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2010.04.14

 今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議第6回会合 泉内閣府副大臣記者レクチャー 月探査の方針変更への動き

 今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議第6回会合では、有識者会議が提言する宇宙庁という組織の構成内容が出ていた。
 政務三役と理事5名による「経営会議」と、各分野別のコーディネイトを行う3名の委員からなる「専門調査会」という2階層の組織を提案している。
 政治の側は「今の体制でもできることはある」と、この案があくまで有識者会議の提案であることを強調しているが、同時に「有識者会議と民主党政策集の方向性は一致している」として、その方向性を目指すことは否定していない。

 今日は、有識者会議の後に月探査に関する懇談会メンバーと前原大臣以下政務三役との「円卓会議」が開催された。
 注目すべきは、泉政務官の「月探査懇談会を開催したから月探査ありき、というわけではない。月探査に意義はある。しかし水星、金星、火星などにも意義がある。その比較は別途行う必要がある。」という発言だ。アメリカがコンステレーション計画をキャンセルするのを受けた方針変更が、日本の政府レベルでも徐々に始まっていることを意味する。

 私の見るところ、有識者会議は非常に合理的な提言を出すことになるのではないだろうか。
 今日の資料を見ると、ここ数年宇宙関係者の間でさんざん議論されてきたことがそのまま反映されている。
 資料6-1-2の「パッケージ化戦略」では、官庁が抱える問題の解決に宇宙を利用すること、海外への宇宙産業売り込み戦略、外交への利用などが盛り込まれている。
 資料6-1-3「グリーンイノベーション」では、今後地球観測においては、時間分解能の向上が重要になるということがきちんと盛り込まれている(これまでのJAXA-文科省の地球観測プログラムではこの部分が軽視されていた
 資料6-1-3「イノベーションエンジン」では、イノベーションの原動力として宇宙輸送系、太陽系探査、超小型衛星、無重力環境利用が挙げられている。これも妥当な選択だ。特に太陽系探査が技術力向上の原動力になることは、私自身も過去に主張していたことであり、本格的に政策に組み入れられるならば、それはうれしいことである。

 明らかに有識者会議は、行き詰まりがはなはだしい日本の宇宙開発への効果的な処方箋を描きつつある。
 次の問題は、それを政治がどのように受け止め、実行するかだ。


 今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議第6回会合の配付資料


今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議第6回会合ブリーフィング

2010年4月13日午後5時40分~
中央合同庁舎第4号館605会見室

定刻に泉政務官登場

 今日はまず、午後3時15分から会合を行った。午後4時半からは、月探査懇談会のメンバーを入れて月探査に関する円卓会議を実施。大島副大臣のみが欠席。他の政務三役は出席。

 お配りした資料(松浦注:掲載したもの)は前段で使われたもので委員の先生方が作成したものである。徐々に有識者会議で戦略をまとめつつある段階に来ている。

 これまでもお話してきたことの繰り返しとなるが、これまでの研究開発が先行して利用が不十分であった。衛星を開発し打ち上げることはしていたが、複数計画を系統立てたり 体系的に位置付けて取得データを利用していこうという動きがなかった。それをやろうというのが、資料6-1-3にあるグリーンイノベーション戦略だ。様々な監視衛星、観測衛星を複数運用しつつデータアーカイブセンターを設置して利用を促進する。
 データを取得1時間以内の配信というのは、リアルタイム更新の価値を追求ということ。これは一つの例であって、このような形で宇宙を利用していく体制の構築をしていくという方向の意見を、委員の方々から頂いている。

 資料6-1-3のデブリ対策。アメリカもデブリ対策には力を入れて来つつある。日本はしっかり目を向けていくべきという意見を頂いた。

 資料6-1-2のパッケージ戦略。たとえば自動車事故が起きたら自動的に救急信号を出して救急車が出動するというようなもの。パッケージ化により新たな価値を創出する。

 資料6-1-4のイノベーションエンジンについては、今日の会合ではあまり詳しく内容に触れることはできなかった、小型衛星、小型打ち上げシステムなど。月探査というだけではなく、探査をより大きくとらえて優先順位の高いところから探査を行うということだ。

 資料6-2の新体制について。トータルバランス戦略。国費投入がずっと続いているにも関わらず産業規模は縮小。民需をどう広げていくか。委員は、そのような問題意識を持っている。

