2009.04.10

はやぶさリンク:はやぶさ2の現状

 宇宙基本計画と共に、ここで報告しておかねばならないこと。「はやぶさ2」の現状だ。

 海外から打ち上げ手段を調達することを計画実施の条件とすることとされてしまった「はやぶさ2」は、イタリアが主導して開発している「ヴェガ」ロケットによる打ち上げを模索していた。

 が、この話は完全に潰れた。

 理由は、欧州宇宙機関(ESA)の宇宙科学部門で深刻な予算超過が2つも発生したためだ。結果として、欧州の宇宙科学予算から打ち上げ手段の調達を行うことが不可能になった。

 予算超過を起こしたのは、日欧共同の水星探査機「ベピ・コロンボ」と、火星無人探査車「エクソマーズ」だ。ベピ・コロンボは、水星に到達するためにイオンエンジンを使う設計だが、欧州が担当しているイオンエンジンの開発が難航、大幅な重量超過を起こすことが判明した。結果としてソユーズロケットによる打ち上げが不可能になり、昨年夏以降大騒ぎをして、結局打ち上げロケットをより大型のアリアン5に変更することとなった。当然アリアン5はソユーズより高価であり、その分多額の予算を必要とするし、イオンエンジンの開発にも余計な経費がかかることになる。

 エクソマーズも開発がトラブル続きで、当初2011年打ち上げだったものが、2013年に、さらに昨年10月には2016年まで延期された。その結果、超過した開発経費が、2010年代半ばのESAの宇宙科学予算に食い込むこととなってしまった。

 私見だが、日本はベピ・コロンボでの欧州との協力体制構築に失敗したように見える。

 国際協力はお互い相手を骨の髄まで利用し合う過酷なものだ。どちらかがバカを見ないためには、それこそ「キンタマを握り合う」ぐらいに相互の弱みを実効的に捕まえる必要がある。しかし、日本の開発する水星磁気圏探査衛星は、完全に「欧州のロケットと欧州のイオンエンジンで、水星まで連れて行ってもらう」設計だ。欧州側でトラブルが発生すると、日本はなすすべもなく、欧州の意向に従わなくてはならない。国際宇宙ステーション(ISS)と全く同じ構図である。

 せめて、イオンエンジンを日本が提供する形に持ち込んでいれば「バカなこといっていると、イオンエンジンを引き揚げるぞ。水星に行けなくなるがそれでもいいのか」と欧州に言えたのだが。なにしろ日本のイオンエンジンは「はやぶさ」で惑星間航行の実績がある。一方欧州のエンジンは、新規開発なのだ。

 探査機を欧州に運んでもらうという選択には、「国際協力で浮いた経費をセンサーに突っ込めば、より多くの科学的成果が期待できて、インパクトのある論文を多数生産できる」という思惑があったのかも知れない。が、それは相手の言うなりになるということに、どうして気が付かなかったのだろうか。ベピ・コロンボに関しては、今後「宇宙科学におけるISS」になりはしないか、非常に心配である。

 ヴェガロケット利用の話は潰れたが、「はやぶさ2」は生きている。皮肉な話だが、打ち上げが2014年以降になった結果だ。

 そもそも、「海外から打ち上げ手段を取ってくる」という条件の背景には「JAXAの中期計画(2009年2013年)の予算では、はやぶさ2にロケットを付けるだけの金がない」という、JAXAの経営上の理由から出てきたものだった。打ち上げが2014年になると、資金は次の中期計画で賄うことができるというわけだ。H-IIAが使えるんじゃないか、ということである。

 打ち上げが遅れ、そして後述する「はやぶさMark2」の先行きが不透明であることもあって、はやぶさ2の設計は徐々に変化して、「はやぶさの同型機」というコンセプトから離れつつあるようだ。若干Mark2の要素を取り入れつつあるらしい。

 「はやぶさMark2(欧州名マルコ・ポーロ)」は、まったく先が読めない情勢になっている。ベピ・コロンボとエクソマーズの予算超過と計画遅延によって、2010年代のESAの科学探査の予算見積もりがガタガタになった結果、そもそも「次にどんな計画を実施するか」のセレクションが二転三転しているためである。
 一応、今年9月に行われる予定のESAの次期探査計画セレクションには応募する方向で日欧における検討は進んでいる。が、私のところには「マルコポーロは八方ふさがりですよ」という話も聞こえてきており、先行きどうなるのかは分からない。

 そうこうしているうちに、アメリカでは、昨年、小型探査機シリーズ「ディスカバリー」のコンペで落選した小惑星探査機構想「オシリス」のチームが、またNASAの予算獲得を目指して動き出したそうだ。日欧とアメリカの2つの計画は、どちらかが実施されれば、どちらかは科学的価値を失って消える運命にある。どちらが、予算を獲得して先に進めるかは、なんとも予断を許さない。

 私の知る限りの現状は、こんなところだ。であるからして、宇宙基本計画では、ぜひとも太陽系探査をきちんと日本の長期計画の中に位置付けてほしいのだが、どうも文章を読んでいくと…。

 宇宙基本計画の件については、改めて別の記事で書くことにする。

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2008.08.25

8/23:JAXAタウンミーティング@岸和田

 8月23〜24日、大阪府岸和田市で開催された日本SF大会「DAICON7」に行ってきた。大会ゲストとして、4つの企画に出演してきた。
 DAICON7では、JAXAのタウンミーティングが同時開催された。SF大会と同時開催というのはJAXAも味なことをする。

 これまでJAXAタウンミーティングを見たことがなかったので、途中までではあるがのぞいてきた。


 以下はSF大会DAICON7とともに開催されたJAXAタウンミーティングの様子。

まず舘和夫広報部長からJAXAの説明。

 「JAXAを知っている人?」、という質問に4割ほどの人が手を挙げる。

舘:驚きました。毎年JAXAは無作為抽出で国民にアンケートをしているのですが、そこでは0.1〜0.2パーセントの正答率です。1000人に一人とか二人ですから、この会場はすごいですね。

 以下舘部長よりJAXAの説明(省略)

 小澤秀司理事から個別のプロジェクトについて説明(省略)

 
質疑応答
Q:「はやぶさ2」の予定はどうなってるんでしょうか。
小澤:はやぶさが戻ってくるのが2010年です。その次については色々な検討をしているますが、これからの5年間ではちょっと予定はありません。その次の5年間に打ちたいと思っています。
阪本成一・JAXA宇宙科学研究本部教授(対外協力室長):何年頃に打つというはとうてい言えないのですが、しかるべき時に打つということで着々準備を進めています。

Q:JAXA独自の技術について。はやぶさでは独自の姿勢制御を使っていると聞いていたのですが、どんなものか。
小澤:はやぶさはホイールによる姿勢制御を行っている。トラブルが出たら地上で同じ部品を使っているかどうか調べる。
阪本:ご質問があったのは太陽の輻射圧を使った姿勢制御だと思う。太陽電池パネルに光を受けることで、重心周りに発生するトルクを姿勢制御に使っている。

Q:実用衛星で失敗は困るけれども探査とか先進的のことでは失敗は込みと考えるべきではないだろうか。かぐややはやぶさは見ていて大変興奮した。サンプルリターンは日本が世界の最先端を走っているのだから、次の探査機を全くやる余地はないのだろうか。
小澤:実用衛星に関する考え方、先進的な衛星とは分けて考えるべきという提案と受け取った。ありがたいことだ。そうしなければチャレンジの気持ちが萎えてしまいます。
 マルコポーロだとかはやぶさ2については、一生懸命やっている。制約条件が2つある、お金と目標天体だ。この2つが2008年〜2012年の5カ年計画ではうまく合わない。欧州かとの協力を含めて考えている。

Q:日本のロケットではやぶさ2は打ち上げられないんでしょうか。
小澤:お金の問題と全体計画の中のバランスだ。皆さんの声は届けたい。

Q:日本のロケットは無理なんでしょうか。
小澤:色々なオプションはあります。全部日本でやる話もあるし、絶対に欧州とやるという話でもないです。決して外国ありきではないです。

司会の舘部長から「はやぶさ以外で何か質問を…」

Q:広報活動がごく普通の人に届いているとは思えない。広報の充実についてはどう考えているか。
舘:なによりの広報は衛星ロケットすべてがうまくいくことだと思う。私たちは、テレビ報道においてJAXAの話題が何秒間放送されたかという調査をしているが、星出飛行士シャトル搭乗のニュースはコマーシャルとして2億円の価値があった。マスメディアの一般への影響力ではまずテレビ、そして新聞という順番になる。講演や展示の影響規模は小さい。まずマスメディアである。どうやってマスメディアに情報を提供できるかを考えている。
 今回の会場は女性の方が多いが、女性の認知度が低い。これをなんとかしたいと考えている。

Q:惑星探査など、つまるところお金の話になるわけだが、チャレンジングな惑星探査などでは寄付や宝くじ方式の活用は考えているか。国の予算を使って失敗を恐れて、萎縮するのは宇宙開発ファンとして悲しいものがある。
小澤:確かにそういう国民の皆さんの支持があればできるのかもしれませんが、まだ「宇宙宝くじ」という発想には行き着いていない。今考えているのは実用衛星のほうで、研究開発目的で通信実験衛星を上げる時に、通信ビジネス会社と一緒にやって、折半できないかということを検討している。これから色々考えていけると思う。
阪本:宇宙科学の分野は魂を揺さぶる部分があって、寄付金の申し出もあります。年1万円未満なら出すよという人は多い。しかし、私は国立天文台勤務時代、そういう申し出があると断っていた。宇宙科学が寄付金で回るということになると残りの基礎科学全体は痩せてしまう。そのことを恐れている。

Q:スペースシャトル後継機としてのオファーが日本にあったという報道があったが、具体的に何があったのか。
小澤:宇宙ステーション補給機HTVのことだと思う。2010年にシャトルが引退する。シャトルの運んでいる物資を何を使って補給するかが問題になる。アメリカはシャトル引退後、新しい宇宙船を作ろうとしている。その過渡期で、今世界で使えるような補給船はないか、という話があったことは事実。しかし新聞報道にあったようにシャトルの後HTVをアメリカが使うという話にはなっていない。

Q:日本の一般は基礎科学に興味がないが、マスメディアはそもそも基礎科学を理解していないのではないだろうか。広報はもう少しわかりやすくマスメディアに基礎科学を伝える必要があると思うがどうだろうか。
舘 なかなか科学には難しいところがあって、今まさに記者さんに伝える工夫を始めたところである。きぼうの実験で実験実施の前に記者向けの説明会を開始した。
阪本:研究者自ら時間を削って広報に出歩いています(拍手あり)。今後にご期待ください。

Q:今日入っているはSFの方なんで色々と特別なんかと思いますが…
 研究と仕事は別にしたほうがいいんじゃはいでしょうか。研究にはお金が必要です。糸川先生は「金を持ってくるのが良い研究者だ」と言っていましたけれど、阪本先生の寄付を受け取らないというのはあまりに後ろ向きじゃないでしょうか。
 今のプレゼンですけれど、宇宙開発事業団ばかりですよね。宇宙科学研究所の話はどうしたんでしょうか。この前S520ロケットの打ち上げの話もプレゼンに入っていませんでしたよね。
 内之浦でも最近はフェンスを張ってロケットをみんなに見せない方向に向かっています。もっと皆さんにロケットを見せればいいじゃないですか。
小澤:ロケットに触れないんじゃないかという話ですが、最近はセキュリティというのが大切になっています。世の中の流れとしてセキュリティを厳しくする流れがある。筑波や相模原に実物のロケットを展示していますから、そちらで見てもらいたい。

