7 posts categorized "宇宙基本計画パブリックコメント(2009)"

2010.06.29

月で公共工事をしたいのか

 事態が急速に動いている。秋山演亮さん(和歌山大学)が、「「反対意見は丸め込んででも、2020年までに月探査に2400億円を付ける」方向に強引に乗り切る方針が本日中に決定しそうです。」と書いた。

 前原宇宙担当大臣の有識者会合で委員を務めた秋山さんは、かなり太いパイプを宇宙開発戦略本部周辺に持っているのだろう。そして、秋山さんが書いていることは、まったく別のルートから私にも断片的に聞こえてきている(あまりにあまりな内容なので「裏を取るまで書けない」と判断していたのだ)。この動きがあることは間違いない。

「 心に翻るのは錦の御旗?」(2010年6月29日付け)

 もはや呆れたような状況になりつつあります。月探査懇談会の提案に関するパブコメ、今のタイミングで月をやる事に関する疑義がかなり出ていたようですが、「反対意見は丸め込んででも、2020年までに月探査に2400億円を付ける」方向に強引に乗り切る方針が本日中に決定しそうです。 何度も繰り返しますが、僕は別に月探査そのものに反対している訳じゃ無い。月の着陸探査はやるべきでしょう。それはいつかのタイミングでね。しかし他の物を全てかなぐり捨てて今のタイミングでやる話しでも無いし、ましてや2020年まで引っ張って2400億円という巨費を投じて、月南極に無人月面基地とか今、決めちゃうことの意味が全くわからない。

 このあたり、週刊ダイヤモンド6月12日号の宇宙特集で書いた。手元にある方は再読してもらいたい。

 まず「なぜ日本が月探査を行うのか」。
 当初の答えは、2004年1月のブッシュ米前大統領による新宇宙政策だった。スペースシャトルを2010年に引退させ、国際宇宙ステーション(ISS)も2015年度いっぱいで打ち切り。その代わり有人月探査計画を立ち上げるというものだ。
 これはJAXAからすると、ISS日本モジュールの開発に従事していたセクションの雇用問題である。だから、アメリカの次の計画である有人月探査計画に参加し、国内で予算を取る体制を整えようとした。
 ところが、ブッシュ有人月探査計画は、ハードウエア、なかでも有人用ロケット「アレスI」の開発が難航し(これも技術的には2006年の段階で予想できたことだった)、遅延と予算超過を引き起こした。

 2010年2月、オバマ米大統領は新しい宇宙政策で、有人月探査計画の中止を発表した。正式決定は米2011年度予算決定と同時ということになるが、すでに米国内では計画中止に必要な作業が進みつつある。

  「日本の大規模月探査に『アメリカについていくことで予算を取る』以上のモチベーションがない」——これは重要なポイントだ。もちろん研究者、科学者の間では月探査への欲求が、過去四半世紀以上にわたってずっと存在しているが、それは2400億円もかけて実施する内容ではない。

 秋山さんが提示した資料。
日本惑星科学会将来計画委員会報告書(1996年6月):古い資料だが、最近の私の取材でもこの内容は古びていない。今でも現役の研究者たちは「世界一線級の月探査のためにはLUNAR-Aで狙った地震計と熱流量計のネットワークを月に設置したい」と考えている。

 オバマ新政策で日本の月探査構想は、2階に上がって梯子をはずされた格好となった。

 私は、これで月探査に関しては宇宙開発戦略本部もJAXAも考え直すと思った。存在しない米計画についていくことはできない。そこを突っ切るということは、米がやるはずだった計画を自分の技術と自分の資金で行うということだ。そのためには「他のどれかの政策を差し止めてでも宇宙分野に大規模投資をする」という政治判断を必要とする。
 それを、参議院選挙のために、政治の側が動けないこの時期に決めることはないだろうと思ったのである。
 やるとすれば、それは政治の空白を狙った官の越権行為に他ならない。

 またオバマ政策は、ISSの運用を2020年まで延ばした。参加各国宇宙機関による宇宙機関長会議(HOA)は、2027年までの運用延長の可能性を議論することで合意した。つまり、JAXAの有人関連雇用は少なくとも2020年、場合によっては2027年まで確保される見通しとなった。

