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2010.06.30

のぞみとメイブン、はやぶさ2とオシリス-レックス

 昨日、秋山演亮さんが書いた「呆れた事態」は回避されたわけではないようだが、少なくとも先送りはされた模様。当面、秋山さんの有人宇宙港をめぐる冒険は、宇宙に興味を持つ人にとって目を離せないということになりそうだ。

 昨日の私の投稿に対して、色々と御意見をありがとうございました。霞ヶ関の動きを変えることが出来たのかどうかはまだ良くわかりませんが、弛まず慌てず、一歩一歩これからも進んで行きたいと思います。 (中略)  今年、8月31日に、40億なり50億なりの開発費が付かなかったとしたら、2014年・2015年のウィンドウで日本が小天体探査機を飛ばすことは不可能になります。日本が小天体探査機を飛ばせば、おそらくその影で失敗することを恐れてアメリカは小天体探査機を飛ばさないでしょう。しかし日本がやらなければ、アメリカが現時点で伝え聞いている日本の「はやぶさ」の技術・ノウハウを思う存分使って、失敗を恐れずに彼等は探査機を飛ばすでしょう。

 人類の英知と言う意味ではそれは幸せな事ですが、しかし「諸国民の中で尊敬される日本」という国を考えた時、「はやぶさ2」を実施しないことは「はやぶさ」ミッションを失敗に追いやり国費の無駄を産み出す重大な誤りであり、また国民に対する大きな裏切りになると、私は思います。

(有人宇宙港をめぐる冒険 2010年6月30日付。もしも「はやぶさ」計画が失敗だったとしたらより)

 「小惑星探査もアメリカに任せればいいじゃないか」という意見に対して、いくつか判断の材料を提示することにする。

 宇宙科学の世界では、かなり熾烈な競争が存在する。その結果、科学的成果が最大になると予想されるテーマでは、一種の棲み分けが発生している。どこかが探査機計画を立ち上げると、他の国は同様の探査機を避けて、別の分野を探すのだ。

 その典型例が、日本の火星探査機「のぞみ」周辺で起きていた。「のぞみ」は、火星大気を観測するための探査機だった。1990年代以降、この分野の探査計画はアメリカでも欧州でもロシアでも立ち上がることはなかった。「日本がやるのだから、わざわざ巨額の予算を付けてバッティングする計画を立ち上げる必要はない」というわけだ。
 2003年に「のぞみ」が失敗した後も、しばらく同様の探査機計画が立ち上がることはなかった。つまり諸外国は当然日本が「のぞみ2」を立ち上げるだろうと判断していたのである。

 しかし、「のぞみ2」が動き出すことはなかった。そして「のぞみ」が目指した科学観測は今なお、世界一線級の価値を持っている。遠慮する必要がなくなれば、資金的余裕のある国が探査計画を立ち上げることになる。

 アメリカは一昨年、MAVEN(メイヴン Mars Atmosphere and Volatile Evolution Mission)という火星探査機計画を立ち上げた。リンク先を見てもらえればわかるが、メイブンはまったくもって「大きなのぞみ」といった形状をしており、科学観測の内容もほぼ一致している。打ち上げは2013年。
 これで、日本が「のぞみ2」を打ち上げる意義はなくなった。先にメイブンが火星に到達し、のぞみが行うはずだった観測を実施するからだ。アメリカにすれば「いつまでも次の計画を立ち上げないから、俺たちでやっちゃうよ。観測内容には大きな意義があるんだから、いつまでも待つ必要は感じないしね」ということだろう。

 ちなみに計画が一国で行うには予算規模的に大きすぎるということになると、今度は各国の科学者達は一転して協調し、国際協力計画を模索し始める。例えば、例えば巨大なX線観測衛星IXO計画は、その方向で進んでいる。
 しかし、小規模・中規模の探査計画では、科学者達はお互いの様子を探り合い、どの分野を狙ってどのような計画を立ち上げるかで熾烈に争っているのが実情である。「のぞみ」「はやぶさ」クラスの計画は、国際協力ではなく国際競争で事態が動いている。

 さて、とにもかくにも帰ってきた「はやぶさ」も、結果として失敗した「のぞみ」と同じ結果に終わらすのは、日本にとって良いことなのだろうか、悪いことなのだろうか。「のぞみ」だって失敗とは言え、日本初の惑星探査機として非常に大きな意義があった。「のぞみ2」があれば、リベンジは十分可能だったはずだ。世界的に見れば同型探査機を2機打ち上げるのはごく普通のことである。
 「のぞみ2」がなかったのは、科学観測の価値ではない。科学的価値は、はからずもアメリカがメイブンで追従したことにより証明されている。
 「のぞみ2」が立ち上がらなかったのは、主に予算のせいだった。

 「はやぶさ2」がなければ、同じことがおこるだろう。

 小惑星に対するアメリカの興味は、火星大気観測に対する興味より明らかに強い。アメリカは一昨年の科学探査機セレクションに小惑星からのサンプルリターンを行う「OSIRIS(オシリス)」を提出した。この時オシリスはセレクションに落ちた。選ばれたのは月の重力場を精密計測するGRAIL(グレイル)である。この選択には、多分にブッシュ有人月探査計画の意向が働いていたようである。月周回軌道で、有人宇宙船を安全に運用するためには、月の重力場の精密計測データが必須である。

 しかし、一度落選したぐらいでは、アメリカの探査機計画は消えない。現在オシリスはOSIRIS-REx(オシリス-レックス)という名称で復活してきている。目標天体は、1999RQ36という小惑星だ。「はやぶさ2」と同じ1999JU3だ。7/7訂正:事実誤認をしていたので訂正する。

 そしてオシリス-レックスは、NASAの次期探査計画のセレクションで最終候補に残っている。最終選定は2011年中旬に予定されており、ライバルは金星探査機「SAGE」と月面サンプルリターンの「MoonRise」だ。
 有人月探査計画がなくなった今、アメリカの月への興味は、明らかに薄れてきている。

 私の予想だが、アメリカは日本の出方を見守っているのだろう。「はやぶさ2」が消えても、はやぶさ2の目指すサイエンスの価値は消えない。だから、「はやぶさ2」がなくなればアメリカは「オシリス-レックス」を選定する可能性が高いと考える。
 アメリカにとってオシリス-レックスは未だやったことのない“危ない”ミッションだ。すでに一度やった実績を持つ「はやぶさ2」が動き出せば、「それは経験者の日本に任せておけ」ということになる。となれば、通信網など別の利便を日本に提供し、その見返りとしてサンプルを手に入れることを考えるだろう。それはアメリカにとって日本を対等のパートナーと位置付けることを意味する。
 しかし「はやぶさ2」がなくなれば、アメリカにとってオシリス-レックスは、「リスクをとってでもやるだけの科学的価値のあるミッション」となる。

 それでいいのか、ということだ。「アメリカが探査をやってくれればいいじゃないか」と、開発開始から14年にもわたって積み上げた「はやぶさ」の成果を未来に引き継ぐことなく放擲することが、正しい戦略的判断か、ということである。

 しかも放擲の理由が、正しい戦略的・科学的判断ではなく、組織内部の力学的なものであったなら(もちろんその場合、正しい科学的判断の下で「はやぶさ2」 を放擲したという形を取り繕うために一部関係者が走り回ることになる)——それは国民に「宇宙開発を支持して欲しい」といっても「顔洗って出直してこい」と言われる状況を作り上げるための近道であろう。

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2010.06.29

月で公共工事をしたいのか:午後の追加、新規性とは何か?

 色々取材してみたところ、「はやぶさ2は、はやぶさの繰り返しで新規性に乏しい。月探査には新規性がある」というような論理が話を進めているらしいことが分かってきた。

 Twitterでは「はやぶさ2と月探査の話をバーターにして、一方を貶めるような論調は良くない」という議論が、宇宙クラスターの間で出ているが、霞が関界隈ではすでにバーター議論が定着してしまっているようである。

 この新規性は「日本としては」なのだろうけれども、諸外国が1950年代からさんざん月探査を行っているのだから、判断基準としては「国際的な新規性」も考慮すべきだろう。でなければ「世界で一番」にはなれない。科学も宇宙開発も日本だけで閉じているわけではない。
 「日本国民にアピールする新規性」としても、当然計画が始まればソ連のルナ計画の成果が比較対象になるので、新規性を押し出すのはかなり難しい話になる。「月の南極での探査は初めて」だが、では「なぜ南極」なのか。「資源としての水があるから」として、肝心の米有人月探査計画はもうない。有人月探査構想を持つ中国と組むというのだろうか(それぐらいの戦略性を持っているならまだ安心できるのだが)。


 また本日29日(アメリカ時間の昨28日)、オバマ宇宙政策が正式決定された。

Set far-reaching exploration milestones . By 2025, begin crewed missions beyond the moon, including sending humans to an asteroid . By the mid-2030s, send humans to orbit Mars and return them safely to Earth;

 というわけで、有人月探査構想は正式中止。文書内にmoonという単語は上記引用部分の「begin crewed missions beyond the moon(月よりも遠くへの有人ミッションを開始する)」の一語しか入っていない。アメリカは近傍小惑星と火星軌道(火星そのものでないことに注意すべき。おそらくターゲットは、火星の衛星フォボス・ダイモスだろう)への有人ミッションに踏み出すことを明言した。

 ここは、あくまで月探査で日本の独自性(しかも国際的には新規性が乏しい)を押し通すべきタイミングだろうか?


 最後に、新規性にこだわる向きのために月探査と小惑星探査の新規性について比較したデータを以下に掲載する。長くなるので、続きをクリックして読むようにした。

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月で公共工事をしたいのか

 事態が急速に動いている。秋山演亮さん(和歌山大学)が、「「反対意見は丸め込んででも、2020年までに月探査に2400億円を付ける」方向に強引に乗り切る方針が本日中に決定しそうです。」と書いた。

 前原宇宙担当大臣の有識者会合で委員を務めた秋山さんは、かなり太いパイプを宇宙開発戦略本部周辺に持っているのだろう。そして、秋山さんが書いていることは、まったく別のルートから私にも断片的に聞こえてきている(あまりにあまりな内容なので「裏を取るまで書けない」と判断していたのだ)。この動きがあることは間違いない。

「 心に翻るのは錦の御旗?」(2010年6月29日付け)

 もはや呆れたような状況になりつつあります。月探査懇談会の提案に関するパブコメ、今のタイミングで月をやる事に関する疑義がかなり出ていたようですが、「反対意見は丸め込んででも、2020年までに月探査に2400億円を付ける」方向に強引に乗り切る方針が本日中に決定しそうです。 何度も繰り返しますが、僕は別に月探査そのものに反対している訳じゃ無い。月の着陸探査はやるべきでしょう。それはいつかのタイミングでね。しかし他の物を全てかなぐり捨てて今のタイミングでやる話しでも無いし、ましてや2020年まで引っ張って2400億円という巨費を投じて、月南極に無人月面基地とか今、決めちゃうことの意味が全くわからない。

 このあたり、週刊ダイヤモンド6月12日号の宇宙特集で書いた。手元にある方は再読してもらいたい。

 まず「なぜ日本が月探査を行うのか」。
 当初の答えは、2004年1月のブッシュ米前大統領による新宇宙政策だった。スペースシャトルを2010年に引退させ、国際宇宙ステーション(ISS)も2015年度いっぱいで打ち切り。その代わり有人月探査計画を立ち上げるというものだ。
 これはJAXAからすると、ISS日本モジュールの開発に従事していたセクションの雇用問題である。だから、アメリカの次の計画である有人月探査計画に参加し、国内で予算を取る体制を整えようとした。
 ところが、ブッシュ有人月探査計画は、ハードウエア、なかでも有人用ロケット「アレスI」の開発が難航し(これも技術的には2006年の段階で予想できたことだった)、遅延と予算超過を引き起こした。