 だから新しい宇宙開発体制が必要になるということだ。これは将来的な一つの姿と考えており、現在の宇宙開発戦略本部の仕組みでもできることはそれなりにある。その中でしっかりと議論していけば当面の問題は解決するだろう。

 有識者会議が提出するのは理想の体制である。

 今後の予定。20日は今日の資料にさらに修正を加えたものが出る。


 有識者会議の後、午後4時半からは、月探査に関する円卓会議を開催した。大臣、委員は初めての顔合わせであった。我々も興味深く聞かせていただいた。

 非公表扱いなので誰が何をいったかは言えないが、自分として言えるのは、月探査懇談会の委員の皆さんは、自分たちが積極的に基本計画に月探査を入れて自分たちが主役になって探査を進めるというのではなく、宇宙基本計画に月探査が入ったから、基本計画に沿って懇談会に集められた人々だということである。

 なぜ、月探査が宇宙基本計画に入ったのかについては、政治の側が過去の政策決定を検証していかなければならないものである。今後出てくる報告書をどう扱うかも政治の問題である。

 懇談会は月探査をどのように実施すべきかの議論を行うべき場所として設定されており、何か月探査を他のミッションと比較したという議論をしていない。月探査がいいのか、他の場所の探査がいいのかは月探査懇談会で議論すべきものではない。
 ではどこに行くべきなのかは、政治が決めていかなければならない問題かと認識した。


質疑応答

朝日新聞
6-2新しい宇宙開発体制について。宇宙庁は現在の戦略本部にとってかわるものなのか。民主党政策集にJAXAの企画部門と各省庁宇宙部門を内閣府に統合し、日本版NASAを作るというものがはいっているが、整合性は?


 委員は、民主党政策集を考慮してこのような案を出してきたわけではないだろう。民主党とすりあわせをしたわけではないが、方向性は一致している。現段階では政府として宇宙庁を採用するというわけはない。
 経営会議・専門調査会については、より踏み込んだ組織構成についての提言だ。

 宇宙庁ができればそれが宇宙開発戦略本部と別ということはないだろう。

東京新聞
 無重力を使ったタンパク質結晶成長実験がイノベーション戦略の例として資料に入っているが、これは2015年以降もISSきぼうをつかって実験を行うという意味か。それはISSの利用延長を認めるということになるが。


 今日は時間がなかったので、まだ委員に聞いたわけではない。私も疑問に思ったところなので、委員の皆さんに質問しなくてはならないと思っている。

読売新聞
 月探査については、宇宙基本計画に月と書いてあるから月ではなく、別の目標を設定するということもあるということか。


 宇宙基本計画は月探査について書いてあるが、実施するかどうかは別途判断してもいいのではないかと思う。
 基本計画では「国の総力を挙げて検討する」としているが、懇談会の皆さんには、「そういう環境が与えられていたか?」ということを私も質問した。かつての政府審議会の運営に近い形で議論されているので、必要な取り組みがあれば追加で入れてもらってかまわないと月探査懇談会には伝えてある。

 月探査懇談会を開催したから月探査ありき、というわけではない。月探査に意義はある。しかし水星、金星、火星などにも意義がある。その比較は別途行う必要がある。

読売
白紙検討か


これまで月について懇談会で検討してきたという重みはある。が、実施するか否かは別問題だ。

以上質疑応答終了

 去り際に泉政務官曰く
 前原大臣は本日の会合に終日出席した。最後に大臣から「星はなぜ丸くなるのか」という質問があった。重力が関係しているのだそうですね。星は形成過程で一回溶けるので…難しいですね。やめましょうか。

記者からでったつぶやき
「ISS延長容認か?」

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2010.04.06

宇宙開発戦略本部、今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議第5回会合 泉内閣府副大臣記者レクチャー 宇宙庁という言葉が出てきた

 有識者会議の第5回目。今回、初めて「宇宙庁」という具体的名称で、宇宙開発全般を統合する組織を創設するという話が出た。ただし、有識者会議メンバーは、従来型の官庁を作るという意識は希薄な模様。比較的少人数で、しかもメンバーは各官庁からの出向者ではなく、最適な人員を広く集めるということを意識している模様。かつ、予算権限を一括集中し、省庁横断で、機動的に政策を進めることができる組織を考えているようだ。

 いままで新官庁を創設するとなると、既存官庁が、影響力を求めて出向ポストの取り合いをし、出向者の出身別の勢力拮抗によって新官庁の性格が決まっていた。そのようなことにはしないという意志があるように見受けられた。