 だから月探査に関する懇談会については、一度考え直すだろうと、常識的に考えていたのだが…まさか中央突破を目指してくるとは。
 動機は何だろうか。「ここまで積み上げてきた議論を無にすることはできない」ということだろうか。状況がオバマ新政策で劇的に変化したのだから、ここは「君子豹変する」べきところだろう。
 前提がひっくり返った以上、積み上げてきた議論はすでに無になっているのだ。

 「2020年までに月探査に2400億円を付ける」計画がスタートすると何が起こるか。まず他の計画がすべて圧迫される。参議院選挙直前の政治不在の状況で決定することになるから、予算全体を増額するという政治的決断は望みがたい。

 勢い、JAXA経営企画が「これは減らせない」と判断するものから予算を確保していって、最後に残ったものにすべてのしわ寄せが行くことになる。まず間違いなく宇宙科学全般だろう。

 「はやぶさ2」がなくなるどころではなく(当然、より大きな予算を必要とする「はやぶさマーク2」もあり得ない)、X線、赤外線といった宇宙望遠鏡も、プラズマ・磁気圏観測もソーラー電力セイルのような新たな技術試験も——その他すべてが圧迫されるだろう。一方で「宇宙科学には月探査で十分な予算を付けているではないか」という言い方をされることになることになるだろう。
 情報収集衛星がスタートした時と全く同じだ(ちなみにこの構図は1980年代、ISS日本モジュールがスタートした時にもあったそうである。当時は予算が右肩上がりだったので、破滅的事態は回避された)。

 「アメリカに代わってアメリカがやるはずだった計画を実施する」という覚悟も合意もなしに、「2400億円という巨費を投じた月南極に無人月面基地」は、2020年代前半には、「これをいったいこの先どうするのだ」というお荷物になるだろう。科学的価値を考え抜いて決定した計画ではないから、真の成果は限られる。成果の乏しさは「月面を走行する日の丸ローバーの勇姿をハイビジョン画像で」といった画像でごまかされることになるだろう。
 混乱の中で、「せっかく作った月拠点を生かすためには、さらなる計画を進めねばなりません」と焼け太りを狙った動きがでてくるだろう。関連産業にお金は落ちるだろうが、肝心の「それでどうなるの」という目的はまったく省みられなくなるはずである。
 結果、危機的財政状況の下、月に誰も通らない道路を建設するような、公共工事が続くことになるだろう。


 今回の件、私のところにもぼつらぼつら聞こえてきていたのだが、その中に「一般国民は、はやぶさの小惑星探査も月探査も区別が付いていないから、『はやぶさの経験を生かして月からサンプルリターン』というシナリオを書けば、はやぶさ帰還に湧く国民は納得する」という声が入っていた。まさかそこまで国民を低く見ているとは思えず、この話は誇張か情報伝達につきもののノイズかと判断していたが、秋山さんがここまで書く以上、事実である可能性は高いと思わねばならない。

 いいかげん国民をバカにするなと言いたいが、実際はやぶさ関係者に「業務命令だ」と強制して、「はやぶさのサンプリング技術を活かして、月からのサンプルリターンをやります」というプレゼンテーション・シートを書かせるぐらいのことはあってもおかしくないだろう。

 たとえはやぶさ関係者がプレゼンしたとしてもだまされまい。小惑星からのサンプル採取と、月のような高重力天体からのサンプル採取の技術は根本から異なる。共用可能な技術はごく少ない。

 この件に関しては、秋山さんの文章に全面的に同意する。

 幸い、このblogにはそれこそJAXAからも内閣府からも文科省からも毎日、幾度となくアクセスを戴いています。であるなら、是非、読んでください。考えてください。今一度、胸に手を当ててよく考えてみてください。日本の宇宙開発は、日本の科学は、日本の国際プレゼンスは、日本の未来は、あなた方の舵取りによって為されているのではないですか?本当に、誇りを持って、今、貴方は最善の決断をしていますか?今、あなた方がする決断が、まさに日本の子ども達の将来を決めてるんですよ?それはホントに日本の為の決断ですか?組織維持のための決断ではありませんか?そのことに今一度、想いを馳せて戴きたいと心から思います。

 私に出来ることは何だろう。将来に禍根を残す決断は、きちんと経緯を取材して後世に記録を残さねばならないだろう。

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2009.10.27

ボストン・ダイナミクスが二足歩行ロボットのプロトタイプを公表、で、日本の有人宇宙活動の議論はどうなる?