 2010年2月、オバマ米大統領は新しい宇宙政策で、有人月探査計画の中止を発表した。正式決定は米2011年度予算決定と同時ということになるが、すでに米国内では計画中止に必要な作業が進みつつある。

  「日本の大規模月探査に『アメリカについていくことで予算を取る』以上のモチベーションがない」——これは重要なポイントだ。もちろん研究者、科学者の間では月探査への欲求が、過去四半世紀以上にわたってずっと存在しているが、それは2400億円もかけて実施する内容ではない。

 秋山さんが提示した資料。
日本惑星科学会将来計画委員会報告書(1996年6月):古い資料だが、最近の私の取材でもこの内容は古びていない。今でも現役の研究者たちは「世界一線級の月探査のためにはLUNAR-Aで狙った地震計と熱流量計のネットワークを月に設置したい」と考えている。

 オバマ新政策で日本の月探査構想は、2階に上がって梯子をはずされた格好となった。

 私は、これで月探査に関しては宇宙開発戦略本部もJAXAも考え直すと思った。存在しない米計画についていくことはできない。そこを突っ切るということは、米がやるはずだった計画を自分の技術と自分の資金で行うということだ。そのためには「他のどれかの政策を差し止めてでも宇宙分野に大規模投資をする」という政治判断を必要とする。
 それを、参議院選挙のために、政治の側が動けないこの時期に決めることはないだろうと思ったのである。
 やるとすれば、それは政治の空白を狙った官の越権行為に他ならない。

 またオバマ政策は、ISSの運用を2020年まで延ばした。参加各国宇宙機関による宇宙機関長会議(HOA)は、2027年までの運用延長の可能性を議論することで合意した。つまり、JAXAの有人関連雇用は少なくとも2020年、場合によっては2027年まで確保される見通しとなった。

 だから月探査に関する懇談会については、一度考え直すだろうと、常識的に考えていたのだが…まさか中央突破を目指してくるとは。
 動機は何だろうか。「ここまで積み上げてきた議論を無にすることはできない」ということだろうか。状況がオバマ新政策で劇的に変化したのだから、ここは「君子豹変する」べきところだろう。
 前提がひっくり返った以上、積み上げてきた議論はすでに無になっているのだ。

 「2020年までに月探査に2400億円を付ける」計画がスタートすると何が起こるか。まず他の計画がすべて圧迫される。参議院選挙直前の政治不在の状況で決定することになるから、予算全体を増額するという政治的決断は望みがたい。

 勢い、JAXA経営企画が「これは減らせない」と判断するものから予算を確保していって、最後に残ったものにすべてのしわ寄せが行くことになる。まず間違いなく宇宙科学全般だろう。

 「はやぶさ2」がなくなるどころではなく(当然、より大きな予算を必要とする「はやぶさマーク2」もあり得ない)、X線、赤外線といった宇宙望遠鏡も、プラズマ・磁気圏観測もソーラー電力セイルのような新たな技術試験も——その他すべてが圧迫されるだろう。一方で「宇宙科学には月探査で十分な予算を付けているではないか」という言い方をされることになることになるだろう。
 情報収集衛星がスタートした時と全く同じだ(ちなみにこの構図は1980年代、ISS日本モジュールがスタートした時にもあったそうである。当時は予算が右肩上がりだったので、破滅的事態は回避された)。

 「アメリカに代わってアメリカがやるはずだった計画を実施する」という覚悟も合意もなしに、「2400億円という巨費を投じた月南極に無人月面基地」は、2020年代前半には、「これをいったいこの先どうするのだ」というお荷物になるだろう。科学的価値を考え抜いて決定した計画ではないから、真の成果は限られる。成果の乏しさは「月面を走行する日の丸ローバーの勇姿をハイビジョン画像で」といった画像でごまかされることになるだろう。
 混乱の中で、「せっかく作った月拠点を生かすためには、さらなる計画を進めねばなりません」と焼け太りを狙った動きがでてくるだろう。関連産業にお金は落ちるだろうが、肝心の「それでどうなるの」という目的はまったく省みられなくなるはずである。
 結果、危機的財政状況の下、月に誰も通らない道路を建設するような、公共工事が続くことになるだろう。


 今回の件、私のところにもぼつらぼつら聞こえてきていたのだが、その中に「一般国民は、はやぶさの小惑星探査も月探査も区別が付いていないから、『はやぶさの経験を生かして月からサンプルリターン』というシナリオを書けば、はやぶさ帰還に湧く国民は納得する」という声が入っていた。まさかそこまで国民を低く見ているとは思えず、この話は誇張か情報伝達につきもののノイズかと判断していたが、秋山さんがここまで書く以上、事実である可能性は高いと思わねばならない。

 いいかげん国民をバカにするなと言いたいが、実際はやぶさ関係者に「業務命令だ」と強制して、「はやぶさのサンプリング技術を活かして、月からのサンプルリターンをやります」というプレゼンテーション・シートを書かせるぐらいのことはあってもおかしくないだろう。

 たとえはやぶさ関係者がプレゼンしたとしてもだまされまい。小惑星からのサンプル採取と、月のような高重力天体からのサンプル採取の技術は根本から異なる。共用可能な技術はごく少ない。

 この件に関しては、秋山さんの文章に全面的に同意する。

 幸い、このblogにはそれこそJAXAからも内閣府からも文科省からも毎日、幾度となくアクセスを戴いています。であるなら、是非、読んでください。考えてください。今一度、胸に手を当ててよく考えてみてください。日本の宇宙開発は、日本の科学は、日本の国際プレゼンスは、日本の未来は、あなた方の舵取りによって為されているのではないですか?本当に、誇りを持って、今、貴方は最善の決断をしていますか?今、あなた方がする決断が、まさに日本の子ども達の将来を決めてるんですよ?それはホントに日本の為の決断ですか?組織維持のための決断ではありませんか?そのことに今一度、想いを馳せて戴きたいと心から思います。

 私に出来ることは何だろう。将来に禍根を残す決断は、きちんと経緯を取材して後世に記録を残さねばならないだろう。

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2010.06.28

pixivに投稿されたはやぶさたち

 「はやぶさ」は日本で本格的なネット普及が始まった後の2003年打ち上げということもあり、ネットで一般が盛り上がり、熱狂した最初の探査機となった。2005年11月の小惑星イトカワへの着陸の時には、有名になった「おつかいできた」を初めとして様々なイラストがネットで公開されたことは記憶に新しい。

 pixivというサイトがある。プロ、アマを問わずイラストレーターやマンガ家が集まって、自作を公開する場だ。登録制で、大きなイラストを見るためには登録を行う必要があるが、縮小された画像ファイルで絵の概要を見ることは、登録なしでもできる。

 ここではやぶさと検索すると、なんと985件も見つかる。毎日数枚ずつ登録は増えており、数日中に1000件に到達するだろう。この中には鉄道の「はやぶさ」(ブルートレインや新幹線)も入っているのだが、かなりの部分は小惑星探査機の「はやぶさ」だ。
 小惑星探査機はやぶさでの登録は43件。「はやぶさ」「小惑星探査機はやぶさ」で重なって登録してあるイラストもある。このあたりはかなり緩い。

 もちろんというべきか、「おつかいできた」も作者の手によって登録されている。

 やはりというか、擬人化したイラストが多い。男の子女の子、子供からグラマーまで、さまざまな「はやぶさタン」が描かれている。

 私が気に入ったのはこの一枚。


 帰還時のはやぶさの輝きが、適度に様式化され、その下を老若男女が走っていく。童画風でもあるし、モスクワの宇宙飛行士記念博物館外壁のレリーフを思い起こさせもする。確かにはやぶさは、こんなミッションだったなと思うのだ。

P1030410 モスクワの宇宙飛行士記念博物館。てっぺんにロケットの造形を載せたモニュメントで根本部分が記念博物館になっている。

P1030404
外壁のレリーフ。右から、科学者が計算し、技術者が設計し、労働者が建造し、そして宇宙飛行士が搭乗して飛び立つ、という内容になっている。

 気に入ったので、自分のパソコンの壁紙に設定してみた。

 ちなみにpixivを、川口淳一郎で検索してみると…愛されているのが、探査機のみではないことが分かる。


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2010.06.27

6月24日のキュレーション記者会見(後半)

 6月24日のキュレーション記者会見(前半)の続きです。パソコンのバッテリーが切れてしまったので、ここからは手書きメモからの書き起こしです。すべての質問、発言を追い切れてはいないことをご了承下さい。

質疑応答(承前)

NHK:サンプル回収作業のプレスリリースから、コンテナ内容の発表までどれぐらいかかるか。

藤村:イトカワ起源の物質が見つかり次第発表する。ただし、それを見つけるのが難しい。

川口:(当日配布の資料では、発表は8月となっているが)8月以降でなければ発表できないというわけではない。

朝日新聞:ふたを空けて中を見るのはいつか、

上野:キュレーション設備のチェンバー第2室に移動してすぐだ。
藤村:作業スケジュールは早くなったり遅くなったりするが、手順が前後することはない。

朝日新聞:ということは6月中に空けることはないのか(注:配付資料には「7月以降」と書いてあった)。

上野:ひとつしかないサンプルなので着実にやるようにしたい。
藤村:例えばボルトを緩めてはずす場合も、ボルトの緩み止めのワイヤをはずし、ボルトを回す。ボルトや緩み止めワイヤにもサンプルが付着している可能性があるので、すべて回収の上ナンバリングして保管する。ネジをはずすだけでもかなりの時間がかかる。

朝日新聞:顕微鏡で内部を肉眼で見るのか。

藤村:キュレーション設備は顕微鏡で肉眼観察できるように作ってある。

毎日新聞;ガスサンプルは、濃度が「濃い」とか「薄い」とか形容していいのか。

藤村:「圧力が低い」あるいは「量が少ない」ですね。

毎日新聞:採取できるサンプルはとても小さいものということだが、それは砂粒ぐらいと思えばいいのか。もっと小さなものを予想しているのだろうか。

藤村:微粒子だ。微粒子をサンプリングする体制を整えている。

日経新聞:サンプルコンテナは真空の宇宙空間で閉じているが、採取したガスはリークがあったというレベルなのか。

藤村:その程度(注:Oリングシールからのやむを得ない漏洩)のガス圧力だった。

日経:イトカワ由来のガスなのか。

藤村:まだなんとも言えない。

朝日小学生新聞:キュレーション設備はどの程度小さなサンプルを扱えるのか。

藤村:100倍の光学顕微鏡を装備しており、10μm程度のサイズのサンプルまで採取可能。

ニッポン放送:サンプルが採れたとして、どこまでデータを公開するのか。写真とかスペクトルとか。

藤村:科学データを出すと論文にならなくなってしまうので、事実関係のみを公表することになると思う。データの開示は慎重にやりたい。

日経サイエンス:作業は何人でどういうシフトで行っているのか。

藤村:再突入カプセルからサンプルコンテナを外し、キュレーション設備に格納するまでは24時間体制で作業を急いだ。時間が経つほどOリングからの漏洩で地上の大気がサンプルコンテナに入り込んでしまうため。そこからは慎重に、きちんと休息を取りつつ進めている。キュレーション・メンバーは5名プラス大学関係者3名の全部で8名。休息といってもなかなか週休二日にはできない状況だ。

読売新聞;打ち上げ時に比較対照用のダストサンプルを内之浦で採取していると聞いているが、比較はどの時点で行うのか。そこで何か分かったら発表するのか。

藤村:確かに比較用サンプルは採取してある。それらも同時に分析を進める予定。

川口:何かが入っているかといえば、まず間違いなく入っています。それはもう、打ち上げ時に紛れ込んだダストが往復飛行して戻ってきていますよ。イトカワ起源かどうかを確認し次第発表したい。

