2008.05.09

かぐやハイビジョン映像のネット公開にあたって

 もう皆さんご存知だろうが、NHKが月探査機「かぐや」の取得した「地球の入り」「地球の出」のハイビジョン画像を、ネットで公開した。

かぐやアーカイブ アースウォッチャー

 今回公開されたのは、1280×720ピクセルの画像だ。オリジナルの1920×1080ピクセルではないのが残念だが、現在のネットの伝送容量と端末となるパソコンディスプレイの解像度を考えると妥当なところだろう。
 もちろん、伝送容量もパソコンの能力もムーアの法則に従って伸びていくものだから、NHKには1年後程度をメドに、フル解像度の画像を公開するよう望みたい。

 この件については、MIAUが、NHKに質問状を出し、それに対する回答が来たり、といくつかの動きが続いていた。私も、記事を書いている(「ハイビジョン月面画像を公開しなかったNHK」「日本ではダメなのにカナダではネットで観られる「かぐや」ハイビジョン画像」)。

 やっと、事態は良い方向に向かったと考えて良いだろう。

 今回の件に関して私は、記事を書いた際の感触から、NHK内部にも状況を正確に理解し、事態を打開しようとしている人たちがいることを感じていた。

 昨今の映像コンテンツの権利を巡るニュースをフォローしていると、なかなか「公開すべきコンテンツは公開すべき」という原則が、組織の中では通りにくくなっているだろうことが見て取れる。

 公開にまで持っていった「NHKの中の人」、本当にご苦労さまでした。MIAUもナイスプレーだったと思う。

 そして、公開に至るまでのNHK内部の手続きにおいて、あれこれと疑問を投げかけ、牽制したであろう「別の中の人」へ。

 これがあるべき姿なのですよ。最初からこうしていれば、「親方NHKは、あれこれ言われてから仕方なくやったんだろ」などと言われず、「さすがNHKは情報のあるべき未来を見据えている」と評価されたはずなのですよ。

 今回の件は、自分たちの収益の元となるハイクオリティのHDTV画像を、生データでネットに掲載してしまうことに対するためらいが、NHKにあったのだろう。
 このロジックは、もちろん通用しない。「地球の出/入り」の画像は、国民の税金で開発された探査機に搭載したNHKのカメラで取得された。NHKが独力で取得したものではない以上、探査機に対する出資者である日本国民、さらには全世界の人々への、ネットを使ったハイライト部分の公開は当然である。


 この問題を広く捉えるならば、ネットワークによって「デジタル映像コンテンツ」の流通はどう変わっていくか、という問題だ。

 音楽の世界では、ネット流通において違法コピーをどう避けるかという問題に対して、すでにアメリカの状況によって答えが出ている。「テクノロジーによる過度のコピー制限をしない」ということだ。

 まずiTunes Music Store。その成功に理由のひとつには、緩いデジタル著作権管理(DRM)がある。

 さらにiTMSでは、iTunes Plusという高ビットレート、DRMなしのサービスを行っているし、アメリカではAmazonがMP3フォーマット/320kbps、DRMなしの音楽ダウンロード販売を開始し、売り上げを伸ばしている。

 DRMは不要。それで十分ビジネスは回るというのがすでに実績として証明されているのだ。着うたなどで、DRMにしがみついている日本の既存音楽業界はいずれ衰退するだろう——私はそうみている。

 私は、この流れは動画像でも同じではないかと思う。コピーワンスもダビング10も、従来のビジネススキームに固執するあまり、にっちもさっちもいかなくなっているのではないだろうか。

 すでに台湾発で、コピーワンスを無効にする「フリーオ」というデジタル放送チューナーが出回っている。コピーワンスはテクノロジーの産物であり、後から来るテクノロジーに破られる——これは自明の理だ。だからといってこのようなチューナーの所持や利用を違法化したとしても、それは映像産業全体の活力を奪うだけのことだろう。

 まあね、例えばゴールデンタイムのテレビ各局、なかんずく民放各社が、コンテンツと呼ぶに値する、何度もの視聴に耐える番組を制作しているかといえば、私はノーだと思うのだよな。
 そしてこれは、本がデジタル化される近い将来、自分にも関係してくる問題である。「お前は本当に、意味のある情報を生産しているのかね?」と。

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2008.04.25

宣伝:4月28日月曜日、ロフトプラスワンのイベントに出演します

 「やりましょうか」というプロデューサー斎藤さんの一言で決まりました。

 先般、地球を離れて旅立ったA・C・クラークについて、百戦錬磨のSF成分全開の面子が語り倒します。多分私は聴き手に回ることになるでしょう。

宇宙作家クラブpresents
「アーサー・C・クラークを語る」
『2001年宇宙の旅』など数多くの作品で知られ、2008年3月19日に多くの人に惜しまれながら永眠したSF作家の巨匠、アーサー・C・クラークを追悼し、その多大な偉業を振り返る。

【出演】江藤巌(航空宇宙評論家)、金子隆一(サイエンス・ライター)、鹿野司(サイエンス・ライター)、松浦晋也(ノンフィクション・ライター)、他

4月28日月曜日
Open 18:30 /Start 19:30
¥1000(飲食別)当日券のみ

場所:ロフトプラスワン(新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2 03-3205-6864、地図)

参考記事:いずれ星の世界へ

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2008.03.19

いずれ星の世界へ

  1. 高名だが年配の科学者が可能であると言った場合、その主張はほぼ間違いない。また不可能であると言った場合には、その主張はまず間違っている。
  2. 可能性の限界を測る唯一の方法は、不可能であるとされることまでやってみることである。
  3. 充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。