 来たよ。来ちゃったよ。

 あのビッグドッグのボストン・ダイナミクスが、2足歩行ロボット「PETMAN」のプロトタイプを公開した。まだ実験用のベルトの上だが 実に立派に二本の脚で歩いている。しかも明らかに、アシモなど日本の二足歩行ロボットよりも外乱に強い。


 知らない人のためにリンクしておくと、ビッグドッグというのはこの4足歩行ロボットだ。

 「来るんじゃないかな」という漠然とした予感はあったが、こんなに早いとは思っていなかった。この調子だと、上半身がついたPETMANが来日して、アシモに先んじて徳島の阿波踊りに飛び入り参加する日も遠くなさそうだ。

 で、日本では、『第1段階(平成32年(2020年)頃)として科学探査拠点構築 に向けた準備として、我が国の得意とするロボット技術をいかして、二足歩行ロボット等による高度な無人探査の実現を目指す。』という一文が、日本の宇宙開発の基本となる「宇宙基本計画」に入っているのだが…

 どこが我が国の得意とするロボット技術だと?

 技術開発は競争であり、正しいことを正しいタイミングで行った者が勝つ。また一時の勝者がいつまでも勝ちっ放しというわけではない。

 今、日本の有人宇宙活動に関する議論は、混乱してしまっている。理由は2つ。


  1. 有人宇宙活動を、アメリカの有人月探査とリンクさせてしまった。
  2. 有人月探査に先立ち、「日本の得意とする」二足歩行ロボットによる探査を実施しようという話が、国レベルの議論に押し込まれてしまった。

 PETMANの登場は、大前提である「日本の得意とする二足歩行ロボット」が、崩れたことを意味する。
 実際には、日本の得意とする二足歩行ロボット」は「他に二足歩行の研究を集中的にやっているところがそんなには存在しない」ということだっただけなのだが、ボストンのような実力のある研究機関が参入するとあっというまにこういう事になる。

 PETMANの登場は「日本の得意とする二足歩行ロボット」というのは正確な表現ではないことを意味する。正しくは「日本の得意とする日本が得意だと思い込んでいる二足歩行ロボット」なのだろう。

 どう見ても、極端な不整地である月面の探査には、外乱に強いビッグドッグなり PETMANなりが向いているように見えるではないか。


、宇宙開発戦略本部で開催中の月探査に関する懇談会では

●ロボットによる月探査計画の中に、移動探査ロボットや建設ロボット、掘削ロボットなどとあわせて 人型二足歩行ロボット技術開発も加えていくことを提案する。

この理由は
  1. 宇宙ステーションや惑星探査において世界各国が有人探査を実行するに当たり、人の作業を補完できるロボットの実現は安全や作業効率やコストの面からも必要であり、歓迎されるものである。
    そういった観点から、日本が先行している人型パートナーロボットを世界に先駆けて実現させることは 日本オリジナルの宇宙技術開発戦略として、国民と世界に夢と期待を与える意味でも価値のあるものと考える。
    宇宙開発の方式に日本から人型ロボットを利用した探査計画が提案される事は国際協力の枠組みの中で、日本の立ち位置を明確にする上でも重要である。

  2. ロボットで実施していきたい仕事はパターン化された繰り返し作業から判断を必要とするものなど様々なものがある。研究者ロボットの共同作業というものもある。
    人の作業の補完あるいは共同パートナーという事を念頭におけば、人型ロボットが形態からみて最適である。具体的には、人と同じ道具が使える。同じ作業環境のところへ一緒に行ける。
    人が行けないところで人と共通の道具を使って人がすることと同じ作業ができるため有人と同じ成果が期待できる。
    これを遠隔制御システムによって実現できれば、あたかも自分がその場で作業をしているのと同じ臨場感と成果が得られる点があげられる。
    更に、遠隔操作の手法として、操作する人の動作そのものを模倣して、その動きの通りにロボットが動ければ、多様な動きも可能になり、細かい仕事をこなす事ができる。
    装置の組立てや細かな実験なども出来るようになると思う。こういったレベルの夢の実現を目標にしていくとすれば、人型ロボットが一番適しているし、日本はこれを実現できる技術力がある。