朝日新聞:サンプルキャッチャー(サンプルコンテナー内に格納されていた、イトカワのサンプルを格納した部分)の大きさは、どれぐらいか。採取したガスの圧力は数字で発表できるか。

上野:サンプルキャッチャーの大きさは調べて後で連絡する。
藤村:圧力はまだ分かっていない、装置の公差があるので正しい値を出すのはなかなか大変であるため。

不明:採取したガスはどこから来た可能性があるのか。

藤村:いまはまだ分かりません。分析しないと…

不明:今の意気込みを語ってもらいたい。

藤村:それはもう意気込んでいます。意気盛んです。訓練は2年間でしたが、実際には2年どころではなく待ったのだから、任せておけ、という気持ちです。

#ここで前に出ていた大学関係者3名もコメントしたが、メモが追いつかなかった(申し訳ありません)。

 藤村教授及び大学関係者3名が退席。

フリーランス青木:イトカワ由来のサンプルが微量だっった場合、どのようにして研究者の間に分配するのか。

吉川:別途議論して、科学的成果が最大になるように分配する。
上野:サンプルの切断分割は同時に汚染をも意味するので、分割しないで済む方法を考える。すべては実物を見てからとなるだろう。

NHK:イトカワと地球の物質の識別はどうやって行うのか。

上野:総合的に行う。同位体の比とか形状とか、結晶の状態とか。サンプルがどんなものかによるだろう。

不明:NASAの協力者はキュレーション要員の8名に入っているのか。

川口:NASAとの間にはMOU(覚書)を交わしてあり、それに従って協力し合っている。初期分析で共同作業を行うが、キュレーション要員8名にNASA研究者は入っていない。作業には立ち会っており、モニタリングと助言を行っている。

読売:サンプルは実際問題としてどの程度の大きさのものまで回収できるのか。

上野:5〜10μmのサイズが限界になる。ただし将来の分析技術の進歩に期待して、コンテナ以下すべてのはずした部品は厳重にすべて保管する。いずれ1μmのサンプルも取り扱えるようになった時のために備えての処置。

以上です。

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2010.06.26

月に行って、で、それでどうするの?

 連日忙しい。今日も午後11時を過ぎてこれを書いている。昨日の記者会見の続きだが、まだメモを整理する時間をとれていない。明日以降に掲載いたします。

 和歌山大の秋山演亮さんが、以下のような記事を書いている。

我が国にとって月探査は最優先事項か?(有人宇宙港を巡る冒険 2010年6月25日)

 

 私は我が国にとって、月探査は最優先事項ではないと思う。今やるべきは小天体探査機の後継機をさっさと決めて来年度予算化することだ。そのために必要な「比較検討」の議論が行われ、その過程が広く公開されることを、心から願う。

 ところで、野田司令こと野田篤司さんも、月探査に関して全く同じ趣旨の文章を発表している。

月に行くのは、より道・遠回り・行き止まり(2010年6月3日)

 秋山さんと野田さんが示し合わせたということではなく、私が取材した範囲では、きちんと考えているプロの間では、両者の考え方が一般的なのだ。
 野田さんのほうが項目立てして整理された形で月探査の問題点を整理している。

  • 月に行くメリットはない
    • 月も物資は無い。正確に言えば、あるのは岩と砂だけだ。水は科学的な研究対象で分析できる程度の量しか無いだろう。人間が生きていくのに必要な量は無い。
  • 月に行くのは難しい
    • 月に行く困難さは方向性が違いすぎて練習にならないのだ。

  • 月に行くのは遠回り

    • 地球から全て物資を送るなら、月の重力に逆らって着陸して離陸するのは無駄以外の何者でも無い。

  • なぜ、月に行きたがるのか?

    • 心理的なもの。子供の頃に刷り込まれた憧れとか、そう言うものが潜在意識的な欲求として働いているとしか思えない。
       つまり、アポロの月着陸を子供や若い時代に体験して、それが刷り込まれてしまったというわけ。


 より詳しい内容は、秋山さんと野田さんの文章を直接読んでもらいたい。

 秋山さんは冒頭で、「月探査懇談会の報告書(案)が提示され、パブリックコメントの募集が6/17〆切で行われた。」と書いている。私も取材の過程で、「そろそろパブリックコメントに対する返事がまとまっている時期だよ」「どうやら、一般の人は月探査やるべきというコメントを書いていて、それを受けて宇宙開発戦略本部は月探査やるべしという方向に持っていくようなまとめを出すようだよ」と聞いている。

 しかし、実際にはきちんと考えているプロたちは、月探査はより遠くに行くための方法論として筋が悪いと考えているわけだ。

 「はやぶさ」の飛行が見せてくれたことの一つに、「太陽系は地上から見ているのとは違う実態をしている」ということがある。地上から見ると月は大きく見えるし、惑星は明るく輝いて見える。目立つところには行きたいと思うものだし、月や惑星こそが太陽系の主要構成要員だと思い込みがちだ。
 しかし、「はやぶさ」は、実際には差し渡し500mほどの小さな小惑星でも全く想像もしていなかった複雑で豊かな表情をしており、科学探査を行うに足る謎を秘めていることことを直接的に示してくれた。大きな月や目立つ惑星だけが太陽系ではない。多数の小惑星や彗星、あるいは黄道光のような星間ダストなども月や惑星などと同等の太陽系の一部なのだ。私たちは地上の常識に縛られているのである(「重力に魂を引かれている」と形容してもいいのかもしれない)。
 だからこれから人類がどこに向かうかは、地上の常識を離れて、ありのままの太陽系を観察して決めなくてはいけない。「はやぶさ」はそのための判断材料のひとつを提供したといえるだろう。
 
 野田さんはアポロ計画を例に挙げているけれども、私が思い出すのは子供の頃に見たテレビ番組「キャプテンウルトラ」の主題歌冒頭だ。勇壮な富田勲作曲の主題歌は「月も火星も遙かに超えて」と歌い出す。
 キャプテンウルトラの主題歌は今でも大好きだ。しかし、私たちが超えていくのは月や火星ではないのかもしれない。小惑星や彗星や、フォボス・ダイモスや木星の諸衛星なのかもしれない。

 実は自分も、2年前にこんな文章を書いていたのを思い出した。

さらば水金地火木土天海冥(人と技術と情報の界面を探る、PC Online2008年4月15日掲載 読むためには登録が必要)

 日本は今、米国の有人月探査計画に参加する方向で検討しているが、本当にそれでいいののだろうか。私達はどこに向かうべきなのか、最新の情報に基づいてよくよく考えてから決めるべきだろう。でなければ、「月に莫大なお金をかけていったはいいが、なにもなかった」ということになる可能性があるのだ。

 実はこのあたりは、ブッシュ米前大統領が2004年1月に有人月探査構想を打ち出した頃から、さんざん仲間内で議論して、「やっぱり月はダメだろ」という結論が出ていたのだった。議論の一部は、笹本祐一さんの「宇宙へのパスポート3」にも書いた。

 さあ、宇宙開発戦略本部は、パブリックコメントにどんな返答をしてくるだろうか。

追記:ちなみに私は、月探査懇談会報告書(案)へのパブリックコメントとして、以下のような文章を送付した。

 月には科学的探査の価値がある。これは間違いない。しかし、それ以遠への展開を考えると一点集中投資するほどの価値はない、というのが私の意見である。

 月探査は月探査のみで独立した分野ではなく、広く太陽系探査全体の中に位置づけられるものである。それをなぜ月のみを突出して宇宙開発戦略本部の懇談会を立てて審議したのだろうか。


 アメリカの有人月探査計画に呼応したものと推察する。が、今年初めにオバマ米大統領は有人月探査計画のキャンセルを発表した。正式決定はまだだが、米有人月探査計画に呼応した日本の月探査構想は、この段階で「梯子を外された」と考えるべきである。



 米計画がなくなった以上、日本の月探査は日本の宇宙戦略の一環として企画立案する必要がある。


 日本の宇宙戦略にもっとも必要なのは、現実と見据えた合理性である。その意味では月探査には、科学的意味以上のものは見いだせない。科学探査には意味がある。太陽系全域探査に向けた技術開発は意味がある。しかし国際政治的な意味は、米の方針転換で消失した。



 従って、日本の月探査は、1)太陽系探査の枠組みの中で、2)科学的探査と技術開発の両面で合理性を持った形で、実施する必要がある。



 上記の観点からすると、月探査に関する懇談会報告案に記載された月探査計画は2つの問題点がある。



1)予算規模が大きすぎる。現行の予算規模の中で実施すると、他の太陽系探査計画を圧迫しかねない。これは本末転倒だ。太陽系探査の中の月探査であって、月探査のみが科学目標として突出しているわけではない。

 この規模で実施するならば政治的判断による予算増額が必須である。予算規模が全体として増えない場合は、探査の小規模化すべきと考える。



2)2020年の計画については、果たして月の南極を目標とすべきか、その科学的意義を最優先に再考すべきである。南極については水資源存在の可能性が指摘されており、米有人月探査計画でも着陸候補地・基地建設候補地であった。しかし、米計画がなくなった今、極域を目指す理由は何なのだろうか。月の水については、その存在はほぼ確認できたものの量は少なく広く薄く分布していることが分かっている。これまでの探査では資源として有望なだけの量がまとまって存在する確証は見つかっていない。

 月探査機「かぐや」の観測で発見された溶岩チューブに通じるらしき縦穴も、探査目標の候補として、ミッションの科学的価値の視点から論証すべきであろう。

 技術開発の面でも、再考すべきところは多々ある。本当に精度100mでしか着陸できないのだろうか。むしろ「科学側の要求が100mでしかないから、工学側もそれ以上のモチベーションが出ない」という可能性はないか。縦穴縁への着陸、あるいは縦穴への降下まで考えることはできないのだろうか。

 あるいは、越夜技術について。プルトニウムを使えば簡単に問題解決可能なのだから、無理筋の技術開発を行うよりも、プルトニウム搭載が可能な体制を作るほうが、正論ではないか。それは検討されたのか。あるいは、そもそも越夜技術の将来の太陽系探査への展開の可能性が乏しいならば、ぱっさりあきらめるという選択肢も考慮する必要があるだろう。



追記:我が国独自の有人宇宙計画について、このような公文書に記載されたことは高く評価できる。しかし、有人宇宙計画と月探査をリンクさせるのは、米有人月探査に引っ張られた大きな間違いだ。有人宇宙計画と月探査は独立した別物として扱うべきである。

 なぜ、我が国は米有人月探査との絡みでしか、独自有人計画を議論できなかったのか。どこに日本という国の自主性があるのか、よほどきちんと反省する必要がある。



以上

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2010.06.25

6月24日のキュレーション記者会見(前半)

 ああ、毎日更新などといった途端に、すさまじく予定が立て込んで、こんな時間になってしまった。

 24日の記者会見の記録、前半を掲載する。パソコンのバッテリーが切れてしまったので、この後は走り書きのメモになってしまい、整理に少々時間がかかると思う。

 毎日掲載を貫徹するために、取り急ぎ前半だけアップする。

キュレーションの記者会見
2010年6月24日午後5時過ぎから相模原・宇宙科学研究所

 出席者
藤村彰夫 固体惑星科学研究系教授
上野宗孝 ミッション機器系グループ 副グループ長
川口淳一郎 プロマネ
吉川真 プロジェクトチームサイエンティスト

上野
キュレーション作業について説明する。カプセルは17日の深夜に相模原キャンパスに到着。最初に18日明け方X線CTの撮像を行った。これはカプセルの破損状況を確認するためのもの。次に断熱シールドなどを外し、カプセルとサンプルコンテナを分離した。ここでふたを閉めるラッチ機構もろともサンプルコンテナをもう一度CTの撮像を行っている。イトカワでサンプル採取した時にふたのシール部分のOリングがきちんと動作しているかを確認した。これが19日明け方の作業。シールが形の上では保たれていることを確認した。