      ——クラークの3法則——

 アーサー・C・クラークの訃報を聞く。享年90歳。小松左京と並んで自分に非常に大きな影響を与えた作家。

 いつのころからか、この人は死なないのではないかと思いこんでいた。そのうちしっぽが生えて2つに裂けて、オーバーロードと化すんじゃないかと。

 確か、2020年だったか40年だったかに、自分が月面であれこれしているというドキュメンタリーも書いていたはず。


 クラークとの出会いは小学5年生の夏休み。母方の祖父母の家に叔父が残していた銀背のハヤカワSFシリーズの「SFマガジンベストNo.1」に収録されていた。

 「太陽系最後の日」。クラークが作家デビューを飾った短編だ。

 太陽が膨張して最後の日を迎えた地球を探検する異星人達。地球人を捜すがどこにもいない。地球人はどこだ、灼熱の太陽から逃れて地下に潜ってしまったのか。
 そして地球人を捜し回る彼らが見た驚愕のラスト。

 処女作には作家のすべてが現れるというが、「太陽系最後の日」にも後のクラークを特徴付けるすべてがはいっている。正確な物理学的描写、壮大なヴィジョン、切れの良いアイデア、宇宙へのあこがれ、そして底抜けの楽天主義。

 叔父の残した「SFマガジン」バックナンバーで「木星第五衛星」を読んだのも同じ夏だったはずだ(今調べたら1964年10月号だった。東京オリンピックの頃の号だ)。こちらも私を深く魅了したが、そこで描かれた軌道運動を理解したのは大分後のことだった。

 本格的にクラークの作品を読み始めたのは、中学に入ってからだ。創元推理文庫の「地球幼年期の終わり」は何度読み返したかわからない。SFマガジンで「宇宙のランデブー」の連載が始まったのは中学2年の時だ。市立図書館に入っていたSFマガジンで毎回興奮しつつ読んだ。そこからはもうなんでもありだ。大学に入ってからはクラークの本とあればなんでも買って読んだ。

 人によって、薦める作品は違うだろう。「地球幼年期の終わり」もいいし、「都市と星」も「渇きの砂」も、「海底牧場」も「宇宙島に行く少年」もいい。

 でも私は彼が1970年代に発表した3つの長編が、一番印象に残っている。

「宇宙のランデブー」「地球帝国」そして「楽園の泉」。

 三重のエアロック。幼なじみとのペントミノの思い出。聖地に飛び来る蝶——読んでいない人にはなんのことかと思われるかもしれないが、ああ、思い出すと涙が出てくるではないか。

 彼ぐらいになると、彼の肉体が彼なのか、彼の残した情報が彼自身なのか判然としなくなる。

 だから、いかなる弔辞も無用なのだろう。クラークという名のミームはこれからも世間を巡る。

 そしていずれ星の世界へも。

 冬樹蛉さんによると、SFには茶筒SFというサブジャンルが存在するそうだが、その元祖。「圧倒的に巨大な未知がただそこにあるというだけで読者を魅了してしまう類のSF」というのが定義である。

 本作品の“茶筒”とは、はるか宇宙から太陽系目指して飛んでくる異星人の宇宙船のこと。円筒形をしているのだ。

 やってきた巨大茶筒宇宙船に、人類は探検隊を送り込む。どうやって中に入るか、内部はどうなっているのか、異星人とは接触できるのか——スリリングな状況とはうらはらに、ストーリーは淡々と進む。それがどういうわけか面白い。無茶苦茶面白い。

 後にクラークはジェントリー・リーとの合作で続編を3編書くがそちらは大して面白くなかった。「宇宙のランデブー」は、これ一冊で十分である。

 え?「地球帝国」は絶版なの?!なんてことだ。

 遙かな未来、土星の衛星タイタンの権力者が行う地球旅行を淡々と追っていくという一見単純な物語だが、しみじみと面白い、クラークらしさに溢れる作品。

 「軌道エレベーターを建設する」、ただそれだけの作品なのだけれど、この面白さをどう形容すればいいのだろう。

 軌道エレベーターとは地上と静止軌道を結ぶ長大な「宇宙と地上を結ぶエレベーター」のこと。途方もない巨大建築物だが、原理的には建設可能であることが検証されている。クラークは一人の技術者が人生をかけて軌道エレベーターを建設する様を淡々と描いていく。

 同時期、チャールズ・シェフィールドが同じく軌道エレベーターの建設をテーマとした「星ぼしに架ける橋」(ハヤカワSF文庫)を出版した。ストーリーとしてはこちらのほうが起伏に富んでいるのだけれど、面白さも完成度も圧倒的に「楽園の泉」のほうが上だと思う。

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2008.01.16

はやぶさ2、ASIが正式検討を開始

 14日から今日までの日程で、沖縄で国際始原天体探査ワーキンググループ(IPEWG)という会合が開催されている。小惑星探査の世界的な連絡組織の立ち上げだ。JAXA/JSPECが、この分野で国際的な主導権を持つ国際協力をリードしていこうとしている現れである。

 取材に行きたかったが、どうしても行けなかった。それでも現地から情報はぼつぼつと入ってくる。

 イタリア宇宙機関(ASI)は、「はやぶさ2」打ち上げにベガロケットを使う検討を正式にはじめたことを公表したそうだ。

 さあ、面白くなってきた。

 見えてきたのは、「はやぶさ」が国際的にいかに高く評価されているかということだ。なぜ高く評価されているのかといえば、それまで誰もやったことがなかったこと、しかも大きな意味のあることを、独力で成し遂げたからだ。

 このことは、今後の日本の宇宙科学、それのみならず宇宙開発全体の指針になるのではないか。

  • 誰もやっていないことで
  • 本当に意味のあることを見抜き(はやぶさの場合は始原天体としての小惑星の探査。なかんずくサンプルリターン)
  • 持てる技術とリソースの範囲内で実現可能な計画にまとめあげ
  • それを独力で成し遂げること

 この観点からして、JAXAの次の中期計画はどう評価できるだろうか。「かぐや2」は? 準天頂衛星は? 防災衛星は? GXロケットは? HTVは?  H-IIBは?

