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2009.08.02

夏コミ、風虎通信の新刊、もう一冊はRD-170

 無事印刷所に入稿したという連絡を受け、表紙の画像データを送ってもらったので、この夏のコミックマーケット76、風虎通信の新刊2冊を改めて紹介する。

Rd170_3 Scud_2

 風虎通信は、3日目日曜日に出展。ブースは西館の「へ01b」。初めての方はコミケットカタログを事前購入し、ブースの位置を確認すること。

日曜(16日)西へ01b「風虎通信」
「宇宙の傑作機12 RD-170」
著者:T.H.Grace

「宇宙の傑作機別冊 スカッドミサイル」
著者:水城徹(宇宙機エンジニア)

 前回は「スカッドミサイル」を紹介したので、ここでは「RD-170」について書くことにする。

 この「宇宙の傑作機12 RD-170」は、三菱重工名古屋誘導推進システム製作所(LE-7AとLE-5B-2を製造)と、IHIエアロスペース(SRB-Aなど固体ロケットの製造、GXのシステム設計を担当)に、IHI相生事業所(GX用LNGエンジンを開発)が、それぞれコミケに人を派遣して、この「RD-170」を技術者の人数分購入していってもいい。それぐらい、この本には意味と価値がある。

 RD-170は旧ソ連が開発した巨大ロケット「エネルギヤ」のブースターに使用したロケットエンジンだ。だが、RD-170の意味はそれだけに留まらない。

 このRD-170系のエンジンこそが、現在世界最高の技術水準を誇るロケットエンジンなのである。

 ウクライナの「ゼニット」ロケット第1段に使用される「RD-171」、アメリカの「アトラスV」の第1段エンジン「RD-180」、ロシアの新型ロケット「アンガラ」の第1段「RD-191」、さらには今月にも韓国が打ち上げる新ロケット「ナロ1(KSLV)」第1段のRD-151(このエンジンはRD-191との説もあり)、と次々と派生型を生んだ、「ロケットエンジン最強の血統の祖」ともいえる。

 その恐るべき高性能っぷりは、こんな表を作るだけでも明らかだ(推力と燃焼室圧力は、SI単位系と慣用単位系を併記した)。



.

エンジン名称LE-7ASSMERD-170F-1ヴァルカン2RS-68

.

使用部位H-IIA第1段スペースシャトル主エンジンエネルギヤブースターサターンV第1段アリアン5第1段デルタ4第1段

.

エンジンサイクル2段燃焼2段燃焼2段燃焼ガスジェネレーターガスジェネレーターガスジェネレーター

.

推進剤LOX/LH2LOX/LH2LOX/ケロシンLOX/ケロシンLOX/LH2LOX/LH2

.

推力(真空中 kN)110022787903774013503312

.

推力(真空中 tf)112232806789137337

.

比推力(真空中 s)440453337304434420

.

燃焼室圧力(MPa)12.320.424.5711.69.6

.

燃焼室圧力(気圧)1212012426911494

.

再使用不可能可能可能不可能不可能不可能

.

スロットリング定格の72±5%65% - 109%56-100%不可能不可能60-100%

.

初打ち上げ年200119811987196720022002

 同じ推進剤を使う巨大なサターンVの第1段F-1エンジンよりも大きな推力、1割以上高い比推力。柔軟な出力調整(スロットリング)能力、再利用性。

 この高性能を支えているのが、高圧燃焼の技術だ。2段燃焼サイクルは当たり前。LE-7Aの2倍以上、スペースシャトル主エンジン(SSME)よりも2割以上高い燃焼室圧力を達成している。2段燃焼サイクルの場合、プリバーナーは主燃焼室のほぼ2倍の圧力で燃えている。RD-170のプリバーナーは500気圧もの高圧燃焼を実現している。

