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2009.06.23

訂正:MMDオリジナル振り付けについて

 訂正です。

 前回「MMDから新しいダンスの振り付けが生まれ、「踊ってみた」というビデオがアップされる状況になっていない。」と書いたが、これは事実誤認だった。

 コメント欄でcocoonPさんから指摘され、確認したのだが、まず「MMDから新しいダンスの振り付けが生まれ」という部分は、オリジナルの振り付けがかなりの数、投稿されている。MMD振り付けというタグが、オリジナルの振り付けを探す鍵だった。

 「『踊ってみた』というビデオがアップされる状況」については、まだきちんと探せてはいないのだが、いくつかMMDで発表された振り付けを実際に踊った例を確認した。

 私の事実誤認である。

 何が間抜けって、MMD杯の動画をチェックしている時に、この動画もちゃんと観ていたのだ。

 ところがLove and Joy関連の動画を追っかけているうちにすっかり記憶から抜け落ちしてしまっていたのであった。我ながら全くもって情けない。

 cocoonPさんのコメントには、「実際にモーションを作っているMMD界隈の仲間たちが、あなたのこのエントリを見て悲しんだり怒ったりしている」とあるが、もしもそのような方がおられるなら、大変申し訳ありませんでした。

 なぜこういうことになったかを考えてみるに、「音を扱う音楽=ミクオリジナル曲と、体の動きを扱う振り付け=MMDによるオリジナル舞踏との間に、なにか人間の側の情報処理の仕組みに大きな違いがあるのではないか」ということを考えていたからだろう。

 ラマチャンドランによる幻肢痛の治療に見るように、「自分で、自分の体を『これは自分のものである』と認識するメカニズム」は、なかなか一筋縄ではいかないものだ。新たな振り付けの創造にあたっては、そこに「自己の肉体を自己として認識する仕組み」が大きく影響しているのだろう。

 ボーカロイドは、「歌う」という行為を仮想化してパソコン上で(ある程度の精度で、ではあるが)再現することに成功し、その結果ボーカロイドによるオリジナル曲がアップされ、さらに「歌ってみた」という形で現実の歌声に遡上するという現象が起きた。

 では、MMDは「踊る」という行為を仮想化してパソコン上で再現することに成功しているのか。その結果オリジナルの振り付けがアップされ、さらに「踊ってみた」という形で現実の舞踏に遡上しているのか?

 そこで、「人体における歌声と舞踏との自己認識が異なるなら、現象として違うことが起きているのではないか」というのが、私の作業仮説だったのだ。ところが、Love and Joy関連の動画を追っかけているうちに、「違っているに違いない」という先入観に陥ってしまったようである。
 そこには、自分がMMDをいじったときに手こずった経験も投影されているようだ。実際、自分でやってみるとミクが思っていたように動いてくれなくて、ずいぶんと苦労した。

 ただ、ここまで短時間でざっと見ただけなのだが、確かにMMDによる投稿は、ボーカロイド曲の投稿に比べて数が少ない。そして「歌ってみた」と「踊ってみた」を比べると、「踊ってみた」はずっと少ない。

どのタグで比較するかによるのだが——
2009年6月24日時点で、


  • 初音ミク:50,319件
  • MikuMikuDance:5,544件
  • 歌ってみた:128,738件
  • 踊ってみた:16,209件
  • ミクオリジナル曲:1,036件
  • MMD:221件

 だいたい規模として、1/10から1/5程度と判断していいようだ。大まかに言って「桁が違う」わけである。

 これが、cocoonPさんの指摘したような敷居の高さのせいなのか、それとも私が考えていたような「人間の自己認識の仕組みの違い」のせいなのかは、現状ではなんともいえない。そもそも「自己認識の仕組みが違うから敷居が高くなる」のかもしれないし——これ以上は、別の切り口のデータが必要になるだろう。例えば、ミクを使ってDAWで作曲している時と、MMDで新しい動きを考えている時にそれぞれ脳波の多点計測をするとか。

 「歌と踊り」とまとめられることも多いし、実際これらは切り離しがたいものではあるのだが、このような差異が存在する。それもニコニコ動画ではっきりと見えてくる。その差が、私にとって面白かったのだけれど、でも、先入観で事実を誤っては話にならない。反省しきりだ。

 罪滅ぼしの意味も込めて、ラジPによるオリジナルの振り付けをいくつか紹介する。これは手練れの作品だ。なかなかMMDでこうは動かせない。



 ラマチャンドランが、自らの研究を一般向けに解説した本。人間の脳が、自分や世界をどのようにして認識しているかを、彼は独創的な数々の実験を通じて明らかにしてきた。ものすごく面白く、かつエキサイティングである。読んでない人は是非とも読むべき名著だと思う。

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Comments

うーむ。
MMDがニコ動の他の分野に遡上したり還流したりというのは、あまり意味の無い問いかけだと思いますがね。
ふと思い出してください。
「ニコニコ技術部」の成果が、他の分野にどれくらい反映したでしょうか、しているでしょうか?
他分野からのインスパイアででっち上げられた物も多いでしょう。
「すごい」のは誰しもが評価するところでしょう。
オリジナリティについても「無い」という者も無いでしょう。
しかし。
「やってみた」系に応用のきくものがそんなにあったでしょうか?

ただ単に、「難しい」ものは、数多くは「できない」。
その程度の理由では無いでしょうか?