 4/20に前原大臣に提出される提言には、「宇宙庁創設」が含まれることは間違いない。ただし、具体的にどのようなタイムスケジュールで創設を行うかまでは盛り込まれないようである。


第5回会合の資料


今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議第5回会合ブリーフィング

2010年4月6日午後6時半~
内閣府本府118記者会見室


 午後6時40分、泉政務官登場

 今日は午後4時40分~5時40分のスケジュールで開催。有識者委員は全員出席。副大臣だけが欠席。資料にあるように体制について話をした。前原大臣からは、山崎さんのシャトル搭乗で喜びを分かち合う言葉があった。泉からは、先般のタスクフォース会合で対人数を集めて宇宙関係者全体による論をしてもらったことに礼を言った。

 欧州は民需が活発。日本でも欧州型の産業構造を生み出していくべきではないかという意見が出た。

 これまで、日本の宇宙開発は、開発研究に重きが置かれていた。それを変えるべく宇宙基本法が制定され、宇宙開発戦略本部が組織されたが、いまだ戦略本部は宇宙政策を推進するエンジンとして機能する至っていない。早期の体制構築が重要。
 例えば農水省、農地調査は実地調査よりも衛星を使ってやったほうが低コスト。しかし、ほとんどの官庁では衛星利用について構想したことすらないのが実情だ。

 一例として、ドイツのアウトバーンの長距離トラックに対する自動課金の仕組み。測位衛星を利用して、ETCゲートなしでの課金を可能にしている。

 官庁の宇宙利用を進めるにあたっては、企画立案を行う部門(松浦注:新設する宇宙庁のこと)が必要。大人数である必要はない。欧州の測位衛星システム「ガリレオ」の中核は5人。同じく欧州の地球観測衛星システムGMESは2人。あまり大人数で意志決定をしても仕方ないのではないか。

 ポトフォリオとバランスを考えた全体戦略を考え、日本全体の宇宙政策を策定・推進する必要がある。そのための人材を育成しなくてはならない。

 現行の宇宙基本計画は年間5000億円規模の政府予算を想定して策定されている。しかし、現在の予算は3000億円規模。なるべく民間の裾野を広げ、民間が利用しやすい土壌を作ることが大切。

 資料5-1にあるように、宇宙庁への権限一元化。有識者の意見は、この方向。


 以下、質疑応答。

日経新聞
 この案は、座長案か。有識者会議でコンセンサスがとれているのか。」


 有識者委員はお互いに緊密に連携している、彼らの意見は一致している。

東京新聞
 今日の議論で、JAXAの所管問題や、宇宙科学などJAXA内の組織をどうするかは出たか。

 出なかった。これまでのJAXAの活動を否定するのではない。現在のJAXAに営業部的組織を付けてもうまくいかないだろう。なにかしら別の組織を考えて、これまでの成果を生かすほうがいいのではないか。

東京新聞
 新体制への移行の具体的スケジュールは?


 スケジュールはまだ出ていない。今の戦略本部でも、組織を強化してきることもあるのではないか。3300億円の現在の予算をどう使うかも含め、その中に従来型の研究開発も」位置づけられているようにしたい。

読売新聞
 来週出る提言の原案には、宇宙庁を含めて組織論が入ってくるのか。


 公務員の世界の色々な制約がある。例えば局の数や定員の問題があるので、新組織創設の実務的には役所の皆さんが考えるべき問題がある。

読売新聞
 民主党の新成長戦略に向けての施策を打ち出すわけだが、そこに組織をこうするべきという意見も入れるのか。


 このような施策のために、このような体制が必要という書き方になる。

日経新聞
 新成長戦略は2020年までの工程表が必要としているが。


 今は、2020年でのあるべき姿を書いている。具体的にどうやって組織を作るかは書いていない。

毎日新聞
 民間との協力体制について。どういう形になるのか、


 色々な議論がブレスト的に出ている。半官半民というとイメージが悪いが、政府と民間で株式会社を作るとか。それぐらいの営業感覚を持って日本の宇宙資源を売り出していく必要はあるかという意見は出ている。

読売新聞
 今5000億という数字がでたが、現状から増える2000億円は民間に出してもらうということか。


 そのあたりは予算の使いようだろう。同じ予算でももっと民需に結びつく使い方もあり得るというのが有識者の皆さんの意見だ。すべて政府が出資するというのではない環境を作れるのではないか。