 しかも、RD-170の場合、プリバーナーが酸化剤リッチで燃焼している(LE-7A/SSMEは燃料である水素リッチ)。何百℃もの温度の酸素過剰な高温ガスを発生させ、それでターボポンプのタービンを駆動しているのだ(実際問題として、ケロシンが燃料だと、過剰なケロシンが高温で分解して炭素が配管やタービンに附着するので、事実上燃料リッチの燃焼は不可能である)。
 配管やタービンは、高温酸素による腐食を防ぐために特殊なコーティングが施されているのだという。コーティングの材質は酸化皮膜だと推定されるが、その材質や加工方法はノウハウとなっている。高温高圧環境で動作するプリバーナーの噴射エレメントなど、いったいどんな材質でできているのだろうか。どんな構造をしているのだろうか。

 なんと高度な、材料と設計の技術だろう。

 RD-170の存在は、日本に対して恐ろしい事実を突きつける。日本は、1980年代からLE-7、LE-7Aを開発した。LE-7系エンジン開発の手本となったのはSSMEだった。1980年代、アメリカはSSMEが世界最高のエンジンと疑いもしなかった。日本もそれを信じ、SSMEを手本に、SSMEよりちょっと性能が落ちる、より簡素な構造のエンジンとしてLE-7を開発した。

 が、その時、ソ連ははるかに先を行く高性能エンジンを開発していたのである。しかもそのエンジンの信頼性は非常に高かった。後に派生エンジンのRD-180をロッキード・マーチンが購入するほどに。

 LE-7のトラブルに手を焼いた日本は、LE-7をデチューンしてより高い安全性を狙ったLE-7Aを開発する。

 しかし、気が付いてみればLE-7Aは「世界最低性能の2段燃焼サイクルエンジン」となっていたのである。ガスジェネレーターサイクルを採用した「ヴァルカン2」と、どっこいどっこいの性能の。
 性能が似たようなものならば、開発と製造、エンジン起動シーケンスの容易さで、ガスジェネレーターのエンジンが優ることになる。

 世界最高クラスのエンジンを開発したつもりが、気が付いてみると「世界先進国のびりっけつ」に日本は位置していたのだ。

 現在、世界のロケットエンジン開発の方向性は、性能は低めに押さえ、構造をよりいっそう簡素化して低コストを狙う流れとなっている。その代表例がRS-68だ。JAXA/三菱重工も、次のエンジンLE-Xではこの方向性を狙っているようだ。

 だが、それでいいのか。エンジンを低コスト化して低性能だが安いロケットを作るのが正しいのか。頑張って高性能なエンジンを開発すべきなのか。
 安いロケットは必要だ。しかし、特に第1段エンジンで高性能を達成しなければ、劇的なコスト削減を保障する再利用型宇宙輸送システムは実現できない。

 そして、SSMEが失敗した高性能と信頼性の両立が、実現可能なことをRD-170は証明しているのである。

 日本が今後、どんなエンジンを目指すのかは、「今までどんなことをしてきたのか」とか、「この方向ならやったことがあるから確実」だとか、「どこかのメーカーがこの方向なら儲けることができる」といったことで決めるべきではないだろう。

 「何が正しい方向か」「どちらに向かうのが50年100年と、未来につながっていくのか」を、考えに考え抜いて決めなくてはならない。確かにRD-170は超絶的な技術の産物だが、別に理解不可能なオーバーテクノロジーを使っているわけではない。この世に存在する元素を適切に使用することで構成されている。現実に存在する、現実に作れるエンジンなのだ。

 「日本の宇宙輸送系の技術開発は、次に何をするべきか」を知るためには、なによりも幅広いデータと情報が必要になる。ある方向にし向けるために恣意的に集められた情報ではダメだ。全方向に、ありとあらゆる情報を集めて吟味しないといけない。

 今回のRD-170の本は、そのための基礎データとなる——と、私は考える。

 宇宙開発関係者必携、と思うのだ。

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Comments

RS-68の燃焼室圧力(MPa)は一桁ずれてるんじゃないでしょうか?