 ここで第一部終了。

第二部 阪本教授プレゼンテーション(略)。

以下質疑応答

Q:宇宙基本法の話。制定されても素性がまだよく分からない。今後JAXAはどうなるのか。GXロケットはどうなったのか。M-Vではなぜダメだったのか。
小澤:宇宙基本法は8/27に施行される。私なりの解釈になるが、議論の背景には日本の宇宙開発が研究開発中心だった。それを国の利益につながるようなものにすべきという意志が存在する。国の利益とは国民に役立つということ。そのうちのひとつとして安全保障が出てきている。
 効率的な宇宙開発としての国際協力。国の外交政策とマッチした国際協力を考えねばならない。
 JAXAの見直しも法文に入っている。今はまな板の鯉のような気分だ。
 GXは、今宇宙開発委員会で議論をしている。8月末の来年度予算の概算要求に間に合うように結論が出るはずが、まだ結論が出ていない。私個人の感触では、宇宙基本法の施行により舞台は宇宙開発委員会だけではなく、内閣府の宇宙開発戦略本部も含めた議論になると予測している。まだキャンセルという話にはなっていない。

Q:スペースVLBI衛星のASTRO-Gはもっと干渉計の基線長を伸ばす軌道に入れることはできないのだろうか。
阪本 高分解能の観測を行うためには基線長を伸ばすことと、観測周波数を上げるという2つの方法がある。ASTRO-Gは後者の手法を採用している。

Q:宇宙論的なダークマター、ダークエナジーのような観測は行っているのか。
阪本 高エネルギー物理が関連している。アメリカと共同で行っているGRASTというガンマ線観測衛星にも日本は関わっている。ダークマターの候補に未知の粒子があるが、その対消滅でガンマ線が観測される可能性が指摘されている。

——ここで私は参加企画があったので退席した。

 笹本祐一さんのレポートによると、どうやらその後で以下のようなやりとりがあったそうだ。

 この件については、笹本が質問して確認してみたところ以下のような答えを得ました。
小澤理事「今の中期、2006年から11年までの5年間のあいだには打ち上げ計画はありません。JAXAとしては、2012年から17年の次の中期においてはやぶさ2をぜひ打ち上げたいと思っています」
「なんでH2Aロケットではやぶさを打ち上げないんですか?官需だし、打ち上げ機会の増大にも繋がると思うんですが」
小澤理事「H2Aではやぶさ打ち上げというオプションも、もちろん検討しています。H2Aでさまざまな衛星を打ち上げたいと考えています。科学衛星も、ものによっては上げます。用途に合わせて効率良くロケットを上げていきたいと考えています」

 これはひょっとすると期待が持てるかも、だ。小澤理事は、経営企画と宇宙探査を担当している。その本人がJAXAとしては、2012年から17年の次の中期においてはやぶさ2をぜひ打ち上げたいと発言している。

 はやぶさ2の計画は当初2010年打ち上げを目指していたものが、予算が付かなかったり、海外の打ち上げ手段調達を実施条件に付けられたりで、ずるずると遅れている。

 私は、2014年打ち上げがタイムリミットと聞いている。これ以降になると今のところ適当な目標天体が存在せず、その次のチャンスが2018年になるのだという。こうなると、「マルコポーロ(はやぶさMark2)」と実施時期がかぶってしまうので、「はやぶさ2」は自動的に消滅する(8/26追記:つまり、はやぶさ2が消滅すると、日本の小惑星探査は2003年打ち上げのはやぶさから15年も空いてしまうということになる。あれほどまでの成果を挙げたミッションに対してあまりにひどい仕打ちだと思う。なによりも15年も空けてしまうと、はやぶさで蓄積した技術も、育てた惑星科学の研究者も散逸してしまうだろう。そしてもちろん、現状ではマルコポーロを2018年に打ち上げられる保証などない)。

 逆に言えば2013年か2014年打ち上げとなると、たとえ海外の打ち上げ手段調達が失敗に終わっても、H-IIAによる打ち上げがあり得るということだ。

 担当理事がタウンミーティングでそう発言したのだ。今後に注目しよう。

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2008.05.29

はやぶさ2とマルコ・ポーロ

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 本日、幕張メッセで開催中の地球惑星科学連合大会で開かれた、「始原天体サンプルリターンミッション会合」に参加した。JAXAの月・惑星探査プログラムグループ(JSPEC)が、関係する科学者を対象に開催した、はやぶさ2、はやぶさマーク2の現状説明会である。

 概要は以下の通り。

・はやぶさ2



Hayabusa2


 ロケットを海外から調達することが実施の条件となっており、NASA/ESAと交渉中。打ち上げロケットについて、近日中にESAから回答がある(はやければ6月中)。海外からの調達が不調に終わっても実施に向けての道を探っていくが、かなりきびしいことにはなるだろう。

 関係者の発言からして、打ち上げは2014年に設定される可能性が大きいようだ。

・はやぶさマーク2



Mark2_1


 欧州の研究者と共同でESAの将来探査計画「コスミック・ビジョン」に、「マルコ・ポーロ」の名称で提案したところ、一次審査を通過した。応募総数は50を超えたが、一次を通過したミッションは8つ。そのうちのひとつが「マルコ・ポーロ」。

 現在、計画は「マルコ・ポーロ」が正式名称となっている。探査機本体と次世代「ミネルヴァ」ローバーを日本が提供し、大型ランダーとロケットをESAが担当する。従来のはやぶさマーク2とは、大型ランダーが入ったところが異なる。



Mark2_2

 コスミック・ヴィジョンでは、今後さらに二次、三次の審査があり、最終的に8つのプランが2つまで絞り込まれる。最終審査に通った場合には2011年に開発を開始して2018年に打ち上げる。探査目標はウィルソン・ハリントンという枯渇彗星核だ。

Orbit

 もちろんESAだけではなく、今後JAXA内部の審査会もクリアしなくてはならない。

 ESAのセレクションに落選した場合には、改めて日本独自の「はやぶさマーク2」として計画を立ち上げ直す。これまでの検討結果を使えるので計画の急速な組み替えを行うことになるだろう。その場合、到達可能な都合の良い目標天体を見つけることができるかが重要となる。現在、観測を行って候補を探している。

 ライバルの動向として、アメリカの小惑星サンプルリターンミッション「オシリス」の話が出た。

 オシリスはアメリカの探査機シリーズ「ディスカバリー」に応募したが2007年12月のセレクションで落選した。ディスカバリーのコスト上限である4億2500万ドルを超過したことが響いた。小惑星サンプルリターンはNASAとしては初めてであり、技術開発費がかさむことがコスト超過の原因。
 ただしオシリス構想そのものは死んでおらず、現在「ニューフロンティア」という別のシリーズのセレクションに参加しようとしているとのこと。

 はやぶさに関連して、現在相模原に建設中のキュレーション施設、つまりはやぶさが持ち帰るサンプルの分析と保管を行う施設の概要が説明された。

Setubi

 全体を通して感じるのは、小惑星・始原天体探査に対する理不尽な逆風である。はやぶさは、日本が世界で初めて前人未踏のフロンティアを探査したミッションとなった。我々の前には、小惑星・始原天体という、それこそ「世界的な成果があげ放題」のフロンティアが立ち現れたはずなのに、集中投資するどころか、「海外からロケットをとってきたら計画を進めてもいい」という仕打ちはいったいどうしたことだろうか。

 「成果をあげたから金を回さない」?そんなバカな。

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2008.01.24

呼びかけ:「「宇宙開発に関する長期的な計画」に関する意見募集」 に意見を送って下さい

 ここでは「はやぶさ2」の件以来、何回も呼びかけを行ってきた。

 またの呼びかけだ。皆さんの声を文部科学省に届けて下さい。

 「松浦は狼少年か」と思われそうではあるのだけれど、残念ながら、一回の意見だけで動くほど日本の意志決定システムは機敏ではない。ねばり強く、機会を捉えて何度でも声を政治家や官僚、宇宙開発関係者に届けていく必要がある。

 そして一般国民からの声は、国民が思っている以上に効く。「どうせお上のやることになにいっても無駄さ」ということはない。声が一つならなしのつぶてになることも多いが、数が増えるとお上といえども無視はできなくなる。

 今回のテーマは重要である。文部科学省が「宇宙開発に関する長期的な計画」に対するパブリックコメントを募集している。締め切りは一週間後の1月31日木曜日だ

 「宇宙開発に関する長期的な計画」について(中間とりまとめ)を読んだ上で、意見を文部科学省に送る。

 「宇宙開発に関する長期的な計画」がどんなものかは、以下の通り募集要項に書いてある。

「宇宙開発に関する長期的な計画」は、独立行政法人宇宙航空研究開発機構法第19条に基づき、宇宙開発委員会の議決を経て主務大臣が定めるもので、今後20年~30年の将来の我が国の宇宙開発利用の在り方を展望しつつ、10年程度の期間を対象とし、同機構が果たすべき役割を定め、同機構の平成20年4月からの中期目標のもととなるものです。

 つまり、この文章が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の中期計画、つまり今年4月からの5ヶ年計画を規定する。逆に言えばこの文章に入らなかった項目や、実施に向けた強い文言が入らなかった計画は、5ヶ年計画の途中でどんなに必要になったとしても、後で割り込ませることは非常に困難だ。

 非常に理不尽な話だが、日本の官僚システムは硬直化した制度で動いているために、そういうことになってしまう。

 ここで間違えると、今後5年間、日本の宇宙開発は間違えっぱなしになり、さらには次の5ヶ年計画では間違いの後始末に追われ、新しいことができなくなる。

 資料の「『宇宙開発に関する長期的な計画』について」は30ページもある官僚の作文であり、読み解くのが面倒かも知れない。それでも少しでも多くの人に読んでもらいたい。全部読み切れない人は、自分の興味のある部分だけでもいい。

 官僚の作文である以上、この文章の全ての部分には意味がある。

 まず、項目の記載順番はそのまま重要度を示すものと思って良い。表向きは「平等」ということになっているが、重要だと考えるものから順番に書いていくのは、新聞記事などと同じである。
 なぜなら、そうしないと財務省や政治家への説明で困るからだ。

 具体的なアイテム名が入っているものは「絶対やるもの」だし、具体的な名前が記入されていない項目はそれよりも優先度が落ちる。はっきり書くならば、この文書に「はやぶさ2」というアイテム名が入れば、もう実施は確定となる。

 語尾が「実施する」「取り組む」「習得する」と具体的なアクションを示す動詞であるなら、その項目は優先度が高い。一方、語尾が「推進する」「努める」というような抽象的動作を示す動詞、あるいは「必要である」というような現状認識を示したに過ぎない場合は、その項目の優先度は低いと書かれているに等しい。公文書に記載されただけまし、ということになるわけだ。

 以上のようなことに注意して、まずは読んでもらいたい。その上で、「この部分の実施するは、推進するに落とすべきだ」、あるいは「この推進する、は具体的な計画名にまで触れて実施すると書くべきだ」と考え、それをパブリックコメントとして投稿してもらえればと思う。

