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2010.04.02

今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議・タスクフォース会合

 今後の宇宙政策の在り方に関する有識者会議のやりたいことが見えてきた。

 目的は鳩山政権下で国家戦略室がまとめる新成長戦略に宇宙関係の記述を組み込むこと。新成長戦略は、経済成長に関する戦略であり、宇宙分野は他産業、他分野との競争にさらされる。「宇宙でこのような政策を採用すれば、経済成長にこのような良いことがある」ということを具体的かつ説得力豊かに提示できなければならない。そのために提言をまとめる。

 提言は、総花的に関係者の意見を併置するのではなく、メリハリを付けて「まずこれをやる」とはっきり順位を付けて示せねばならない。そのためには意見をヒアリングすると共に、関係者の間での現状認識のコンセンサスを突くって置かねばならない。だから有識者会合の意志と責任において、タスクフォース会合を開催した――そのような流れとなる。

 同時に、宇宙開発体制の改革にあたって、このような皆が集まって意見をいいあう、今までの官庁のヒアリングとは根本からことなる意見をくみ上げる場を常設したいという意志を持っていることも確認できた。




当日配布された、松井座長名義の資料


 以下は、東京大学本郷キャンパスで開催されたタスクフォース会合のマスコミ向けブリーフィングの様子である。


2010年4月2日
タスクフォース会合・メディア向けブリーフィング

Profmatsui 午後6時半からの予定が、ブリーフィング開催時刻になってもまだタスクフォース会合が続いている。午後7時前。会場となった東京大学工学部11号館1階講堂から、参加者が出てくる。「なるほどあの人が呼ばれていたのか」という顔ぶれ多数。
 退場する参加者の表情を観察していたが、徒労感や怒りの表情を浮かべていた人はほとんどいなかった。なにかさばさばとした表情が多い。数人、きびしい表情を浮かべ、足早に去っていく人がいた。

 秋山教授が会場内から「マスコミの皆さん、どうぞ」という声をかけ、外で待っていたマスコミ関係者が会場に招き入れられる。

 マスコミ向けブリーフィングの出席者は、松井座長以下、薬師寺、山川、秋山各委員。中須賀委員は欠席。

タスクフォース会合のブリーフィング開始、広報担当の秋山演亮・和歌山大学教授から前ふりがあって、有識者会議の座長である松井孝典・東京大学名誉教授の話に入る。左写真は説明を行う松井座長。

松井
 今回のタスクフォース会合は、今までの官庁が主催する会議とは異なることをしようとしている。役所が意見を吸い上げ、文書をとりまとめるのではなく、我々有識者会議の委員がきちんと議論して方向性を示す。それに沿って役所のほうに動いてもらうという形を取っている。

 今回のタスクフォース会合は、宇宙開発戦略本部事務局ではなく、有識者会議の我々が自分たちの任務を果たすために自発的に企画したものである。

 本日の出席者は85名。

 現在の宇宙基本計画は、日本が行うべきことをAからIまで羅列的に書いてあり、総花的。「日本がなにをすべきか」という方針が明快に見えてこない。もっと明快に方針を書いた計画が望ましいというのが、有識者会議の一致した意見である。

 我々は、日本のこれまでの宇宙政策は開発研究が主であり、利用が受動的立場であったという認識を持っている。ただし利用というのは狭い意味での宇宙利用ではなく、例えばサイエンスも利用であるという立場だ。これまではロケット・輸送系が開発研究として重要な地位にあり、そこが主導して政策が決まっていた。サイエンスなどはそれに追随する形だった。

 開発研究と利用の枠組みをきちんとわけで、それでマトリクスを作り、そこに優先順位を割り振るということで計画をまとめていきたい。(松浦注;有識者会合の作成したマトリクスは本日掲載の資料に載っている)

 タスクフォース会合では、参加者に対し、このことをまず最初に説明した。

 タスクフォース会合は、各項目ひとり3分でプレゼンを行い、ディスカッションを行うということを繰り返して進行した。

 既存の宇宙計画それぞれには、すでに関係者のコミュニティがあるわけだが、それを離れて、我々が提示するマトリクスに基づく議論をお願いした。

 議論の内容については、質疑応答で質問があったものについて答えていく。
 

 以下、質疑応答。

読売新聞
 タスクフォース会合の参加者人選はどういう基準で何人選んで、出席率は?