Posted by: ROCKY 江藤 | 2009.08.03 at 01:16 AM

 そうでした。御手数おかけしました。

 訂正しておきました。

Posted by: 松浦晋也 | 2009.08.03 at 01:34 AM

松浦さん、こんばんは。
「はやぶさ2同時打ち上げ」などでお世話になったLH2です。

RD-170とスカッドですか。どちらも非常に興味深いです。ただ、こちらは東京から遠いのでなかなかコミケはいけないんですよ。このような濃い本が一般書籍として、(せめて注文で)届くようになれば嬉しいのですが、日本の宇宙関係の本は層が薄いために難しいのでしょうね。
(日本語の本がないので、濃い宇宙ファンにはどうしても liquid propellant rocket engines」のような洋書が必要になるんですよね・・・。)

私もRD-170は非常にお気に入りのエンジンです。
ちなみに、
>高温高圧環境で動作するプリバーナーの噴射エレメントなど、どんな構造をしているのだろうか。
については、ネット上にも答えがありますよ。
http://www.lpre.de/energomash/RD-170/index.htm#gg
(ロシア語ですが、ロシア語→英語翻訳で英語にすれば読めます)

個人的には、液体酸素ブースターポンプの構造が驚きです。
なんと、プリバーナガスを取ってきてそれでタービンを回した後、それをそのまま液体酸素に溶かし込んでます。ケロシンと酸素の燃焼ガスなのでそんなことをすると液体酸素中に氷とドライアイスが混じると思うのですが…。
他にも、NK-33など、ロシアには化け物エンジンがごろごろしていますね。

Posted by: LH2 | 2009.08.03 at 07:58 PM

ただ、RD-170の先進性に感心するのと、日本のロケットエンジンについての批判は分けて考えるべきではないでしょうか。

松浦さんはとっくに知っておられると思いますが、サットンの「The history of…」によるとRD-170を生み出したグルシュコ設計局(OKB-456)は1998年までになんと95種類のエンジンを開発し、30種類が飛行しています。実験用エンジンを含めると120種類にもなります。

この中にはプロトンのRD-253(燃焼圧150kg/cm^3)、RD-264(燃焼圧210kg/cm^3)、そして実用化はしませんでしたが、RD-270の燃焼圧163kg/cm^3など、高圧燃焼とそれを支える技術が育つだけの経験をつむ十分な機会がありました。

その点、日本ではLE-3,LE-5シリーズ3種、LE-7シリーズ2種と他の実験用エンジンなどを含めても、開発経験はまだ10例程度しかありません。
それに、LE-7ですら松浦さんが「H-IIロケット上昇」で書かれていた様に、限られた予算を切り盛りして開発されたものです。LE-7AはH-IIを低コスト化したH-IIAに搭載するわけですから性能は微減しても仕方ありません。

このような背景に触れず、ソ連政府の強力なバックアップに支えられたRD-170に比べてLE-7Aは見劣りするから名誘はもっと勉強しろ、というのはちょっと名誘に失礼ではないでしょうか。

日本の宇宙予算は最盛期のソ連に比べると微々たる物です。そのわずかな予算でミッションが達成できるロケットを実現するには低コスト化しかありません。松浦さんが指摘される問題点というのは、日本の宇宙開発の体制や予算規模による問題そのものであって、名誘ががんばれば何とかなるものでもないでしょう。

私も松浦さん同様、単なるデグレードを繰り返すだけではイノベーションは生まれないと思っています。松浦さんがそこまで日本の推進系に危機感を持っておられるなら、一歩踏み出して松浦さんのお力で、はやぶさ2の時のように「高圧燃焼を実現できるロケットエンジンの基礎技術に関する予算の承認」に向けた運動を展開されてはいかがでしょうか。

Posted by: LH2 | 2009.08.03 at 08:05 PM

長くなってしまいすみませんでした…。

Posted by: LH2 | 2009.08.03 at 08:05 PM

始めまして、はなぶさと申します。
いつも楽しく拝見させて頂いております。
RD-170はたしかに凄いエンジンですが、やはり表右のRS-68の凄さが群を抜いている様に見えます。長年の夢であった
「ブースター無しで、液体水素エンジンのみでリフトオフできる」
というのはやはり別次元ではないかと。ケロシン系の比推力ではどれほどがんばってもSSTO(一段で宇宙へ行く)は無理のように思えます。その意味ではRD-170は、最高性能だが今後の伸び代が見込めない、恐竜的なエンジンではないでしょうか。
デルタⅣ打ち上げの、ガスバーナーの様な青い炎だけで上っていく姿は心踊るものがあります。