「それができたら、日本と是非とも協力したい。ロケットぐらい提供したっていい」と外国に思わせるだけのミッションになっているだろうか。

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2008.01.08

はやぶさ2計画は生きている

 相模原の宇宙科学研究本部に来ている。新年恒例の宇宙科学シンポジウム出席のためだ。
 会場は机をはずして椅子だけが一杯に並んでいる。そこに人が一杯。15年ほど前の、椅子も机も入って、しかも結構空いていた科学衛星シンポジウム(宇宙科学シンポジウムの前身)を知っているだけに、「ずいぶんと遠くまで来たもんだなあ」という感慨を禁じ得ない。

 午前中は現在運用中のプロジェクトに関する発表。最後に川口淳一郎教授が「はやぶさ」の発表をした。

 おそらくこのページを見に来るネットユーザーの誰しもが知りたがっている話を。

 後継計画「はやぶさ2」は生きている。イタリア宇宙機関(ASI)の長官から立川JAXA理事長に宛てて「共同で計画を進めたい」旨の書簡が届き、立川理事長が「前向きに検討しましょう」という返事を出したとのこと。探査機を日本が、イタリアが「ベガ」ロケットを提供するという形式を考えている。このほかNASAとも協力の検討を進めているそうだ。

 ただし、JAXA内部でのゴーサインはまだだそうだ。川口教授が「私は理事長ではありませんから」と、言葉を濁すシーンもあった。

 結局のところ、この件に関するJAXAの内情は「既存計画で手一杯、新規計画向けの金なんかない」に尽きる。さっさとつまらん失敗プロジェクトをやめて、その分を「はやぶさ2」につければいいのに、というのは無責任な部外者の言い分であって、当事者としてはなんとかして既存計画を成功させる、ないしは成功ということにして終わらせる必要に迫られている。そして旧三機関の力関係というのはJAXA内に厳然と存在しており、ISASの立場は決して強くない。

 その中で、川口教授以下月惑星探査推進センター(JSPEC)は、天上の「はやぶさ」と同じぐらい、いやそれ以上に粘り腰を発揮している。「海外からロケット取ってこい」という、ほとんど昔話の主人公が遭遇するような無理無体に対して、ロケットを取ってこれそうな情勢を作り上げつつあるのだ。

 私思うに、昨年度の予算折衝で、たった5000万円ではあるが「次の小惑星探査機」の名目で予算がとれたことはとても大きな意味があった。予算というのは一度名目が立つとなかなかつぶせない。2006年の段階で、予算項目をとれたことで、JSPECは計画継続に向けて粘る足がかりを得た。

 そう考えると、一般からのあちこちへのメールは決して無駄ではなかったのだろう。

「2011年か2012年には打ち上げたい。その後はしばらく(おそらくは目標天体の軌道の関係で)打ち上げのチャンスがなくなる。2003年(はやぶさ打ち上げ)の次が15年空くというのでは、プログラム的探査の意味がなくなってしまう。15年といえば人が働く期間の半分ですよ」と、川口教授は言っていた。

 昔話なら、主人公はいくつもの無理難題を知恵で切り抜け、最後は「幸せに暮らしましたとさ」で終わる。もちろん小惑星探査はそんなわけにはいかない。予算が付いてゴーがかかっても、開発、打ち上げ、運用と、次の難関が続くのだ。


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2007.12.27

「かぐや」ハイビジョン画像で、MiAUに動きあり

 著作権に関連して。

 ここと、nikkeibp.netで書いてきた、月探査機「かぐや」のハイビジョン月面画像の事。

 ネット著作権について積極的な活動をしているMiAU(インターネット先進ユーザーの会)が、動き出した。

【MiAUの眼光紙背】第7回 その映像は誰のため?〜ネットで視聴できない月の高画質映像

 MiAUは、なんらかの形でネットユーザーの声をNHKに伝えられないかと考えている。

 この件でMiAUの方とも会って話をしたが、「NHKがそう簡単に態度を変えるとも思えない」というところで意見は一致した。

 結局NHKがよほどあわてる事態にならなければ、今の態度を押し通すだろう。NHKがあわてるとしたら、政治家が動いて次年度の予算が国会を通らなくなるということぐらいしかない。そうなれば、NHKの政治部記者出身の会長秘書あたりが、「ご説明」と称して永田町界隈の議員事務所を大あわてで飛び回ることになるだろう。

 が、ネットの民意で政治家が動くというのも、現状考えにくい。MiAUとしては、とにかくできることやって、NHKの現状をより広く広報しようという作戦のようだ。

 もっともこんなことをやっていれば、NHKは早晩国民の各階層から総スカンを食うことは間違いない。

 JAXAは、この件に関してはNHKと共犯とも言える部分がある。それでも内部では「広報的にハイビジョンカメラが意味あることは分かった。民生用HDTVカメラがこれだけ安くなっている今、次の機会があってもNHKと付き合いたくない」などという声も聞こえてきている。当然だろう。