 18日から22日まで、コンテナに付着しているボンドなどの物質を落とす洗浄を行った。

 次に内気圧の推定を開始した。惑星間空間で閉じたので内部は真空のはず。内外の圧力をそろえてから空けてやらないと、内部のチリなどが空けたときに吹き飛んでしまう可能性にある。推定値が得られたので、22日に一部ふたの部分にすきまを空けて、サンプルコンテナ内の残留ガスの採取を試みた。
 23日は休養日。
 本日24日からサンプルコンテナ開封作業を開始した。


サンプルコンテナを開封ジグを使い、クリーンチェンバー内に固定した。この状態で内部の圧力推定を行っている。本日、サンプルコンテナ本体から、サンプルの入っているサンプルキャッチャーを引き抜いた。ここまでが本日の作業。

 今後はサンプルキャッチャーの分解と、サンプルの確認分析へと進む。

藤村
 ここらへんは専門の方が説明したほうがいいので(と前に三人が出てくる)。
 正式のキュレーション・メンバー5名と大学の先生方、後ろの3人で作業を行っている。複雑な装置なので2年間訓練を重ねてきた。


 一発勝負なので慎重にやらねばならない。現在は少しサンプルキャッチャーのふたがあいたところ。

質疑応答

フリーランス青木
 昨日、1mm以上のものはないという報道があったが真実か。

藤村
 CTを1mm間隔でスライスしたという発表したのが、そう解釈されたのだろう。

青木
 構造を見るのと内容物を見るのとでは照射の方法も違うと聞いている。

藤村
 おっしゃったように中を見るためではなく、Oリングの破損を調べるため。それらが良く分かるように設定して撮影している。

青木
 それは小さな粒は写らない条件ということか。

藤村
 ケイ酸系の鉱物だと3mmから5mmぐらいのものなら識別できるというデータはもっている。そういうものはないということが分かったということだ。

川口
 JAXAとしてはなにもいっていませんよ。

青木
 誤報とおもってよろしいか。

藤村
 いいでしょう。誤報かどうかは分かりませんが。

NHK
コンテナ内圧は、どんなガスが入っていたか。

藤村
 なんらかのガスはあった。非常に薄いガスがなにやら入っていた。そのサンプリングに成功したと判断している。第一タンクに収納されているはずである。しばらくその状態が続く。

NHK
それはイトカワの物質から揮発したものか。

藤村
 それはまだわからない。Oリングシールが空気にさらされているので、大気成分がシールを若干透過したとも考えられる。今後解析しなければならない。ガス分析は、しばらくかかる。タンクをいつはずせるかによる。結果が出てくるのは初期分析の結果とほぼ同時にでてくるだろう。

NHK
密閉できていたのか。

藤村
 誤差の範囲内できちんと密閉されていたと判断できる。

(続く)

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2010.06.24

6月24日午後5時からの記者会見(とりあえず写真だけ)

 本日午後5時からのJAXA相模原キャンパスで開催された記者会見に出席してきた。詳細をアップしなければならないところだが、本日中には間に合いそうもない。とりあえず先行して写真をアップする。
 今日、「ガスの採取に成功」というニュースが流れたがニュースソースはこの記者会見である。本日、カプセルのふたをちょっと空けて、内部から希薄なガスを採取したということだ。注意しなければならないのは、これはイトカワ由来のものとは限らないということ。カプセルは二重のOリングによるパッキングで外部から遮断されているが、再突入後1気圧の地上の空気がどうしても極微量だが入り込んでいく。

 内部に何か入っているか気になるところだが、分析はどこに微粒子がついているか分からないために慎重に慎重に行われる。打ち上げ時、最後の整備を受けた内之浦のダストが紛れ込んでいる可能性もある。内之浦のダストは別途採取されており、「これは内之浦で紛れ込んだもの」と判定できるようにしてある。

 本日の記者会見における、川口淳一郎プロマネの発言、「何かが入っているかといえば、まず間違いなく入っています。それはもう、打ち上げ時に紛れ込んだダストが往復飛行して戻ってきていますよ」
 東京事務所会場で解説役をしていた向井利典教授「鹿児島には桜島もあるしな」


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 サンプルコンテナを手に持って解説する、藤村彰夫JAXA/ISAS固体科学研究系教授。分析の責任者である。


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 サンプルコンテナ。開発時に製造した試験モデル。


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 再突入カプセル。これも試験モデル。

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 サンプルコンテナは、こんな感じで再突入カプセルに収まっていた。

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2010.06.23

転載:圦本尚義・「はやぶさ2」科学技術評価委員会委員長の談話

 今日は、秋山演亮さんの日記に掲載された、圦本尚義・「はやぶさ2」科学技術評価委員会委員長の談話を転載する。

 圦本尚義(ゆりもと・ひさよし)北海道大学・大学院理学研究院・教授は、日本の太陽系生成論の第一人者のひとりだ。同時に「はやぶさ2」ミッションの評価を行う委員会のトップでもある。その人物から、このような談話が出ることの意味はとても大きい。予算査定側に対して、川口プロマネのような工学試験衛星である「はやぶさ」に直接係わった工学者だけではなく、理学者もまた「はやぶさ2」ミッションの実現を欲していることを示すことになるからだ。

 また「「はやぶさ2」科学技術評価委員会委員長としては,「はやぶさ」の成功により,只今計画中の「はやぶさ2」ミッション成功の確実性が実際に計算できる様になった事は大きな収穫です.」というくだりは、理学側が「はやぶさ」ミッションの工学的成果をきちんと理解していることを明確化するという面で、大きな意義がある。

「はやぶさ2」科学技術評価委員会委員長談話

小惑星探査機「はやぶさ」が小惑星イトカワの探査を終え地球に帰還し,試料回収カプセルが外傷なく無事回収された事に対し,「はやぶさ2」科学技術評価委員会委員長として心よりお歓びし,関係各位の7年間におよぶご努力・忍耐および機転の利いた発想と実行に対し最大の敬意を表します.
 「はやぶさ2」計画の科学技術評価に携わっている一科学者として,このミッションが帰還という成功により完結されたことは日本の新しい惑星探査の幕開けを飾るものであり,同時に,人類の根源的な問の一つである「我々の起源」の解明について日本が世界のトップランナーに躍り出た瞬間として感無量でありました.無傷の回収カプセルの中には,宇宙環境そのままのイトカワ試料が採取されている事が大いに期待でき,それは地球環境に汚染されない太陽系形成の記録を直接解読できる人類史上初の宇宙試料であるはずです.今後,初期分析チームの基本的な物質科学的分析とそれに続く国際公募による本格的な研究により太陽系起源研究における数々の新しい扉が開かれていくに違いありません.
 「はやぶさ2」科学技術評価委員会委員長としては,「はやぶさ」の成功により,只今計画中の「はやぶさ2」ミッション成功の確実性が実際に計算できる様になった事は大きな収穫です.「はやぶさ2」計画は,小惑星リモートセンシングによる科学的成果,打ち上げから小惑星到着を経て地球帰還までの工学的成果,および,これから達成されていく物質科学的分析による科学的成果等の「はやぶさ」のすべての成果を土台にしつつも,新たな観測手段を加えて一新をはかった独創的な計画です.「はやぶさ2」探査天体はイトカワよりさらに太陽系初期の状態を保存していると期待される小惑星です.「はやぶさ」により開かれた扉の先の新しい扉を発見し,それを次々と開いていき,我々の起源を太陽系形成より昔の時代にまで遡って解明していく事が「はやぶさ2」には期待できると本委員会では評価しています.そして,その証拠が地球の実験室で宇宙物質中に直接観察でき,それをその場で国民と共有することができるのがサンプルリターンミッションです.「はやぶさ2」の速やかな実現により,日本が世界の惑星科学をリードし続け,国民が「はやぶさ」を通じて感じた夢と希望と誇りをもう一度体験してくださる事を願っています.また,新しい惑星探査と宇宙物質分析によって開発された新技術は,人類の生活と幸福へとフィードバックされる事も願い,その努力を惜しみません.

「はやぶさ2」科学技術評価委員会委員長 圦本尚義
2010年6月18日

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2010.06.22

惑星協会フリードマン博士の文章を翻訳しました

 惑星協会(Planetary Society)の創設者のひとりであり、エクゼクティブ・ディレクターのルイス・フリードマン博士が、6月15日付けで、The Hayabusa Adventureという文章を発表している。ここでは、博士の許可を得て日本語翻訳版を掲載する。

 惑星協会は、1980年に、カール・セーガン、ブルース・マーレイ、ルイス・フリードマンという錚々たる科学者3名によって創設された、太陽系惑星と地球外知的生命の探査(SETI)の推進を目指す非営利・非政府団体。フリードマン博士は、1970年代にジェット推進研究所でボイジャー計画、金星探査、水星探査などに携わり、後のマゼラン金星探査機や火星探査などの検討にも参加した経歴の持ち主である。

 博士との連絡の労は、惑星協会ブログライターのEmily Lakdawallaさん経由で、Twitterの@5thstarさんが取ってくれた。翻訳は、@thgraceさんが、Twitter上でまさに一気呵成の勢いで行ってくれた。@satodainuさんがWikiを提供してくれたので、その上で日本語表現を調整し、主に@satodainuさんと、私が日本語としての流れや見栄えを整理している。誤りがあるとすれば、最後に手を入れた私に責任がある。Twitter上でコメント・協力してくれた、すべての皆さんに感謝するものです。



はやぶさの冒険

2010年6月15日

 私が初めて、MUSES-Cミッションの提案(MUSES-Cは、はやぶさの計画初期の名称だ)を知った時には実現不可能な夢のように感じたものだ。他の星から試料を持ち帰るサンプル・リターンはとても難しい。無人では、かつてソビエト連邦が実施したのが唯一の成功例である。

 サンプル・リターンを成功させるためには、多くの難関をくぐり抜けねばならない。すなわち対象となる天体とのランデブー、科学調査、着地、サンプリング、試料の回収、地球に向けての再出発、そして最後の大気圏再突入と着陸である。どの課題も、日本の宇宙機関にとって初めてのことだ(それまで日本唯一の惑星探査は、火星に向かったものの火星を回る軌道への投入に失敗した「のぞみ」だけだった)。
 それらの課題に加えて、MUSES-Cでは新しい推進技術も採用していた。太陽電池で作動する、宇宙での連続運用を想定した低推力(イオン)エンジンである。

 はやぶさの行程そのものが、これらがいかに大変なものか示している。しかし、私(だけでなく他の科学者らも)は、日本の技術者らがこの宇宙機に対して回復力と頑健性とを上手に組み込んでいたかを理解していなかった。彼らは、はやぶさを単に正しく動作するだけのものとして作ったのではなかった——はやぶさを様々な困難にその都度対応できるように作り上げたのだ。

 私たちはこのような宇宙機を作った技術者たちを拍手とともに称賛したい——カプセル容器の中がどうであったとしても、だ。愛すべき日本の大衆は技術者に絶大な信頼を寄せ、はやぶさは新聞、雑誌、テレビ、映画でポピュラーなキャラクターとなった(アメリカの宇宙機擬人化の伝統とは異なり、はやぶさは“彼”である)。はやぶさのストーリーはCGの映画ともなって、プラネタリウムで放映されている。まもなくDVDも出ることだろう。

 何千ものはやぶさへの祈りがJAXAのホームページに集まった。JAXAと私たち惑星協会が世界中から集めた数十万もの名前が、はやぶさに搭載された。

 はやぶさは2003年5月、今は退役してしまったM-Vロケットで打ち上げられた。本来なら数年前に打ち上げる予定だったのだが、M-Vの問題によって打ち上げは遅れてしまった。太陽電池で動く推進系は良く能力を発揮し、はやぶさは2005年9月、小惑星イトカワとランデブーするに至った(計画当初の目標は小惑星Nereusだった、アメリカでは親しみを込めてNear-Us[近くにいるよ]として知られる星である)。イトカワは、小惑星でも比較的地球近くまで来る軌道——実際に地球軌道を横切っているのだが——を持つ地球近傍小惑星である。しかし、はやぶさが到着した時、イトカワは地球から約3億kmのかなたにあった。この距離だと、地球からの通信は往復で30分ほどかかってしまう。