Posted by: はなぶさ | 2009.08.03 at 08:42 PM

今後を考える上では、SpaceXのマーリンエンジンも比較対象に載せてほしかった・・・紙面の都合でしょうか。

Posted by: Prius | 2009.08.03 at 10:05 PM

LH2さん

 お久しぶりです。こんなページがあるんですか。知りませんでした。LH2さんの研究熱心には頭が下がります。ちなみに「宇宙の傑作機」周辺では「NK-33もなんとかならんか」という話も、ないわけではない…です。

 NK-33もなかなかとんでもないエンジンですよね。エンジンとしての技術的な筋はF-1よりずっと上ですよね。推力が足りなかっただけで。

 おっしゃる通り、日本の開発経験は浅いです。ミサイル開発の一環として巨額の予算を長年にわたって使うことができた旧ソ連の開発環境と一緒にはできません。

 でも、それならなおさら、「これから何をすべきなのか」を徹底的にデータを集めて、考え抜かなければならないはずなのです。

 私は、エキスパンダー・ブリードサイクルのLE-Xの話が聞こえ始めた頃から、「一体日本の宇宙輸送系は次に何をすべきなのか」ということを考え始めました。ずいぶんあちこちで話を聞いて回りました。

 そのなかで、どうも、宇宙輸送系については、アメリカよりも旧ソ連のほうが正しい技術開発の道筋を取ってきたのではないかという印象を持ちました。その後、あれこれ調べていくうちにい、この確信は強まる一方なのです。

 以下文化論になってしまうのですが…

 アメリカは第一世代のロケット(デルタ、アトラス、タイタン、サターンI、サターンV)は、どこか欧州からの移民の発想で設計されている印象があるのです。例えばサターンVは、フォン・ブラウンらドイツ人の設計。1960年代のうちに月に人間を送るという目的のために最適化されていて、どこにも隙がない、というように。

 シャトル以降、設計のラインがアメリカ固有のマッチョなものになりますが、これがどうも失敗っぽい印象になります。デルタ4も然り。例えるならベルやリパブリックの失敗作戦闘機みたいな、というか。

 一方ロシアには、何をするにしても原理原則に立ち返り、考えに考え抜くという伝統があります。「スターウォーズ」が巨大宇宙船が頭上を通過して掴みオッケー、で始まるのに対して、「惑星ソラリス」が地球の描写と「ソラリスで何が起こっているか」の議論で映画の1/3近くを使っているのとの違い、ですね。

 彼らの粘着気質な徹底思考が、ことロケットエンジンについては、プラスに働いているように思います。

 JAXAにせよ、MHIにせよIHIにせよ、アメリカの思考は学んでいますし、データも持っています。MHIはP&Wと仕事をしていますし、IHIもGX関連でロッキード・マーチンと協力していますから。

 でもロシアについては、そうでもないようなのです。これは、ものすごくまずいのではないかと思うわけです。

 私は、将来の宇宙輸送システムについては、1)高圧化/3元推進剤化、2)エアブリージング——のどちらかであり、現状どちらともいえないから、少なくとも国家予算ではこの2方向に研究予算をがっちりつけるべきと考えています。

 ロシアのエンジンの系譜や技術を見ていくと、どうも「性能を落として簡素なエンジンを作る」というのは、今後10年〜20年程度のビジネスとしてはありだけれども(実際スペースXはこの方針で成功しつつあります)、「人類の宇宙進出」まで見通した技術の王道か、といえばそうではないように見えるわけです。

 私の感触が正しい保証はないです。実のところ私にも自信がありません。とすると、ロシアのエンジン技術の実際について、なるべく多くの人に知ってもらい、その上で自由に議論する環境を作るべきではないかと考えているわけです。

 だからこんなに今回の「RD-170」の本についてせっせと書いたのです。

 そして、予算がないならないなりに、方針がしっかりしていればできることはあると思えるのですよ。なにしろ我々の宇宙開発は全長23cmのペンシルロケットから始まっているのですから。