 委員会などを傍聴していると、文書表現の問題点を指摘する委員に対して、官僚側は「そのことはここに書いてあるので」と答えるのをよく見聞する。
 もちろん本当に書いてあるわけだが、よく見ると具体的計画名の有無や語尾のニュアンスの強弱で、微妙に書き分けてあるわけだ。
 結果、物事が進行してしまってから「この計画のほうが重要ではないか」という状況が発生しても、「『宇宙開発に関する長期的な計画』においては、こちらは『実施する』アイテムでして、一方こっちは『推進する』アイテムです。どちらかといえば、『実施する』のほうを重視しなければならないわけでして…」などと現状追認を迫られたりするのだ。

 今回のパブリックコメント募集は幸いなことに文字数制限がない。問題点をきちんと指摘するコメントを投稿することができる。

 できるだけ多くの人に、コメントを投稿してもらえればと思う。

 もちろん私もする。これは今後5年間の日本の宇宙開発を決める文書なのだ。

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2008.01.16

はやぶさ2、ASIが正式検討を開始

 14日から今日までの日程で、沖縄で国際始原天体探査ワーキンググループ(IPEWG)という会合が開催されている。小惑星探査の世界的な連絡組織の立ち上げだ。JAXA/JSPECが、この分野で国際的な主導権を持つ国際協力をリードしていこうとしている現れである。

 取材に行きたかったが、どうしても行けなかった。それでも現地から情報はぼつぼつと入ってくる。

 イタリア宇宙機関(ASI)は、「はやぶさ2」打ち上げにベガロケットを使う検討を正式にはじめたことを公表したそうだ。

 さあ、面白くなってきた。

 見えてきたのは、「はやぶさ」が国際的にいかに高く評価されているかということだ。なぜ高く評価されているのかといえば、それまで誰もやったことがなかったこと、しかも大きな意味のあることを、独力で成し遂げたからだ。

 このことは、今後の日本の宇宙科学、それのみならず宇宙開発全体の指針になるのではないか。

  • 誰もやっていないことで
  • 本当に意味のあることを見抜き(はやぶさの場合は始原天体としての小惑星の探査。なかんずくサンプルリターン)
  • 持てる技術とリソースの範囲内で実現可能な計画にまとめあげ
  • それを独力で成し遂げること

 この観点からして、JAXAの次の中期計画はどう評価できるだろうか。「かぐや2」は? 準天頂衛星は? 防災衛星は? GXロケットは? HTVは?  H-IIBは?

「それができたら、日本と是非とも協力したい。ロケットぐらい提供したっていい」と外国に思わせるだけのミッションになっているだろうか。

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2008.01.08

はやぶさ2計画は生きている

 相模原の宇宙科学研究本部に来ている。新年恒例の宇宙科学シンポジウム出席のためだ。
 会場は机をはずして椅子だけが一杯に並んでいる。そこに人が一杯。15年ほど前の、椅子も机も入って、しかも結構空いていた科学衛星シンポジウム(宇宙科学シンポジウムの前身)を知っているだけに、「ずいぶんと遠くまで来たもんだなあ」という感慨を禁じ得ない。

 午前中は現在運用中のプロジェクトに関する発表。最後に川口淳一郎教授が「はやぶさ」の発表をした。

 おそらくこのページを見に来るネットユーザーの誰しもが知りたがっている話を。

 後継計画「はやぶさ2」は生きている。イタリア宇宙機関(ASI)の長官から立川JAXA理事長に宛てて「共同で計画を進めたい」旨の書簡が届き、立川理事長が「前向きに検討しましょう」という返事を出したとのこと。探査機を日本が、イタリアが「ベガ」ロケットを提供するという形式を考えている。このほかNASAとも協力の検討を進めているそうだ。

 ただし、JAXA内部でのゴーサインはまだだそうだ。川口教授が「私は理事長ではありませんから」と、言葉を濁すシーンもあった。

 結局のところ、この件に関するJAXAの内情は「既存計画で手一杯、新規計画向けの金なんかない」に尽きる。さっさとつまらん失敗プロジェクトをやめて、その分を「はやぶさ2」につければいいのに、というのは無責任な部外者の言い分であって、当事者としてはなんとかして既存計画を成功させる、ないしは成功ということにして終わらせる必要に迫られている。そして旧三機関の力関係というのはJAXA内に厳然と存在しており、ISASの立場は決して強くない。

 その中で、川口教授以下月惑星探査推進センター(JSPEC)は、天上の「はやぶさ」と同じぐらい、いやそれ以上に粘り腰を発揮している。「海外からロケット取ってこい」という、ほとんど昔話の主人公が遭遇するような無理無体に対して、ロケットを取ってこれそうな情勢を作り上げつつあるのだ。

 私思うに、昨年度の予算折衝で、たった5000万円ではあるが「次の小惑星探査機」の名目で予算がとれたことはとても大きな意味があった。予算というのは一度名目が立つとなかなかつぶせない。2006年の段階で、予算項目をとれたことで、JSPECは計画継続に向けて粘る足がかりを得た。

 そう考えると、一般からのあちこちへのメールは決して無駄ではなかったのだろう。

「2011年か2012年には打ち上げたい。その後はしばらく(おそらくは目標天体の軌道の関係で)打ち上げのチャンスがなくなる。2003年(はやぶさ打ち上げ)の次が15年空くというのでは、プログラム的探査の意味がなくなってしまう。15年といえば人が働く期間の半分ですよ」と、川口教授は言っていた。

 昔話なら、主人公はいくつもの無理難題を知恵で切り抜け、最後は「幸せに暮らしましたとさ」で終わる。もちろん小惑星探査はそんなわけにはいかない。予算が付いてゴーがかかっても、開発、打ち上げ、運用と、次の難関が続くのだ。


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2007.11.24

はやぶさの「祈り」

Mezamenasai

 辛気くさい話ばかりでもいけないので。

 11月23日から、「祈り」が公開された。ネットでも観ることができる。

  • 「はやぶさ物語」:プロジェクトチームインタビューも素晴らしい。左サイドバーから「祈り」を見ることができる。

 CGで再現した小惑星探査機「はやぶさ」の探査の様子に甲斐恵美子さんらの「はやぶさ」に寄せたジャズをかぶせた番組だ。

Ririku

 記者会見では、「癒し系」といい、報道でもそのあたりが強調されていたが、それ以上に、「はやぶさ」が小惑星イトカワでなにをしたかを、主観として追体験できる出来となっている。

 この「主観として」というのが重要。自分がはやぶさになった気分になれるわけだ。

 CG再現映像は、イトカワ近傍でのはやぶさの動きを忠実に再現したもの。私は「スラスターの噴射回数まで合わせた」と聞いている。演出は主に時間軸の圧縮で行われている。実際のタッチダウンは一晩かかっているわけで、そのままでは映画の尺に入らない。

 ただし、CG映像制作後も、データの解析は進んでおり、現在ではタッチダウン時の挙動が、より明確になっているとのこと。その分は「祈り」の画像には反映されていない。

Descend

 「祈り」は各地の科学館などでも上映されている。上映場所はこちら

 また、「祈り」は来年春にはDVD化される。DVDには「祈り」に加えてもう一本の科学映画「『はやぶさ』の大いなる挑戦!! 〜世界初の小惑星サンプルリターン〜」、を収録。資料を収めたCD-ROMも附属する。

 以下は11月19日に開催された「祈り」に関する記者会見の席で、「はやぶさ」イオンエンジン担当の國中均教授から聞いた、「はやぶさ」現状のあれこれ。

 「はやぶさ」は現在、第一期軌道変換の1700m/sを達成し、スピンモードに入れて冬眠中。次の軌道変更は2009年2月から。400m/sの軌道変更を行う。詳細については公式サイト参考のこと。

  • 行きは、はやぶさをイトカワにランデブーさせる必要があり、はやぶさの位置と速度の両方をイトカワに合わせなければならなかった。帰りは、はやぶさと地球の位置を合わせればいいので、その分楽ではある(注:速度の差は、採取サンプルを入れた再突入カプセルが大気圏で減速することにより吸収する)。
  • これまでに実施した1700m/sの速度変更は、軌道の近日点付近で行う必要のあるものだった。残る400m/sは遠日点で行うべき速度変更。
  • 1つだけ残っているリアクションホイールは、これまでの帰還行程でも何度か止めている。冬眠中もヒーターでホイール付近の温度を一定に維持しているので、2009年2月の立ち上げで、回転しないということはないだろうと考えている。しかし立ち上げ後にどれだけの期間、正常に動作してくれるかは未知数。
  • 最後のホイールが駄目になった場合に備えて、イオンエンジンの噴射と噴射方向のジンバリングとで、三軸姿勢を維持しつつ必要な軌道変換を行うための検討を開始している。その場合、新たな制御ソフトウエアをはやぶさに送り込む必要があるだろう。はやぶさ遠日点付近にいる限られた時間内に、400m/sの加速を終えることができるかどうかが、かなり難しい問題となる。

 画像は記者会見で配布された、「祈り」のキャプチャー。冒頭、宇宙を漂う「はやぶさ」に女神(ミューズであろう。声は声優の富沢美智恵さん)が「めざめなさい」と呼びかけ、意識(!)を取り戻した「はやぶさ」がイトカワでの冒険を振り返るという構成になっている。

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2007.11.15

11/12読売夕刊のコラムに「はやぶさ2」登場

 11月12日の読売新聞夕刊2面のコラム「夕景時評」に「宇宙開発と民意」というタイトルの記事が掲載された。執筆者は編集委員の知野恵子さん。

「『はやぶさ2』実現のために声を上げて——。ジャーナリストの松浦晋也さん(45)がインターネットで呼びかけている。」

で始まって、はやぶさ2を巡る動きを簡潔にまとめ、「実は宇宙好きという隠れファンは結構多い。そんな人の支援を引き出し、民意参加型の第2のはやぶさ誕生となるか。注目される。」と締めている。

 小さなコラムでも、マスメディアに載る意味は大きい。知野さん、どうもありがとうございます。

 JAXAへのはやぶさ2実現希望のメールが約80通、宇宙開発委員会に約30通という数字は、私も初めて知った。

 もしも「ネットの跳ね返りが騒いでいるだけだよ」と考えている人がいるなら、思い直してもらいたい。

 過去に、たとえ数通でも「ぜひ、このミッションを実現してほしい」という投書が、一般から届いたミッションがあっただろうか。

 80通は、一部のマニアが騒いでいるだけの80通ではない。その背後にはメールを出すほどではないが、「はやぶさ2」が見たいと思っている、もっともっと多くの物言わぬ普通の人たちがいる。

 皆、JAXAに期待しているのだ。

 あらためて、「はやぶさ2」実現に向けて呼びかけたい。

「未来を見たいのならば、声を届けて」と。

 メール送り先などははやぶさ2を実現させよう勝手にキャンペーン、当blogではここここを参考にして欲しい。


 知野さんは、H-IIロケット第1段のLE-7エンジンが爆発事故を繰り返していた頃から、ずっと宇宙関係を取材してきたベテランだ。あの頃からずっと、継続的に宇宙関係をウォッチングしてきたジャーナリストは、今やほんの一握りとなってしまった。その中の一人である。

