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2013.05.07

bipod-ant:Frogとは対照的な折り畳み自転車

Antmain


 昨年末のコミケット83では同人誌まで出しているので、なにを今更なのだが、実は2年程前にBD-Frogに加えて、もう一台の折り畳み自転車を入手した。
 2010年の末頃、ネットをさ迷っていて、一台の中古折り畳み自転車が売りに出ているのに気がついた。スマートコグというメーカーのbipod-antだ。この自転車が高性能だということは、以前サイクルフェスタで試乗して知っていた。
 そして、なによりもアコーディオンのように縮む独特の折り畳み機構はメカニカルな意味で大変魅力的だった。最初のロットが完売した後、再生産が行われず、新品は市場から姿を消していた。
 中古品は、値段もこなれており、大変リーズナブルだった。結論は書くまでもない。私は、誘惑に抗しきれず買ってしまった。

 antの設計は実に良く出来ている。至れり尽くせりで、どこにも不満を感じさせない。グリップをエルゴンに、サドルを手持ちの細身のものに変えただけだが、これで十分だ。
 BD-Frogは、設計のあちこちに詰めの甘い部分がある。それがフレームの素性の良さと相まって「これはもっと良い自転車になる」とばかりに改造の意欲をかき立てるのだが。antは、そんな気を起こさせない。製品として隅々まで完成しきっていて、乗り手に不満を感じさせないのだ。その意味では、日本のものつくりの最良の部分が結晶したような自転車と言える。ちなみにスマートコグは大阪の設計会社である(生産は台湾)。

Antfolding 独特の折り畳み機構は、全体でヒンジが14ヵ所もあるという特異なものだ。通常、折り畳み自転車は、いかに少ないヒンジで小さく折りたためるかが設計上の課題だ。DAHONはヒンジ1つの2つ折りだし、R&Mは前後サスペンションのピボットがそのまま折り畳みヒンジになる構造にして、折り畳み専用ヒンジをなくしている。
 antの場合、アコーディオンのように平たく折り畳みたいという要求が先にあり、そのためには14ヵ所ものヒンジが発生することを厭わなかったということのようだ。
 平たく畳めるので、畳んだ状態でのハンドリングは良好だ。そのままスーパーや喫茶店に持ち込んでも、文句は言われない。おそらくはベビーカーと同じように見えるのだろう。
Antfoldingpoint 標準で付いてくる折り畳み時の移動用コロも効果的だ。実はantを買うにあたって「折り畳み自転車は、軽量化を徹底して持ち上げて歩いたほうがいいのか。それとも軽量化はほどほどにしてコロを装着し、転がして歩いたほうがいいのか」を自分で試してみたいという意図も存在した。この件については、折り畳み自転車愛好家の中でも意見が分かれている。輪行バッグを肩に提げて移動したほうが機動性が高いことは間違いない。しかし一方で、コロで転がした方が楽だということも事実である。
 やってみた結果はといえば「一長一短」。当たり前といえば当たり前なのだが、どちらも向き不向きがあって絶対的に有利ということはない。また、持ち運びが楽かどうかは、折り畳みの手間や折り畳み形態にも左右され、製品全体で考えないといけない。その自転車が一貫した設計思想を持っているかどうかが使い勝手を左右する。
 antは見事なまでに一貫した設計思想を持つ折り畳み自転車だ。アコーディオンのように平べったく折り畳むということを至上命題にして、設計上発生する困難をすべて受け止め、解決して製品化している。その潔さにはほれぼれする。
 一方、問題点もいくつか存在する。まず12.5kgもある重量。コロで転がせるのであまり気にはならないが、それでも手に持つとずしっとくる。
 そして14インチのタイヤは、12インチと同様に選択肢がほとんどない。オリジナルでは台湾のDUROという会社が製造した14×1.5のスリックのタイヤを履いている。が、これが抵抗の大きそうなロードノイズを発生する。なにかもっといいタイヤはないかなと探しているが、今のところ見つからずにいる。
 同じスマートコグのbipod mintという車種は同じ14インチでも1.25インチの細身のタイヤを装着している。antも1.25インチにしたら若干走行抵抗は減るかな、と思うのだが、フレームに無理な負荷がかかりそうな気がするのでタイヤ交換には至っていない。

Antsocks1 antは、その特異な折り畳み形状のため、通常の輪行バッグが使えない。スマートコグは専用の「アントソックス」という輪行袋を販売していたが、ホームページによると品切れだ。入手不可能と思い、自分で縫製することを考えていたら、コミケで「普通に売ってますよ」と売っている自転車店を教えてもらい、入手することができた。
Antsocks2 このアントソックスがまた良く出来ている。antにぴったりの寸法で、しかも小さい。かぶせた状態でコロが出るので、押して歩くことができるし、畳めばステアリングヘッドに取り付け可能という至れり尽くせりっぷりだ。Frogの純正バッグが「Frogも入る普通のバッグ」であるのに比べると、アントソックスはantに最適設計されたant専用備品であって、トータルのシステムとしての使い勝手は雲泥の差がある。
Antsockssize ただし、12.5kgの重量は、色々軽量化を進めたFrogと比べると肩に食い込む。軽量化するにしても、全体がぎりぎりまで煮詰めた設計になっているので、そもそも交換可能な部位が少ない。さらには性能的にもデザイン的にも全体バランスが崩れそうで、部品を交換するのもためらわれる。
 また、アコーディオン方式の折り畳みで小さくなるとはいえ、もとから小さく設計されたFrogに比べるとやはりかさばる。
 ともあれ、輪行バッグが入手できたので、これからあちこちに行ってみようと思っている。

Antlast

 こんな良く出来たantだが、現在新品を入手することはできない。色々うわさはある。コストダウンのために製造工場を台湾から中国に移そうとしたら、中国の工場が必要な精度で部品を加工できなかっただとか、加工コスト高騰で、とてもじゃないがリーズナブルな価格では出せなくなっただとか。が、うわさでしかない。スマートコグが正式コメントを出していないので、真実は分からない。
 ただ、中国のBtoBサイトアリババで、折り畳み自転車を検索しても、antの模造品が出てこないというのは、一つのヒントになるかも知れない。ここを見ると、山のようにA-BikeやらSTRIDAの模造品は出ている。モバイキーにいたっては、電動化した模造品まで出ている始末だが、antの模造品はない。スマートコグの他の製品も模造品はないので、図面が流出していないからかも知れない。あるいは、現状の中国自転車産業では手を出せない高精度を必要とする設計なのかもしれない……このあたりの勘ぐりは、想像を楽しむだけに留めておくべきだろう。

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