 「どうして、あそこ(NHK)は、ああ頑なかねえ…」という「かぐや」HDTV搭載の震源地の一人である某先生の嘆きも聞こえてきていたりして。

 今回の件はNHKにも損になっているわけだが、先日は「クローズアップ現代」のオープニングに使ったハイビジョン画像に「JAXA/NHK」のキャプションが写り込んでいるという事態も起きた。
 自分のところの番組でも、JAXAと結んだ囲い込みのための協定のためにキャプションを入れねばならないわけだ。入れなければより画面がすっきりするというのに。

 …と思っていたら、かつてNHKで働いた経験者から「いや、横のつながりが悪くて、『クローズアップ現代』の関係者が、キャプションなしのハイビジョン素材を手に入れられなかったのかも知れませんよ。とにかくNHKは組織内の横のつながりが悪いですから」と指摘された。

 なら、なおさら悪いわなあ。

 もっとも、MiAUに関しては、その後ネットの著作権画像のダウンロード違法化という重大問題が発生したので、どこまできちんと動いてくれるかは今後の状況次第だ。

 これまた重要な話であるので、近日中に書くことにする。私のスタンスは、「違法サイトのダウンロード違法化に反対」である。

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2007.11.24

はやぶさの「祈り」

Mezamenasai

 辛気くさい話ばかりでもいけないので。

 11月23日から、「祈り」が公開された。ネットでも観ることができる。

  • 「はやぶさ物語」:プロジェクトチームインタビューも素晴らしい。左サイドバーから「祈り」を見ることができる。

 CGで再現した小惑星探査機「はやぶさ」の探査の様子に甲斐恵美子さんらの「はやぶさ」に寄せたジャズをかぶせた番組だ。

Ririku

 記者会見では、「癒し系」といい、報道でもそのあたりが強調されていたが、それ以上に、「はやぶさ」が小惑星イトカワでなにをしたかを、主観として追体験できる出来となっている。

 この「主観として」というのが重要。自分がはやぶさになった気分になれるわけだ。

 CG再現映像は、イトカワ近傍でのはやぶさの動きを忠実に再現したもの。私は「スラスターの噴射回数まで合わせた」と聞いている。演出は主に時間軸の圧縮で行われている。実際のタッチダウンは一晩かかっているわけで、そのままでは映画の尺に入らない。

 ただし、CG映像制作後も、データの解析は進んでおり、現在ではタッチダウン時の挙動が、より明確になっているとのこと。その分は「祈り」の画像には反映されていない。

Descend

 「祈り」は各地の科学館などでも上映されている。上映場所はこちら

 また、「祈り」は来年春にはDVD化される。DVDには「祈り」に加えてもう一本の科学映画「『はやぶさ』の大いなる挑戦!! 〜世界初の小惑星サンプルリターン〜」、を収録。資料を収めたCD-ROMも附属する。

 以下は11月19日に開催された「祈り」に関する記者会見の席で、「はやぶさ」イオンエンジン担当の國中均教授から聞いた、「はやぶさ」現状のあれこれ。

 「はやぶさ」は現在、第一期軌道変換の1700m/sを達成し、スピンモードに入れて冬眠中。次の軌道変更は2009年2月から。400m/sの軌道変更を行う。詳細については公式サイト参考のこと。

  • 行きは、はやぶさをイトカワにランデブーさせる必要があり、はやぶさの位置と速度の両方をイトカワに合わせなければならなかった。帰りは、はやぶさと地球の位置を合わせればいいので、その分楽ではある(注:速度の差は、採取サンプルを入れた再突入カプセルが大気圏で減速することにより吸収する)。
  • これまでに実施した1700m/sの速度変更は、軌道の近日点付近で行う必要のあるものだった。残る400m/sは遠日点で行うべき速度変更。
  • 1つだけ残っているリアクションホイールは、これまでの帰還行程でも何度か止めている。冬眠中もヒーターでホイール付近の温度を一定に維持しているので、2009年2月の立ち上げで、回転しないということはないだろうと考えている。しかし立ち上げ後にどれだけの期間、正常に動作してくれるかは未知数。
  • 最後のホイールが駄目になった場合に備えて、イオンエンジンの噴射と噴射方向のジンバリングとで、三軸姿勢を維持しつつ必要な軌道変換を行うための検討を開始している。その場合、新たな制御ソフトウエアをはやぶさに送り込む必要があるだろう。はやぶさ遠日点付近にいる限られた時間内に、400m/sの加速を終えることができるかどうかが、かなり難しい問題となる。

 画像は記者会見で配布された、「祈り」のキャプチャー。冒頭、宇宙を漂う「はやぶさ」に女神(ミューズであろう。声は声優の富沢美智恵さん)が「めざめなさい」と呼びかけ、意識(!)を取り戻した「はやぶさ」がイトカワでの冒険を振り返るという構成になっている。

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2007.11.23

月からのハイビジョン画像と公共性

 nikkeibp.netに次のような記事を書いた。

 画像公開からこちら、なんとかフルクオリティの動画像をネットで公開できないものかと色々聞いて回り、働きかけもしたのだが、結果はリンク先にある通りだった。

 本当に、NHKには考えを変えてもらいたいと思う。どう考えてもNHK自身が損をしているのだし、なによりも私は、NHKがネット公開に同意しないことで、日本という国が行っている探査の実績をもっとも分かりやすい形で示す動画像が、世界に届かないことを危惧する。

 受信料で作られたカメラが、税金で打ち上げられた探査機に搭載されて撮影した映像だ。どこに成果を還元すべきかは、明らかだ。

 まず日本国民、それも一人でも多くの国民にであり、次いで画像の人類史的価値(私はこの形容を決しておおげさとは思わない)を考えれば、全世界の人々に、だろう。記事に書いたが、NHKの著作権を尊重しつつできることはいくらでもある。