>はなぶささん
 私は、RS-68こそ、アメリカとロシアの思考の違いを示すエンジンだと思っています。

 SSTOにせよTSTOにせよ、推力と比推力の両立が必要です。

 アメリカの答えは、「打ち上げプロセスの全領域で水素を使って比推力を稼ぐ」です。設計の眼目は質量流量が小さくなる水素で、どうやって推力を稼ぐか、ということになります。その結果がSSMEでありRS-68であるわけです。

 ロシアの答えは、「同一エンジンで、途中から推進剤を変える」です。推力が必要な領域では、炭化水素燃料を使い、比推力が必要な領域で水素に切り替える。

 すなわち、三元推進剤を採用したRD-701ですね。

 この実現のためには、前段として炭化水素系推進剤による高圧燃焼技術が必要になります。
 例えばエネルギヤコアのRD-0120の開発過程をみると、炭化水素で二段燃焼技術をものにしていると、水素の二段燃焼はあっさり開発できてしまうようです。

 RD-701は、いいところまで試験したようですが、結局ソ連崩壊で完成にまでは至りませんでした。

 この2つの流れでも、私には旧ソ連-ロシアのほうが、正しい選択をしたように思えるのですが、さて?

Posted by: 松浦晋也 | 2009.08.03 at 10:46 PM

はなぶさです、返信ありがとうございます。

RD-701は知らなかったのであわてて検索してみたのですが
「空中発射往還機用3元推進剤ロケット!」
20年も前に凄いものを開発していたんですね、旧ソ連おそるべし、です。手持ちの'84年刊行のロケット本を見てみると、同時期の米国もMRRVやスペースソーティーといった往還機を提案していたようですが、冷戦終結と共に消え去ったみたいですね。

ただ、このエンジンの開発の大元は、
「なにより容積を切り詰めないと飛行機に乗せられない」
 ↓
「だったら最初は比重の大きいケロシンを使おう」
という流れのように思います。
(どこかに、翼内のデッドスペースをケロシンタンクに使う、と書いてあったような…)
でも、軍事用途前提の空中発射機が復活するとは残念ながら思えません。そして、商業用途に使うにはカーゴの直径の小ささがネックになると思います。
液体水素SSTOは直径が太くなるのが難点ですが、最近のロケットがのきなみ本体よりも大径のフェアリングを付けているのを考えると、直径の太さはデメリットにはならないかもしれません。3元推進ロケットを垂直発射式SSTOに使うメリットは…どうでしょうか?

個人的にはおむすびの様な垂直発射型SSTOより、空中発射往還機の精悍なスタイルの方が好きなのでぜひとも復活して欲しいのですが、ロケットをただのトラックと割り切るならば、3元推進剤の様な芸術的なロケットはオーバースペックなのかもしれません。ロケットマニアとしては寂しい限りですが…。


Posted by: はなぶさ | 2009.08.04 at 08:48 PM

お返事ありがとうございます。
>でもロシアについては、そうでもないようなのです。
そういう意味なら私も大賛成です。
考えてみれば、まだGXが「新技術実証用ロケット」だったころは、ロシアからNK-33を買ってきて使いこなそうとしていたわけで、もしあのまま実現していればさまざまな見地が得られたかもしれませんね。

OSCのTaurus2が、第1段NK33,第2段オプションがメタン、というのを見ると、最初の提案の時点ではなかなかいいコンセプトだったのだと改めて思います。

あと、私もアメリカとロシアの設計思想の違い、といったものは強く感じます。
考えてみるとアメリカのブースター用ロケットエンジンのシリーズはソー用MB-3とアトラス用MA-3、サターン1用H-1(基本設計はほぼ同じ)か、エアロジェットのタイタン用LR-87、あとはミッション特化のF-1とSSMEくらいで、メインのロケットは3種、ロケットの性能向上はタンクの延長とブースターの強化で補っていますからエンジンは小改良しかしていません。