 もう大分時間が経ったので、ばらしてもいいだろう。拙著「H-IIロケット上昇」に、LE-7エンジンのトラブルが続いていた時期、広報を担当していたNASDAのN氏(本を見れば名前が出ているが、ここでは頭文字にしておこう)の自宅に夜討ち朝駆けをかけ、玄関前でN氏をつかまえて取材し、周囲からあらぬ噂を立てられそうになった女性記者が登場する。

 若き日の知野さんの勇姿である。

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2007.11.07

「はやぶさ2」同時打ち上げの計算、50周年ラッシュ

 先日、nikkeibp.netにH-IIAで「はやぶさ2」打ち上げは可能?~相乗り打ち上げの可能性に言及しないJAXAという記事を書いた。ここで私は簡単な計算を行い、H-IIA相乗りで「はやぶさ2」は特段のコスト増加なしに打ち上げ可能であることを示し、相乗りの候補として、ASTRO-G(2012年打ち上げ予定)と、GPM(2013年打ち上げ予定)が存在すると指摘した。

 すると、非常にありがたいことに世界ロケット記念館というホームページを運営しているLH2さんという方が、私が行ったよりもきちんとした計算を行ってくれた。

 LH2さんの検討によると、ASTRO-Gと「はやぶさ2」の同時打ち上げは、キックモーターを使わなくとも第2段3回目の着火を行うことで可能になるという。

 私は直接LH2さんとは面識はないが、航空宇宙学科の学生さんであると聞いている。今年のエイプリルフールには「GXロケット、計画変更へ」というヨタ話を飛ばし、そのあまりの出来の良さにJAXAロケット関係者が動揺したという快挙を成し遂げている。

 なにしろ野田司令が野尻ボードで「で、改めてお願いですが、エープリルフール・ネタには、パロディだと、もう少し分かりやすいようにしてもらえますか?」と懇願したのだから、大したものだ(野田さん、私思うにこの件に関してはエイプリルフールのネタを一人歩きさせて、影響を受けてしまうような宇宙開発のプロの側に問題があるのでは?もしも役所とか財政当局とか政治家が影響されるとしたら、エイプリルフールを見抜けない彼らが宇宙政策をどうこうしていることの危うさのほうがよっぽど問題では?)。

 こういうきちんとした検証ができる人が、どんどん増えてもらいたいなと思う。宇宙という分野は、物理法則がそのまま適用できるので、簡単な計算ならば自動車や飛行機よりもずっと単純だ。LH2さんが行ったような計算ができる人が増えて、JAXAのやっていることを計算で検証できるようになれば、それだけ日本の宇宙開発は透明かつ公正なものになるだろう。


閑話休題
 日本ではあまり話題にならなかったが、今年の10月4日は世界初の人工衛星「スプートニク1号」が打ち上げられてから50周年だった。

 実は、今年の11月3日は、スプートニク2号の50周年だった。映画「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」でストーリーのバックグラウンドとなる、初めて軌道に乗り(それ以前も弾道飛行で宇宙に行った生物はいた)、帰ってこれなかった犬の打ち上げがあった日である。可哀想な犬クドリャフカは、打ち上げ数時間後に過熱のために死亡していたそうだ。


 1950年代から60年代にかけて、宇宙開発は急速に進展した。つまりこれからしばらくの間、宇宙は50周年ラッシュになるのだ。ざっとこんな感じで——

  • 2008年1月31日:アメリカ初の衛星「エクスプローラー1号」打ち上げ50周年
  • 2008年3月17日:アメリカの「ヴァンガード1号」打ち上げ50周年(現在軌道上にある最古の衛星)。
  • 2009年1月2日:最初の月探査機ルナ1号打ち上げ50周年
  • 2009年9月4日:ルナ2号打ち上げ50周年(最初の人工物体月面到達)
  • 2009年10月7日:ルナ3号打ち上げ50周年(最初に月の裏側を撮影)

 もう少し関連本が出るかと思っていたが、スプートニク50周年に出たのはこの本だけだった。長年朝日新聞の科学部で宇宙開発を取材してきた著者による、この50年に飛んだ衛星の紳士録である。科学的に華々しい成果を挙げた探査機あり、地味に技術開発を進めた衛星あり、半世紀もあると随分と人間は色々なことをやってきたというのが分かる。今のGPSにつながる「トランジット」や、最初の気象衛星「タイロス」といった、地味であまり知られていない衛星についても取り上げている。また、取材の現場で見聞したこぼれ話も今となっては興味深い。  宇宙開発に興味があるならば、持っていて損はない一冊だ。

 スプートニク1号については、宇宙開発史の桜木さんが、謎のスプートニク打ち上げロケットT3(pdfファイル)という面白い記事を公開している。ソ連がロケットの正体を隠したものだから、西側ではいかなる推測が出回ったかのまとめだ。実際のR-7ロケットよりも格好良い図が出てくるのが、今となっては笑える。

 そういえば、かぐやの月周回軌道投入も、スプートニク50周年と重なったのだけれど、メディアはほとんど取り上げなかったな。

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2007.11.02

はやぶさ2の現状とはやぶさ

 11月になった。

 以前、10月末がタイムリミットであるとして、「はやぶさ2」への応援をお願いした。

 現状について、私も大分取材が難しくなっている。


 だが、ひとつはっきりしていることがある。

「はやぶさ2構想はいまなお生きており、生き残りの道を探っている」。

 まだまだ計画の命運はつながっている。

 「はやぶさ」の成果は、世界的にも高く評価されている。後継機があるなら協力したいと考える国も少なくはないらしい。

 あちこちにメールをしてくれた皆様。しようとおもっている皆様。今しばらく、「はやぶさ2」への支援をお願いいたします。私は、「はやぶさ2」計画が、日本のプログラム的探査、さらには惑星探査への道を拓くと考えています。

 よろしくお願いいたします。

 まだまだメールは有効です。送り先については、こちらを参考にして下さい。もちろんそれ以外の送り先も有効であると考えます。


 本家「はやぶさ」は、ついに地球まであと400m/sのところまでの加速を達成した。

 川口プロマネが、月・惑星探査推進グループの事実上のリーダー格として忙殺される中、イオンエンジンを開発してきた國中教授がはやぶさ帰還に向けて執念を燃やしている。國中さんとしては、帰って来なければイオンエンジンの有効性を実証したことにはならない。

 これからしばらくの間、はやぶさは冬眠モードでの運用に入る。次の難関は、軌道の近日点に近づき、機器を起動する際に、ただひとつ残った姿勢制御用リアクションホイールが正常に起動するかどうかだ。

 はやぶさに搭載した3台のリアクションホイールは、製造上は同じロットである。うち2つが破損し、停止したということは、残る一つが動いていること事態が奇跡に近いということを意味する。

 長期間の停止をリアクションホイールが、乗り切ることができるか。それが次の関門となる。

 それにしてもあと400m/s、はやぶさの帰還を祈らずにはおれない。

 JAXAにおいて「はやぶさ2」構想に反対する側の論理は、「JAXAには金がない」だ。

 私は、「はやぶさ2」以前にスクラップにすべき計画はいくらでもあるだろう、という立場を取っている。アノ計画この計画、結局のところ「ここまでひきずってしまった計画を保持するためにかかる金」というのがある。

 私としてはJAXAも文科省も宇宙開発委員会も、そっちをどうにかするほうが先だと思うのだ。

 それは日本国民と真正面から向き合い、情報を共有することにもつながる。

 難しいことかも知れないが、LUNAR-Aでできたことが、アノ計画この計画でできないとは思わない。

 それは日本の宇宙開発を健全化し、未来に進むために必要なことなのだから。ここで逃げたら、あとで後進にもっと酷い状況を手渡すことになるのだから。

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2007.10.15

2ちゃんねるに出る

 この週末、2ちゃんねるに実名で出ていた。天文気象板にある「小惑星探査機はやぶさ」というスレッドだ。2ちゃんねるは1スレッドが1000メッセージで一杯になるので、新たなスレッドを立てるという仕様になっている。私が出たのはpart 27(過去ログに落ちている)と現行スレッドのpart 28である。

 「はやぶさ2」に関して、自分の知ることを質疑応答で出しておこうと思ってのことである。

 以下は一連の書き込みその中で書いたことだ。「役に立つ」「役に立たない」という議論は、往々にして「今の自分たちに具体的にどう役に立つかが分かる」ということと混同される。
 しかし実際に「何が役立つか」は、そう簡単に分からない。おおくの公共投資が「役立つ」という名目で実施されていることを思い出そう。

 天文学の例を見るように、世界の探究、知識への追求は、過去、必ず人類に大きな恩恵をもたらしてきた。その流れの先頭に、太陽系探査が立っていると考えるべきではないだろうか。

 そう考えない理由を、私は思い当たらない。

 以下は2ちゃんねる天文・気象板の「小惑星探査機はやぶさ part27」スレッドの974番コメントにかき込んだものの再録だ。「科学への貢献という理念だけでは納税者の支持を得られないのでは」という問いに対する回答である。


>科学への貢献・国際社会への貢献等と言う崇高な理念「だけ」では、巨額を投じる
>に納税者の支持を得ない。

 例えば天文学を不要不急の学問と思っている人は今も多いです。
 しかし実際には、緯度経度を定め、天測による航法を可能にし、時刻を定め、度量衡の基本となり、核物理や相対論の基礎となる観測結果を得たのは、天文学です。

 今や、量子力学と相対論なくして生活が立ちいかないのはご存知 ですよね。量子力学なくして半導体デバイスはありえません。また、 GPSは相対論的な補正をしてはじめて正しい位置を測定します。

 天文学ほど実用に役立った学問はないとすらいえるかもしれません。

 かつて世界を制したイギリスには、今も人口比で日本の10倍の天文学者がいるそうです。
 今、世界を牛耳っているアメリカが、基礎科学にがっちり投資しているのはご存知のとおりです。

 一見不要不急に思える基礎科学は、長い目でみるともっとも実用的な科学でもあり、国の繁栄の土台となるものなのです。

…と、いうことを、納税者にきちんと語り続けるのが、私の仕事だと思っています。

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2007.10.13

これまでのミッションの価値

 プログラム的探査を主張するためには、今、私達の日本が、どのような価値のある探査を行っているかも重要となる。出発点がしっかりしていなくては、その上にどんなにしっかりした仕組みを作り上げても、成果としては貧弱なものになってしまうだろう。

 過去22年の間に、日本は3回、4機の探査機を惑星空間に送り出してきた。ハレー彗星を目指した「さきがけ」「すいせい」、火星探査機「のぞみ」、そして「はやぶさ」だ。

 76年に1回の国際共同ミッションの一環として打ち上げられた「さきがけ」「すいせい」(1985)は、ハレー彗星接近という特別な機会を利用したものだった。観測内容は同時期に打ち上げられた各国の探査機を分担され、その後の彗星探査は、核に高速の人工物体を打ち込む「ディープインパクト」(アメリカ)、彗星核への着陸を目指す「ロゼッタ」(欧州)まで、大分間が空いた。
 だから、ここでは考慮の対象からはずそう。日本でも彗星核サンプルリターンが検討されているが、これは技術的に考えると、おそらく「はやぶさ」の成果の延長戦上での実施ということになるだろう。

