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2010.02.23

今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議第1回会合 ブリーフィング

 本日突然開催が告知された「今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議」の会議後、午後5時半からのメディア向けブリーフィングに参加してきた。以下に概要をアップする。

今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議第1回会合の開催について(pdfファイル)


宇宙開発戦略本部 今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議第1回会合 ブリーフィング

 出席者 泉内閣府大臣政務官

司会 宇宙開発戦略本部事務局・横田参事官

泉:さきほど、午後3時半から午後5時まで初会合を開催してきた。本日付けで開催を決定した。

 本日中須賀先生は欠席。あまり資料を見た形での議論はせず、全般的な意見交換を行った。例えば、これまでの宇宙開発戦略専門調査会との関係。この有識者会議は3月と4月に集中的に審議するので、提言を作成して専門調査会を渡す。民主党政権の新成長戦略にも宇宙を入れていく。

 限られた予算の中で宇宙基本計画を選択と集中で考え直していく必要がある。どこを強く進めていくかという方向で議論があった。

 以下、本日出てきた議論の一部。

  • どこを目指していくのか、地球・月なのか、深宇宙なのか、議論が必要。
  • 国がやるのか民需でやるのか、どこを民間に任せるのか。
  • これまでの宇宙開発がユーザーサイドの考えに立って行われてきたか。ユーザーコミュニティを育てる必要があるのではないか。
  • 教育は重要である。

 政務三役を含めて自由闊達な議論をするために非公開にすることにした。次回は3月9日、以下、16、30、4/6、4/20と集中的に開催していく。まずは自由闊達に議論していくところからやっていこうということになった。

質疑応答
朝日新聞:3,4月に集中議論を行って調査会に報告ということは、新成長戦略に盛り込むことを狙うのか。

泉:そうである。

朝日 それ以外に事情はあるか。

泉 ない。さまざまなところで議論を尽くされて開発利用計画が作られてきた経緯があるので、そう長く議論していいものでもないだろうと考えている。

東京新聞 長期的視点にたった、ということは20年、30年という長期的視点を考えるが、実際には今後5年間の宇宙基本計画の枠内でどこに力を入れるかということなのか。

泉 両方である。日本の宇宙政策はどうあるべきかということも考える。有人をやるかやらないかも議論する。

東京新聞 文部科学省がH20年に長期戦略を出しているが、それとの関係は。

泉 これまでの議論は、既存研究の継続や、産業が小さいこともあって、「この会社にこれをやってもらう」という形で決まってきたきらいがある。しかし場合によっては取捨選択をすることも必要だろう。例えばGXもなかなか切りにくかったのだろう。政治が決断しなくてはならなかった。有識者の方々と議論する中で、取捨選択をはっきりさせていきたい。

読売新聞 専門調査会と同じ議論を繰り返すことにはならないか。人選について。大学に偏っていないか。

泉 人選は「あらゆる人材を網羅する」となると専門調査会とどう違うんだということになってしまう。我々としては意見を頂きたいと考えた方を選んだ。明確な基準があるわけではない。この人々との議論を中心にしつつヒアリングも行う。

 専門調査会との差別化。予算が限られている中で、すべてを進めるわけにはいかない。一部についてどこを具体化するかの力配分を考えねばならない。アメリカの新宇宙政策をふまえた変化など。

日経新聞 アメリカでは国際宇宙ステーション2020まで運用するとか、コンステレーション計画を打ち切るとか、大きな方針転換があった。なにか言及はあったか、

泉 今日はあまりアメリカのことは出なかった。月に対するアプローチが変わったという程度。

日経 アメリカについて議論しないのか。

泉 アメリカの現状をふまえて日本の強みをどこで出していくかを考えていくことになろう。

日経 今後の日程、4月20日に提言を出すのか。

泉 そのように考えている。

読売 大所高所の宇宙政策の議論をするけれどもというけれど、資料には宇宙産業の話も出ている。議論の重点はどこにあるのか。

泉 今日は資料をほとんど見なかった。これまで本当の意味でのユーザーコミュニティサイドに立っていなかったということについては共通認識が得られたのではないかと思う。

以上記者会見終了

以下松浦の分析。

  • 泉大臣政務官は、「資料を無視」ということを再三強調。資料を作ったのは宇宙開発戦略本部事務局、つまり官僚。このことから政務三役の政治側と、官僚側の戦略本部事務局との間に、議論の主導権を巡って巡って綱引きがあったことをうかがわせる。