一方ロシアはR-7とエネルギアのように当初から計画している場合以外ではブースターをつけずに上段を改良していますね。横倒し輸送なども関係してきそうですが、ソ連では同じ目的のミサイルが別々の設計局で何種類も開発されるようなお役所仕事も多かったのでその分多種多様な第1段の開発が進んだのでしょう。固体ロケットへの転換がなかなか進まなかったのも一因だと思います。

ただ、アメリカもRD-170を見て手をこまねいていたわけでもないようで、
RS-84
http://www.pwrengineering.com/dataresources/RS-84RocketEngineOverview.pdf
は再使用可能ケロシン2段燃焼サイクルエンジンで、推力5159kN、燃焼圧177bar、比推力335sと結構すごい目標を掲げたエンジンでした。ただ2004年にNASAが計画をやめてしまいました。

2002年にはRD-180を搭載したAtlasVが飛行しており、ロシアとの関係改善もあって安定供給できるならわざわざ開発するより買った方が早い、ということになったようです。

設計思想もありますが、RD-170の派生型やNK-33はあまりにもすごい性能のわりにほいほい輸出されたので、アメリカのロケットエンジン開発の機会をつぶしてしまった、という見方もできるかもしれません。

>はなぶささん
横レス失礼します。
>3元推進ロケットを垂直発射式SSTOに使うメリット
ですが、構造重量の低減というメリットがあります。同じ質量の液体を入れるタンクがあるとしますよね。もし、液体の密度が高ければタンクは小さくてすみます。もし板の厚みが同じなら、同じ質量の推進剤を入れる場合、密度が高い方がタンクの構造質量が軽くなるわけです。

ケロシン/LOXの場合、LH2/LOXに比べはるかに密度が高くなります。そのため、第1段などにはケロシンが適しています。一方、上段ではどうしても質量比が悪くなりがちなので、比推力が高い水素、もしくは性能よりも軌道操作性を重視してハイパーゴリック系の推進剤が使われます。

また長くなってしまいました。ずっとご無沙汰だったので、その反動でひさびさにロケット談義にはまってしまったようです…。

Posted by: LH2 | 2009.08.05 at 12:31 AM

追記
ただ、はなぶささんがおっしゃるようにトリプロペラントエンジンは非常に複雑で、ターボポンプも何台もあるわバルブだらけだわで結構質量がかさみます。ケロシンと水素のエンジンを別々に積んだほうがかえって軽いかもしれません。

ただそういったことも試してみて初めて分かることです。可能性を検証した、という意味だけでもRD-701は意味のあるエンジンだったといえると思います。

Posted by: LH2 | 2009.08.05 at 12:38 AM

 RS-84のルーツは、1980年代、後のEELVに繋がる国防総省のSLI(Space Launch Initiative)にまで遡りますね。確か最初はガスジェネだった記憶があります。
 この手のエンジンがアメリカには絶対必要だと思うのですが、なぜかアメリカは開発にまで持ち込めないのです。

 不思議ですよね。いくらBMWのエンジンが高性能だからといって、トヨタがエンジン開発をあきらめるということはないのに、ロケットエンジンだと「買ったほうがいい」となってしまう。

 それほど開発経費が巨額だということなのでしょうが、この環境では技術的進歩が望めません。自動車の場合、どのメーカーも必死になって投資しているからエンジン技術が進歩したわけですし。

>RD-701
 素人である私の勝手な推測なのですが、RD-701のやりかたの場合、OMSも兼用できる可能性があるのではないかと思うのです。

 スペースシャトルは見方によっては3段ロケットです。SRB→SSME→OMSと。打ち上げのトラジェクトリを考えると、SSTOであっても、このOMSが必須になるわけです。OMSはデオービットにもつかいますから、長期保存可能な推進剤でなくてはなりません。炭化水素・液体酸素ならば、液体水素と異なり軌道上で長期保存が可能です。
 となると、3元推進剤の推力調整可能なエンジンを複数装備すれば、そのうちの1基だけを絞って噴射することでOMSにも使えるのではないか——まあ、そううまくいくとは限らないですが。

 3元推進剤の複雑な構造もOMSを削減できるとなると、それなりに魅力が出てくるのではないかと思えるのです。

Posted by: 松浦晋也 | 2009.08.05 at 11:15 PM

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