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2010.07.05

微粒子など持ち帰った物質を確認、イトカワ由来かどうかはまだ不明

 本日朝、朝日新聞やNHKなどで「はやぶさの持ち帰った物質が確認された」というニュースが流れた。これはスクープだったようだ。本日午後の記者会見で、JAXAははやぶさが何かの物質を持ち帰っていたことが正式に公表した。
 はやぶさのサンプルは、A室・B室の2つのサンプル室を持つサンプル・キャッチャーの中に格納されているはずだ。サンプル・キャッチャーはサンプル・コンテナという容器に密閉格納され、さらにサンプル・コンテナごと再突入カプセルに収められて帰還した。
 7月5日時点の現状は、サンプルコンテナは、内部を真空に保ったキュレーション設備に収められ、コンテナの蓋を開け、サンプル・キャッチャーを取り出し、A室の蓋を開けたところ。

 現状で見つかっているのは、A室内から、10μmほどの大きさの微粒子が2つ。そして、サンプルコンテナ内に、なんらかの目視できる物質が10個ほどだ。
 サンプル・キャッチャーは、サンプラーホーンを通って入ってきたサンプルを、A室とB室に導くための回転筒の切り替え機構を持つ。切り替え機構は、万が一にもサンプルが噛み込まないようにゆるくつくってあり、そこからサンプルがサンプルコンテナ内にこぼれることはあり得る。
 しかし、向井参与は記者会見で、サンプルコンテナ内の物質について「おそらく地球由来の物質ではないか」とコメントした。


Img_0311
 記者に対して説明を行う向井技術参与(左)と、川口プロマネ(右)


2010年7月5日午後3時からの記者会見 JAXA東京事務所にて

出席者

上野宗孝 ミッション機器系グループ 副グループ長
川口淳一郎プロジェクト・マネージャー
向井利典技術参与

 一足先に正面に出てきた向井参与「資料はまだ配っとらんの?」広報「3時になったら公開の予定ですので…」この時、午後2時58分…

 3時ちょうど、川口プロマネ到着。同時に資料配付。

川口
 私、資料持ってないんですが…(笑)。6/24からコンテナ開封作業を始め、内部の本格的点検を開始した。6/24の記者会見で、何が見つかってもまだどこ起源だったかは分からないと申し上げた。現在キャッチャーのA室を開けているところで、B室はまだ開けていない。
 今日の発表は、コンテナ内にサンプルと思われるものが確認されたということである。

向井
 配布写真の説明。上の写真。マニピュレーター先端に黒い点が見える。下の写真はコンテナ内を撮影したもので肉眼で見て分かる粒が入っている。まあ、これは地球由来のダストではないかと自分は思っている(笑)。

上野
 今現在、サンプルキャッチャーのA室の中をのぞき込める状態になっている。下の写真はサンプルコンテナの底の部分。

Img0705_002
 微粒子をマニピュレーター先端、石英の針で確認しているところ。背景の筋模様は、サンプルキャッチャー壁面の金属加工跡。キュレーション設備附属の100倍光学顕微鏡で撮影。写真提供:JAXA


Img0705_001
 サンプルコンテナ内部を、キュレーション設備の窓からのぞき込んだところ。内部になにか目に見えるサイズの物質が落ちていることが分かる。写真提供:JAXA


ここから質疑応答

毎日新聞
 複数のサンプルらしきものが確認されたということだが、肉眼で見えるものがいくつ、顕微鏡サイズがいくつといえる段階だろうか。

向井
 まあ見え方、数え方によりますが、肉眼で見えるのは下の写真の通りで10個ぐらいでしょうか。キュレーション設備は100倍の光学顕微鏡を備えている。顕微鏡サイズのものは今のところ2つ見つかっている。帯電させた石英の針を近づけていって、静電気で動くのが粒子、動かないのはキャッチャー壁面の傷という判別方法で、微粒子を探している。

日経新聞
 顕微鏡写真に写った微粒子はどの程度の大きさか。肉眼で見えているのはどの程度の大きさか。サンプルは、サンプル・キャッチャーのみ入るのではなかったのか。

向井
 顕微鏡写真のほうはまあ10μm程度です。サンプルコンテナ内の目に見えるものは同じ写真に写っているM3のボルトと比較するとほぼ1mmぐらいだろうか。

川口
 サンプルキャッチャーからサンプラーホーンを引き抜いた時に、こぼれてサンプルがコンテナの中に入りうる。サンプルキャッチャー以外のところに入る可能性はゼロではないです。

