« 傍聴記録:月探査に関する懇談会 第1回会合 | Main | 「天にひびき」(やまむらはじめ)が面白くなりそうだ »

2009.08.05

はやぶさリンク:映画「サマーウォーズ」に小惑星探査機が登場

 「はやぶさ」をモデルにした小惑星探査機が登場すると聞いて、これは行かねば、と見に行ってきた。現在ロードショー公開中のアニメーション映画「サマーウォーズ」(公式サイト)

 「時をかける少女」でブレイクした細田守監督作品。監督:細田守、脚本:奥寺佐渡子、キャラクターデザイン:貞本義行の3人は、「時をかける少女」と共通。
 「時かけ」は小規模公開から口コミでヒットしたが、今回は堂々のロードショー公開である。

 あらすじは、公式サイトの「イントロダクション」を参照のこと。

 面白かった!

 長野県上田市に集う旧家の一族が、ひょんなことから巻き起こる世界の危機に一致団結して立ち向かうという、なんとも妙な筋書きだが、それが滅法面白い。「華麗なる一族」や「犬神家の一族」のような、日本の“一族映画”が描き出す湿っぽさや陰湿さは、この映画の陣内一族にはこれっぽっちもない。「ダイナスティ」に代表されるアメリカ“一族ドラマ”にあるようなどろどろの愛憎劇とも無縁だ。乾いて、からっとしていて、陽気だ。

 なにより脚本がいい。かなり複雑な状況設定を、オープニングの陣内本家に集まってくる親族の会話だけでテンポ良く説明してしまうのもうまいし、そこから畳み込むように事件を起こして、本筋である“夏の戦争”に持ち込むストーリー運びも見事だ。

 しかも、主人公とヒロインを含め、主要登場人物29人という群像劇であるにもかかわらず、すべてキャラクターがくっきりと対比されており、「これ、誰だっけ?」ということが一切ない。血の繋がった親族と、そこに嫁入りした女性、生まれた子供など顔や体格を描き分けたキャラクターデザインが、とてもよい仕事をしている。

 この夏のお薦めだ。私も、もう一回ぐらいは映画館に足を運ぶことになるかもしれない。

 が、理工系のシチュエーションとなると、けっこう緩い。冒頭、主人公が量子コンピューターで素因数分解を行うための「ショアのアルゴリズム」に関する本を読んでいるので、スタッフも事前に相当調査したらしいことが分かる。が、それでも、暗号のあり様とか、ネットセキュリティの描写とか、アバターの操作方法とか、もうちょっとなんとかできただろうという部分がある。
 多分、理工系のアドバイザーを入れて、あと数回脚本の練り直しをやっていたら、もっと良い映画になっていたろう。

 小惑星探査機「はやぶさ」ならぬ「あらわし」については、「このストーリーなら仕方ないかな」といったところだ。

 小惑星「イトカワ」ならぬ、小惑星「マトガワ」を探査した「あらわし」、この「あらわし」の再突入カプセルが、ラストのクライマックスに関係してくるのだが、まあ、あれはないよね。

 ネタバレは避けるが、本来、再突入カプセルは、サンプルを保護するために、最後はパラシュートでふわふわ降りてくるものだ。また、「はやぶさ」の帰還カプセルは惑星間軌道から直接大気圏に突入する。地球周回軌道にいったん入るなんて、まだるっこいことはしない。運動エネルギーという点では、地球周回軌道からの帰還よりも、惑星間軌道からの直接突入のほうが、ずっと大きくなる。

 ちなみに、小惑星「マトガワ」は、実在する。
★新しい小惑星を「マトガワ」と命名(ISASニュース1997年7月号)。

 とはいえ、この映画により、「はやぶさ」にもう一つの称号が加わったことは間違いない。すなわち、「映画のモデルとなった、日本初の惑星間探査機」である。これまで、ストーリーの根幹に関わる存在として映画に登場した探査機といえば、私は「スタートレック」の“ヴィジャー”ことヴォイジャー探査機ぐらいしか思いつかない。実際、「はやぶさ」は大したものだな。

|

« 傍聴記録:月探査に関する懇談会 第1回会合 | Main | 「天にひびき」(やまむらはじめ)が面白くなりそうだ »

はやぶさリンク」カテゴリの記事

アニメ・コミック」カテゴリの記事

宇宙開発」カテゴリの記事

映画・テレビ」カテゴリの記事

Comments

松浦さんのお勧めを読んで、早速見に行きました!本当に面白かったし泣けました。

今年一番の映画になりそうです。

Posted by: koji | 2009.08.10 at 12:16 AM

お先に二回目を見ました いい映画です。
私も細かいことは気になりますが 次の映画に期待して今回は不問にします。
今月下旬に公開される映画「宇宙へ」も気になるところです。

Posted by: かんばせ | 2009.08.11 at 03:43 PM

 「宇宙へ」は、私、試写会で見ました。貴重映像満載なのですが、後半、どうしてもシャトルの事故が影を落とし、悲愴な調子になっていきます。

 難しいですね。

Posted by: 松浦晋也 | 2009.08.13 at 11:14 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/19821/45848738

Listed below are links to weblogs that reference はやぶさリンク:映画「サマーウォーズ」に小惑星探査機が登場:

» 【情報】この夏休みはサマーウォーズの侘助の台詞から数学の自由研究をしたり道徳の自由研究をしよう [晴録]
(一部論理問題に関する用語を「うみねこのなく頃に」から借用した。僕はまったくプレィしていないが「うみねこのなく頃に散」というタイトルはとても素敵だ)。  「数学の自由研究」という検索キーワードで来る人が多いので、書く。今度は真面目に数学の自由研究だから、... [Read More]

Tracked on 2009.08.21 at 01:26 AM

» 「サマーウォーズ」 第7位 [映画コンサルタント日記]
上映スクリーン数: 127オープニング土日興収: 1.27億円「ヱヴァンゲリヲン [Read More]

Tracked on 2009.09.02 at 10:29 PM

» サマーウォーズとはやぶさ [銀河ヒッチハイク日記]
サマーウォーズ見た 以前、劇場アニメの『時をかける少女』を見ようと思ったきっかけは松浦晋也さんのブログ記事でした。今のところ映画館で見て、そのあとDVDも買ったのはこれと『逆境ナイン』の二本だけ。それくらい気に入ってます。 その松浦さんが今度は『サマーウォーズ』もプッシュしていたので、一応気になってはいたけどそれをきっかけに見ることにしました。(「時かけ」のときは松浦さんの感想を読むまでまったくのノーマークだった) 松浦さんが指摘しているネットワーク、セキュリティ関係の詰めの甘さは確かに感じたけど... [Read More]

Tracked on 2009.09.07 at 04:11 AM

« 傍聴記録:月探査に関する懇談会 第1回会合 | Main | 「天にひびき」(やまむらはじめ)が面白くなりそうだ »