——とする文書(pdf)も、トヨタ自動車から提出されている。

 「人の作業の補完あるいは共同パートナーという事を念頭におけば、人型ロボットが形態からみて最適である。具体的には、人と同じ道具が使える。同じ作業環境のところへ一緒に行ける。」という部分は、色々議論するに値するだろう。しかし、その実現はまず第一に地上の生活環境の中ではないだろうか。

 無重力の宇宙空間では、人間の身体形状がもっとも理想的というわけではない。おそらく人間との協調作業を行う場合にも、ヒト型とは異なる形態が最適になるのではないかと思う(腕が4本あるとか、脚も腕になっているとか)。重力が地上の1/6の月面でも、人間との協調作業にヒト型が最適かどうかは、よほど先入観を排除してきちんと議論を深めねばならないところだろう。


 現在、宇宙開発戦略本部の周辺で行われている、有人宇宙活動に関する議論は、3つの点でボタンを掛け違えてしまっている。

  1. 有人宇宙活動を、有人月探査と絡めて議論していること。地球周回軌道への有人輸送手段すら持たない国が、一足飛びに有人月探査計画を議論するのは滑稽を通り過ぎて危険ですらある。

  2. 有人月探査に、我が国が得意とする我が国が得意と思っている」二足歩行ロボットを絡めてしまっていること。二足歩行ロボットは日本のお家芸でもなんでもないし、研究水準として他国から隔絶した水準を誇っているわけでもない。さらには、二足歩行ロボットで月探査ができたから、それで有人宇宙活動につながるというわけでもない(もちろん官僚などは「つながる」とする文章をいくらでも書けるだろう。理屈はどこにでも付くものだから。しかし、それは現実と遊離したものになる)。

  3. ロボットによる月探査に、我が国が得意とする我が国が得意と思っている」二足歩行ロボットが入り込んでしまっている。無人月探査に脚は必要か、それも二本脚による歩行は最適か。それがもっともコストパフォーマンスの高い探査を約束するものなのか。車輪によるローバー型ロボットのほうがずっといいのではないか。よく考える必要がある。

 ここは、政権が変わったこともあるし、素早く月探査と有人宇宙活動の議論を分離すべきではないだろうか。もちろん、二足歩行ロボットによる探査も、有人月探査とは別のものとして考えるべきである。

 これが計画が動き出し、予算が付いてしまってからでは手遅れになる。今ならまだ間に合う。一言「間違えました。議論をやりなおしましょう」で済むのだから。
 PETMANの登場は、軌道修正のいいチャンスだ。
 「お上のことには間違いはございませんから」という森鴎外「最後の一句」の時代はもはや遠い昔である。間違いは恥でもなければ傷でもない。間違いを認めないことこそが、恥であり傷である。
 間違いを認めてやり直すことは、未来へ向うための大切で重要なステップだ。

 以下、一応参考までに。

「わかっちゃいないのか、
わかっていてやっているのか」あさりよしとお、笹本祐一、松浦晋也

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2009.10.19

宇宙活動法にパブリックコメントを——WG報告書案の分析

 欲しい未来があるなら、まず声を上げよう。方法は用意されている。

 宇宙活動法についてのパブリックコメント募集(締め切りは10月23日金曜日)。公開された資料の読み方について解説する。

 パブコメ概要はこちら。

 資料はこちら。

 最初に言い訳を——宇宙活動法に関する議論には、特に国際法規との整合性を取る必要から、かなり法律的な知識が必要となる。技術を中心に宇宙開発をウォッチングしてきた私には荷の重い部分があるかも知れない。以下の分析には、特に法学的な面からの誤りが入り込んでいる可能性を否定できない。もしも事実誤認や認識不足の面を発見した方がおられたら、コメント欄でもメールでも構わないのでご一報頂きたい。