 ここでは、「のぞみ」「はやぶさ」についてのみ考えることにする。

 実は現在、それぞれ後を追う、追従者が出てきている。

Osiris 「はやぶさ」の追従者は、アメリカの「オシリス」だ(Photo by NASA)。イオンエンジンを使って小惑星にタッチダウンし、土壌サンプルを採取して持ち帰るという、まさに「はやぶさ」そのものの構想である。現在、アメリカの小型探査機シリーズ「ディスカバリー」の候補として選定中である。10月末から11月にかけて、選定結果が公表される予定だ。

 もちろん選定に漏れて消えてしまうこともありうるが、私の聞いた話では、「オシリス」が選ばれる可能性が高くなっているという。

 選定されればオシリスは2011年に打ち上げられる。

 「のぞみ」は火星本体ではなく、火星の希薄な大気の状態を調べる探査機だった。
 旧ソ連の探査機「フォボス」の観測から、火星は上層大気からかなりの量の酸素がイオンの形で流出していることが判明している。それも数億年オーダーで、火星の大気がなくなってしまうほどの勢いだ。
 どんなメカニズムで酸素が流出しているのか、酸素は減っているのはどこかから補充されているのか——これらの問題は地球という星の大気環境を知る上でも重要である。比較対象の相手があるとないとでは、研究の進展が変わってくる。
 しかし「のぞみ」はトラブルにより、火星周回軌道に入ることなく終わった。

 アメリカは現在、小型の火星探査機シリーズ「マーズ・スカウト」を実施している。現在、最初のマーズ・スカウト「フェニックス」が火星南極地域への着陸を目指して、火星へ飛行中である。

 NASAは次のマーズ・スカウトを2011年に打ち上げる予定で、現在、ミッションの選定を進めている。
 多数の提案の中から、2007年1月に、2つの候補が勝ち残った。「メイブン(MAVEN)」と「グレート・エスケープ」だ。年内にはこのどちらかが、正式の「マーズ・スカウト」として選ばれることになる。

・メイブン(MAVEN:Mars Atmosphere and Volatile Evolution mission)
 正式名称は「火星大気と揮発性物質進化ミッション」。火星の気象及び大気の変動のありようを高層大気のイオン圏をも含めて調査しようというミッションだ。

・グレート・エスケープ(The Great Escape):火星高層大気を調査するミッションだが、読んだ通り高層大気からの酸素が逃げ出している過程の解明を大きな目標として掲げている。

 両ミッションの詳細は月探査情報ステーションのニュースが詳しい。

 つまり、どちらが選ばれても、「のぞみ」が果たせなかった観測を実施するミッションということになるのだ。

 現在宇宙探査の最大勢力であるアメリカが、過去20年かけて日本が実施した2ミッションの後追いをするということは、何を意味するのか、すこし考えてもらいたい。

 日本の研究者達が、乏しい予算の中で考えに考えて、意味のあるあるミッション、科学的価値のあるミッションを選んで実施していることを意味する。

 つまり、日本は、プログラム的探査の出発点としてふさわしいだけの質の高いミッションを選択し、実施してきているということである。

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2007.10.12

「はやぶさ2」に注目する理由

 昨日の記事を読んで、「感情的に煽っている」「陰謀論だ」と思う人もいるようだ。確かに昨日は、現状説明は書いたものの、私が「はやぶさ2」を支持する理由を明確には書いていなかった。

 以下、私の意図を要約して説明しよう。私が「はやぶさ2」に注目する理由は2つある。

まず、「プログラム的探査」の重要性。

 私は、継続的、計画的に太陽系探査を進める「プログラム的探査」が、今後の日本の宇宙開発に必須と考えている。探査は継続的に実施しなくては意味が薄れるし、その場合今回の探査機と次の探査機を一連のものとして構成や目的を明確にしたほうが成果が大きくなるからだ。

 実は1970年代にプログラム的探査への動きがあった。

 日本で最初に惑星探査の重要性を主張して行動したのは、東北大学の大家寛教授(当時)だった。1)まず行きやすい金星に、2)2機の探査機を送り、3)次いで火星、4)その次に木星——という主張は、まさにプログラム的探査そのものだった。

 この主張が通らなかった経緯は、拙著「恐るべき旅路」に書いた。

 大家教授の意見が通らなかった結果、「さきがけ」「すいせい」は別のセンサーを搭載することになり、成果を増したが、「同型機を2機打ち上げる」習慣がつかなかったことは、極端に言えば火星探査機「のぞみ」の失敗に遠くつながっているかも知れない。

 「はやぶさ2」が動き出すか否かは、1970年代以来30年振りに訪れた、日本にプログラム的探査を根付かせるチャンスなのだ。ここで失敗すると、また後々に禍根を残すのではないかと私は危惧している。

 もうひとつは、「科学衛星こそが、技術開発の源泉」となりつつある現状では、宇宙科学を予算削減の対象と考えるのではなく、むしろ技術開発のテストベッドとして積極的に捉えるべきではないかという考えである。

 昨今の科学観測の高精度化により、科学衛星の実現にはハード、ソフトの両面で最先端技術の開発と採用が不可欠になりつつある。高精度の姿勢制御や高出力太陽電池、高感度、多波長のセンサー素子など、かつてならば技術試験衛星が担っていた宇宙での技術開発を、科学分野が担うようになってきている。

 その一方で技術試験衛星は、巨大化し、失敗が許されなくなってきたせいもあって、試験要素以外は極端に保守的になってきつつある。実際問題として「きく8号」は情報通信研究機構の縄張りのようになってしまっており、しかも実施する実験アイテムが実用化する見込みは立っていない。

 とするなら、宇宙科学分野に注力することで、宇宙での技術開発力を保持しつつ、同時に世界最先端の科学観測成果を上げるというのが正しいいき方ではないかと考えるのである。

 そのためにも、科学衛星や探査機がある程度以上の頻度でコンスタントに打ち上げられる環境を作る必要がある。

 以上2点、私が「はやぶさ2」に注目し、下記のような呼びかけを行う理由である。

 もちろん、根底には「またはやぶさが見たイトカワのような光景を見たい」「見知らぬ太陽系各所を探査したい」という欲求があるのは言うまでもない。

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2007.10.11

はやぶさ2に向けて、最後のお願い

Pioneer10 Voyager1 Garileo

Cassini Newho

上、左から、パイオニア10(1973)、ヴォイジャー1(1979)、ガリレオ(1995)

下、左から、カッシーニ(2000)、ニュー・ホライズン(2007)

Photo by NASA


 まずは写真を5枚掲載することにする。その意味は、この記事の最後で種明かしすることにしよう。

 この前の「ロケットまつり」終了後にちょっと話した、「はやぶさ2」ののこと。

 当方がもたもたしていうちに、コメント欄でうーぱーさんにハッパを掛けられてしまった。

 そう、現在「はやぶさ2」を巡る状況は非常に厳しい。10月末がひとつの区切りになり、そこまでに海外の打ち上げ手段を調達できないと、計画自体がつぶれるという状況になっている。

 「はやぶさ」の冒険を目の当たりにし、今、「かぐや」が送ってくる月の映像にわくわくしている私達にすれば、日本国民が宇宙開発に何を求めているかは、非常に明確に思える。

 太陽系全域の探査だ。

 しかし、そのさきがけとなるべき「はやぶさ2」は今、予算の帳尻合わせのために危地に立っている。10月末に向けて、現在急速に事態は動いている。

 「はやぶさ2」に始まる、プログラム的探査に必要な予算は、JAXA全体の5年間の予算からすれば、大きな額ではない。

 にもかかわらず、GXロケットを初めとした遅延と予算超過を繰り返す積み残しの不良債権的計画に押されて、JAXAは今、未来に向けたもっとも貴重な宝石を自らゴミ箱に放り込もうとしている。

 だが、諦めるのはまだ早い。関係者は実現の可能性を必死で探っている。計画を好感を持って迎え、打ち上げ手段の提供を検討しようとする海外機関もあるようだ。

 私は、見たい未来を実現するために、声を上げる時だと思う。上げ続けることが未来につながると思う。

 皆さんの声が、「はやぶさ2」を、ひいてはその先にある日本の宇宙探査を実現する鍵となる。

 訴えるべき相手として、私は以下の3つの組織を選んだ。


1)文部科学省・宇宙開発委員会(メールアドレスはvoiceアットマークmext.go.jp)

2)内閣府・総合科学技術会議(http://www.iijnet.or.jp/cao/cstp/opinion-cstp.htmlから送付)

3)JAXA経営企画(メールアドレスはprofficeアットマークjaxa.jp)

 

 すでに議論や実態がかなり進んでいることを考慮して、即効性がありそうな送り先を選定した。

 宇宙開発委員会は、委員長以下5人の委員宛となる。

委員長     松尾 弘毅   元宇宙科学研究所所長
委員長代理   青江 茂    元日本原子力研究所副理事長
委員      池上 徹彦   前会津大学学長
委員(非常勤) 野本 陽代   サイエンスライター
委員(非常勤) 森尾 稔    元ソニー株式会社取締役副会長

 総合科学技術会議は、以下の委員宛となる。

閣僚
福田 康夫 内閣総理大臣
町村 信孝 内閣官房長官
岸田 文雄 科学技術政策担当大臣
増田 寛也 総務大臣
額賀 福志郎 財務大臣
渡海 紀三朗 文部科学大臣
甘利 明 経済産業大臣

有識者
相澤 益男(非常勤議員) 東京工業大学学長
薬師寺 泰蔵(常勤議員) 慶應義塾大学客員教授
本庶  佑(常勤議員) 京都大学客員教授
奥村 直樹(常勤議員) 元新日本製鐵(株)代表取締役 副社長、技術開発本部長
庄山 悦彦(非常勤議員) (株)日立製作所取締役会長
原山 優子(非常勤議員) 東北大学大学院工学研究科教授
郷 通子(非常勤議員) お茶の水女子大学学長
金澤 一郎 日本学術会議会長 ※関係機関の長

注意:それぞれきちんと宛名に個人の名前を入れること。でなければ、メールは各委員まで届かず、途中で止められてしまうかもしれない。
 メールが組織全体で処理する形にならないように、個人への宛名は必須である。

 総合科学技術会議は、人数が多く、メールフォームが1000文字以内となっている。短い文章で的確に意見を言うため、相手を絞る、何通かに分けて出すといった工夫が必要になるだろう。

 JAXA経営企画は、「広報気付、経営企画部御中」ということになる。

 正直、ここで私が書いている事を、すぐにJAXA広報は気が付くと思うので、「また松浦さんが余計なことをして」ということになるかも知れない。それでも、JAXA広報は一般からのメールを差し止めてるというようなことはしないはずである。

 この文章を読んでいるあなたが、一昨年の「はやぶさ」の探査を、一喜一憂しながら見守った経験の持ち主ならば、少しの勇気を奮い起こしてメールを書いてもらえれば、と希望する。

 見たいものがあるならば、「見たい」と口に出して言わなくてはならない。欲しい未来があるのなら、「欲しい」と宣言して行動するべきだ。黙って待っているだけで、望む世界がやってくるはずがない。

