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2009.10.15

31年目のライブ録音——諸井三郎「交響曲3番」「ピアノ協奏曲2番」

 どうもTwitterを始めて以来、こっちに書く頻度が下がってしまっている。140文字の気楽さ故に、思いついたネタがすぐにTwitterに出て行って、こちらに書くに至らないといった感触。

 ともあれ、最近びっくりし、かつ感動したことを。

 ・諸井三郎記念演奏会1978

諸井三郎 交響曲第3番 Op.25/ピアノ協奏曲第2番 Op.31/交響的断章 園田高弘(ピアノ)、山田一雄指揮東京都交響楽団 [1978年4月6日/東京文化会館ライヴ]

日本音楽史の至宝・諸井三郎の交響曲第3番、山田一雄による1978年の演奏のライヴ音源が出現しました。これは前年3月に世を去った諸井を追悼して行なわれたコンサートで、遺作のピアノ協奏曲の世界初演も行われました。当コンサートが後世の財産になると確信した主催者が本格的な録音を行いましたが、時期尚早で発売のめどがつかぬまま埋もれていました。演奏はさすが山田一雄。ボルテージの高さと音楽の大きさに圧倒させられます。園田高弘の巨匠風ピアニズムとともに、今日珍しい大きな演奏を堪能できます

 まだアマゾンに登録されていないようなので、タワーレコードとHMVのオンラインショップへのリンクを掲載しておく。

諸井三郎記念演奏会1978(タワーレコード)
諸井三郎記念演奏会(HMV)

 以前、ついに幻の第1楽章を聴くという記事で、諸井三郎の交響曲3番について書いた。

 1977年、諸井三郎という作曲家がこの世を去った。翌年、彼の作品による追悼演奏会が開催され、NHK-FMがその様子を放送した。(中略) 追悼演奏会では、諸井の「第3交響曲」が演奏された。当時高校2年生だった私は、NHK-FMをでそれを聴き、それこそ鳥肌が立つほど感動した。

 その、諸井三郎追悼演奏会のライブ録音が、なんとまあ31年もの時を経て、CDとして発売されたのである。これが興奮せずにおられようか!自分がラジオで聞いて、感動して、エアチェックのテープを何度となく聞き返したあの演奏なのだ。
 NHK-FMで放送された以上、録音が存在することは分かっていたが、今まで残っていたとは。

 早速入手して聴いている。

 ライナーノートを読むと、そもそも録音は録音技師の浅野芳廣氏の私的努力で行われ、氏の尽力で今日までマスターが保管されていたとのこと。頭が下がる。

 このCDのおかげで、諸井の畢生の傑作である交響曲3番を、最盛期の山田一雄の指揮で聴くことができる。山田一雄の指揮は、高校から大学にかけて何度も聴いた。ちょっとやぼったく、エンジンがかかるまで時間がかかるが、いったん調子に乗るとどこまでも熱く高揚していく。このCDの演奏では、感動的な第3楽章が、その山田節で大きく盛り上がる。ナクソスから出た湯浅卓雄指揮、アイルランド国立交響楽団の演奏は、緻密な演奏だったが、一方、山田のライブは熱い。オケが音を外しているところもあるけれども、圧倒的な熱さで迫ってくる。

 このCDには、諸井の死の年に完成した「ピアノ協奏曲2番」も収録されている。これがまた素晴らしい。

 作曲家に限らず芸術家という人種は、若い頃には様々な雑念と共に作品を作っていく。「有名になりたい」「認められたい」「受けをとりたい」というように。いかに真摯に自分の作品に対峙したとしても、どこかに若く苦い汗が混ざり込んでいく。それはそれで魅力なのだが、そんな者らも晩年に至ると、一部は一切の雑念が入らない作品を作るようになる。受けも、歓呼の声も、名声もどうでもよくなり、ただ音と自分の関係の間だけで、純粋な音楽を紡ぐようになる。

 ピアノ協奏曲2番はそんな音楽だ。ここには諸井本人と、諸井が選んだ音しかない。素晴らしく自由で、雑念のない、純粋な調べが流れていく。12音技法的な音の流れや主題の操作が表に出た、やや暗めの“夜の音楽”だが、ラストに至って日本民謡を思わせるのメロディが朗々と鳴り響く。そこに至り、聴き手は実は日本民謡風の響きが、曲冒頭の主題の中に組み込まれていたことに気が付く、という構成だ。

 ピアノを担当する園田高弘は、1978年当時50歳で、円熟の境地にある。その指が打ち出す音の美しいこと。特に第3楽章でのひとつひとつの音の輝きには聞き惚れてしまう。

 山田と園田の組み合わせで、諸井最後の曲を聴けるとは、なんと幸せなのだろうか。

 ライナーには例によって片山杜秀氏の解説がついており、最晩年の諸井の生活を知ることができる。交響曲3番の後、その死までの33年で、彼は8曲しか作曲していない。そのうちの3曲が、死の年である1977年に集中している。
 明らかに1976年から77年にかけて、諸井の中で創作への意欲が甦りかけていたのだった。しかし、天は彼に時間を与えなかった。1977年3月24日、諸井は心筋梗塞で倒れ、病院への搬送途中に亡くなった。

 惜しいとしか言いようがない。

 ともあれ、この素晴らしいCDには入手する価値がある。強く推薦しよう。そして、なによりも録音を行い、マスターテープを2009年まで送り届けてくれた浅野芳廣氏に感謝を。


 前回の記事でも紹介した、諸井リバイバルのきっかけともなったナクソスの一枚。こちらも素晴らしい演奏だ。片山氏のライナーノートは、こちらのCDのほうが詳しく、諸井の音楽について解説している。私としては「両方買え」と言いたいところだが、熱い演奏が好みなら今回の山田・園田のライブ盤、端正な演奏が好きなら、この湯浅盤がお薦めである。

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