 その探査は実際大したものだった。最初の接近画像は、今や有名になったじゃがいも状の小惑星を高分解能で捉えていた。JAXA月・惑星探査プログラムグループ(JSPEC)のはやぶさ運用チームは、まずイトカワ表面で動作する小型ロボットを発射したが、これはイトカワにはたどり着かなかった。当初イトカワへの着地の試みはうまくいかなかった。その後試みは成功した。はやぶさは30分ほどもイトカワ上にとどまっていたらしい。しかしサンプルは得られただろうか? サンプル採取装置は弾丸を撃ち込む機構を持つが、これは完全には動作しなかった。それでも小さな粒か、すくなくともダストはとらえることができた可能性はある。着地を試みる前にはやぶさはイトカワに向けてターゲットマーカー——それにはみんなの名前が書きこまれている——を放出した。それは今もイトカワの上にある。
 一連の着陸の試みは2005年も押し迫った時期に行われた。地球への帰還作業はそのあとすぐ始まったのだが、リアクションホイールは壊れ、推進薬の漏洩も起きた。地球への帰還可能性は潰えたかに思えたが、それはJSPEC運用チームがすばらしいアイデアを思いつくまでのことだった: つまり時を待つことだ。計画通りに2006年初頭にイトカワを出発するのではなく、次に地球が良い位置に来る2007年4月まで待つこととしたのである。はやぶさはエンジン四つのうち二つしか正常動作しなくなっていた。この状態ではやぶさは帰れるのだろうか? 

 二つのエンジンは動いた——地球への軌道がとれるようになるまでの間は。2009年末、さらにエンジン一つが壊れ再び状況は絶望的になった。しかしJSPECの賢い友人たちは、壊れかけた2基のエンジンを組み合わせて正常に作動するエンジン1基として使えるようにした。はやぶさを見つめて揺れ動く私たちの心境は、Emily Lakdawalla が我が惑星協会のブログに画像入りで記述している。
 今、“はやぶさ君”は地球に帰ってきた。彼がこれまでに経験した、イトカワへの、イトカワでの、イトカワからの冒険とは対照的に、地球への再突入と着地はほぼパーフェクトだった。カプセルも無事に回収されている。

 そのカプセルはこの長い旅路が始まった場所——JSPECがあるJAXA相模原キャンパスへとまもなく戻る。カプセルはそこで開けられることだろう。(直接、またはネット越しに)中身の証人となるべく集まるであろう大勢の人々に囲まれて。

 私はシェイクスピアの「俺のハヤブサは空腹でいらいらしていやがる( My falcon now is sharp and passing empty.)」というセリフのようにはなっていないことを願う。

 カプセルになにものかがはいっているならば、それはすなわち地球に届いた初めての小惑星のサンプルとなる。万が一なにもなかったとしても、このすばらしいミッション達成の意義が損なわれることはないし、将来のサンプル・リターン・ミッション——とても大切な火星からのそれも含む——につながる大きな経験が私たちには残るのである。

ルイス・D・フリードマン

 惑星協会のEmily Lakdawallaさんはこんなグラフも作成している

 シェークスピアの引用は、「じゃじゃ馬ならし」第4幕第1場の最後ペトルーキオのせりふ。
 坪内逍遥訳は「おれの鷹め、おそろしく空腹(はらぺこ)なので、焦々(いらいら)してゐやがる。」
 小田島雄志訳では、「おれの鷹はいまのところすっかり腹を減らしている、こちらの言いなりに餌に飛びつくまでほうっておこう。」
 ここでは坪内訳を基本に、はやぶさの状況に対応するように独自訳を試みた。ちなみに鷹狩りの鷹として、ハヤブサも使用されることがある。
 なお、ハヤブサは長らくタカ目ハヤブサ科ハヤブサ属の鷹の一種という分類だったが、近年は遺伝子解析で鷹との近縁が否定され、ハヤブサ目ハヤブサ科ハヤブサ属に分類されるようになっているとのこと。
 翻訳調査と独自訳検討は@moko_uiroさん、@mosschさん、@albireobさんなどによる。感謝。

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2010.06.21

宣言:タイムリミットの8/31まで毎日書きます

 まずは続きを。秋山演亮さん(和歌山大学)が、さらにコメントしてくれている。

「はやぶさ2を巡る騒動」(有人宇宙港をめぐる冒険)

 その中で6月11日付けの以下の記事が、実はメール内容への反論であったことことを明かしている。確かに内容は完全に対応する。「大丈夫です!」という言葉が力強い。

「はやぶさ2」(有人宇宙港をめぐる冒険)

 コメント欄に「私信を公に晒した」と、掲載行為の倫理性を問う意見を頂いた。
 当該メールは当初こそ私信であったが、その後発信者自らの手により「私信をそのまま再掲載する形」で公的メーリングリストを含む多数の連絡先にポストされ、おそらく三桁以上の人々に発信者から直接届いたことを掲載前に確認している。また、内容の衝撃度の大きさ故に、個々の受信者から転送で、より多くの人々のところへと拡散していったことも判明している。
 ここまで拡散したものはもはや私信とは言い難く、内容の重大性からしてもその性格はパブリックな「檄文」に近い——これが掲載を決意した理由の一つである。

 前にも書いたが、これから警戒すべきは人々がすみやかに「はやぶさ」を忘れてしまうことだろう。
 今回、人々の間から自発的に立ち上がったはやぶさ2予算増額の嘆願署名は、忘却を防ぐためにも意味がある。また、「国民は見ているぞ」というサインを送る意味でも有効だ。
 
 6月21日午前中現在、1万5072名の署名があつまっている。これを多いと見るか少ないと見るかは、立場によって変わるだろう。「またマニアが騒いでいる。どうせたいして増えないさ」と見る向きは少ないはずだ。
 だが、いまだかつてこのような署名運動が立ち上がった衛星・探査機は「はやぶさ2」 以外に存在しないことを考えると、そもそも署名運動の存在そのものが、「はやぶさ」の影響力の大きさ、突出したポピュラリティを示しているといえるだろう。

 「はやぶさ2」が実現するか否かは、今年8月31日の財務省への概算要求で、数十億円規模の開発予算が付くかどうかで決まる。その前、7月にもJAXA内において機体やミッションのシステムの審査会というヤマがあるということだ。

 「はやぶさ2」実現に向けて外からできることはないか、と考え、本日より、8月31日まで、毎日何らかのかたちで「はやぶさ」/「はやぶさ2」関連の記事を掲載し続けることにした。願掛けというにはあまりにささやかだが、書くこと以外はできない自分にできる精一杯だろう。

 正直、記事は短く、内容も薄くなることを免れないと予想するが、ともあれかならずなんらかの記事を掲載し続けるようにしたい。忘却を防ぐには、文章を書くことで意識を喚起し続ける必要がある。

 繰り返すが、熱狂の末の急速な忘却が一番いけない。

 また、JAXA内外の関係者が内にこもって、世間に目を向けなくなってしまうのも困る。はやぶさ2が消えるとすると、内向きの論理によってだろうから。

 時間は限られているが、できることをひとつずつ。まずは署名をお願いいたします。

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2010.06.18

探査、JSPEC、宇宙理学委員会、日本惑星科学会、そして探査、探査、探査!

 最初に。
 和歌山大学の特任教授で、はやぶさサイエンスチームの一員でもあった秋山演亮さんが、コメントしてくれている。

とか書いていたら(有人宇宙港を巡る冒険)

 松浦さんのところのコメントに「こういった怪文章が流れるのは何処の業界も云々」というのがありましたが、問題はこれが全然怪文章じゃなくて、まぁある意味理学のトップクラスから実名で各方面に流れてる所なんですよね。そういう意味では松浦さんは別に釣られてる訳じゃないです。(丁度、和歌山大の ustreamに寄せられた文章のチェックをしているのですが、そこにもこの話が出てきてたりしててびっくりですが(^_^;)

 さて、前回からの続き。宇宙研の宇宙理学委員会の話だ。

 あのメールが宇宙理学委員会関係者が書いたものだとしての話だが。

 ごく簡単に書くと、JAXAに月・惑星探査プログラムグループ(JSPEC)ができたことによる、「ISASは太陽系探査ができなくなるのではないか」というあせりが、宇宙理学委員会にあるのだろう。それがあのメールになったのではないかと思う。

 文部省・宇宙科学研究所時代は、基本的に5年サイクルで物事が回っていた。Mロケットは年に1機ずつ打ち上げ、ほぼ5年ごとに改良を加えた新型に更新する。更新されたロケットの1号機には工学試験衛星を搭載する。その後に年1機ずつ理学衛星が4機続き、次のサイクルに入る、というように。
 5年のサイクルは次世代育成という意味もあった。修士課程2年博士課程3年のうちに、かならず自分の分野の新型衛星なり新型ロケットの打ち上げを経験できるわけである。

 宇宙研の黄金時代は、基本的にこのサイクルに乗った上での教授たちによる良い意味での談合によって回っていた。狭い駒場キャンパスで教授たちは理学工学関係なくしょっちゅう顔を合わせて議論を繰り返し、将来をどうするかを決めていった。予算は右肩あがりないしは前年と同程度は確保できていた。年1機の打ち上げが確定していたから、「今回は俺の分野の衛星は譲るから、あんたの衛星を先に開発してくれ」といった譲り合いも可能だった。
 その中で、科学衛星の質を確保するのに大きな役割を果たしていたのが5年に4機の理学系衛星を集中的に審議する宇宙理学委員会だった。「世界一線級のミッションを選定する」という方針で審議を行い、実際にそのようなミッションを輩出した。それは日本の宇宙科学を世界一線級に押し出す役割を果たした。

 ところが、宇宙三機関統合後は、予算削減で年1機の衛星打ち上げが不可能になってしまった。Mロケットは廃止されてしまったし、宇宙理学委員会そのものも、自らの責任で開発開始を決定した電波望遠鏡衛星ASTRO-Gが大トラブルを出してしまった。ASTRO-Gは電波望遠鏡の生命線といえるアンテナ鏡面が予定の精度を達成できないことが判明。また、地上の電波望遠鏡との観測網構築も不調なことから、JAXAは2009年に予算執行を停止し、2010年度の予算をゼロにした。
 今、宇宙理学委員会は「本当に、実現可能かつ世界一線級のミッションをセレクトする能力があるのか」と疑問に思われてもしかたない状況にある。

 その中で、JSPECに移管された「はやぶさ」——「もっとも宇宙研らしいミッション」と評価された探査機——が絶望的状況を切り抜けて見事な帰還を果たした。JSPECに宇宙研の良き部分が受け継がれるならば、旧ISASを代表した宇宙理学委員会の存在意義が問われることになる。三機関は統合されており、経営の実権はJAXAのトップにある。JAXA経営陣が「では探査はJSPECでやろう」と判断すると、宇宙理学委員会は探査機計画をセレクトできなくなってしまう。

 そのあせりが、JSPECマターへのはやぶさ2への反対となった。
 あのメールもまた、はあせりの反映だろうと私は判断している。
 しかし、JSPECも宇宙理学委員会も、同じ旧宇宙研というルーツを持つ組織で、同じ相模原キャンパスに位置している。人員のかなりの部分は併任だ。どこに足を引っ張り合う合理的理由があるというのだろうか。