 高精細テレビ画像に関しては、例の悪評ばかりのコピーワンスをダビングテンに切り替えるということもあり、色々動きにくいようではある。だが、原理原則に拘ってNHKすら損をしているという状況を理解してもらいたいところだ。

 この件に関しては様々な話を聞いたが、ひとつ言えるのは実際に現場で働いている人は例外なくネットで公開できればと考えていたということだ。

 では何が問題なのか。NHKは巨大な組織で、どこでどんな意志決定をしているのか定かでない部分がある。どうも著作権絡みの部分は、NHKの“奥の院”的なところで意志決定が行われているらしく、一介のフリーランスである私は、核心にまでアクセスすることができなかった。

 以下、記事を書き終えた後で、気が付いたことをまとめておく。

 NHKのことを公共放送と呼ぶ。「公共」とは、辞書を引けば「(1)社会全体に関すること。おおやけ。(2)おおやけのものとして共有すること。」とある。

 今回の問題は、テレビ、ラジオといった情報の伝達形態が「公共」から滑り落ちる過程で起きたのではないだろうか。

 公共放送という以上、その内容は全ての人に伝達されなければならない。放送法ではNHKに「あまねく」放送を届ける義務を課している。電波を届ける義務は、「公共」であることの証拠であり、逆にNHKの公共放送としての特権的地位を保証してきた。

 それは同時に、「日本国民にあまねく情報を伝達するメディアはNHKしかない」という事実に基づくものであった。

 インターネット、特にブロードバンド接続の急速な普及によって、この部分が今、急速に崩れているのではないだろうか。

 NHKとしては、自らが公共放送である以上、国民に月からのハイビジョンを伝える最適な手段は自らの番組プログラムによる放送であるというロジックなのだろう。

 しかし、ハイビジョン・テレビの普及がまだまだだ。デジタル放送普及推進協会の速報値を見ると、今年10月末の段階で、地上波デジタル受信機は約2637万台は、BSデジタル放送受信機は約3036万件となっている。日本の総世帯数が4753万世帯であることを考えると、まだ1700万世帯ほどがそもそもハイビジョン放送を受信できない状況にあることがわかる。

 しかも、この数字は受信機の数字であって、ハイビジョンクオリティを映すテレビ受像器の数字ではない。今年5月時点での総務省発表(pdfファイル)によると、地上波デジタル対応受信機の普及率は27.8%。しかしこの中にはチューナー内蔵録画機とやCATVセットトップボックスなどが入っている。はっきり「ハイビジョンクオリティを映すことができるテレビ」であるチューナー内蔵テレビの世帯普及率は19.3%。

 つまり、NHKが「公共放送だから放送で国民に月からのハイビジョン画像を伝える」と言っても、最大でも2割ほどの世帯にしか、ハイビジョンクオリティでは届かないということになる。

 一方、ブロードバンドの世帯普及率はインターネット協会の調べて今年3月において50.9%だ。つまり、放送しても2割の世帯にしか届かない情報が、ネットに出せば5割の世帯に届くのである。

 しかもネットに出せば、日本だけではなく、全世界に届く。NHKは世界の放送局にハイビジョンクオリティの月からの画像を配信したが、ネットに出すならば配信の手間をかけることなく、世界中、それもハイビジョン放送が始まっていない国にまで、画像が届くわけだ。

 これが人気の映画などだったらとんでもないことで、実際動画像共有サイトは、著作権絡みで問題になっているわけだ。しかし、日本国民の受信料と税金とで得られたデータは、せめてそのハイライト部分ぐらいは、日本という国のプレゼンスを世界に示すためにも、なるべく多くの人がアクセスできる形態で公開すべきだろう。

 通信放送融合時代に、「公共放送の公共性」を真剣に考えるなら、ネットへのアップロードよりも良い方法があるとは、私には考えられない。

 多分に、NHKは、放送が唯一の公共放送だった時代の思考法にとらわれているのだろう、というのが私の結論である。

 おそらく、今は「公共」が放送というメディアからネットへと移行していく過程にあるのだろう。その過程で起きたのが、今回のNHKの対応だったのだと思う。

 許認可、利権、収益の3方面から放送業界の実態を解説した良書。この本を読むと、放送業界の表裏が一応理解できる。ちなみに私が以前書いた書評はこちら


 元NHK記者が書いた、NHKと政治の内幕。あまり新しい情報はないが、公共放送というものがどのようにあちこちにぶれつつ現在に至ったかを知るには良い本だ。

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2007.11.17

地球の出小史

Earthrise1

(Photo by JAXA/NHK)
 何度見ても素晴らしい。「かぐや」のハイビジョン画像。 アポロ宇宙船は月の赤道近くを回っただけだ。アメリカの「クレメンタイン」探査機は、月の両極上空を飛んでいるが、月面からの高度100kmまでは降りていない。

 これは月の北極から見た、いまだかつて誰も見たことのない風景だ。

 「CGみたいだ」「嘘くさい」という声もある。私達は空気のある地球上で遠近を感じ取るように進化し、適応してきた。私達が嘘くさいと感じるのは、宇宙で撮影された証しだ。

Mifune_moon この19世紀的に「嘘くさくない」画像は、1931年(昭和6年)に三田光一という自称超能力者が念写した月の裏側だ(画像は検索で見つけてきた)。念写、すなわち写真乾板にえいやとばかりに念を込めて写し取ったものだ。…ということになっている。