 「はやぶさ2」が、C型小惑星に降下する勇姿を見たいのならば、ほんの少しの行動してみよう。


 以下は、先だってnikkei BP.netで書いた実現の瀬戸際に立つ「はやぶさ2」~国内外の高評価と対照的なJAXA内での冷遇 (2007年9月25日掲載)の、その後も含めた現状である。


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「はやぶさ2」を巡る状況(2007/10/11)

 「はやぶさ2」実現にあたっての問題は、今後5年のJAXAの中期計画が、予算見積もりに縛られているということ、そしてその中に、国際宇宙ステーション、準天頂衛星、GXロケットといった、予算超過と計画遅延を繰り返したアイテムが多数存在し、処理されざる不良債権として予算を圧迫しているということにある。

 そして、文科省、宇宙開発委員会、JAXA経営企画部などは、予算を増やしたり不良債権を損切りするのではなく、そのまま抱えたまま新規アイテムを抑制することで、予算の枠内の中期計画を策定しようとしている。

 洋の東西を問わず、宇宙予算が危機的状況に陥った場合、真っ先に割を食うのは宇宙科学、それも新分野に乗り出そうとする新しい宇宙科学だ。

宇宙科学の予算が切られる理由

 宇宙科学には、学問的興味から行う不要不急の宇宙開発というイメージがまとわりついている。そして、公共事業的な巨大計画は、一応「ほら、このように役立ちます」ということを主張した上で予算を取っている(それが本当に役立つのかどうかは全く別だ)。

 予算額も大きいので「産業に与える影響が大きすぎる」という理由からメスが入ることはない。

 そこには、予算の多寡にかかわらず、1アイテムは1アイテムという役所の都合も存在する。1アイテムを財務その他で通す手間は、アイテムの大小にかかわらず同じだ。そして、産業政策としては予算の大小のみが問題となる。「小さな計画沢山」よりも「ビッグプロジェクトが少数」のほうが、管理もしやすいし、話も通しやすい。

 そして小さな計画を多数切ったほうが、「ほら、このように計画を削減して予算を節約しました」と説明もしやすい。

 「はやぶさ2」は、一番切られやすい宇宙科学の範疇にあり、しかも太陽系探査という新しい分野である。さらに、「はやぶさ2」を出発点とした一連の「プログラム的探査」の出発点でもある。このことを経営企画の側から見ると、「はやぶさ2を認めると、はやぶさ2のみならず、その後もずっと支出することになるのではないか」という危険を感じることになる。

 だから、「こんなものを、この予算の厳しい時期に認めるなんて、とんでもない」という思考に走ってしまうわけだ。

 だが、少し考えれば、健全な組織において経営企画セクションが果たすべき本当の役割は、

 1)今後の宇宙計画にとって何が必要かを真剣に考え抜き、
 2)本当に必要な計画とそうではない計画を先入観や過去の経緯を廃して峻別し、
 3)本当に必要な計画にのための予算は、なにがあっても充当する、
 4)ないしは、実施できるだけのバックアップを行う、

 ということではないだろうか。

 そして宇宙科学は、宇宙開発全体の中で、「常に行うべき事業」という地位を占めている。決して宇宙開発全体の中に占める割合は大きくないが、常時実施しつつ、次に向けた種子を蒔いていかなくてはならない。

 プログラム的探査は、未来に向けて、今こそ蒔くべき種子である。


宇宙科学を厚遇している気分になる事情


 困ったことに、JAXA経営企画セクションが「十分に宇宙科学には厚く付けた」という気分になる事情が存在する。

 次期固体ロケットの開発と、同ロケットで打ち上げる小型科学衛星が、次期中期計画に盛り込まれたことだ。次期固体ロケットは、当初開発費が100〜120億円ということだったが、この1年間の検討によりロケットが、そもそも無理がある2段式から技術的にまともな3段式になり、低軌道500kgから1.2tに能力が向上したなどの理由から200億円に増加した

 余談だが、昨年にM-Vが中止になった表向きの理由「今後4年間、内之浦のM-V発射施設を維持し、PLANET-CをM-Vで打ち上げた場合のコストは106億円になる」を、思い出してもらいたい。当時ISASは100億円でM-V第1段を改良する希望を持っていた。結果として施設維持費を考えても新ロケット開発は、M-V改良と同じだけのコストがかかることになったわけだ。

 既存ロケットを改良したほうが、信頼できる大きなロケットが入手できるのが道理である。

 次期固体ロケットの開発費用が200億円に増えたことは、ロケットの開発には喜ぶべきことだ。しかし、合理的なロケット構成を採用し、必要なコストを積み上げた結果が200億円であるということは、「そもそも、無理やりの理由を付けてM-Vを廃止に追い込んだのではないか」という疑惑に対する傍証になるであろう。

 そして、次期固体ロケットで打ち上げる小型科学衛星は1機40億円と見積もられている。

 「これだけ付けたのだから、次期中期計画で、もう宇宙科学はいいだろう」というわけである。

 しかし、そうではない。次期固体では十分なサイズの探査機を惑星間軌道に投入する能力はない(今のところ、ではあるのだけれども)。宇宙科学を次期固体に絞るということは、「日本は太陽系探査に手を出しかけたけれども、金がないから手を引きます」ということにつながるのである。
 本当に金がないならともかく、その一方で不良債権的計画は、ずるずると進行しているのだ。


なぜ、月探査WG? 「惑星」はどこにいったのか?


 宇宙開発委員会でも、JAXA経営企画セクションと連動したかのような動きがある。

 現在、宇宙開発委員会は、月探査ワーキンググループで、月探査をどう進めるかという議論が行われている。

 名称に気をつけてもらいたい。なぜ「月探査ワーキンググループ」なのだろうか。JAXAに今年度新設されたJSPECは「月・惑星探査推進グループ」だ。JAXAとしては月探査と惑星探査は一体であるという認識に立ち、まとめて推進するという意志を、組織名に示したわけである。では、なぜ宇宙開発委員会が、独立行政法人となり裁量権を増したJAXAの意志を無視しするような名称のワーキンググループを発足させたのだろうか。

 表向きは、「月に議論を絞りたいから」ということであり、惑星探査については第一回会合で報告を受けてはいる。

 だが、このような名前から入るという方法は、官僚が自分の意向を通す時によく使う手段である。後で「そもそもここは月探査について話し合う場所だから」と、惑星探査に関する議論そのものを不可能にしてしまうわけだ。

 なぜ惑星が抜けたのか。おそらく、「はやぶさ2」及びそこから始まるプログラム的探査が、議事録の残る宇宙開発委員会において、議論の対象にならないようにするためである可能性が高い。もっと具体的にいえば、宇宙開発委員会で「はやぶさ2」について語ることを禁じ手にしたわけだ。
 公的書類である議事録に、「プログラム的探査による惑星探査」「その先導ミッションとしての『はやぶさ2』」という言葉を残したくないのであろう。公的書類に言葉をを残すと、それを足がかりにさらなる主張を行うことが可能になる。
 宇宙開発委員会としては、そんな面倒な事態にしたくはないのだろう。

いいわけとしての「かぐや2」

 先だって10月5日の月惑星WGの会合後、各種メディアに、「かぐや2(セレーネ2)」の構想が一斉に出た。これはおそらく文科省の記者クラブでのレクチャーで、文科省側がしゃべったのだろう。

 これも妙な話だ。JSPECでは、プログラム的探査として、「かぐや(セレーネ)」による月周回探査、セレーネ2による月着陸探査、さらにその先のセレーネXによる月土壌サンプルリターンという流れを考えていたはずだ。これらは一つの流れで考えるべきものであり、ひとつを取り出して語るものではなかったはずである。

 なのになぜ、今、この時点で、かぐや2だけがことさらに強調されるのか。

 宇宙開発委員会(ないしはその一部)は、予算が足りないので次のJAXA中期計画では、かぐや2のみを盛り込み、その先のセレーネXにつながるプログラム的探査については、「やるかも」という程度の言質すら与えたくないのではないか。

 「かぐや2」がこのタイミングでことさらに出てくる裏には、「金がないから、かぐや2だけだぞ」という意志があるというわけだ。私達はうっかり「かぐや2が出てくるのだから、当然その次も期待していいのだろう」と思いがちだが、ロジックとしては「かぐや2は認めてやるから、それで満足しておしまいにしろ」という言い方も成り立つのである(ここらへんは、前にも書いた「官僚の文書は文面のロジックがすべて」という実態にもつながる)。

 なぜJSPECの抱える構想の中で、「はやぶさ2」ではなく「かぐや2」が選ばれたかといえば、将来アメリカの有人月探査に参加する可能性を考慮してのことだろう。

 確かに、こうして次期中期計画で、プログラム的探査の芽を潰しておけば、予算的にはJAXAは安泰ということになる。

 だが、このまま議論が進めば、次のJAXA中期計画では「かぐや2」だけ、その先はもう太陽系探査なんて大それたことは日本としてしない、というルートが、公文書の文言の中にできてしまう。

 プログラム的探査、そしてそのさきがけである「はやぶさ2」をつぶしてしまうということは、この先の日本の太陽系探査をもつぶしてしまうことにつながりかねないのである。

 一部からは「そんなことはない」と反論されそうな気もするのだが、公的文書に書かれた言葉が一人歩きし、強力な強制力を発揮することは、ここを読んでいる人ならば先刻承知だろう。
 

20年前のデジャヴ


 実のところ、月・惑星探査に関する宇宙開発委員会の議論は、私に強烈な既視感を感じさせる。

 前にも同じようなことがあった。

 20年前、私は日経エアロスペースの記者として、1987年から88年にかけて、当時の宇宙開発委員会が実施した、宇宙開発政策大綱という当時の中期計画の改訂作業を取材した。1987年度はまず「長期政策懇談会」というワーキンググループで理念をとりまとめた「長期ビジョン」を作成し、88年度に、長期ビジョンに基づいた大綱改定の議論をしたわけだ。
 この時、長期ビジョンには様々な目標が盛り込まれた。ところが実際の改訂作業に入ると、事務方である科学技術庁・宇宙企画課が「予算がない」ということを理由に、徹底的に長期ビジョンに掲載された計画を削り、結局でき上がった大綱は、夢も希望もないしょぼくれたものになってしまったのだった。
 当時の議論には、民間からも委員として多数参加していたのだけれども、その誰もが「なんでせっかく策定した長期ビジョンを無視してまで、科技庁は大綱の内容を削り続けるんだ」と不満を漏らしていたのをはっきりと覚えている。

(余談であるが、当時の科技庁・宇宙企画課課長は、青江茂・現宇宙開発委員長代理だった。今回の動きに似たところがあるのは、あるいは青江氏個人の“官僚としての仕事の手癖”が出ているのかも知れない)

 1988年の大綱改定は、結局バブル経済による税収増、そして崩壊後も続いた科学技術重視の中で、宇宙予算がそこそこ増えたことによってその問題点は隠蔽された。とりあえず予算が増えたので、危機的状況は当面回避できたのだ。

 しかし今回、予算増加を見込める国家財政ではない。財政が萎縮している今、「やらない」としてしまったら、本当に必要なことでもできなくなってしまう。


せっかくの芽生えを潰すのか


 確かに、「はやぶさ2」をつぶすということは、お役所的にはとてもスマートな解法だ。予算超過を起こさない。余計な予算を財務に要求する手間もない。既存計画を恥を忍んで潰す必要もない。