 この問題は、国民視点で解決しなくてはならないだろう。国民からすれば、「はやぶさ」も「はやぶさ2」も「あかつき」も「イカロス」も、日本の探査機であって、それ以外の何物でもない。もっともうまくその探査をやれる者が、探査機を企画し、打ち上げればいいだけの話だ。そして、探査機を上げたい者が協力し合えば、大きな力になる。JSPECと宇宙理学委員会は協力してほしい、両者が協力し得手に帆掛けてさらなる日本の探査を行って欲しいというのが、はやぶさファンのみならず国民一般の願いではないだろうか。

 宇宙理学委員会の態度にも理解できる部分はある。すべては、宇宙科学の予算が削減されたことから始まっているのだから。民主党政権に言うべきことがあるとすれば、「きちんと予算をつけよう」ということだろう。2位で構わない分野があることは否定しないが、科学はそうではない。1位のみが意味を持つ過酷な世界をサポートしていくように、私たちは政治を監視していかなくてはならない。

 ここまで、民主党ははやぶさ2に関する責任はなかった。これからはある。

 そしてもう一つ、はやぶさが、今回のメールが指し示すことがある。

 「はやぶさ」の帰還によって、JAXAは否が応でもパブリックにことを進めねばならない立場に引っぱりだされた。内向きの論理では外部を納得させることはできない。いつも外部の目を意識して正々堂々とした態度を貫かなければならない立場となったのだ。

 それは今までの内向きの論理だけで生きてきた向きにはつらいかもしれない。「学問の自治」への侵害に思えるかも知れない。「組織内部の事情に外部から口を挟むな」と感じるかも知れない。
 しかし大きなチャンスでもある。国民一般に広く自分の必要性を訴えることが可能になったのだから。今ならば、多くの人々——それは多くの納税者であり多くの有権者でもある——が、宇宙開発について耳を傾けてくれるのである。そのような状況を「はやぶさ」が作り出したのだ。

 「はやぶさ」がもたらしたもっとも大きな意義は、この「みんなが見ているよ、みんなが期待しているよ」という状況だと私は思う。内輪のいがみあいで「はやぶさ2」がスタートできないとしたら、期待は失望に変わるだろう。

 「つまらない足の引っ張り合いはやめて、正々堂々胸を張って思うところをすべての人々に向けて語ろうよ、それだけのことをしたんだから」と私は思うのだ。


 ちなみに、ここまで「はやぶさ2」支援声明を出していなかった日本惑星科学会が、「はやぶさ」帰還を受けて声明を出した。

「はやぶさ」の地球帰還に関する声明

 私は取材の過程で、宇宙理学委員会の働きかけを受けた学会上層部が、はやぶさ2支援声明をしぶり、その一方で若手研究者が支援声明を出すべく努力していると聞いていた。

 文面に「はやぶさ2」とは一言も書いていないあたりに、内部の軋轢をうかがい知ることができる。それでも「今後とも、日本惑星科学会は、理論・実験・観測・数値シミュレーション・分析といった広範な手法の統合の場として、惑星探査を通した太陽系と地球の起源と進化の解明に向けて、一層貢献していく所存です。 」と結んでいるのは進歩だ。

 「惑星探査を通した太陽系と地球の起源と進化の解明」——太陽系起源の調査には始原天体、すなわち小惑星探査が必須だ。そして今現在実現ぎりぎりのところにきている小惑星探査は「はやぶさ2」以外に存在しないのだから。

 内輪のポリティクスよりも探査を。胸踊る、希望と絶望と、高揚と失望と、知的興奮と原初の血のたぎりと、意志と知恵と体力の限りの探査を。私たちはそれを待っている。

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2010.06.17

はやぶさ2にむけて:最後の障壁は身内にあり…か

 日本に帰ってきました。

 はやぶさの帰還を受けて、はやぶさ2を巡る動きが一気に活発化してきた。JAXA内における水面下の動きも急速に流動しているようだ。

 多くの人は、これだけの成果を挙げながら後継機「はやぶさ2」の計画が一向に予算が付かないのに奇妙さを感じているだろう。2006年初頭に2010年打ち上げを目指して検討を開始した「はやぶさ2」は2010年現在、2014年打ち上げという計画実行のぎりぎりまで来ているにも関わらず、まだ正式計画化していない。

 ネットでは民主党政権が悪いとする声もある。が、これまで取材してきた者としてはっきり言うが、民主党はこの件には関係ない。
 文部科学省も、あまり関係ない。2007年度予算折衝では、文部科学省側が「もっと予算を付けようか」と提案したにも関わらずJAXA側が断るという前代未聞の事態が起きている。

 このことから分かるように、はやぶさ2が開発フェーズに入れないでいる問題は、すべてJAXA内に原因がある。権限を巡るJAXA内の争いだ。これまでに色々な難題がはやぶさ2の前に立ちふさがったが、今現在、最後の障害となっているのは――大変悲しむべきことだが――ISASの理学関係者、組織としては宇宙理学委員会である。

 宇宙理学委員会――旧宇宙研の根幹を支えてきた意志決定組織だ。1980年代から1990年代にかけての宇宙研の栄光を導いた組織といってもいい。ところが宇宙三機関統合後の急速な宇宙研の組織文化の崩壊の中で、宇宙研を守ろうとする動きが、かえって「はやぶさ2」の足を引っ張ることになってしまっている。

 私がそう断言できるのは、以下に示す電子メール文面を入手したからだ。転送に転送を重ねたらしいメールは私信の形は取っているが、実際にはかなりの数の関係者に送信されたもののようだ。さらに関係者のメーリングリストへのフォワードなどを通じて、けっこうな広範囲に衝撃を持って広がっているらしい。私のところには複数のルートから独立して届いた。
 文面はいくらか削除されているらしく、送信者が誰かは私が入手した文章からはわからない。ただし、文面から見るに、メール送信者は宇宙理学委員会上層部の誰かと考えて間違いはない。
 メールヘッダーをチェックしてみたが、オリジナルの送信者に関する情報はなかった。

 この文面そのものを偽造と疑うことも可能だ。

 しかし、このようなメールを偽造することで誰が得をするかがはっきりしない。逆に本物だと考えると、その内容は、今までに私が取材で得た感触や断片的事実とすべて一致する。また、6月11日という発信の日付からして、「はやぶさが成功したらはやぶさ2を潰せなくなる」という、かなりせっぱ詰まった気分で書かれたものであることが推察できる。「眠ることが出来ず起き出してメールを差し上げる」「必要であれば私がそこに飛び込むつもり」という記述もリアルであって、偽造ならば入らないような表現であろう。

 以下にメールを掲載する。その上で、「はやぶさ2」を巡る現在の状況について、私の知りうる限りを解説することにする。



差出人: 【削除】
日時: 2010年6月11日 23:26:04JST
宛先: 【削除】
件名: はやぶさ2について

【送付先削除】

 はやぶさが国民的歓呼の中に帰還しようとしていることは大変有り難いことと思います。しかしながら本日読売新聞の紙面で立川理事長が”はやぶさ2を早期に概算要求し実現したい。設計は出来ている。”と言っているのを見て背筋が寒くなりました。床についていたのですが、眠ることが出来ず起き出してメールを差し上げる次第です。

 はやぶさは工学的チャレンジとしては大成功であったと思います。特にイオンエンジンの実証と言う意味ですばらしかった。

 しかしながら、同じ機体のコピーをもう一度飛ばす”はやぶさ2”を企画すること自体、JAXAが技術者集団である事を疑われかねないと思います。あれだけ多くの不具合を起こした機体をもう一度フライトさせるのですか?
 1.イオンエンジンの信頼性をはやぶさより上げたものを使わなければ、次には帰還はないかもしれません
 2.機体重量マージンが無く、3つしか積んでいないモーメンタムホイールを踏襲するのでしょうか?あかつきでは故障を考慮して4つ積んでいるだけではありません。はやぶさで問題を起こした振動対策措置を回避できるように、従来のホイールで振動に保つ位置にホイールを配置しています。MVからH-IIAにロケットが替わって振動条件が緩和されたというだけの事ではありません
 3.はやぶさの小惑星の資料を閉じ込めるカプセルは地上で開けるときの事を考慮せずに作られています。この為にキュレーション設備の件では##先生まで巻き込んで大騒動を起こしている事はご存じの通りです。同じ轍を踏むことは許されないと思います
 4.カプセルを毎秒12キロという未曾有の速さで地球大気圏にもう一度突入させるのでしょうか?##先生には怒られるかも知れませんが、確実性という意味では避けられるものならば避けるべき突入速度だと思います。H-IIAで”はやぶさ2”を上げるのであれば重量的には原型機より余裕を持った設計が出来るはずです。化学推進系を備えた機体とし、十分に減速して地球周回軌道に入れてからカプセルを落とすべきではないでしょうか?
 5.小惑星にアプローチしたときには当初の予定通りの光学航法は出来なかったと聞いています。その為、その場で知恵を絞ってアプローチしたと。そのままの設計で”はやぶさ2”を作るのでしょうか?

 はやぶさ2は理学ミッションとして考えるべきであり、その為にはサンプルの地球への帰還を最優先とした最適な設計をするべきです。決して”はやぶさ”と同じであってはならないと考えます。今、歓呼してはやぶさを迎える人々が”はやぶさ2”の起こりえる失敗を看過したJAXAのエンジニアリングを許してくれるとは私には思えません。

 最後に”はやぶさ2”の大きな問題はこれを強く引っ張る人が居ないことであることはよく言われることです。私もそう言って皆と同じように嘆いてきましたが、その様な段階では無いと感じます。必要であれば私がそこに飛び込むつもりです。

【差出人氏名削除】

メールの文面を分析する。

●全体について
 メールの内容は、外から取材しているだけの私から見ても、突っ込みどころ満載だ。メール送信者は考え得る限りの「難点」を挙げているが、そのことごとくが外している。、はやぶさ2を潰すという意図が先行して存在し、それに合わせて理由を並べたと考えるべき内容となっている。

●メール発信者について
 1)指摘する難点が工学的ポイントを外したものであること(つまり工学分野に土地勘がない)、2)「はやぶさ2は理学ミッションとして考えるべき」と強く主張していること、3)メール受信者に「##先生」と呼びかけていること、4)理学ミッションである「あかつき」の設計を規範として挙げていること――から、メール発信者がJAXA/ISAS内部の理学関係者であることがほぼ確定する。また、「必要であれば私がそこに飛び込むつもりです」と、自分がはやぶさ2プロマネになる意志を示していることから、その気になればプロマネになれるだけの経歴の持ち主であることも分かる。

●メールが指摘する「はやぶさ2」の問題点について
 すべて、外部で取材しているだけの私ですら反論可能だ。ましてはやぶさ2の検討に参加している関係者なら誰でも論破することができるだろう。

1)イオンエンジンについては、むしろ信頼性の高さをはやぶさの全ミッションを通じて実証したと考えるべき。3年も延びた宇宙空間への露出に耐え、最後には2個イチ運転による冗長性確保まで実証した。この7年の運転によりノウハウは蓄積しており、次があればむしろ無事帰還の確率は向上すると考えるべきだろう。

2)「はやぶさ2」は「はやぶさ」の同型機であるが、完全な同一設計ではない。「はやぶさ」の教訓を汲んで直すべきところは改修することになっている。メールが指摘するホイールの問題も、「はやぶさ2」では4基搭載に増やし、しかも「あかつき」で行った改良をふまえた上でさらなる安全策が検討されている(「はやぶさ」も「あかつき」も担当主メーカーは同じNECだ。「はやぶさ2」の設計にフィードバックがないと考えるほうがおかしい)。
 「同じ機体のコピーをもう一度飛ばす」のではない。直すべきところは直しているのである。

3)カプセルの設計は、文面だけでは詳細は不明だが、これも「はやぶさ」と「はやぶさ2」は同型機だが同一設計ではない、ということでおしまいだろう。繰り返すが直すべきは直しているのである。