朝日新聞
 前原大臣から、体制に対する意見はあったか。


 宇宙庁かどうかは別にして、日本が宇宙産業を世界に全面的に押し出していく体制は必要だという発言はあった。

NHK
 来週の提言では、例えば文部科学大臣との事前の調整はやるのか。



 今のところ有識者会議は宇宙担当大臣に提言を出すもの。事前にどこまで文部科学大臣と調整するかというと…文部科学大臣も定例記者会見でその質問を受けていて、「それは宇宙担当大臣が行うことだ」と答えている。

 有識者会議にはいつも前原大臣が出ているので、提出される提言には、それなりの重みはある、と、理解している。

 以上。

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宣伝:4月11日(日)、Yuri's Night 2010 Tokyo に出演します

 Yuri's Night(ユーリーズ・ナイト)というのは、ガガーリンがボストーク1号で初飛行した4月12日を記念して、世界中の航空宇宙を学ぶ学生が開催するお祭りです。日本では、学生主宰のシンポジウムが開催されています。

 私は昨年のYuri's Nightでも話をしたのですが、ありがたいことに今年も話をする機会をもらいました。

 参加は無料ですが、事前申し込みが必要です。こちらから参加申し込みができます

Yuri's Night 2010 Tokyo
0 to 10 ~ゼロ年代から拓く宇宙開発~

●開催概要
日時:2010年4月11日(日曜日)
12時00分開場(受け付け開始)、13時00分開会、18時15分閉会。

場所
日本科学未来館 7階 みらいCAN ホールアクセス

懇親会:終了後、未来館内のレストランLA TERRE(ラ・テール)にて。
参加費:学生2000円、社会人3000円。

プログラム
12:00 開場、受け付け開始

13:00 ~ 13:15 開会の挨拶
 鳥嶋 真也(Yuri's Night Japan 実行委員会 実行委員長)

13:15 ~ 14:05 「オバマ宇宙政策と日本の対応」
 松浦 晋也(ノンフィクション・ライター)

14:05 ~ 14:15 10分休憩

14:15 ~ 15:05 「有人宇宙船開発に向けて、日本はどこまで来たか」
 今田 高峰氏(宇宙航空研究開発機構(JAXA) 有人宇宙環境利用ミッション本部 宇宙ステーション回収機研究開発室)

15:05 ~ 15:15 10分休憩

15:15 ~ 16:05 「「はやぶさ」ミッションの現状と「はやぶさ後継」ミッションの構想」
 吉川 真氏(宇宙航空研究開発機構(JAXA) 宇宙科学研究所(ISAS) 准教授、月・惑星探査プログラムグループ 「はやぶさ2」プリプロジェクトチームリーダー)

16:05 ~ 16:30 25分休憩

16:30 ~ 18:00 パネルディスカッション
モデレータ
寺薗 淳也氏(会津大学助教、月探査情報ステーション編集長)
パネリスト
松浦 晋也
今田 高峰氏
吉川 真氏
大貫 剛氏(宇宙システム開発(株)、NPO法人有人ロケット研究会(MRP)事務局長)

18:00 ~ 18:15 閉会の挨拶
 篠崎 駿(Yuri's Night Japan 実行委員会)

18:30 ~ 20:30 懇親会、観望会

 興味のある方はご参加頂ければと思います。

 なお、前日の4月10日には、Yuri's Night 2010 Tokyo第一部 「お花見」が、飛鳥山公園にて開催されます。

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2010.04.02

今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議・タスクフォース会合

 今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議のやりたいことが見えてきた。

 目的は鳩山政権下で国家戦略室がまとめる新成長戦略に宇宙関係の記述を組み込むこと。新成長戦略は、経済成長に関する戦略であり、宇宙分野は他産業、他分野との競争にさらされる。「宇宙でこのような政策を採用すれば、経済成長にこのような良いことがある」ということを具体的かつ説得力豊かに提示できなければならない。そのために提言をまとめる。

 提言は、総花的に関係者の意見を併置するのではなく、メリハリを付けて「まずこれをやる」とはっきり順位を付けて示せねばならない。そのためには意見をヒアリングすると共に、関係者の間での現状認識のコンセンサスを突くって置かねばならない。だから有識者会合の意志と責任において、タスクフォース会合を開催した――そのような流れとなる。

 同時に、宇宙開発体制の改革にあたって、このような皆が集まって意見をいいあう、今までの官庁のヒアリングとは根本からことなる意見をくみ上げる場を常設したいという意志を持っていることも確認できた。