 しかし同時に、国民の期待にも応えていない。当面、役所的に平穏無事なだけで、その先になにか素晴らしい成果が得られる見込みがあるわけでもない。ただ、宇宙産業にだらだらと金を流し続ける、公共事業的計画のみが生き残ることになる。

 そして、「はやぶさ2」の終焉は、火星探査機「のぞみ」、小惑星探査機「はやぶさ」でせっかく芽生えた、日本の太陽系探査への動きを、すでに予算が付いている金星探査機「プラネットC」と、欧州との協力ミッションである水星探査機「ベピ・コロンボ」のみで打ち止めにしてしまう可能性が高い。

 検討が始まっている「のぞみ」後継機も、「はやぶさMark2」も、電力ソーラーセイルによる木星スイングバイ・黄道面脱出ミッションも、その先、2020年代の木星探査機も、「金欠日本はそれでいいんだよ」という力ない言葉とと共に、すべてなしになってしまうかも知れない。

 私としては、そのような事態は、来て欲しくはないのである。


 ここで、冒頭に掲載した5枚の写真の解説をしよう。これらはすべてネットで拾ってきた歴代の探査機が撮影した木星の画像から、大赤斑周辺を同じ縦512ドットで切り出したものである(パイオニア10の撮影した大赤斑は、木星全景しか見つからなかった。確か撮影していたはずだが)。

 それぞれの画像は、取得したセンサーも、撮影に使った波長や画像処理手法、撮影した距離やフライバイの相対速度も違う。さらにはネットに掲載するためにJPEG圧縮も受けているので、単純に比較できるものでもない。

 それでもボイジャー1号とガリレオを比べると、ガリレオのほうがより細かい気流の流れが写っていることが分かる。

 カッシーニの画像はガリレオよりもかなり遠い距離からフライバイで撮影しているが、にもかかわらずかなりの細部までを写し取っている。同じくフライバイのニューホライズンは、よく見ると、木星周回軌道から撮影したガリレオ並の精度で渦巻く流れを写し取っていることがわかるだろう。

 最初の、木星近傍を無事に通過できれば上出来だったパイオニア10から、一瞬のフライバイでも詳細観測を行うことが可能になったニュー・ホライズンへ——できることを、できるところから少しずつ、回数を繰り返してより詳細な観測へ。プログラム的探査とは、このようなデータを積み重ねていくことなのである。


 日本国民が望む宇宙開発とはどんなものだろうか。

 アメリカにお客様として乗せて貰う有人飛行ではない。

 機密保持を理由に、役に立っているかどうかすら国民に開示されない、情報収集衛星でもない。

 今になって測位信号の受信強度がどうのこうのと、最初に立てたコンセプトの筋の悪さを取り繕う議論をしている準天頂衛星でもない(そもそも準天頂衛星は2000年前後のコンセプト検討時点で、検討に参加した技術者ほぼ全員が「技術的に筋が悪いからやめろ」と主張していた)。

 ましてや、5年のはずの開発期間が10年になり、開発費は2倍かかり、上げるペイロードすら定かではないGXロケットでもない(霞が関界隈で、「何機上げたらIHIを納得させて計画中止にできるか」などという軽口が出てくるロケットの開発を続けていること自体がふざけている)。

 真に望むのは、未知の世界を探り、確実に「この世界」に対する知見を増やしてくれる、そんな宇宙活動なのである。

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2007.04.26

帰還開始にあたって補足

 はやぶさ帰還開始の報に、少し補足を。

 打ち上げ直後の運用初期は、よくイオンエンジンが異常を検出して自動的に動作を停止していた。が、現在、イオンエンジンの運転は安定している。

 地上側の臼田局は、地球が自転しているので1日8時間しか、「はやぶさ」と通信できない。通信不可能な16時間の間にイオンエンジンが停止しても、再起動は次の通信時間に行うしかない。それだけ時間を消費し、加速に使える時間が減ることになる。

 イトカワへの行程では、イオンエンジンを安定させて、時間のロスを減らすことが重大な課題だった。

 現在、Dエンジンはもちろん、ややおかしくなりかけているBエンジンも、動作は安定しており、連続運転をしても問題を起こすことはほとんどないという。これは帰還成功に向けての明るい側面だ。

 一方、今後、はやぶさが帰ってくるか、それとも帰還不可能となりミッションを終了するか、そのどちらかの結果を迎えるまで、運用チームには常以上の負担がかかることになる。

 通常、惑星間空間を航行する探査機の運用は淡々としたものだ。ほとんどの機器は電源を落として眠っているし、軌道もロケットエンジンの噴射が終了した時点でほぼ確定している。探査機とそのミッションを脅かす要素はほとんどない。
 通信を確立すれば、後は通信不可能時間帯に何が起きたかの記録をダウンロードし、場合によっては今後の動作に向けたコマンド列を送信する。時折機器に通電してチェックを行う。どれもそんなに大変な作業ではない。

 しかし、イオンエンジンを搭載した「はやぶさ」の運用は違う。常にイオンエンジンは稼働しており、探査機を加速している。だから、探査機の軌道は常に変化しており、もしも軌道がずれてしまえば、ミッションの遂行は困難になる。
 特に現状の「はやぶさ」は、化学推進剤のスラスターも使えず、ホイールは1基のみが動いている。姿勢制御が難しくなっているわけだ。探査機の姿勢が崩れれば、イオンエンジンの噴射方向が狂い、軌道に影響がでる。
 だから衛星の姿勢についても毎回の運用で調べ、地上から対応して行かなくてはならない。

 「はやぶさ」の運用では、毎回イオンエンジンの動作状態を確認し、通信不可能時間帯に何か起きていないかを調べ、場合によってはコマンドを送って動作を修正する必要がある。さらに、時折エンジンを停止して、軌道を精密測定し、今後の軌道計画を修正し、修正に合わせてイオンエンジンの運転計画を策定し、それに合わせたコマンドを送信しなくてはならない。
 姿勢に問題が出た場合も、元に戻すのに使えるのは、イオンエンジンの噴射方向だけである(緊急時には、例の生キセノンガス噴射も使うだろうが)。

 姿勢が定まらないために、高速のハイゲイン・アンテナによる通信は使えない。32bpsで通信できるミディアム・ゲイン・アンテナは姿勢によっては使えなくなる。探査機の姿勢は、あくまで太陽電池パドルに当たる太陽光の方向、そしてイオンエンジンの噴射方向が優先される。

 従って最悪の場合、8bpsの速度しか出ないローゲインアンテナで通信を行うことになる。それで、イオンエンジンの状態や姿勢を調べ、対策を立て、コマンドを送信しなくてはならない。8kbpsではない。8bps、1秒に8ビットだ。

 これは運用チームに多大な負荷をかける事態だ。これから最長で3年、運用チームは土日祝日関係なく、毎日気の遠くなるような低ビット通信で「はやぶさ」と格闘しなくてはならない。

 イオンエンジンで探査機を地球に戻すということそのものが、過去に例のないミッションだ。まして、難破しかけた探査機を、イオンエンジンをあやつりつつ帰還させるというのは、とんでもない無茶であり、成功すればアーネスト・シャックルトン隊の漂流と生還をも超える偉業となるだろう。

 運用チームの人数は決して多くない。正直、メンバーの健康が心配だ。計画的に人材を育成して投入し、一人ずつの負荷を軽減し、常にクリアな頭で判断できる状態を保てるだろうか。

 探査機に余裕がないなら、今からでも手配できる地上側の体制に余裕を持たせるべきなのだ。

 JAXA予算には理事長裁量経費も予備費もあるので、それを「はやぶさ」運用のための人件費にまわせればいいのだが。

 1914年、イギリスのアーネスト・シャックルトンは、南極大陸横断をめざし、27名の隊員と共に探検船エンデュアランス号で南極へと向かった。しかしエンデュアランス号は流氷に閉じこめられ、やがて氷の圧力で破壊されてしまう。脱出した隊員達は、無人島のエレファント島にたどり着いて救助を待つが、一向に救助船が訪れる気配はない。このままでは全滅すると判断したシャックルトンは、選抜した隊員と共に、小さな救難ボートで荒れ狂う南極の海を渡り、イギリスの捕鯨基地があるサウス・ジョージア島に救援を求めることを決意する——20世紀初頭に本当にこんな事が可能だったとは信じがたい、驚異の冒険の記録。

 シャックルトン自身の記録と合わせて、アルフレッド ランシングによる迫真のノンフィクションを推薦しておく。

 シャックルトンは、この途方もない危難に果敢に立ち向かい、超人的リーダーシップで隊員を統率する。そして遂に一人の死者をだすことなく、全員が生還した。
 南極海で船を失うだけでも大変なのに、その後小さな救命ボートで頑張り抜いてエレファント島にたどり着き、さらに荒海を1300km以上渡ってサウス・ジョージア島へ向かった精神力には絶句する。

 しかも、サウス・ジョージア島では捕鯨基地のある海岸と反対側に漂着してしまう。シャックルトンらは、前人未踏の島内部の山岳氷河を不十分な装備で越えたのだった。

 ノルウェーのアムンセン隊による南極点到達が、十分な準備が探検をどれほど容易なものにするかという例ならば、シャックルトン隊の漂流は、あきらめないことがいかに重要かを示している。

 シャックルトン隊の漂流を描いたテレビドラマ。基本的に汚い男共と、海と雪と氷と岩しか出てこないが、ラストの感動は圧倒的である。

 シャックルトンの名前は、探検隊員募集の文句と共に永遠に記憶されるだろう。

"MEN WANTED FOR HAZARDOUS JOURNEY. SMALL WAGES, BITTER COLD, LONG MONTHS OF COMPLETE DARKNESS, CONSTANT DANGER, SAFE RETURN DOUBTFUL. HONOR AND RECOGNITION IN CASE OF SUCCESS."