4)カプセルは6月13日に完璧に近い再突入を行って地上で無事回収された。確実性は実証されたのである。メール送信者も指摘するように重量マージンが厳しい小惑星への往復飛行ミッションなら、化学推進系による地球周回軌道投入は、ミッションの成立性をあやうくするほどの重量増加を招く可能性がある。しかもマージンを重視した結果の新設計は、また工学試験衛星で実地に試す必要が出てくる(安全よりに振ったつもりでも新しい設計は、もう一度技術試験を行わねば安全性を確認できないのだ)。
 はやぶさの成果を生かすという点で、はやぶさ2でも12km/sの再突入は許容すべきリスクだろう。

5)小惑星へのアプローチ時の光学航法が、当初の予定通りに動作しなかったのは事実。しかし、それはメーカー技術者が一晩で書いたソフトウエアにより「人と機械(はやぶさ)を協働させる」ことで解決した。当然「はやぶさ2」では教訓を取り入れたソフトウエアで運用することになっている。メール送信者は、2005年11月の私ほど熱心には、はやぶさのタッチダウンをウォッチしていなかったようだ。

 つまり、「今、歓呼してはやぶさを迎える人々が”はやぶさ2”の起こりえる失敗を看過したJAXAのエンジニアリングを許してくれるとは私には思えません。」というのは、はやぶさの成果を過小評価する意図的な誘導である。
 はやぶさ2は起こりえる失敗を潰すべく、はやぶさに設計変更を加えた探査機である。決してリスクを看過した同一設計の機体ではない。そこまでJAXAのエンジニアリングを過小評価してはいけないと思う。

 そして、なによりもこのメールの悲しい部分は、「はやぶさ2を強く引っ張る人がいない」と書いてしまっていることだ。これは、現在のはやぶさ2関係者に対する間接的誹謗ではないか。外から私が見る限りではあるが、「強く引っ張る人がいない」というような状況ではない(そもそもはやぶさ2には“あの”川口プロマネも主要人物として関わっているというのに「人がいない」とはいかに??)。
 その上で、「必要であれば私がそこに飛び込むつもり」というのは、「潰せないなら自分がはやぶさ2計画を乗っ取ります」と宣言しているとも読める。


 私は、このメールを、「古き良き宇宙研、その中核組織だった宇宙理学委員会の黄昏」と読み解く。
 宇宙理学委員会は、1980年代から1990年代の宇宙研黄金時代を主導した組織だ。科学者による自治は極めて効果的に働き、日本の宇宙科学を世界の第一線に押し出す事を可能にした。
 しかし2003年の宇宙三機関統合以降、宇宙理学委員会を中心としたシステムがうまく働く前提が崩れた。古き良き宇宙研は崩壊した。社会の状況も大きく変化した。

 その中で、時計の針を元に戻そうとする無駄な努力が行われていることが、このメール、ひいては「はやぶさ2」を巡る状況から浮かび上がってくる。時はもとには戻らない。宇宙理学委員会が主導した“科学者の楽園”としての宇宙研はもうあり得ない。

 その状況下で、「もっとも宇宙研らしいミッション」と評価されたはやぶさの後継機に、かつての宇宙研の栄光を支えた宇宙理学委員会の関係者ががこのようなメールを出してまで反対するところに、私はどうしようもない皮肉と悲しさを感じる。

 宇宙理学委員会を巡る、はやぶさ2の状況については次の記事で書くことにする。

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2010.06.16

はやぶさ2に向けて

 ただいまアリススプリングスの宿にいる。はやぶさ再突入帰還カプセルの余韻にひたったまま、15日はアリススプリングス郊外にあるヘンブリー・クレーターを見に行ってきた。約5000年前に落ちた隕石によってできたクレーターだが、衝突直前に割れたことで大小10数個のクレーター群を形成している。雨のたびに土砂が流れ込み、内部には樹木が生い茂り、鳥とバッタの楽園になっていた。

 日本では、はやぶさ2推進のためのネット署名が始まっている。こういう動きが自発的かつ既存の関係者(自分も含めて)以外のところから出てくるのはいいことだと思う。
 管首相が、はやぶさ2予算に含みを持たせた発言を参議院でしたそうだが、それも一般が盛り上がったればこそだろう。一般が声をあげることはとても大切だ。私も一国民として署名をした。

 これで「はやぶさ2」がつぶれるようなことがあったら、JAXAは国と国民の両方から信頼を失うことになるんじゃないだろうか。

 そして、こちらのパブリックコメントの締め切りも迫ってきている。

「「月探査に関する懇談会 報告書(案)」に対する意見、及び「ロボット月探査の計画の愛称」の募集について 」 6月17日木曜日必着。 t

 宇宙開発戦略本部に意見をもの申すチャンスだ。「見当はずれのことを言ってしまうのではないか」「自分が意見を出したところで事態は変わらない」などと考えず、どんどん意見を出そう。
 私の見方は週刊ダイヤモンドに書いた通り。「アメリカについていくつもりで懇談会作ったはいいけれど、アメリカが有人月探査をやらないって言ったのに、自分だけ月に行こうとして、もはや存在しないアメリカの計画に付き従おうとするのは滑稽だ」というもの。
 月の科学探査には意味がある。これは間違いない。しかし、月の資源とか将来の宇宙開発の拠点とか言われると???となってしまう。

 はやぶさが示したのは、国民がきちんと興味を持てばそれを国もJAXAも無視できないということだった。
 まずは声を上げることからだ。

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2010.06.14

見たぞ、はやぶさの凱旋(確定版)

 昨日の速報版の完全版です。ほぼ同じ内容ですが、一部の訂正と追加を行い、写真を追加しました。前のアップを消してこちらをアップしようかと思いましたが、当日のハイな気分の記録を残すため別記事として掲載することにします。

Reentry1_2
 6月13日の朝、観測地下見のためにニコニコ動画の生放送「ニコ生」一行とクーバーペディのビジターセンターで待ち合わせる。野尻さんがTwitterで呼びかけると、およそ10名ほどの日本人がこのオーストラリアの辺境であつまった。なかにはmixiで仲間を募り、レンタルのキャンピングカーで走ってきた猛者らもいる。車両にはやぶさマークを貼ってアデレードから走ってきたとのこと。オーストラリアではやたらとキャンピングカーを見る。ワーキングホリデー中のIさん曰く、定年退職後の楽しみとして回っている人が多い。

Reentry2

 ここで、ニコ生一行は買い物に回ったが、とんでもないことが判明。野尻さんと三才ブックスのSさんが、パスポートの入ったバッグを忘れていった!一見落ち着いていた野尻さんだけれども、実はかなり舞い上がっていた模様。彼らのホテルに忘れ物を届けてから下見に出発。スチュワートハイウェイを南下する。

Reentry3_2 下見の結果、クーバーペディから90kmほどスチュワートハイウェイを南下したところにある休憩のための駐車場ではやぶさを出迎えることにする。

 クーパーペディに戻って昼食はイタリア料理屋でピザ。野尻さんの呼びかけで知り合ったAさん、Oさんをクルマに乗せて観測場所に向かうことになる。Aさんはコマケン(小松左京研究会)メンバー、Oさんはその友人でオーストラリア労働ビザ取得を目指す看護士さん。

 6月13日午後は、クーバーペディの観光に費やした。クーバーペディは世界の9割を占めるオパールの産地だ。オパールはシリカを含む水が泥岩の割れ目にしみこみ、長い年月の間に作り上げる。オパールが出るということはその場所の地層が数億年のオーダーで安定していたということだ。
 かつてのオパール鉱山を改装した博物館を見学する。クーバーペディは1980年までテレビ放送が入らない、文字通り地果つる地だったとのこと。

 雲はかなり心配だったが、午後4時半の出発時点でかなり晴れていた。出発直前、国立天文台の渡部潤一先生に行き会う。国立天文台組はクーバーペディから30kmほど離れた自動車の入ってこない地点から観測するとのこと。しかも観測後はそのまま、明け方まで南天の夜空の撮影会に突入するという。さすが本職は力の入れ方が違う。渡辺先生は、酒瓶らしきものを手に提げていた。「お祝いに、ね」

 午後5時半に観測場所に到着。ニコ生組はすでに到着し、セッティングを行っている。

Reentry7

 日が沈む。360°地平線の風景が夕焼けで染まる。美しいの一言に尽きる。これを見ただけでいいやと思いかけるが、その後にはもっと素晴らしいものがあった。南半球の夜空だ。

 全天快晴、透明度最高の夜空。南十字星も大小マゼラン雲もはっきりみえる。野尻さんが「石炭袋がくっきりと見える」と喜んでいる。ああ、もうこれが見られただけで、今回はいいやという気分になる。いや、今度は星空のためだけにオーストラリアに来たい。私はいて座方向の銀河中心を見ているうちに、猛然と行きたくなった。そちらに行くのが正しいかどうかは別として、だが。
 宇宙開発の是非を議論するならば、まずはこのような夜空の下で一夜を過ごすべきなのだろう。見て、なお「不要」と言える人がいるとは私には思えない。

 待っているうちに、雲がまたも出てくる。雲は増え続け、午後9時頃には全天を覆うかというほどに広がった。一時はどうなることかと思ったが、再突入30分前あたりから風が吹き、雲が減り始める。ニコ生の主催者nekovideoさんが機材を必死でセッティングしている。通信料金が分3000円というインマルサットの衛星携帯の出番だ。

 これは行けるかも、という気がしてくる。

 デジカメで夜空を撮影するが写らない。撮影を一切あきらめ、眼視に徹することにする。

 はやぶさの突入時刻となる。

Narureentry1
(撮影:平田成)
 まず、西南方向の雲が非常に明るく光った。機体が大きく分解した際の光だと思う。

Narureentry2
(撮影:平田成)
 次の瞬間、雲の向こうから煌々たる光の帯が飛び出してきた。良く見ると先端には橙色の輝点、再突入カプセルだ。その後に尾を引き、四散していくのは本体だろう。分解していく機体は時折緑色の光を放っている。銅の炎色反応かと思ったが、後で聞いたところでは再突入で発生した酸素のプラズマの輝きだとのこと。

 高度60kmほどだが、あまりに速く、明るいので遠くに思えない。航空ショーなどで目の前をジェット機がフライパスしていく――その様と似ている。

 機体が四散していくのがはっきり分かる。大型太陽電池パドルが、ハイゲインアンテナが、イトカワを観測したセンサーらが、サンプラーホーンが、長期の航行に耐えたイオンエンジンが、飛散し、分解し、輝き、燃え尽きていく。

 先頭でオレンジ色に輝く再突入カプセルの飛行は安定している。揺らぎは見えない。カプセルの空力設計がうまくいった証拠だ。

 揺らぐことなくまっすぐ飛行する再突入カプセルが、輝きの尾を引いて飛散する機体を従え、南オーストラリアの星空を横切っていく。これは凱旋だ。今やはやぶさの本体(ここはウェットに“魂”というべきなのか?)は機体から再突入カプセルへと移り、分解する機体を従えて、堂々地球への凱旋を果たしたのだ。

 その間数十秒ほどか。やがて本体の光は消え、再突入カプセルの輝点も南東方向の夜空に溶けていく。音速を切るさいのショックウェーブが聞こえるかと耳を澄ましたが、聞こえなかった。

Reentrya

 野尻さんが「ビーコン受かったよ!」と叫ぶ。ストップウォッチを押してビーコン継続時間の計測を始める。スピーカーから、オクターブ違いの音を往復するビーコン信号が聞こえてくる。
 ビーコンは再突入カプセルの耐熱シェルがはずれると作動する。シェルがはずれたことは間違いない。3分、5分とビーコンは続いた。この時点でパラシュートが開傘したと考えて大丈夫だ。でなければ、カプセルは大地に激突し、とっくにビーコン送信を停止しているだろう。