当日配布された、松井座長名義の資料


 以下は、東京大学本郷キャンパスで開催されたタスクフォース会合のマスコミ向けブリーフィングの様子である。


2010年4月2日
タスクフォース会合・メディア向けブリーフィング

Profmatsui 午後6時半からの予定が、ブリーフィング開催時刻になってもまだタスクフォース会合が続いている。午後7時前。会場となった東京大学工学部11号館1階講堂から、参加者が出てくる。「なるほどあの人が呼ばれていたのか」という顔ぶれ多数。
 退場する参加者の表情を観察していたが、徒労感や怒りの表情を浮かべていた人はほとんどいなかった。なにかさばさばとした表情が多い。数人、きびしい表情を浮かべ、足早に去っていく人がいた。

 秋山教授が会場内から「マスコミの皆さん、どうぞ」という声をかけ、外で待っていたマスコミ関係者が会場に招き入れられる。

 マスコミ向けブリーフィングの出席者は、松井座長以下、薬師寺、山川、秋山各委員。中須賀委員は欠席。

タスクフォース会合のブリーフィング開始、広報担当の秋山演亮・和歌山大学教授から前ふりがあって、有識者会議の座長である松井孝典・東京大学名誉教授の話に入る。左写真は説明を行う松井座長。

松井
 今回のタスクフォース会合は、今までの官庁が主催する会議とは異なることをしようとしている。役所が意見を吸い上げ、文書をとりまとめるのではなく、我々有識者会議の委員がきちんと議論して方向性を示す。それに沿って役所のほうに動いてもらうという形を取っている。

 今回のタスクフォース会合は、宇宙開発戦略本部事務局ではなく、有識者会議の我々が自分たちの任務を果たすために自発的に企画したものである。

 本日の出席者は85名。

 現在の宇宙基本計画は、日本が行うべきことをAからIまで羅列的に書いてあり、総花的。「日本がなにをすべきか」という方針が明快に見えてこない。もっと明快に方針を書いた計画が望ましいというのが、有識者会議の一致した意見である。

 我々は、日本のこれまでの宇宙政策は開発研究が主であり、利用が受動的立場であったという認識を持っている。ただし利用というのは狭い意味での宇宙利用ではなく、例えばサイエンスも利用であるという立場だ。これまではロケット・輸送系が開発研究として重要な地位にあり、そこが主導して政策が決まっていた。サイエンスなどはそれに追随する形だった。

 開発研究と利用の枠組みをきちんとわけで、それでマトリクスを作り、そこに優先順位を割り振るということで計画をまとめていきたい。(松浦注;有識者会合の作成したマトリクスは本日掲載の資料に載っている)

 タスクフォース会合では、参加者に対し、このことをまず最初に説明した。

 タスクフォース会合は、各項目ひとり3分でプレゼンを行い、ディスカッションを行うということを繰り返して進行した。

 既存の宇宙計画それぞれには、すでに関係者のコミュニティがあるわけだが、それを離れて、我々が提示するマトリクスに基づく議論をお願いした。

 議論の内容については、質疑応答で質問があったものについて答えていく。
 

 以下、質疑応答。

読売新聞
 タスクフォース会合の参加者人選はどういう基準で何人選んで、出席率は?

山川
 「メーカー、官公庁、国研」、そして「通信から安全保障に至るまで」という所属と仕事でマトリクスを作り、そのすべてに声をかけた。声をかけたのは115人、今日の出席者が85人。

読売新聞
 参加者がプレゼンを行ったということだが、例えばメーカーは自分のやりたいプロジェクトをプレゼンしたのか。

松井
 現在国家戦略室が策定中の新成長戦略に何を書き込むか、という立場での提案をお願いした。

読売新聞
宇宙開発体制については、どんな体制が望ましいという意見が出たのか

松井
 この件に関しては、宇宙開発戦略本部で昨年来議論が重ねられており、すでに体制WGなどで意見が出ている。我々も来週の有識者会議でこの件を議論する予定なので、参考にするための意見を頂いた。「今日はそんなことを話す場ではない」という意見も出たが、「長期的に考える上で避けられない問題だ」と返し、「異論があるならご退席ください」といったが誰も退席することなく、議論を行うことができた。