山川
 「メーカー、官公庁、国研」、そして「通信から安全保障に至るまで」という所属と仕事でマトリクスを作り、そのすべてに声をかけた。声をかけたのは115人、今日の出席者が85人。

読売新聞
 参加者がプレゼンを行ったということだが、例えばメーカーは自分のやりたいプロジェクトをプレゼンしたのか。

松井
 現在国家戦略室が策定中の新成長戦略に何を書き込むか、という立場での提案をお願いした。

読売新聞
宇宙開発体制については、どんな体制が望ましいという意見が出たのか

松井
 この件に関しては、宇宙開発戦略本部で昨年来議論が重ねられており、すでに体制WGなどで意見が出ている。我々も来週の有識者会議でこの件を議論する予定なので、参考にするための意見を頂いた。「今日はそんなことを話す場ではない」という意見も出たが、「長期的に考える上で避けられない問題だ」と返し、「異論があるならご退席ください」といったが誰も退席することなく、議論を行うことができた。

読売新聞
有人宇宙活動に関してどんな意見が出たか。

松井
 これまで推進してきたグループから「必要だ」という意見が出た。我々のほうからは「なぜ日本が今やらねばならないのかを考えるべき」という意見と、過激ではあるが「有人宇宙活動を切り捨ているという意見もある」と刺激的な発言をして、当然のことながら様々な反論が頂いた。
 私自身は、ISSを続ける意味が分かっていない。この分野は宇宙利用やサイエンスよりも安全保障や政治的な側面があり、それをどう考えるかに尽きる。
 私に取っては参考になる意見が出たと思う。

時事通信
新成長戦略は経済成長を狙っているのだが、そもそも宇宙分野で経済成長が望めるのか。

松井
 配布した資料を見てもらうとわかるように、我々は宇宙産業の規模を、今後10年で年間7兆円から14兆円にまで大きくしたいと提案している。そのための仕組みをどう作っていくのかが重要。そのために何が必要なのかというところで、意見を言ってくれ、ということで意見を出してもらった。
 一例として(松浦注:地球観測データを例にすると)、プロなら生データで使えるものが、エンドユーザーには加工したデータを出さなければ使えないのかもしれない。すると産業振興策としては、国は生データの加工にお金をだすべきだということになる。

東京新聞
宇宙基本計画との整合性はどうなるのか

松井
 先ほども言ったように宇宙基本計画は、日本のやるべきことを羅列してあるだけだ。有識者会議では羅列された各項目に、優先順位を付けようとしている。どう優先順位を付けるかで関係者から話を聞いたということだ。きちんと優先順位をつけた形で提言を出したい。
 また宇宙基本計画がすべてというわけではなく、載っていないことについても必要ならば提言に書いていきたい。

東京新聞
有人についてもそうなのか。

松井
有人宇宙活動についても提言に書き込みたい。

朝日新聞
 現在の宇宙開発は税金を使って回っている。現在の予算規模は全官庁合わせて年間3500億ほどだから、これを増やすべきなのかという点で議論があったのか。
 また月探査について。1年近く宇宙開発戦略本部で議論しているが、無人の月探査についてはどんな議論があったのか。

松井
 国民に「日本が宇宙に関わらねばならない理由」を提示することが重要だ。その辺の議論をするための動機を、コミュニティが持っているのかを聞き出すのが今回の会合の重要な目的である。
 アメリカ・ブッシュ政権が月といったので日本でも月ということになったが、アメリカが方針変更をした今、「アメリカがやるから」というのではいかがなものか。「何が日本が行うべきことか」から意見を作り上げていくべきと自分は考えている。
 今日、月探査の議論はなかった。明日、議論をする予定。「月探査の意義をきちん述べてください」とヒアリングする予定だ。
 今日は、はやぶさ関連の小惑星探査の話が少し出た。

朝日新聞
 やはり「自分の計画をやるべき」というプレゼン合戦だったのだろうか。
 今、宇宙計画に関わっている人を呼んでヒアリングをすると、今ある計画についての話しか出てこないのではないのだろうか。
 今、やっていないようなことをやるべきという話はあるのだろうか。

松井
 私は「あたらしい提案を期待している」ということを何度も言った。今までの延長線上ではない議論を期待しているのだが、今日の議論の結果では、もうちょっときめ細かな分類や議論をしなければならないかなという感触を得ている。

産経新聞
新成長戦略に盛り込むための基準は何なのか。

松井
 今は、その基準が存在しない。宇宙基本計画は羅列してあるだけ。その基準を我々としても作りたいと考えている。開発研究と利用のマトリクスの中で基準を示せるようにしたいと考えている。

 ここで、松井座長、次の用事があり退席。

秋山
 我々が有識者会議の委員が、新成長戦略を決めるのではない。我々は提言を作り上げ、最終的には国家戦略室が取捨選択する。他の産業も新成長戦略に盛り込まれることを狙っている。宇宙から、それら他分野からの意見に勝つための説得力のある提言を出さなくてはならない。
 実はすでに各官公庁や有識者会議から国家戦略室に宇宙関係の意見は提出済み。しかし、漏れがないように総合的な内容で提出されている。それら総合的な内容の中から、どこを押すかの基準を我々が提示する。