 日本の超能力研究の先駆者である福来友吉のアドバイスで、「念写以外では見ることができないもの」ということで月の裏側を写したのだという。ところが月の裏側が本当はどうなっているか分からなかった。つまりこの念写された映像が本物かどうか、誰も確認できなかった。念写という能力の実在も確認できなかったのである。

Luna3_2  時代は下って1959年10月、ソ連の探査機ルナ3号が、月の裏側を通過し、17枚の写真を送ってくることに成功した。ルナ3号にはフィルムカメラが搭載されていた。機内でフィルムを現像し、それをファクシミリ伝送した。具体的にどんな装置だったのか興味を引かれるところではある(無重力状態で、液体を扱うのはかなり難しい。現像はどうやったのだろうか)。

 ルナ3号の画像により、三田光一の念写がウソであることが明らかになった——と、私などは思うのだが、トンデモ系の本には、「ルナ3号の映像により三田の念写が真実であることが明らかになった」などと書いてあるらしい。

 まこと、人間は目の前のものをあるがままに見るのではなく、見たいものを見いだしてしまう困った生き物である。

Apollo8_earthrise_4

 そして、この歴史的写真が来る。1968年12月、アポロ8号が撮影した「地球の出」の写真だ(Photo by NASA)。荒涼たる月面と、水が滴りそうな青い地球との対比は、衝撃的だった。人類の地球に対する認識は、この写真以前とこの写真以降に分けられるといっても過言ではない。ここに至って初めて人類は、自分たちが、恵まれた環境を保つ小さな星の上に、カビのごとく繁殖していることを自覚したのだった(「自覚しただけ」、なのかも知れないが)。

 1972年、アポロ計画は17号で終了する。ソ連はその後も無人月探査を続けたが、1976年8月のルナ24号でこちらもお終いになった。1970年代後半から80年代を通じて、月は忘れられた場所であり続けた。

 アメリカではいくつかの月探査の動きが出ては消え、出ては消えを繰り返していた。1980年代、NASAは「ルナ・オブザーバー」という大型の探査機計画を作り上げたが、予算不足から消滅した。予算不足の理由は、スペースシャトルと宇宙ステーションいう予算の大食い虫が、NASAの宇宙計画の中心に座り込んでいたからだった。

Clementain_earthrise_2 予算の壁を乗り越えて、探査機「クレメンタイン」が打ち上げられたのは、1994年のことだった。クレメンタインは本来、戦略防衛構想(SDI)向けの技術を実証する実験衛星だったものを、冷戦終結後に月探査機に転用した、軍とNASAの共同ミッションだった。

 クレメンタインは様々な科学的成果を挙げた。そしてもちろん、月と地球の画像を撮影していた(Credit: U.S. Geological Survey)。が、このアポロ以来の月と地球の映像は、当時全くといっていいほど話題にならなかった。

 21世紀、月への先鞭を付けたのは、欧州だった。欧州宇宙機関(ESA)の計画は、どこかひとつの国が主導する形式をとる。欧州初の月探査機「スマート1」は、スウェーデンが主導する計画だった。2003年9月に打ち上げられたスマート1は、イオンエンジンを使って1年2ヶ月をかけて月周回軌道に到達した。


 欧州も、もちろん撮影した。「地球の出」の画像を!(リンク先にaviファイルがある)

Earthset_2

 そしてかぐやの画像だ(Photo by JAXA/NHK)。

 地球の出の撮影は、月に赴いた者の特権であろう。と、同時に、その画像は人類全体の共有財産でもある。



 アポロ計画で撮影された月面の写真をまとめた写真集。オリジナルのフィルムから高精細スキャンを行った映像は美しいの一言に尽きる。現在は絶版のようでアマゾンではユーズドストアから買うしかない。どうしても欲しいならば、現在も入手可能な英語版を買うのも手かもしれない。


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2007.11.16

地形カメラとマルチバンドイメージャ

 次々と初画像が公開される月探査機「かぐや」。今日は地形カメラとマルチバンドイメージャの取得画像が公開された。

 「アポロ以来の大規模月探査」といううたい文句が、単なるキャッチフレーズではなくなり、着々と実績として出てきつつある。

 今回公開されたのは較正前のデータであり、この後較正を行い、研究に供し、結果が論文として発表され、最後にデータが誰でもアクセス可能なデータベースに格納されて、はじめて「かぐや」のミッションは完遂ということになる。すべてはこれからだ。

 かぐや搭載の観測機器については、JAXAの広報誌「JAXA's14号」(pdf;3.72MB)に分かりやすい記事が掲載されている。

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2007.11.15

11/12読売夕刊のコラムに「はやぶさ2」登場

 11月12日の読売新聞夕刊2面のコラム「夕景時評」に「宇宙開発と民意」というタイトルの記事が掲載された。執筆者は編集委員の知野恵子さん。

「『はやぶさ2』実現のために声を上げて——。ジャーナリストの松浦晋也さん(45)がインターネットで呼びかけている。」

で始まって、はやぶさ2を巡る動きを簡潔にまとめ、「実は宇宙好きという隠れファンは結構多い。そんな人の支援を引き出し、民意参加型の第2のはやぶさ誕生となるか。注目される。」と締めている。

 小さなコラムでも、マスメディアに載る意味は大きい。知野さん、どうもありがとうございます。

 JAXAへのはやぶさ2実現希望のメールが約80通、宇宙開発委員会に約30通という数字は、私も初めて知った。

 もしも「ネットの跳ね返りが騒いでいるだけだよ」と考えている人がいるなら、思い直してもらいたい。

 過去に、たとえ数通でも「ぜひ、このミッションを実現してほしい」という投書が、一般から届いたミッションがあっただろうか。

 80通は、一部のマニアが騒いでいるだけの80通ではない。その背後にはメールを出すほどではないが、「はやぶさ2」が見たいと思っている、もっともっと多くの物言わぬ普通の人たちがいる。

