・スピアーズの「TOXIC」のビデオをボーカロイド派生キャラの弱音ハクで再現したもの。やー、笑っちゃうぐらい良く出来ている。よい子は見ちゃ駄目よ。

2009.6.24追記:以下の記述は前提となる認識に事実誤認がありました。詳細は訂正:MMDオリジナル振り付けについてをご覧下さい。記事は削除せず、このまま残します。


 ところが、これら2つには共通点がある。「既存の振り付けをMMDでなぞっている」ということだ。


 ミクオリジナル曲だと、受けたら次にリアルな歌い手達が「歌ってみた」をアップするのだが、MMDではそうはなっていない。MMDから新しいダンスの振り付けが生まれ、「踊ってみた」というビデオがアップされる状況になっていない。つまり現状ではMMDは現実世界のコピーツールであり、MMDから始まって現実に新しい情報が波及していくということにはなっていない。

 振り付けは、身体的なものだから、バーチャルなMMDでは難しいのだろうか。新しいダンスがMMDから始まれば、もっと面白くなるだろうにと思うのである。

 まあ、ニコニコ動画でのマッシュアップという意味では、あまり心配することはないのかも知れない。最初に紹介したLove & Joyの場合は…


 まず最初にこのビデオがあった。すると次に…


 「踊ってみた」の人が、こうやって自分で踊ってみたビデオをアップしたわけだ。これが受けてしまって…


 「踊ってみた」の振り付けを、モーションデータとしてMMD上で再現する“職人が出現”。モーションデータをネットで公開したものだから…


 こんなのや…


 こんなのが次々にアップされ、その間にモーションデータもどんどん手が入って洗練されていき、ついには…


 こういうビデオまで出現するに至る、というわけだ。

 ネットの特徴であるマッシュアップは、理想的なぐらいにうまく回っているのである。

 MMDのオリジナリティという意味では、ダンスよりも、もっと日常的な動きをさせてみたビデオに面白いものが多い。


 この半年の間で、私が一番気に入ったMMDのビデオ。日常的なありふれた光景をきれいに切り取っている。もちろん技術的にもハクのギターの運指など見るべきところは多い。MMD杯というのは、MMD使いの強者達が、それぞれに技術の限りを尽くしてビデオを競い合う、ニコ動上のイベントのこと。ここに出てくるビデオはどれも非常に質が高い。


 その第2回MMD杯優勝作品がこれ。よく動くんだが、これが上の「めると」より受けるってことはニコニコ動画のユーザーは基本的に若いんだろうなあ。私には、この中身なしでひたすら動き続けるというのにはちょっとついていけないという感じがする。せめて、ウイットの効いたオチが欲しかったな。


 こういうのがもっと増えるといいな、と思う。この動画は音楽も映像も映像も稚拙だと思うけれど、精一杯自分のやり方で前に進もうという意志を感じる。
 オリジナルかコピーかなんて問題は、マルセル・デュシャンが男性用小便器にサインを入れて「泉」と題名を付けた段階でとうの昔に吹っ飛んでいるわけだが、それでも私は、自分なりのやり方で語っていこうという姿勢に肩入れしたい。「しょせん、デジタル時代の個性はカットアンドペーストからしか生まれない」というような斜めに構えた態度は、評論家に任せておけばいいのだ。


 とはいえ、ネタ系の楽しさというのは確かにある。それも頭の悪いネタ系の面白さというのは。これは見事なぐらい頭が悪いネタ系動画。もちろん褒め言葉である。いやー、ドロイド、色っぽいですな。


 ネタといえば、MMDはこんなこともできるのだ。とにかく作っちゃったということに感心。


 楽しませてもらっている以上、コミュニティにはなんらかの情報を提供して返さねばいけないのだが…


 かくいう自分は、昨年秋にこれをアップして以降、MMDをいじっていないのであった。その後のソフトウエアの充実っぷりは半端ではないので、またなにか作ってみたいとは思っているのだけれど。

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Comments

あなたは頭の中に想像した「バーチャル←→リアル」という結論に
満足され、その結論ありきでこの稿をお書きになっていませんか?