薬師寺
 我々は3つのポイントを押し出している。「世界に冠たるマーケットコミュニティの送出」「宇宙外交を通じた協力国の拡大と宇宙利用の海外展開」「月・惑星探査などを通じた最先端科学・技術力の向上・確保と将来の新産業創出」。これらが柱となって、それぞれに具体的な策が入った報告書を4/13に出す。そこで新しい試みとして、今回は115名の各コミュニティの方々を呼んで、1)意見を聞く、2)我々を意見を説明して意思統一する――ということを目指した。
 これは政策決定パターンとしては非常にユニークなものだ。今後このパターンを定着させるための一つの試みだと思って欲しい。

朝日新聞
では、なぜタスクフォース会合を非公開にしたのか。

薬師寺
それぞれの方に立場を離れて自由に発言してもらうため。

共同通信
今後、各省庁の新成長戦略への要求は、宇宙開発戦略本部が調整するのか、それとも国家戦略室を行うのか。

薬師寺
宇宙開発戦略本部が調整を行う。

不明
松井座長の言うマトリクスのイメージが湧かない。官の仕事を増やす方向に行くのか?

薬師寺
今、日本は利用分野が弱い。そこを増やすために呼び水的に官の資金が必要なのかは、提言に入れていきたい。今まで、官にせよ民にせよステークホルダーが限られていた。民のマーケットが立ち上がると、ステークホルダーが増えてくる。今までの日本の宇宙政策は、色々な分野が立って何処を中心に考えるかということが決まっていなかった。日本としての宇宙政策を、新成長戦略に位置づけるためには、

不明
政策レベルと実行部隊の切り分けはどうするのか。政策立案とJAXAに代表される実行部隊を統合して、宇宙庁のような巨大官庁を作るのか。理解を苦しむ。

薬師寺
本日は、その件に関する意見も、色々と出た。

不明
具体的にどんな意見が出たのか。

薬師寺
それは今、私が言うべきことではない。4/13の提言には今日の議論の内容を盛り込む。

秋山
。今の質問は重要なポイントを突いています。今晩、皆さんが帰ってから「タスクフォース会合はこっちの方向に向かっている」とか記事を書いてしまうと、明日の議論ができなくなってしまいますので、注意をお願いします。

NHK
すでに国家戦略室には資料が出ているそうだが、今回のタスクフォース会合における議論をふまえた資料をまた提出するのか。

薬師寺
各コミュニティと意志を共有しつつ、我々が新成長戦略に組み入れられるような提言を書いていく。

以上でブリーフィング終了

 終了後のぶら下がり取材にて

薬師寺
 すでに宇宙関係では、さんざん様々な議論がなされてきていて、ある種のコンセンサスが関係者の中でできつつある。それを明示的な形で関係者が共有するということも、このタスクフォース会合の目的。
 霞ヶ関の会合では、ヒアリングをする場合、される側は問われたことにしか答えられない。これでは意見の集約にもコンセンサス形成にもならない。今回、これだけ広く多くの人たちに集まってもらって、相互に意見をぶつけるというのは、政策の意志決定プロセスとしては画期的なことだ。話が出た時、私はあまりに準備期間が短いので無理だと言ったのだけれど(山川、秋山委員をちらっと見て)若い人たちが頑張って実現した。

山川
 宇宙関係では、ここ何年も、誰もが問題点を分かっていたにもかかわらず物事が進展していかないという状況が続いていた。なぜ状況が進展しなかったかと言えば、最初の一押しがなかったから。有識者会議は、最初の一押しを行い、事態がごろごろと転がり始めることを狙っている。

秋山
 今回の件で重要なのは、我々が政策を決めるというわけじゃないというところです。我々は責任を持って提言をまとめる。提言は前原宇宙担当大臣に提出される。それを受けて、前原大臣は責任を持って国家戦略室に担当大臣として何を新成長戦略に入れるべきかを主張する。国家戦略室は、責任を持って取捨選択を行い、新成長戦略を決定する。つまり、きちんと責任分担が明確になっているということです。
 提言は我々5人がまとめます。顔が見えているということが大切です。宇宙基本計画を誰がまとめたかという顔は見えていませんよね。提言は我々5人の顔が見えている。

 新成長戦略は、経済成長に関する戦略です。対象は宇宙だけじゃなく、他の産業も含まれる。だから宇宙としては、「宇宙に関してこういう政策をとると、経済成長にとってこんないいことがあるよ」というのを説得力をもって示せなくては、新成長戦略に宇宙分野に関する記述を書き込むことはできません。
(体制について聞かれて)4月20日に提言をまとめて我々の仕事が終わりますが、今回のタスクフォース会合のようなものを、今後とも継続していくようにしたいと考えています。

以上

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