 皆、JAXAに期待しているのだ。

 あらためて、「はやぶさ2」実現に向けて呼びかけたい。

「未来を見たいのならば、声を届けて」と。

 メール送り先などははやぶさ2を実現させよう勝手にキャンペーン、当blogではここここを参考にして欲しい。


 知野さんは、H-IIロケット第1段のLE-7エンジンが爆発事故を繰り返していた頃から、ずっと宇宙関係を取材してきたベテランだ。あの頃からずっと、継続的に宇宙関係をウォッチングしてきたジャーナリストは、今やほんの一握りとなってしまった。その中の一人である。

 もう大分時間が経ったので、ばらしてもいいだろう。拙著「H-IIロケット上昇」に、LE-7エンジンのトラブルが続いていた時期、広報を担当していたNASDAのN氏(本を見れば名前が出ているが、ここでは頭文字にしておこう)の自宅に夜討ち朝駆けをかけ、玄関前でN氏をつかまえて取材し、周囲からあらぬ噂を立てられそうになった女性記者が登場する。

 若き日の知野さんの勇姿である。

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2007.11.14

NHKの「探査機“かぐや”月の謎に迫る」

 本日、NHK総合/デジタル総合で、以下の番組があります。

探査機“かぐや”月の謎に迫る
 〜史上初!「地球の出」をとらえた〜
午後8:00〜8:43

 デジタル総合では、昨日発表された「地球の出」の映像を、フルハイビジョンで観ることができるようです。

 不安要素は以下の通り。

出演者
稲垣吾郎
眞鍋かをり
市川森一
アラン・ビーン(アポロ計画宇宙飛行士)

司会:桂文珍
   與芝由三栄
解説:国立天文台准教授…渡部 潤一
語り:礒野佑子
   土田大

 眞鍋かをりはともかくとして、稲垣吾郎・市川森一がなにを言うか非常に不安だ。

 NHKには前科がある。昨年の11月18日、NHKは「史上初!ハイビジョン生中継 LIVE宇宙ステーション」と銘打って、国際宇宙ステーション(ISS)からのハイビジョン中継番組を放送した。

 ISS内部の画像が見られるということで、私は期待していたのだが、スタジオにゲストが出て、どうでもいいことをしゃべるしゃべる。

 この時のゲストは、以下の通り。

 山崎直子 (JAXA宇宙飛行士)
 米村でんじろう (科学実験プロデューサー)
 野口健 (登山家)
 江川達也 (漫画家)
 安めぐみ (タレント)

 米村でんじろうは優れた実験プロデューサーだが、宇宙関係に詳しいわけではない。野口健はアルピニストとして一流だが、もちろん宇宙に(以下同文)。江川達也は、卓越した漫画家だが(以下同文)。安めぐみ(以下略)。

 テレビの前で「いいからお前らしゃべるな!ステーションの中を写せ」と怒鳴ってしまった。

 この時は生中継だったので、間を持たせるためにスタジオにゲストを呼ぶというのもまだ理解できた(うっとうしいだけだったが)。

 が、今回は録画画像なのだ。完全に制作者側がコントロール可能なのである。

 この件、取材先で同席したNHK関係者に尋ねたことがある。
「どうしてあんなに素晴らしい素材が、あそこまでダメな番組になっちゃうの?」

「そうしないと視聴率が取れないんですよ」というのが返事だった。
「みんなの知っているタレントがゲストに出ないと、視聴率が取れないと思いこんでいるだけじゃないのですか」と突っ込むと「うーん」という返事。

「『タレントが出ないと観ない』なんて視聴者をバカにしていると、お金があって質の高い視聴者層はみんなディスカバリーチャンネルやBBCに逃げちゃいますよ」
「そうなんですよねえ。僕らも危機感あります」

 現場は分かっているらしいのだ。現場は。

 とりあえず、今晩の番組では、月からの画像もさることながら、誰が何を言うかに注目である。43分しかない番組だ。私としては余計なおしゃべりは最小限に留め、密度の高い映像と解説を視聴したい。

追記
 観ました。かなり悪かったが、最悪ではなかったという印象。さんざっぱらゲストがくっちゃべって、かぐやからの映像は3分というのを予想していたが、それよりはずっと良かった。

 ぐちゃぐちゃだったISS番組に対する反省もあったのだろう。

 映像の素晴らしさに圧倒される。科学解説部分は手慣れたもので、分かりやすい。

 もっとも、ハイビジョン映像は、実時間ではなく高速度再生だったり、一部を拡大したり、ということをやっていた。これは、その旨説明しないと、放送したものがリアルタイム画像と誤解する人が出そうだ。

 もちろん「地球の出」が、月周回軌道からのみ見えるもので、月面から見ると地球は空の一点にいつでも止まって見える(もちらん裏からは見えない)ということも説明すべきだろう。

 ともあれ、ゲストの人数が多すぎる。43分しかない番組だ。どのゲスト本人もしゃべり足りず、月への興味ではなく、ゲストへの興味で観た視聴者も、どのゲストのファンであれ欲求不満になったのではないか。

 しかも、危惧した通り、ゲストのしゃべりに意味がない。映像があまりに雄弁なので、ゲストの「きれいですねえ」というような言葉が空虚に響く。ましてや「ハイビジョン」を強調する演出は「またNHKの宣伝か」としらけるだけ。