MMDはダンスソフトから始まってはいますが、「3Dアニメ制作ツール」として進化を続けています。
「舞踊」とか、「ネタ回し」に囚われていると、その真価を見誤ることになるでしょう……。
そう、多分いずれ、ニコ動の範疇だけでは収まらない存在になっていくことでしょうとも。
アニメージュ読者コーナーの地縛霊たる私が言うんだ間違い無し。
……説得力も無いかも知れんが、ふふ。

ところで。
「種子島宇宙センター」をMMD化した作品もあるので、(sm7165994、sm7205475)ぜひご視聴の上、専門家としてツッコミを入れていただきたいところです(笑)。

Posted by: ミネバ様新♪ | 2009.06.24 at 10:07 PM

L/Dから、
とか見慣れぬコメントがついてるなぁと思ったらこういう事ですか・・・・。

動画を作る上で自分が考えていた事。
「いつか作った物を踊ってくれる人が出るといいな。」
それは当然のごとく既存をなぞった物では無く、
自分で考え動きにした物であって欲しいと考えてました。

難しいところに踏み込むと、話がややこしい事になりそうなので止めておきます。
こんな時間では自分の脳味噌もいつも以上に回らないし。

ただ、1つだけお伝えしたい事といえば・・・・・、

 自分はダンスの経験は小学校中学校のマイムマイム程度の経験しかありません。
 自分は人間の動きに関して専門的な知識を得るような学習をしたことがありません。
 自分はMMDに出会うまでは3Dに関わるような事を一切したことがありません。
 自分はそれまで映像を作るような仕事も趣味も持っていたことがありません。
 つまり、MMDに出会うまでは、この分野に関して何も基礎知識を持たない人間でした。

そういう訳で、
「これは手練れの作品だ。」
これはありえません(笑)
事実誤認といわざるを得ない!

でも、ありがとうございます。

近々また新しいのを完成させたいと思ってます。
興味がありましたらぜひ。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm7280357

Posted by: ラジ | 2009.06.25 at 04:18 AM

 わ、ご本人が。書き込みありがとうございます。お恥ずかしいところ見せてしまいました。

>MMDに出会うまでは、この分野に関して何も基礎知識を持たない人間でした。

 そうなんですか。それでもここまでのことができるのですね。となると、今後が楽しみです。きっとMMD発のダンスで「踊ってみた」もいろいろと出てくることになるのでしょう。

 “手練れ”というのはMMDの扱いについても、です。あそこまで使いこなしているのですから、“手練れ”という形容は引っ込めませんです(笑)。

 次の作品も楽しみにしています。

Posted by: 松浦晋也 | 2009.06.26 at 07:52 PM

ニコ動では踊ってみたも大好きでよく観ますが、振り付けってのは
それだけで大変な技術と才能の必要なスキルだと思います。
誰でも出来そうでいて実はそうではないジャンルですね(観る人を魅了するとなると)

だからオリジナルで優れた振り付けを提供する方は大変貴重で
MMDを含めて踊ってみたの世界では大変重要な方々だと思います。
ちょっと前はおかめいどさん、今の旬はやっぱりYumikoさん!

MMDでオリジナルを踊らすにはMMDの操作技術+オリジナルの振り付け
技術が必要で、2重に敷居が高くなりますので投稿できる人が極端に
減りますよね。ラジステップのラジPさんが有名なのは魅力+希少性も
あると思います。ニトリの人のくつしたPもオリジナル振り付けですよね。
数が少ないからゼロと勘違いしてもまあ仕方ないかも

Posted by: s.i | 2009.06.29 at 12:48 PM

VOCALOIDの作曲とMMD振り付けの両方を手がけています。

(1)技術的に作曲とMMD振り付けとどちらが難しいかって聞かれたら
たぶん作曲って答えると思います。

頭に思い描いたメロを忘れないうちに形として(自分の場合キーボードをたたいて)残すっていう技は、かなり至難の技です。
メロって気を抜けば、一瞬で消えていってしまいますから。
(メロを思いつくときって寝ていたり、お風呂に入ってたり、
通勤途上だったりします。思いついたメロをどうやって覚えておくか、すごく難しいと思います。)

一方、MMD振り付けに関しては、とりあえず自分で踊ってみてイメージを確認できるし、絵に書いたりメモにして残しやすいのかなって思っています。


(2)一曲分の作品を作る作業量からみると
(アイディアが出来ちゃってるものと想定して)
曲作りの方がMMD作品作るより圧倒的に速く完成します。

専念すれば一月あたり平均8曲ペースで作ってました。
MMD振り付け作品だと一月に1曲分できるかどうかだと思います。

難しさを問わずに単純にワークだけを捕らえるとこういう数字かなと思います。

(3)製作者の人数の違いもあると思う増す。
VOCALOID作曲者に比べて、MMD作者のほうが圧倒的に少ない。
最低でも5倍以上の差はあるのじゃないかな

単純に考えると40倍の差があって当然のところ10倍の差っていうのは、MMD作者さんのほうが、すごく頑張っておられると思います。

このへんは曲だけが出来てもイラスト借りたり描いてもらったりしないと、動画として投稿できないので、単純比較は難しいでしょうけれど。


参考にしていただければ幸いです。

Posted by: nakachan | 2009.07.28 at 05:00 PM

>nakachanさん

 情報、どうもありがとうございます。作曲より振り付けのほうが簡単にできるという方もいるのですね。

>メロって気を抜けば、一瞬で消えていってしまいます

 私はICレコーダーをいつも手元に置いて、メロディを思いついたらすぐに歌って録音しておくということをしています。その時は「モーツアルトに勝った!」と思っていても、後で聞き直すと、全然ダメだったり、ですが。

Posted by: 松浦晋也 | 2009.07.30 at 08:59 AM

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