  • 有識者会合の位置付けは前原大臣の私的諮問会合。従って有識者会合の提言は前原大臣に直接提出される。事務局はオブザーバーとして会議に参加するのみで議論には加わらない。誰が前原大臣への文章を起こすかによるが(戦略本部事務局が起草するとなると、また官僚のコントロールが入ることになる)、基本的には官僚抜きの政治優位を狙っての会合設置。

  • 有識者会合の目的は「宇宙基本計画の文面をそのままにしての読み替え」、どこに選択集中し、どこを研究レベルに留めるかを明確にして、民主党の新成長戦略に入れ込むことを目指す。有人も俎上に上ることになるのは、今日の泉大臣の発言からすると確実。

  • 事後のぶら下がりで事務局側からは「なかなかきれいにはいきません」という発言が出る。「~ではないでしょうか」という傍観者的語尾も多かった。「新成長戦略に入れ込んで8月の来年度予算要求に間に合わせる」という言葉も出てくる。推察するに、今までの書類で根拠を付くって予算要求するというパターンに持ち込みたい模様。

  • ひとつの判断基準は、今後「ヒアリングをどこまでやるか」だと思う。ヒアリングに類することはさんざん専門調査会で行っているわけで、政治側はむしろこの場を選んだ専門家との徹底議論の場にしたい模様。一方、官僚側は息のかかった者を呼んでのヒアリングの場として、影響力を発揮したいはず。ヒアリングの頻度と誰が呼ばれたかによって、政治と官僚の綱引きがどちらに傾いているかが判断できるはず。

以上

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2010.02.02

アメリカの宇宙開発政策が大方針転換、有人月探査中止よりも堅実な技術開発に注目せよ

 2月1日(日本時間2月2日早朝)、2011年アメリカ予算教書と共に、アメリカ宇宙開発の大方針転換が発表された。

 メディアでは有人月探査中止が話題になっているが、NASAの予算サマリーをざっと読んだところ、それは大した問題ではないように思われる。
 オリオン・アレス1、アレスV、アルテアというコンステレーション計画は、設計変更と遅延と試験トラブル、そしてなによりも重度の予算不足を起こしていたわけで、ここで中止するのは良い判断だ(アメリカ国内では有人月探査の中止に反発も出ているが)。

 コンステレーション計画中止とシャトル引退とで、NASAにはかなりの予算の余裕ができる。
 オバマ大統領は、そこにさらに予算を積み増した上で、少なくともこれから5年間は、1)探査に向けた基礎技術開発、2)太陽系各所への先行無人ミッションの実施、3)民間セクターを活用した有人宇宙システム開発への大規模助成といった、極めて筋肉質で堅実な計画を打ち出した。

 サマリーを読んだ段階では、これは高く評価できる。特に堅実に基礎技術開発を進めるとしたところは素晴らしい。ありものを組み合わせて月に届かせようとしたコンステレーションとは逆にに、必要な技術をひとつづつ積みかさねて結果として月、火星、火星の衛星、近傍小惑星に届かせようという考え方である。

 こういう方針で動くと、予算が潤沢なだけにNASAは強いぞ。

 さあ、有人と月探査と二足歩行をごたまぜに議論してしまっている日本は、一体どうするのか。

 以下、とりあえずTwitterで書いたことを若干整理しつつ掲載する。なお、様々な宇宙に関心がある人の発言もすでにまとまっている。あわせて読んでもらいたい。

  • ざざっとNASA予算サマリーを読んだ。第一印象は「まともだ」。 2004年時点のブッシュ新宇宙政策よりはるかにまとも。これをきちんとやれば、2010年代後半、アメリカの宇宙開発はぐっと伸びるかも。

  • 予算総額は結構手厚い。今後5年の総額は1000億ドルを突破。年平均200億ドル超は初めてではないか。

  • その一方でコンステレーションをキャンセル、シャトル引退。これでかなりの財政余裕ができる。

  • できた余裕を突っ込む先は、基礎技術開発(特に宇宙輸送システム、ロケットエンジン)、宇宙科学、そして地球環境…というよりも太陽も含む地球近傍空間の環境変動観測。古くなったNASA施設の更新も行う。

  • 軌道上推進剤保存・補給、推進剤、材料科学、燃焼過程の解明、といった項目が予算サマリーに出てくるレベルで組み込まれたのは特筆もの。基礎の基礎からがっちりやるぜ、ということだ。