 永田町と霞が関に「国民は見ているぞ」というシグナルを送るために、ひとりでも多い方に、パブリックコメントを投稿してもらえればと思う。


 結論を先に書く。私の分析の概要は以下の通り。

 宇宙活動法には、1)宇宙活動に従って生じる危険を回避するという側面と、2)特に民間の宇宙開発・宇宙利用を促進する——という2つの役割がある。

 WG報告書(案)では、1)が前面に出すぎている感がある。この方針で宇宙活動法を制定すれば、国際的・国内的なトラブルは回避できるかもしれない。もっと言えば、官は「法律ではこのようになっています」と、責任を回避できるだろう。また、官は民間に対する政策的影響力を行使し続けることができるだろう。
 しかし、日本における宇宙開発への民間資本・宇宙ベンチャーの参入、新規参入事業者の育成は果たし得ず、かえって海外における宇宙の民間利用に、日本が後れを取ってしまうことになる可能性が高い。

 法律制定に向けた視点を、「いかにトラブルを回避するか」「いかに既存事業者(独立行政法人を含む)を保護するか」「いかに監督権限を維持拡大するか」ではなく、「どのようにして、新規事業者を巻き込んで、日本社会全体として、あるいは世界市場の中で宇宙開発・宇宙利用を拡大していくか」に切り替える必要がある。

 「官がコントロールできる民間宇宙開発」ではたかが知れている。官が想定すらしていなかった技術、サービスが出現し、世間から支持されることではじめて、産業は官の育成を離れて自立する。「官の想定外」が出現した時に、抑圧するのではなく、助け、成功に導く態度と仕組みが必要だ。

 WG報告書案では、民間事業者の責任が先行されて記述してあるが、これは逆ではないか。法律の制定の趣旨からすれば、宇宙活動法には、国策として国が追うべき義務についての記述がなくてはならないはずである。
 そして国が追うべき義務は、産業育成と国力増進の観点から導き出すべきものである。責任回避と権限拡大の観点からではない。


 以下、具体的に見ていくことにする。長くなるので、読みたい方はもうひとクリックの手間をお願いする。


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2009.10.18

呼びかけ:宇宙活動法にパブリックコメントを送ろう

 5月の宇宙基本計画へのパブリックコメント募集では、多数の意見が集まった。パブコメの制度を使えば、政府に物を言うことができる。

 現在、宇宙開発戦略本部が新たなパブリックコメントを募集している。締め切りは10月23日金曜日、題目は「宇宙活動法」である。

 このパブリックコメントは、前回の「宇宙基本計画」に対するものと同等、場合によってはそれ以上に重要なものだ。興味のある方は資料を読んで、是非ともパブコメを投稿して欲しい。宇宙に興味を持つならば、パブコメを宇宙開発戦略本部に送ろう。

 「宇宙活動に関する法制検討WG報告書」という、一見地味な内容へのパブコメがなぜ重要か? それは具体的に日本政府が行う宇宙関連政策を定める法律の関するパブコメだからである。

 宇宙基本法は、日本政府が宇宙開発政策において従うべき理念を定めている。理念を定める法律を「基本法」という。そこに記述されているのはあくまで理念であって、具体的な事項ではない。
 理念を政策として実体化したものは2つある。一つは「宇宙基本計画」、もう一つが今回のテーマとなる「宇宙活動法」だ。

「宇宙活動法」(仮称)は、宇宙開発にあたって、日本政府が行うべき施策を具体的に定めた法律となる。このような具体的なアクションを定めた法律を「実施法」という。基本法の理念を具体化し、法制度化したものが実施法だ。

 宇宙基本法と宇宙活動法は以下のような関係となる。

宇宙基本法 →理念を具体化→ 宇宙活動法
(基本法)             (実施法)
理念を規定          政策・制度を規定

 宇宙基本法は、理念であり、この段階ではまだ柔軟な文面の読替が可能である。しかし、実施法の宇宙活動法は、政策制度について個別かつ厳密に規定することになる。

 具体的な制度が、決まるのだから、宇宙活動法は今後の日本の宇宙政策に大変大きな影響を与える法律なのだ。

 パブコメを書くに当たっての資料は、以下に公開されている。

 これについての解説は、次の記事で行うことにする。まずはこの文章を読んでもらいたい。

 実は、この「宇宙活動に関する法制度検討ワーキンググループ」の議論は、傍聴などの公開なし、一般メディアへの事後レクチャーもなしという閉鎖的な環境で実施された。記者クラブは事後レクチャーを要求したそうだが、事務局は突っぱねたという。