 そして司会の桂文珍はしゃべり過ぎ。しゃべりを本領とする彼を司会に持って来る意味はどこにあったのだろうか。

 ゲストはアラン・ビーンと渡部先生だけでいいだろう。

 せっかくアポロ12号で月に行ったアラン・ビーンが出たのだから、もっと彼の話を聴きたかった。番組進行の都合からか、ビーンの発言を遮るようなところがあったのは残念。

 今回の映像取得にはディスカバリーチャンネル・カナダも噛んでおり、同じ映像を使った番組を用意している。


 私の周囲の反応は以下の通り。

「NHKは自分たちが撮影したものの価値を信じていない」
「想像していた悲惨な番組と比較するとずっと良かった」
「司会が駄目駄目」
「ゴローちゃんの評価、その出番の少なさ故に急上昇」

 そして、やはりというべきか…

「ディスカバリーに期待だな」

 日本でも、デジタルCATVに加入していればディスカバリーHDを見ることができる。

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2007.11.13

かぐや、地球の出の撮影に成功

 月探査機「かぐや」が、地球の出の撮影に成功したと発表されました。

 ハイビジョンの開発には様々な意見があったが、「この画像を取るためにこそ開発した」と考えれば、すべて納得できる——そう言い切りたいほど素晴らしい画像です。

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2007.11.09

asahi.comにニュースが載る

 今日になって11月9日付けで、asahi.comにかぐやのハイビジョン画像の記事が掲載された。

 それにしても、

2007年11月09日09時05分

 月探査機「かぐや」が高度約100キロからハイビジョンカメラで撮影した月面の映像を、宇宙航空研究開発機構とNHKが7日、公開した。

 という、11/7のニュースを11/9午前9時過ぎのタイムスタンプで伝える、全部で350文字弱の短い記事だ。

 ネタの大きさに比べて記事が短く、そっけない。つまり、朝日自身、この記事がタイミングを逸していることを自覚している。

 今回の情報そのものは7日午後5時に公開されているので、8日朝刊に余裕で間に合う。ところがコメント欄に寄せられた情報によると朝日紙面は8日夕刊で、このニュースを扱ったそうだ。

 朝日に限らず、ニュースの重要度とどれだけの紙面を割くかは、デスクが判断する。デスクは大抵の場合、記者出身の部長クラスが当番制で担当する。

 となると、どうやら8日朝刊の紙面構成を担当したデスクが、判断を誤ったという可能性が高そうだ。たしかに8日は小沢辞任関連の大ネタがあったので、科学ネタに紙面を割きにくい状況ではあった。それにでも他社は軒並みきちんとwebには掲載しているところからすると、webも含めた紙面コントロールに失敗したと見るのが自然である。

 ともあれ、この後は朝日も「かぐや」関連ニュースには注意することになるだろう。

 私としては、少々いじわるな想像を楽しむことにする。

設問:なぜ朝日は「かぐや、月面のハイビジョン撮影に成功」というニュースをタイミング良く扱えなかったのか?

  • 陰謀論その1:さすが赤ピー、中国の嫦娥1号のニュースを目立たせるために、あえて「かぐや」を無視したナリー(JAXAとNHKは朝日に謝罪と賠償を要求せよ!)
  • 陰謀論その2:デスクが「ロケットを作るのも衛星を作るのも死の商人である軍事メーカーだ。そんなものは人民の新聞の紙面に載せられない」と考えた(それ行けJAXA前でインターナショナルを歌おう!)
  • 陰謀論その3:朝日とNHKの間に何らかの確執が存在し、デスクよりも上層部から「NHKの提灯記事なんぞ載せるんじゃねーぞ」という圧力がかかった(そういや、例の「サンゴに落書き」ってどこが最初にスクープしたんだっけ)


 個人的に一番ありそうな気がするパターン


  • 担当デスクが「月から動画像?それってアポロの時にもうやってるよね。大したことじゃないよね」という認識だった(「ハイビジョン? ウチの嫁が欲しがっているけど、俺よくわかんなくってさあ…」)

 これが一番イヤだなあ…

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2007.11.08

おかしいな?

 以下、少々気になったので。

 おかしいな、朝日新聞はどうしたのだろうか。私が気が付いていないのだろうか??

 かぐや特設ページにも載っていないというのは少し考えにくい。本当にどうしちゃったのだろう。

 紙の本紙には掲載されたのだろうか。私は朝日新聞を購読していないので分からない。にしてもカラー画像が出ているのだから、Web媒体にこそふさわしいニュースではある。

 朝日は、この手の話題は決して嫌いな新聞ではないし、なにより大手メディアは他紙が一斉に掲載していることが自分のところに載っていないのを一番嫌うはずなのだけれども。

 今回の発表はJAXA広報部経由なので、当然朝日新聞にも同じ情報が渡っている。

 今回の映像は、月からの動画像伝送としては、1972年のアポロ17号以来35年振り。もちろんハイビジョンクオリティの動画像としては世界初だったので、決してニュースバリューが劣るということはないはずなのだけれども。


 朝日新聞がこの件を報じているのを見た方、教えて下さい。自分のうかつで載っているのに気が付いていないのなら、非常にはずかしいので。

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2007.11.07

本日(11/7)夕刻、かぐやからの月面ハイビジョン映像公開

 JAXAは月探査機「かぐや」からの月面ハイビジョン映像(3分間)の受信に成功。データ処理など終わり次第(本日午後5時予定)、映像各社に公開されるそうです。


 本日夕方のニュースが楽しみです。特にハイビジョンカメラ開発を担当したNHK。

 公開されるハイビジョン映像は全部で3分なので、テ