読売新聞
有人宇宙活動に関してどんな意見が出たか。

松井
 これまで推進してきたグループから「必要だ」という意見が出た。我々のほうからは「なぜ日本が今やらねばならないのかを考えるべき」という意見と、過激ではあるが「有人宇宙活動を切り捨ているという意見もある」と刺激的な発言をして、当然のことながら様々な反論が頂いた。
 私自身は、ISSを続ける意味が分かっていない。この分野は宇宙利用やサイエンスよりも安全保障や政治的な側面があり、それをどう考えるかに尽きる。
 私に取っては参考になる意見が出たと思う。

時事通信
新成長戦略は経済成長を狙っているのだが、そもそも宇宙分野で経済成長が望めるのか。

松井
 配布した資料を見てもらうとわかるように、我々は宇宙産業の規模を、今後10年で年間7兆円から14兆円にまで大きくしたいと提案している。そのための仕組みをどう作っていくのかが重要。そのために何が必要なのかというところで、意見を言ってくれ、ということで意見を出してもらった。
 一例として(松浦注:地球観測データを例にすると)、プロなら生データで使えるものが、エンドユーザーには加工したデータを出さなければ使えないのかもしれない。すると産業振興策としては、国は生データの加工にお金をだすべきだということになる。

東京新聞
宇宙基本計画との整合性はどうなるのか

松井
 先ほども言ったように宇宙基本計画は、日本のやるべきことを羅列してあるだけだ。有識者会議では羅列された各項目に、優先順位を付けようとしている。どう優先順位を付けるかで関係者から話を聞いたということだ。きちんと優先順位をつけた形で提言を出したい。
 また宇宙基本計画がすべてというわけではなく、載っていないことについても必要ならば提言に書いていきたい。

東京新聞
有人についてもそうなのか。

松井
有人宇宙活動についても提言に書き込みたい。

朝日新聞
 現在の宇宙開発は税金を使って回っている。現在の予算規模は全官庁合わせて年間3500億ほどだから、これを増やすべきなのかという点で議論があったのか。
 また月探査について。1年近く宇宙開発戦略本部で議論しているが、無人の月探査についてはどんな議論があったのか。

松井
 国民に「日本が宇宙に関わらねばならない理由」を提示することが重要だ。その辺の議論をするための動機を、コミュニティが持っているのかを聞き出すのが今回の会合の重要な目的である。
 アメリカ・ブッシュ政権が月といったので日本でも月ということになったが、アメリカが方針変更をした今、「アメリカがやるから」というのではいかがなものか。「何が日本が行うべきことか」から意見を作り上げていくべきと自分は考えている。
 今日、月探査の議論はなかった。明日、議論をする予定。「月探査の意義をきちん述べてください」とヒアリングする予定だ。
 今日は、はやぶさ関連の小惑星探査の話が少し出た。

朝日新聞
 やはり「自分の計画をやるべき」というプレゼン合戦だったのだろうか。
 今、宇宙計画に関わっている人を呼んでヒアリングをすると、今ある計画についての話しか出てこないのではないのだろうか。
 今、やっていないようなことをやるべきという話はあるのだろうか。

松井
 私は「あたらしい提案を期待している」ということを何度も言った。今までの延長線上ではない議論を期待しているのだが、今日の議論の結果では、もうちょっときめ細かな分類や議論をしなければならないかなという感触を得ている。

産経新聞
新成長戦略に盛り込むための基準は何なのか。

松井
 今は、その基準が存在しない。宇宙基本計画は羅列してあるだけ。その基準を我々としても作りたいと考えている。開発研究と利用のマトリクスの中で基準を示せるようにしたいと考えている。

 ここで、松井座長、次の用事があり退席。

秋山
 我々が有識者会議の委員が、新成長戦略を決めるのではない。我々は提言を作り上げ、最終的には国家戦略室が取捨選択する。他の産業も新成長戦略に盛り込まれることを狙っている。宇宙から、それら他分野からの意見に勝つための説得力のある提言を出さなくてはならない。
 実はすでに各官公庁や有識者会議から国家戦略室に宇宙関係の意見は提出済み。しかし、漏れがないように総合的な内容で提出されている。それら総合的な内容の中から、どこを押すかの基準を我々が提示する。