『「しょせん、デジタル時代の個性はカットアンドペーストからしか生まれない」
 というような斜めに構えた態度は、評論家に任せておけばいいのだ。』
というのは、ハスに構えたヒョーロンカではなく、
松浦さん、あなたご自身がそうお考えになっているのではありませんか?

「楽しませてもらっている以上、コミュニティには
 なんらかの情報を提供して返さねばいけない」と仰いながら、
「問題含み」「ではなにが問題なのか。」と言い切ってまで
間違った認識に基づいて自説を吹聴する、というのは
いかがなものかと存じます。


>ミクオリジナル曲だと、受けたら次にリアルな歌い手達が
>「歌ってみた」をアップするのだが、MMDではそうはなっていない。
>MMDから新しいダンスの振り付けが生まれ、
>「踊ってみた」というビデオがアップされる状況になっていない。

あなたが仰っている様なものはすでに存在しています。

たとえば、ラジPの製作したオリジナルの振り付け
http://www.nicovideo.jp/watch/sm6819924
から自然発生的、かつ連鎖的に始まった「ラジP杯」。
この動画を発端としてたくさんの人が同じ振り付けで
動画を作っているのですが、このラジP杯から
リアルの人間が「踊ってみた」動画に派生した例などが
あります。( http://www.nicovideo.jp/watch/sm7021242

ラジPのほかの動画をごらんいただければ、
彼がオリジナルダンス振り付けを何曲分も作っていることを
確認できると思いますし、あなたが言及されているMMD杯にも、
オリジナルの振り付けでダンスをしている動画はたくさんありました。

また、この様な例は別に最近に限ったことではなく、
MMD初期の名作「にとりの唄」(sm3728421)の
踊ってみた動画などの例もあります。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm4073839


こういった動画は、「mmd振り付け」タグ
( http://www.nicovideo.jp/tag/MMD%E6%8C%AF%E3%82%8A%E4%BB%98%E3%81%91 )
をごらんいただければ見つけることができるでしょう。

なぜここでいちいち個別の事例を挙げているのかというと、
そもそも、ニコニコ動画全体から見てMikuMikuDance動画の
製作者人口は非常に少なく、VOCALOIDや「歌ってみた」などと
比して、一般化して語れるほどの数がないのです。

況や、それがMMDの愛好者以外の目に触れ、たまたまそれが
ダンスを踊って動画を公開することのできる人物であり、
かつそのMMD動画のダンスを気に入り自分で踊ってみようと
考えるに至る可能性ときたら。
このことは上記タグの大百科にも記載されています。
http://dic.nicovideo.jp/a/mmd%E6%8C%AF%E3%82%8A%E4%BB%98%E3%81%91

こんな状況下でさえも、少なくとも私がこのように枚挙できる
程度にはあなたの仰るようなコラボレーションは発生しているのです。


このコメントを書いている現在、「歌ってみた」タグのついた動画は
84,113件、「Vocaloid」タグのついた動画は52,965件あります。
対して、「MikuMikuDance」タグのついている動画は2,809件に過ぎません。
(VOCALOID動画については、Vocaloidタグで代表できるとは言いがたいほど
タグが細分化しているため、実際にはもっとたくさんの動画があります)

『万の単位でPがいるVOCALOID界隈と
 カラオケレベルなら誰でもできる「歌ってみた」界隈の組み合わせ』

と、

『体力や瞬発力、そして自身の身を動画に晒さなければ
 始まらないという障壁のある「踊ってみた」界隈と、
 振り付けの考案とモーション作成の両方のスキルを
 持っていないとできないMMDオリジナルダンスの組み合わせ』

が、

「一方にはムーブメントが起きていて、もう一方には起きていない」と
同等に対照比較することができるとお考えになっている事自体にも
無理があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。


あなたはいつぞや、神舟7号に関する陰謀論を展開するような
いわゆる「厨房」たちの幼稚なコメントについて、
「君らの目は節穴で、君らの脳は空っぽだ。
 まったく情けない。この、バカ共が!」
と罵っておられましたね。