 それどころか、宇宙開発戦略本部事務局は、ワーキンググループの委員に「他言無用」と箝口令まで敷いた。

 そうまでして秘匿した理由は、私には分からない。推測ではあるが、現在の宇宙開発戦略本部事務局は経済産業省出身の官僚が仕切っているので、産業政策に直接関連する宇宙活動法の制定の議論に外からの意見が入るのを避けたかったのかもしれない。

 その一方で、事務局はかなりあちこちを回って宇宙産業関係者のヒアリングに努めていたことも事実である。

 いずれにせよ、議論を避ける姿勢はあまり褒められたものではない。


 きちんと資料を読んで、自分の意見を政府に届けよう。パブリックコメント制度を活用すれば、政府に自分の意見を届けることができるのだ。

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2009.05.18

パブコメ締め切り当日:一言でも構わないのです。あなたの意見を宇宙開発戦略本部に送ろう

 さあ、締め切り当日だ。宇宙基本計画へのパブリックコメントの締め切りは本日である。

 最後の記事を出した。

 まだ間に合う。一言でもいい。それこそ「はやぶさ2に予算を付けて下さい」の一言でもかまわない。あなたの意見を、日本の宇宙開発の基本部分に届けるチャンスだ。

 さあ、自分もパブコメを出さなくては。


関連記事

公表された宇宙基本計画案

宇宙基本計画パブコメにむけて:笹本祐一さんの意見

 本日はあと6時間あまり、よろしくお願いいたします。

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2009.05.15

講演資料2つと、宇宙基本計画関連の記事

 本日、過去に行った講演の資料を2つ公開した。

 まず今年4月12日にユーリーズナイト2009で話した「宇宙の公共事業化を超えて」という資料。

 こちらは、ここ数年考えていた「アポロまでとアポロ以降で何が違うのか」ということに対しての、私なりの一応の回答だ。スプートニクからアポロまで、あれほどまでに急速に物事が進んだのに、その後はなぜ進展が遅いのかという疑問に、一応の回答は出せたのではないかと思っている。


 もう一つは2007年11月26日に、東大-JAXAシンポジウムで話した「組織と人間から見た宇宙開発 -NASDAとISAS-」というもの。


 時折、「なぜISASの肩ばかり持つのですか」と言われることがあるが、私はISASの肩を持っているつもりはない。宇宙科学、なかんずく未知の世界へ未踏の技術で挑む太陽系探査が日本の将来にとって大変大事だと考えている。
 むしろISASの現状には強い危機感を抱いている。2005年のはやぶさによる小惑星イトカワ探査の時点では生きていたISASの伝統や組織は、2009年現在、壊滅状態となっている。「糸川英夫以来の伝統を誇るISASは死んだ」と言っても過言ではないだろう。
 この資料は、2007年の段階で、ISASとNASDAの組織文化の違いを外からの視点で考えてみたもの。私の考えは、今もあまり変化していない。

 以上、なにかの参考になればと思う。

 宇宙基本法関連では、以下の通りの記事を書いた。

公表された宇宙基本計画案

 パブリックコメント締め切り当日の18日に最終回を掲載する予定だ。

 宇宙基本計画へのパブリックコメントの締め切りが迫ってきた。一人でも多くの方の応募を、よろしくお願いいたします。

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2009.05.01

呼びかけ:宇宙基本計画にパブリックコメントを送ろう

 4月27日の宇宙基本計画(案)公開に引き続き、4月28日から、パブリックコメントの募集が始まった。

「宇宙基本計画(案)」に対する意見の募集(パブリックコメント)について

 今回の宇宙基本計画は、1955年のペンシルロケットから始まった日本の宇宙開発において、1969年の宇宙開発事業団設立以来の、大変革だ。

 変革期には色々今まで動かなかったことが動く。
 良い方向にも、悪い方向にもだ。

 私のblogを読んでいる方は、多かれ少なかれ宇宙に興味のある人なのだと思っている。そこで、皆さんにパブリックコメントへの応募をお願いしたい。

 今回、私は、「こういう意見を投稿しよう」という方向付けの呼びかけはしない。内容はどんなものでもいい、ひとりでも多く、可能な限りたくさんの人に、宇宙開発戦略本部へパブリックコメント送付してもらえないだろうか。