  • 太陽系探査は、有人に先行して無人先行探査を実施。でもって…

  • identify hazards and resources for human visitation and habitation. とあるのは、小惑星をやると読めるのだが…hazardsというのは小惑星衝突だろうし(注:これは読み間違いの可能性大。多分月・火星・小惑星すべてについての人間居住時の資源と危険性を調べるという意味)。

  • 探査関連ではFlagship demonstration programをやるとしている。軌道上推進剤保存・補給、インフレータブル構造の開発と実証、(完全)自動ランデブー・ドッキング、軌道上閉鎖ライフサポートシステム実証などなど。

  • 1億ドル以下の小型技術実証ミッションも(おそらくは多数)実施する。行った先の資源を利用するデモンストレーター、や次世代宇宙推進系(イオンエンジンやソーラーセイルか??)。

  • 燃焼から推進剤選定に至るまでの推進系基礎研究がどんと柱に入った。しかもヘビーリフターに向けて第1段推進系をやると明記(New approaches to first-stage launch propulsion)

  • アメリカが本腰入れて液体ロケットエンジン開発に復帰するということ。狙うは、ロシア並み、あるいはそれを超える超高圧燃焼と、高比推力ノズル…かな(これは私の想像)。なんにせよ基礎からやると言っている。

  • 先行無人ミッションは、月、火星、火星の衛星、ラグランジェ点、近傍小惑星と幅広く送り込む。各ミッション総額は80億ドル以下(日本から見るとかぐや以上の巨額)。明記されたミッションは、月着陸ロボティックミッションと、月・小惑星の資源を活用する工場デモンストレーター

  • ISS利用は2020年まで延長。地上側、軌道側双方のアップグレードを実施(新モジュール??)。最後の最後まで使い倒す姿勢を打ち出している。

  • 民間セクターにもどんと金を流す。民間の有人宇宙輸送に今後5年間で60億ドル投資。ドル90円で換算しても5400億円かあ…

  • 2011会計年度だけで既存の民間貨物輸送(COTSのことだろう)に3億1200万ドルを付ける。

  • 計画的なリスク分散を実施。既存ロケットの有人対応や、複数種類のロケットで打ち上げ可能な有人宇宙機の開発(ドラゴンをアトラスやデルタで上げることを想定しているのか?)。

  • 民間と共同で将来宇宙技術の研究を実施。あまり具体的なことは書いていないが、プレゼンシートにはアルマジロかどこかの垂直離着陸機の写真が貼ってある。

  • 地球環境監視は強化。ミッション名がずらっと並んでいてちゃんと GPMも入っている。

  • 太陽系探査。地球近傍小天体のカタログ化。そして、軍用および深宇宙探査用にプルトニウム238を再生産すると明記。ずらっと並んだミッションの中には、次世代RTG技術実証機が2014/15打ち上げとなっている。 2016年火星ミッションとエウロパ探査ミッションが明記。

  • 宇宙望遠鏡系は予算横ばい。あまり力が入っていないみたいだ。日本のAstro-Hが、堂々と記入されているし(NASAとの協力ミッション)。目玉はハッブル後継のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡。

  • 予算は微増ながら、太陽観測が独立した項目に。地球環境関連だろうか。太陽近傍まで飛行するソーラー・プローブ・プラス計画が明記されている。

  • 航空機研究も横ばい。主軸は環境負荷の低減と安全性向上。

  • NASAの古くなった施設の改修に計画的に予算を付けていく。教育にも毎年1億4600万ドル(はやぶさが作れるぐらいの予算だ)ずつ投資していく。

  • まとめ。この計画を次世代への投資と位置付けている。より affordableでsustainable(お値打ち価格で持続可能)、かつアメリカの次世代を喚起し、知識を富ませる——そんな未来のスペースフライトを作り上げる、と。

  • 次世代のための道具を作るとハッキリ言い切っている。

  • ここ数年、自分が「日本はこうすればいいと思う」と考えたり、言ってきたことがすべて入っていて、なおかつその先も考えているという印象。はっ、さては自分の家の裏にNASAのスパイがっ(妄想です)

  • で、どうするんだ、日本。

  • 特に、きちんと基礎に戻ってロケット第1段の開発をやるというところは重要だと思う。本当に低コストで安全な輸送系の開発には、いくらお金がかかってもこの部分の研究開発は欠かせないから。民間には過大な投資は、国が持つということなのだろう。

  • こういう方向修正が効くあたり、アメリカの底力はすごい。


 閑話休題。気が付けば、今年初めての更新だった。2月になってあけましておめでとうございますもないもんだが、今年も、よろしくお願いいたします。

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