日本放送
 粒子の形状はまだわかっていないのか。

向井
 今出している写真が最高の倍率で撮影したもので、これ以上の情報はまだない。

東京新聞
 微粒子2つということだが、事前にはもう少し入っていると予想していたのか。微粒子サイズとの比較のために、マニピュレーターの針先端の丸みを知りたい。

向井
 数の予想は難しい。きちんと予想を立てたわけではないし、まだ見つかるかも知れない。現在見つかっているのがすべてではないのは明らか。数からすれば、私がある仮定ををおいて試算した結果では、地球由来のものが最低でも100個はあるという結果になる。

上野
 先端のまるみは1μm以下。写真には写っていません。

共同通信
 A室というのは1回目のタッチダウンか2回目か。

川口
 2回目です。

共同通信 
 A室を精査してからB室に移るのか。

上野
 そうだ。

共同通信
 微粒子を採取したといっていいか。

向井
 カタログ化したという意味ではまだ「採取した」とは言えない。丸い曲率を持つサンプルキャッチャーの壁面に光学顕微鏡のピントを合わせるのはとても大変。このため、調べる方法も試行錯誤する必要があるだろう。

朝日新聞 
 サンプルキャッチャー内のどの程度の範囲を調べて微粒子2個だったのか。また肉眼で見える「地上由来と思われる粒子」は実際には何の可能性があるのか。

向井
 まだサンプルキャッチャー内のごく一部を見ただけである。

朝日新聞 
 当初刷毛で掻き出すということも言っていたが。

向井 
 ざっくざっく入っておったらね。そうするつもりでした。今後は(刷毛を使った操作を)やるかも知れない。衛星組み立てクリーンルームの清浄度はクラス10万。1立方インチに微粒子10万個というもの。打ち上げ直前のロケット衛星フェアリング内は清浄空気を循環させるがこの空気もクラス10万。一方、打ち上げ時に衛星を覆っていたフェアリングはクリーンルームではない通常の環境で組み立てているので内面になにかがついていた可能性はある。

朝日新聞 
 写真を見ると、肉眼で見える物質はかなり大きいが、そんな大きなものがクリーンルーム内に存在しうるのか。

向井
 フェアリングが宇宙で開く時、ぱっとダストが飛び散る。それなりの大きさのものがあるかもしれない。

毎日新聞
 なにか地球由来とする積極的理由でもあるのか。

向井
 コスミックダストの研究者が、高空で航空機を使って採集したコスミックダストとはちょっとちがうね、と言っている。

上野
 可能性があるとはいえ、キャッチャーからコンテナ内にこぼれる可能性は低い

日本テレビ 
 今は地球由来・イトカワ由来どちらともいえないということなのだろうか。

向井
 今は断定できない。ただ、「ちょっとコスミックダストとは違うね」という…まあ感触ですね…それがあります。

読売新聞 
 今後の予定は。

向井
 最終的には回収できたサンプルはすべて分析にかけられる。
 打ち上げ前の想定では、まず代表的なサンプルの初期分析を行う。使う量はサンプルの10%ほど。次にNASAに10%を渡す。40%は国際的に公募して分析する。残りは将来の技術進歩のために保管する。…とまあこのように考えていた。
 しかし実際にはB室の中も見て、全体の量にもよるが、そのうちのいくぶんかを初期分析に回す。全体でどれだけの量が採取できるかによるな。これは世界中の科学者の分析意欲をそそるサンプルであることを証明するため。

読売新聞
 まだ分からない部分がたくさんあるとは思うが、微粒子が見つかったことで現状をどう受け止めているか。思いをきかせてもらいたい。

川口
 何はともあれからっぽでなかったことは大変重要。空っぽでなかったということはイトカワ由来の物質である可能性を残したということで素直に喜びたい。一喜一憂する事じゃないです。予断を持っては行けないし、過剰な期待もしてはいけない。きちんと分析していかねばと思う。

毎日新聞
 今見えているものから地球由来のものを排除するスクリーニングにはどれぐらいの期間がかかるのか。

向井 
 先ほど申し上げたように、なかなか数字を出すのは難しいですが、皆待っているので何年も時間をかけることはできないだろう。しかし一ヶ月そこらで結果がさっとでるかというと…まあ二、三ヶ月でしょうか。もしも宇宙物質があれば大変大きな意味があるので、慎重にやらなくてはいけない。


フリーランス青木
 前回発表があった採取ガスの分析は進んでいるのか。今回見つかった物質について、イトカワではなく宇宙空間を航行中に物質が入り込んだ可能性はないか。はやぶさは途中推進剤漏れを起こしているが、推進剤由来の物質である可能性はないか。また、比較用の内之浦の標本の分析は進んでいるのか。