薬師寺
 我々は3つのポイントを押し出している。「世界に冠たるマーケットコミュニティの送出」「宇宙外交を通じた協力国の拡大と宇宙利用の海外展開」「月・惑星探査などを通じた最先端科学・技術力の向上・確保と将来の新産業創出」。これらが柱となって、それぞれに具体的な策が入った報告書を4/13に出す。そこで新しい試みとして、今回は115名の各コミュニティの方々を呼んで、1)意見を聞く、2)我々を意見を説明して意思統一する――ということを目指した。
 これは政策決定パターンとしては非常にユニークなものだ。今後このパターンを定着させるための一つの試みだと思って欲しい。

朝日新聞
では、なぜタスクフォース会合を非公開にしたのか。

薬師寺
それぞれの方に立場を離れて自由に発言してもらうため。

共同通信
今後、各省庁の新成長戦略への要求は、宇宙開発戦略本部が調整するのか、それとも国家戦略室を行うのか。

薬師寺
宇宙開発戦略本部が調整を行う。

不明
松井座長の言うマトリクスのイメージが湧かない。官の仕事を増やす方向に行くのか?

薬師寺
今、日本は利用分野が弱い。そこを増やすために呼び水的に官の資金が必要なのかは、提言に入れていきたい。今まで、官にせよ民にせよステークホルダーが限られていた。民のマーケットが立ち上がると、ステークホルダーが増えてくる。今までの日本の宇宙政策は、色々な分野が立って何処を中心に考えるかということが決まっていなかった。日本としての宇宙政策を、新成長戦略に位置づけるためには、

不明
政策レベルと実行部隊の切り分けはどうするのか。政策立案とJAXAに代表される実行部隊を統合して、宇宙庁のような巨大官庁を作るのか。理解を苦しむ。

薬師寺
本日は、その件に関する意見も、色々と出た。

不明
具体的にどんな意見が出たのか。

薬師寺
それは今、私が言うべきことではない。4/13の提言には今日の議論の内容を盛り込む。

秋山
。今の質問は重要なポイントを突いています。今晩、皆さんが帰ってから「タスクフォース会合はこっちの方向に向かっている」とか記事を書いてしまうと、明日の議論ができなくなってしまいますので、注意をお願いします。

NHK
すでに国家戦略室には資料が出ているそうだが、今回のタスクフォース会合における議論をふまえた資料をまた提出するのか。

薬師寺
各コミュニティと意志を共有しつつ、我々が新成長戦略に組み入れられるような提言を書いていく。

以上でブリーフィング終了

 終了後のぶら下がり取材にて

薬師寺
 すでに宇宙関係では、さんざん様々な議論がなされてきていて、ある種のコンセンサスが関係者の中でできつつある。それを明示的な形で関係者が共有するということも、このタスクフォース会合の目的。
 霞ヶ関の会合では、ヒアリングをする場合、される側は問われたことにしか答えられない。これでは意見の集約にもコンセンサス形成にもならない。今回、これだけ広く多くの人たちに集まってもらって、相互に意見をぶつけるというのは、政策の意志決定プロセスとしては画期的なことだ。話が出た時、私はあまりに準備期間が短いので無理だと言ったのだけれど(山川、秋山委員をちらっと見て)若い人たちが頑張って実現した。

山川
 宇宙関係では、ここ何年も、誰もが問題点を分かっていたにもかかわらず物事が進展していかないという状況が続いていた。なぜ状況が進展しなかったかと言えば、最初の一押しがなかったから。有識者会議は、最初の一押しを行い、事態がごろごろと転がり始めることを狙っている。

秋山
 今回の件で重要なのは、我々が政策を決めるというわけじゃないというところです。我々は責任を持って提言をまとめる。提言は前原宇宙担当大臣に提出される。それを受けて、前原大臣は責任を持って国家戦略室に担当大臣として何を新成長戦略に入れるべきかを主張する。国家戦略室は、責任を持って取捨選択を行い、新成長戦略を決定する。つまり、きちんと責任分担が明確になっているということです。
 提言は我々5人がまとめます。顔が見えているということが大切です。宇宙基本計画を誰がまとめたかという顔は見えていませんよね。提言は我々5人の顔が見えている。

 新成長戦略は、経済成長に関する戦略です。対象は宇宙だけじゃなく、他の産業も含まれる。だから宇宙としては、「宇宙に関してこういう政策をとると、経済成長にとってこんないいことがあるよ」というのを説得力をもって示せなくては、新成長戦略に宇宙分野に関する記述を書き込むことはできません。
(体制について聞かれて)4月20日に提言をまとめて我々の仕事が終わりますが、今回のタスクフォース会合のようなものを、今後とも継続していくようにしたいと考えています。

以上

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