 「こんなにも沢山の人が、日本の宇宙開発に期待ししている」「日本の宇宙開発に注目している」ということが、政治家、官僚、関係者に伝えたいのだ。

 テンプレートの文章が大量に集まっても読み飛ばされてしまうだけだろう。100通が集まったら100通全部を、1000通なら1000通すべてに、宇宙開発戦略本部の官僚が目を通さざるを得ないように、みんなが各自の言葉で、それぞれ思うところを書いて頂ければと願う。

 はやぶさ2の実現を願うなら、そう書いてほしい。測位衛星システムの構築を望むなら、そのように訴えてもらいたい。内容は、M-Vロケット復活でも、早期警戒衛星実現でも、センチネルアジア構想への疑問でも、大企業への随意契約への反感でも、H-IIA発展型構想への賛意でも、独自有人宇宙飛行への叱咤激励でも、宇宙の軍事利用への反対意見でも賛成意見でも——とにかく、なんでもいい。

 なるべく多くの人の本意が、各々の文章によって届けられることが大事だと思う。

 応募の詳細は「宇宙基本計画(案)」に対する意見の募集(パブリックコメント)についてにある通りだ。

 締め切りは5月18日(月)必着である。

 応募方法は電子メール、郵送、FAXの3通り。

  • 電子メールはi.space-goiken@cas.go.jp 内閣官房宇宙開発戦略本部事務局 意見募集担当 宛  テキスト形式のメールで送ること  メールのタイトルは「宇宙基本計画(案)に対する意見」とすること
  • 郵送は以下の宛先に送付する 〒107-0052 港区赤坂1-11-28 赤坂1丁目森ビル9階 内閣官房宇宙開発戦略本部事務局 意見募集担当 宛
  • FAXは以下の電話番号だ FAX番号:03-3505-5971 内閣官房宇宙開発戦略本部事務局 意見募集担当 宛 冒頭に「「宇宙基本計画(案)に対する意見」」と入れること

 いずれの送付方法であっても、氏名又は団体名(団体の場合は担当者名も記入下さい)、職業、住所、性別、電話番号、ファックス番号(あれば)を記入すること。

 応募は団体名で行うこともできる。地域、学校、研究室などでも応募可能である。

 今回のためにバナーを3種類用意した。私の呼びかけに賛同してくれる方は、以下のバナーを持っていって、自分のページに掲示してもらえればと思う。

バナー大(768×90ピクセル:縮小して掲載した。クリックすると原寸大バナーが表示され、右クリックでローカルに保存できるようになる)
76890_2


バナー中(468×60ピクセル)
46860_2

バナー小(200×40ピクセル)
20040


 バナーを持っていくのが面倒な方は、以下のテキストをコピー・ペーストすれば、それだけでバナーが、宇宙開発戦略本部へのリンクと共に表示される。

バナー大
<a href="http://www.kantei.go.jp/jp/singi/utyuu/pc/090428/090428pc.html"><IMG SRC="http://smatsu.air-nifty.com/photos/uncategorized/2009/05/01/76890".jpg>
</a>

バナー中
<a href="http://www.kantei.go.jp/jp/singi/utyuu/pc/090428/090428pc.html"><IMG SRC="http://smatsu.air-nifty.com/photos/uncategorized/2009/05/01/46860_2.jpg">
</a>

バナー小
<a href="http://www.kantei.go.jp/jp/singi/utyuu/pc/090428/090428pc.html"><IMG SRC="http://smatsu.air-nifty.com/photos/uncategorized/2009/05/01/20040.jpg">
</a>

 なお、宇宙開発計画(案)の背景の解説や、私なりの分析については、nikkeibp.jpの連載や、当blogの記事で、今後どんどん掲載していくことにする。

 5月1日現在、記事が2本公開されている。

 自分なりの意見を形成するための参考にしてもらえればと思う。

 また、宇宙基本計画(案)を読み込むにあたっては、これまでの審議内容の資料を参考にするのも有用だ。

 大量のpdfファイルにまごつくかもしれないが、このあたりは追々整理して解説しようと思う。

 最後にもう一度、これは1969年以来の40年に1度の大変革だ。これだけの変化に対して、一人でも多くの日本国民の意見が、宇宙開発戦略本部に、ひいては内閣に、日本政府に届けばいいと思う。

 他の誰のものでもない。私たちの宇宙開発なのだ。

 よろしくお願いいたします。

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