向井 
 ガス分析はまだだ。惑星間空間のダストは排除できないが確率は非常に低い。推進剤漏れ由来の物質という可能性はまずないと思う。内之浦のダスト標本は分析している。

青木
 今日写真の出てきたサンプルは、まだ地上のダストとの比較はしていないのか。

向井
 していない。

青木
 内之浦のダスト標本は何種類ぐらい分析しているのか。

向井
 手元に資料はないけれども、確か10種類ぐらい。はやぶさは5月打ち上げで、風向からして内之浦に桜島の火山灰が到達している可能性は低いのだが、念のため分析している。

NHK
 初期分析に回ったサンプルは、イトカワ由来の確度の高いものを選び出すのか。

向井
 そうしたいところだが、初期分析とはすなわちイトカワ由来かどうかを調べる作業でもあるわけです。事前の電子顕微鏡観察で、ある程度イトカワ由来かどうかの確度を上げることはできるだろう。しかし電子顕微鏡は電子でスキャンするので、サンプルを変質させる恐れがある。今、サンプルに影響を及ぼさない電子顕微鏡観察のパラメーターを模索している。
 まあ初期分析には80%ぐらいはイトカワからかなあというサンプルを選びたい。この80%というのは私の感触で、数字が一人歩きするとまずい。明らかに地球由来だと分かるものは初期分析には回さないということです。

日本放送
 これまでの作業ペースから見て、作業は順調なのか。サンプルのパターンは何種類ぐらいなのか。今の作業を登山にたとえると何合目ぐらいか。

向井
 作業はおおむね予定通り。粒子か壁面の傷かということの区別はかなり大変。地上のサンプルパターンは手元に資料がないので…だいたい10種類ぐらいでしたか。走査電子顕微鏡にかけることは1日10個ぐらいのサンプルを調べることはできるとは思う。山でたとえればまだまだふもとです。

川口
 人によって感触の数字は違うと思うが、顕微鏡で微粒子を探すのは非常に大変な作業です。この10日間に2個しか見つかったわけですから、例えば40個のサンプルが見つかるとして、かかる時間は200日ということになる。それらを全部分析するとなるとさらに大変だ。
 最初に見つかったサンプルがイトカワ由来のものの可能性が高いかどうかは全く分からない。だから最初にサンプルを可能な限り沢山カタログ化してイトカワ由来の物を選ぶ確率を高めるわけだ。

産経
サンプルキャッチャー内で見つかった微粒子が2個ということか。

向井
そうだ。

青木
 カプセルと閉じるまで大分時間が経っていたがその間になにかが入った可能性がないか。

川口
 ずっと後で閉じたのは再突入カプセル。サンプルキャッチャーはサンプル採取後1日程度で閉めている。サンプルキャッチャーの回転筒はきっちり気密がとれているわけではない、大量にサンプルが採取できた場合、サンプルがかみこまないようにわざと回転筒はゆるく作ってある。

不明
初期分析に移れるのは8月以降ということだが、その通りか。

向井 
 A室がこんな現状で、まだまだ調べねばならないので、8月に初期分析開始というのは自分としては考えられない。9月末か10月の頭に初期分析に入れないとさすがに具合が悪いかと思っている。一部採取できたものを先行分析するかも知れない。重要なことは地球由来の物質であろうと宇宙由来であろうと、なくさないこと。それを一番気にしている。

毎日新聞
 もしもイトカワ由来のものが入っているとしたら、どこに入っている可能性が高いのか。

川口
 難しいですねえ。お答えできません。どこでも入っていて欲しいです。

朝日新聞
 B室を空けるのはいつごろになるか。

向井
 見通しはありません。

東京新聞
 確認ができるのは初期分析の後なのか。

向井
 電子顕微鏡観察で、多少はイトカワ由来の可能性が高いものを選ぶことができるだろうけれども、完全な確認には同位体分析までやらねばわからないので…もし確認できたら論文を出さねばならないので、論文掲載と同時にJAXA/NASA同時発表ということになると思う。早ければ、今年の後半といったところかな。

以上です。

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Comments

中の確認はなかなか大変で地道な作業ですね。
数百~数千のかけらを顕微鏡と針でひとつずつ確認、収集した後で
成分分析ですか。

当初より3年余分に待ったんですからあとちょっと気長に待ちましょうよ
ということなんでしょうね。

Posted by: Fujix | 2010.07.07 at 09:32 PM

最後のJAXA/NASAで同時発表というのはどうしてなんでしょう?
宇宙塵のデータがないからNASAに協力仰ぐ必要があって共同研究にしたんでしょうか?

Posted by: Tombaugh | 2010.07.07 at 10:24 PM

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