しかし、それは単にそのときはあなたが専門家だったから
そう言えただけだったのではないでしょうか。

今回の件に関し、いや、森羅万象すべてにおいて、
あなたの目は節穴でなく、あなたの脳は空っぽではないと
お考えなのでしょうか。


先のアイドルマスター、そしてVOCALOIDについての二つのエントリを
見ても、あなたの言説には
「ニコニコ動画は所詮素人のガキが作って公開している場だし、
 見ている人間もガキばかりだ」
という先入観のようなものが見え隠れし、非常に不愉快に感じます。
(なお、私はMMDだけでなく、VOCALOID、アイドルマスターの
 いずれにおいても動画を作成し投稿している者です)

もしそのようにお考えになっているのでしたら、
コミュニティに対する貢献などお考えにならなくても結構ですから、
二度と近傍をウロウロしないで頂きたいと思います。
きっとその方が互いに幸福なのではないでしょうか。

あるものが見当たらない、というときに、
想像に基いて、事実に反しているかもしれない自説を展開することよりも
そういったものを見つけ出そうとより良く探すという行動のほうが、
ジャーナリストらしいと私は考えます。
松浦さん、ご専門の分野は違えど、あなたはジャーナリストですよね。

なぜ私がこのような不愉快なコメントをわざわざ書きに
参上したか申し上げますと、私自身があなたのエントリを
読み不愉快だと感じたということも大いにありますが、
実際にモーションを作っているMMD界隈の仲間たちが、
あなたのこのエントリを見て悲しんだり怒ったり
していることに、より強い憤りを感じたからです。
その中には、あなたが本稿で「職人」とお書きになって
称えておられる人も含まれています。


「楽しんだので、そのコミュニティに貢献したい」と
お考えになったお気持ち自体は本心であると信じたいです。
そのお気持ちに寸毫の嘘もないのでしたら、
事実に反する、ネガティブキャンペーンとも取れるような
あげつらいを行うのはお控え願えませんか。


あなたが真にプロのジャーナリストであることを期待致します。

Posted by: cocoonP | 2009.06.20 at 02:11 PM

まあ一時期ラブアンドジョイばっかで飽きたというのもあるんじゃないのかしら

hirax.netの平林氏はパチものA-BikeとほんものA-Bikeに実際に乗ってみて比べてパチのが好き(あるいはパチにも部分的にホンモノより勝る点がある)と書いていますね

松浦氏の潜在的なコピー否定主義(←ご自身は否定されるだろうが)はパチものA-bikeを手にとってみるだけの精神の自由さをもちうるだろうか
(否定主義と肯定主義については須原一秀氏の著作を参照)

Posted by: anonymous | 2009.06.20 at 11:09 PM

cocoonPは毎度毎度一々無駄に煽る癖をどうにかすればいいのに
神舟の"バカども"騒動と結びつけるのも飛躍が過ぎるし
挙句眼が節穴だの脳が空っぽだのと…
お友達の職人様様の溜飲を下るためなのかもしれませんがなんとも

Posted by: sifz | 2009.06.21 at 12:13 AM

ゲキド・オブ・ハツネの評価と云うか感想で
この人が何もわかっちゃいねぇなwと思われても仕方ない
これだけ動画を並べておきながらニコ中の感覚が理解できない
理解できないのは仕方ないが批評するなら理解しとけよw

Posted by: メル | 2009.06.21 at 05:27 AM

初めまして。
ミネバ様新♪と申します。
アニメージュの読者ページに「MMDはノーベル賞ものだっ‼」という駄文を載せることに成功した身ゆえ、当エントリの一部表現にはさすがに、「先生分かってない、分かってないよ‼」という憤激にかられたものですが。
まあ。
ニコ動はすでにして広大。
専門観察家ではないのだから、見えていないモノもあって当然でしょうね。

それにしても。
MMDとその使い手たちは、本当にすごい。
3Dアニメの偉大な転換点に我々は立ち会っているとつくづく思うですよ……

Posted by: ミネバ様新♪ | 2009.06.21 at 09:36 PM

試行錯誤のコストがまだ高いんじゃないですかね。
高価なツールが力を持っているのもそういう部分のように思うし。プロユースでは手間を省くためにモーションキャプチャを使うと聞きますので。

Posted by: dum | 2009.06.22 at 11:23 PM

 数日、ナローバンドしかない場所に出かけていました。私の事実誤認は明らかなので、別途記事を投稿しました。

Posted by: 松浦晋也 | 2009.06.24 at 01:23 AM

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