Reentry9_2 nekovideoさんのアドホックな助手、通称「neko奴隷」君が、特製八木アンテナをかざしながら泣いている。三才ブックスのSさんが、「この日のために」とリポビタンDを配る。ニコ生のカメラの前で、全員リポD一気飲みをする。

 ビーコン音が小さくなり、ノイズが混じりはじめる。地表が近づいているのだ。着地するとビーコン音のパターンが変わるはずだが、変化の前にビーコン音はノイズに没した。それでも着地直前まで聞こえていたはずだ。

 その後、クーバーペディに戻り。某オーストラリアの大学の観測班との飲み会となる。
 開発開始から14年、打ち上げから7年。飛行距離60億km、地球から直線距離で3億kmの彼方まで赴いた探査機は、地球に帰還した。機体は四散し、燃え尽きたが、再突入カプセルは無事に着地し、回収を待っている。

 何度でも繰り返そう。これは始まりの終わりにすぎない。私たちにはこれから行くべきところがいっぱいある。


6月13日深夜、相模原における記者会見での川口淳一郎プロジェクト・マネージャーの言葉

 我が国の技術は潜在的に高い。

 もっと自信を持って良いが、なかなか場が与えられていない。今後もっと進められるのでは。



 挑戦することにためらいを持たないでほしい。



 今日ではやぶさは終わるが、技術の風化と拡散が始まっている。伝承する機会がもう失われているかもしれない。

 これを理解してもらい、将来につなげるミッションを立ち上げる必要がある。

 意気込みはもう強い、としか言いようがない。

 アメリカの計画は、はやぶさが火をつけた。

 身を引くような宇宙機関はあってはならないと声を大にして言いたい。

 おかえりなさい、はやぶさ。そして次のステップへ。


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見たぞ、はやぶさの凱旋(速報版)

 6月13日の朝、観測地下見のためにニコ生一行とクーバーペディのビジターセンターで待ち合わせる。野尻さんがTwitterで呼びかけると、およそ10名ほどの日本人がこのオーストラリアの辺境であつまった。なかにはmixiで仲間を募り、レンタルのキャンピングカーで走ってきた猛者らもいる。車両にはやぶさマークを貼ってアデレードから来たとのこと。オーストラリアではやたらとキャンピングカーを見る。ワーキングホリデー中のIさん曰く、定年退職後の楽しみとして回っている人が多いそうだ。

 下見の結果、クーバーペディから90kmほどスチュワートハイウェイを南下したところにある休憩のための駐車場ではやぶさを出迎えることにする。

 昼食はイタリア料理屋でピザ。野尻さんの呼びかけで知り合ったAさん、Oさんをクルマに乗せて観測場所に向かうことになる。Aさんはコマケン(小松左京研究会)メンバー、Oさんはその友人でオーストラリア労働ビザ取得を目指す看護士さん。

 6月13日午後は、クーバーペディの観光に費やした。クーバーペディは世界の9割を占めるオパールの産地だ。オパールはシリカを含む水が泥岩の割れ目にしみこみ、長い年月の間に作り上げる。オパールが出るということはその場所の地層が数億年のオーダーで安定していたということだ。
 かつてのオパール鉱山を改装した博物館を見学する。クーバーペディは1980年までテレビ放送が入らない、文字通り地果つる地だったとのこと。

 雲はかなり心配だったが、午後4時半の出発時点でかなり晴れていた。午後5時半に観測場所に到着。野尻さんらニコ生組はすでに到着し、セッティングを行っている。

 日が沈む。360°地平線の風景が夕焼けで染まる。美しいの一言に尽きる。これを見ただけでいいやと思いかけるが、その後にはもっと素晴らしいものがあった。南半球の夜空だ。

 全天快晴、透明度最高の夜空。南十字星も大小マゼラン雲もはっきりみえる。野尻さんが「石炭袋がくっきりと見える」と喜んでいる。くっきりといて座方向の銀河が見える。。ああ、もうこれが見れただけで、今回はいいやという気分になる。いや、今度は星空のためだけにオーストラリアに来たい。私はいて座方向の銀河を見ているうちに、猛然と銀河中心へと行きたくなった。そちらに行くのが正しいかどうかは別として、だが。
 宇宙開発の是非を議論するならば、まずはこのような夜空の下で一夜を過ごすべきなのだろう。見て、なお「不要」と言える人がいるとは私には思えない。

 待っているうちに、雲がまたも出てくる。一時はどうなることかと思ったが、再突入30分前あたりから風が出て雲が減り始める。ニコ生の主催者nekovideoさんが機材を必死でセッティングしている。これは行けるかも、という気がしてくる。

 デジカメで夜空を撮影するが写らない。撮影を一切あきらめ、眼視に徹することにする。

 はやぶさの突入時刻となる。まず、雲が非常に明るく光った。機体が大きく分解した際の光だと思う。次の瞬間、雲の向こうから煌々たる光の帯が飛び出してきた。良く見ると先端には橙色の輝点、再突入カプセルだ。その後に尾を引き、四散していくのは本体だろう。分解していく機体は時折緑色の光を放っている。銅の炎色反応かと思ったが、後で聞いたところでは再突入で発生した酸素のプラズマの輝きだろうとのこと。
 機体が四散していくのがはっきり分かる。輝きつつ飛び散る機体を従え、オレンジ色に輝く再突入カプセルが飛んでいく。印象としては、凱旋だ。今やはやぶさの本体は機体から再突入カプセルへと移り、分解する機体を従えて、堂々地球への凱旋を果たしたのだ。
 野尻さんが「ビーコン受かったよ!」と叫ぶ。オクターブ違いの音を往復するビーコン信号が聞こえてくる。ビーコンは再突入カプセルの耐熱シェルがはずれると作動する。シェルがはずれたことは間違いない。3分、5分とビーコンは続く。この時点でパラシュートが開傘したと見ても大丈夫だ。開傘していなければ、とっくに地面に激突している。

 nekovideoさんのアドホックな助手、通称「neko奴隷」君が、特製八木アンテナをかざしながら泣いている。三才ブックスのSさんが、「この日のために」とリポビタンDを配る。ニコ生のカメラの前で、全員リポD一気飲みをする。

 ビーコン音は着地直前まで聞こえていた。よしよし。

 その後、クーバーペディに戻り。某オーストラリアの大学の観測班との飲み会となる。ビールを飲んで良い気分で今、この文章を書いている次第。夜も更けてきたので、ここまでで一度アップする。明日以降、訂正や画像などを入れる予定。

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2010.06.13

オカエリナサイ――南オーストラリア・ク-バーペディにて

 どたばたしているうちに2ヶ月も更新を空けてしまった。

 今、オーストラリアの南、クーバーペディに来ている。あと22時間ほどとなった小惑星探査機「はやぶさ」の地球帰還を取材するためだ。JAXAの回収隊及びマスメディア関係者が、再突入カプセルが着地するウーメラ実験場の南側のグレンダンボという街にいるが、私は反対側のクーパーペディに陣取った。 こちらにもJAXAの光学観測班が待機しているとのこと。発光する再突入カプセルを観測して、着地点を推定するためだ。

 ついにここまで来たのか。
 2005年の小惑星イトカワへのタッチダウンとその後の通信喪失、翌年の劇的としか形容しようのない復帰と、満身創痍の機体による帰還飛行。ここまでたどりついただけでも、本当に良くやったと言わねばならない。

 「はやぶさ」に関する情報流通も着陸があった2005年に比べればぐっと良くなった。今回は私ががんばらなくとも様々な情報が広く公開され、多くの人々に届くだろう。私は、私にしかできないことがあれば、その都度このブログとTwitter(@ShinyaMatsuura)に書き込んでいくことにする。現地はかならずしも通信状況が良くないので、情報が遅れることもあるだろうがご容赦願いたい。

 この後何があっても、私はバンザイをするだろう。再突入が失敗したって許す、カプセルに何も入っていなくても許す(私が許したからどうだ、というのはとりあえず突っ込まないで欲しい)。それは失敗ではない。始まりが終わっただけだ。まだまだやること、やれることはいっぱいある。

 いまから心しておくことがある。「はやぶさ」を忘れてはならない。これをきっかけに日本を「はやぶさ2」をはじめとした様々な探査機をどんどん太陽系の各所に飛ばせる国にしていこう。そのためには「はやぶさ」を忘れてはならない。

 実は私たちはかなり忘れやすい。

 前例がある。1912年、白瀬矗に率いられた日本初の南極探検隊は、アムンゼンとスコットが南極点到達を競ったのと同時に南極を踏破した。経験不足もあって彼らの足跡は南極大陸のごく一部にとどまった。それでも白瀬隊の探検は、「日本がフロンティアに出ていった」最初期の行為となった。
 白瀬隊の資金はかなりの部分が民間からの募金でまかなわれた。当時、メディアも国民も白瀬の構想をこぞって応援したのである。しかし、白瀬が帰国し、歓呼の声で迎えられ、その後しばらくして起きたのは忘却だった。

 白瀬は南極探検にあたって少なからぬ借金をしていた。しかし借金が消えぬ間に、白瀬隊への一般からの支援は消え、きれいさっぱり白瀬は忘れ去られた。
 帰国後の白瀬は、南極で撮影した映画フィルムを抱えて講演をしては借金を返済するという生活を20年以上に渡って続けざるを得なかった。本来ならば何らかの形で継続的に南極探査を実施すべきところを、第二次世界大戦後、永田武・西堀栄三郎らが学術調査としての南極調査を再開するまで、日本の南極探査は途絶えた。

 はやぶさは世界初の壮挙を成し遂げつつある。それは終わりではなく始まりだ。より深く太陽系を理解するためにより様々な場所へ、より遠くへ。


 今、「はやぶさ」の後継機「はやぶさ2」は、開発が開始できるかぎりぎりのところにある。当初2010年を予定していた打ち上げは、奇妙なことに引き延ばされるだけ引き延ばされ、現状では2014年である。

 小惑星には様々な種類がある。「はやぶさ」が赴いた小惑星イトカワは、岩石主体のS型小惑星だった。このほか、炭素主体のC型、金属主体のM型、その他反射光のスペクトルの違いでP型、E型、B型などに分類される。S型を探査したので、次にC型を狙うわけだ。

 「はやぶさ2」の航行能力で到達できるC型小惑星は、この1999JU3しかない。

 小惑星に限らず、太陽系の他の星への打ち上げのチャンスは、地球との位置関係によってかなり限定される。
 「はやぶさ2」の目的地であるC型小惑星1999JU3へは、2014年の打ち上げチャンスを逃せば、次は2020年代となる。つまり、2014年打ち上げを逃せば、事実上の「はやぶさ2」は中止になる。
 2014年打ち上げのためには、2011年度に数十億円規模の予算が付き、開発がスタートすることが必須である。「はやぶさ2」は、ほぼ「はやぶさ」同型機とはいえ、一品物の機体を制作するのに打ち上げまで4年という時間はもはや限界にちかい短さだ。

 技術も人も、続けることによってのみ維持発展する。今年は、「はやぶさ」の成果を日本が「はやぶさ2により」継承発展させることができるかどうかがはっきりすることになる。

 まず私たちが見守るべきは、「はやぶさ2」を巡る予算の状況だろう。

 しかし「はやぶさ2」も終わりではない。
 その先には、枯渇彗星核を狙うより大型の探査機「はやぶさマーク2」があり、現在順調に航行を続けるソーラー電力セイル試験機「イカロス」の技術と「はやぶさ」のイオンエンジンが合体した、木星及びトロヤ群小惑星観測を目指す「ソーラー電力セイル探査機」構想が存在する。私たちの知識は少なく、太陽系は広大だ。

 明日、はやぶさはマイナス5等の明るい流星となって南オーストラリア上空に輝くことになる。私は消えゆくはやぶさの光に「日本が継続的に太陽系全域を探査できる国となるように」と願うつもりだ。

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