「危険な旅に男求む。低報酬、厳寒、何ヶ月もの完全な闇、常なる危険。生還は疑問。成功すれば名誉と名声あり」

 その通りの旅を、シャックルトン以下28人は、一人として欠けることなく完遂したのだった。

 だが、運命は過酷だ。生還した隊員達のほとんどは、そのまま第一次世界大戦に従軍し、その多くは戦死した。シャックルトンはさらに南極探検に執念を燃やすが、1922年、新たな探検に向かう途上、サウス・ジョージア島で、心臓発作のために急逝した。

 どうせ危難が避けられないなら、シャックルトンを超えたいと思う。締めくくりは「そして、みんな幸せに暮らしましたとさ」でありたい。

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2007.04.24

明日帰還開始宣言、ますます状況は厳しく

Kawaguchikuninaka

 本日午後4時30分から、「はやぶさ」帰還に向けた記者会見がJAXA東京事務所で開催されました。

 出席は川口淳一郎教授(プロジェクト・マネージャー)、國中均教授(イオンエンジン担当)、吉川真助教授(プロジェクト・サイエンティスト)。

 まず川口プロマネから現状説明。

・明日午後17時に帰還開始を宣言する。
・本日16時30分をもって「はやぶさ」の取得データの公開を開始。


 状況はますます厳しくなっています。イオンエンジンはついに1台のみの運転となりました。


國中教授からイオンエンジンのステータス説明

・2月22日~3月2日:イオンエンジン加速を用いた姿勢維持の試験開始
・3月3日~9日:JPLの支援を受けつつ精密な軌道決定
・3月12日~16日:イオンエンジン2台による連続イオン加速を実施(試験運転、可視時間のみの運転)
・3月28日以降:微調整を行いながら、イオンエンジン2台による連続イオン加速(調整を加えつつ、24時間運転。ただし土日は停止、4月に入り連続24時間運転へ)
・4月20日:イオンエンジンBスラスタの中和電圧が上昇したために、Bスラスタを停止。Dスラスタのみの加速に切り替えた。

スラスタの運用状況。

 Bスラスタは9600時間の運転に達しており、一部性能低下が見られる。また、はやぶさが近日点通過することによる温度上昇で、動作不安定が起きている。
 AとCスラスタは動作特性が安定していない。

 帰還はDスラスター1台で当面加速する。

各スラスターの運転履歴。

A:待機、このエンジンはチューニングが悪かったらしく最初から性能が安定しなかった。
B:9600時間
C:6500時間
D:11100時間

各スラスターの設計寿命は、14000時間。

 発表資料のグラフを使った説明。

 当初予定は、太陽から近い位置ではホイールを回転させてイオンスラスター2台を運転、太陽から離れたらホイールを止めてイオンエンジン1台を運転することにしていた。しかし、イオンエンジンBの動作不安定により、常時ホイール回転でエンジン1台による帰還運用を実施することを決断した。


 吉川助教授より、観測データ公開の説明。

 「はやぶさ」に搭載した4つのセンサーの全データを公開する。

 データは自由公開。登録もパスワードも不要。ただし研究者用公開なのですべて英語で書かれている。その主旨は全世界の研究者に公開するということ。

 今回の公開データはレベル1(もっとも生に近いデータ)を公開する。一部についてはキャリブレーションを加えたもの(レベル2)データも公開する。レベル2データは今後アップしていく。
 イトカワの形状モデルはより高次の処理を施したデータだが、要望が多いので公開した。

 データに必須のいつどんな条件で取得したかなどのドキュメンテーションの整備は、遅れている。まだ十分ではない。
 公開画像には撮影に失敗した画像もすべて入っている。

 川口から補足。

「正確には『帰還できないわけではない』というのが現状。正常運転が可能なイオンエンジンはDのみ。これから数千時間を運転しなくてはならないので、設計寿命は完全に超えてしまう。

 また、ターゲットマーカーが写っているようなデータは今回の公開には入っていない。あの画像は探査機運用用のデータなので、今回公開の対象に入っていない。今後科学分析に使えるようにデータを整理してから公開したいと思うが、まだそこまで手が及んでない。」

以下は質疑応答

時事通信:ホイール回転とどのイオンエンジンを使うかで、有利不利が生じるか。

國中:Dエンジンとホイールの組み合わせは、そう悪くはないと考えている。ロール軸周りのトルクが発生しにくい位置関係だ

共同通信:中和器の電圧は何を示すものか。

國中:イオン流の電流だけ同じだけ電子を出すというもの。その電圧が上がっているということは電子が出にくくなっているということを意味する。機能としては100Vまで出すように作ってあるが、電圧が上がると寿命が短くなる。設計上は50Vを目安に作ってあるので、このままではエンジンの寿命が短くなると判断して停止した。2台を同時運転するとエンジン温度が上がり、寿命に影響する。
 また、はやぶさは2台のイオンエンジンを別個に推力スロットリングする設計にはなっていない。したがってBとDを最適なスロットリングで同時運転することはできない。1台づつならば、それぞれのエンジンに最適な運転条件で運転することができる。

朝日新聞:Dスラスターのみで帰還は可能なのか。またAとCを運転する可能性はあるか。

國中:現在は1台のみの運転で帰還できる軌道が存在するということ。地上試験では2万時間までの動作試験をしているが、Dのみ動作で2万時間以内で軌道設計をするのは難しい。ただし、2万時間以上は地上でも実証していないので、それ以上動くこともありうる。

川口:プロマネとしてはもっと押さえた言い方をしなければならない。スラスターについては1万4000時間で設計しても1万時間以下で調子が悪くなる個体が出てきている。だから、1万4000時間から2万時間はエキストラだと思っている。エキストラがなければかえってこれない。ホイールは壊れるかも知れませんね。3台のうち2台は壊れているわけだから。

 帰還時期は変化するのか。ホイールの回転数を下げると聞いているが、Z軸のホイールなしの地球帰還もありうるか。

國中:現状ホイールは3500rpmで回している。通常は4000ぐらい。往路3つが生きていた時は2000ぐらいで使っていた。今後1800ぐらいまでホイールの回転は徐々に下げていく予定。イオンエンジン1台になったので、外乱も小さくなりますから。

川口:今日の会見は「こんなに困っています」という報告の会見です。それが私の主旨です。「これから出帆するぞ」ではないです。

朝日新聞 信号でいえば黄色と赤とどっちが近いか。

川口:定量的には難しいです。イオンエンジンがだめになっても、ホイールがだめになっても、帰還は難しいです。四月上旬の段階では心配はホイールだけですから、心配事は増えています。「帰還できないと決まったわけではない」ということ。

時事通信 地表に近接した時の画像はどこまで得られていますか。

吉川:現在、公開データには距離の情報がまだ入っていません。タッチダウン前後の画像は約60m前後で撮影しています。現在写真ヘッダに補足情報を入れる作業をしている。

フリーランス・喜多:積み木を積んで抜いていくゲームがありますが、それにたとえれば、あといくつのピースを抜くことができるでしょうか。

國中:難しい質問ですが、2010年の帰還チャンスを逃すと次は2013年にしかかえってこれません。延びると機械が非常に厳しくなります。あと2、3個ピースを抜かれるともう無理だと思います。本来僕らは、探査機を一本もピースを抜けないように作っているのですが、それがこうなっています。ともかくここまでがんばっているので。がんばります。


フリーランス・青木:今までと違う特徴的な画像がリリースに出ていますけれど、解説をお願いします。
 以下リリース参照。

吉川:5番の写真はミューゼスの海の近くの荒い地形のコマバ・クレーターの一部です。6番はその一部の拡大で、先だっての東大の宮本先生の論文発表に関係する部分です。7番はペンシルボールダーというごつごつした地域の地図です。


松浦:2010年の帰還までに累積でどれほどイオンエンジンを運転する必要があるのか。

川口:残り時間3年。そのうち1/3、つまり8000時間から1万時間はイオンエンジンを運転しなくてはならない。これは1台運転の場合だ。調子の悪いエンジンを運転することで累積の運転時間を稼ぐこともあり得る。

國中:調子の悪いエンジンは1000時間ぐらいしか運転できないかも。逆に言えばそれだけ累積運転時間を稼げる可能性はある。それも含めていくつかの策を現在考えている。


 記者会見終了後のぶらさがり取材にて。

川口「明日の帰還宣言といっても何かが変わるわけじゃないですよ。船が赤道を超えるのと同じ。今だって(はやぶさは)加速しているわけだし。これはマスコミの人たちが『区切りをつけてください』というから、やるわけですよ」

川口「ぼくは、決して楽観できないと考えている。『帰還できないわけじゃない』。(國中教授の方を見て)この人はそうは思っていないみたいだけれども」
國中「川口先生はこう言っていますけれど、僕としてはまだ打つ手がいくつか残っていると考えています」


以上です。

 写真は、川口プロマネ(左)と、國中教授(右)

23:13記 文章の乱れを直しました。

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2007.02.06

宣伝:2月10日(土曜日)、ロフトプラスワンのライブトークに出演します

 ロフトプラスワンで、小惑星探査機「はやぶさ」関係者の話を聞くシリーズ。今回は、科学観測を担当した科学者達に、小惑星イトカワがどんなところだったのか、はやぶさの観測でどんなことが分かり、どんな謎が新たに生じたのかをお聞きします。

 なお、当初は吉川真さん(JAXA/ISAS)が出演の予定でしたが、都合のため中村良介さん(産総研)に変更となりました。ご了承ください。


宇宙作家クラブpresents
ロケットまつりスペシャル 「はやぶさは見た」
2005年の9月から10月にかけて、小惑星イトカワに到着した「はやぶさ」は、様々な科学観測を行った。イトカワはどんな場所だったのか、何が分かり、どんな謎が残されたのか。
「はやぶさライブ」第三弾は、惑星科学者達が解説する「はやぶさ」の科学観測成果です。
【出演】安部正真(JAXA/ISAS)、中村良介(産業技術総合研究所)、平田成(会津大学)、松浦晋也(ノンフィクション・ライター)ほか

ロフトプラスワン
新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2 TEL 03-3205-6864
地図

Open18:00/Start19:00
¥1200(飲食別)

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2006.12.04

「はやぶさ2」実現に向けて

 小惑星探査機「はやぶさ2」の予算要求を巡る動きが激化している。
 「はやぶさ2」は、昨年小惑星イトカワへ着陸した探査機「はやぶさ」の同型機だ。イトカワは岩石を主体としたS型という分類に入る小惑星だったが、「はやぶさ2」は、炭素を主体としたC型小惑星へ向かう。現状では2010年に打ち上げを検討している。

 JAXAはやぶさページに11月29日付で「はやぶさ」の近況と「はやぶさ2」に向けてという文章が公開された。起草者の名前はないが、文章のタッチは川口淳一郎プロマネのものである。
 アメリカが小惑星サンプルリターン計画「オシリス(OSIRIS)」を立ち上げたことに強い危機感を感じていることがはっきりわかる文章だ。

 アメリカは「はやぶさ」が失敗すると判断し、自分たちが最初の小惑星サンプルリターンを行うつもりでいる。予算は4億2500万ドル(1ドル115円換算で、489億円)。「はやぶさ」は探査機本体が約127億円。打ち上げに使ったM-Vロケットが約70億円の、およそ200億円ほどを使った計画なので、規模として約2.5倍ということになる。

 文章中には「●もう追われる立場に:まるで逆なで...です。」「●はやぶさの成果もまた盗られてしまうのでしょうか。」という、厳しい現状認識を示す文言が入り、以下の悲鳴にも近い言葉で締めくくられている。


 応援してください、「はやぶさ2」。「はやぶさ」の成果があぶない。

 来年度の予算で、計画開始が認められないと「はやぶさ2」の出足は鈍り、「はやぶさ」の成果継承すら危うくなるという現状なのである。

 私が色々聞いた範囲での「はやぶさ2」の予算請求の状況は以下の通りだ。

 まずJAXA内部の状況

  • 「はやぶさ2」開発を2007年度に開始するにあたって初年度に必要な予算は、5億円以下(正確には4億数千万円程度)。そのほとんどは、相手国の輸出許可を取るために、時間的に先行して発注しなければならない海外製部品を入手するための予算。つまり、この分だけ来年度予算が付かないと自動的に2010年打ち上げはお流れとなる。
  • JAXA内部で、「はやぶさ2」に対する反対意見はほとんどない。誰もが「やるべき」と考えている。
  • しかし、2007年度JAXA予算請求における新規計画の優先順位で、「はやぶさ2」は3番目、実質4番目に位置付けられている。
  • 優先順位の1位は、地球観測衛星「みどり」「みどり2」を引き継ぐ地球観測計画「地球環境変動観測ミッション(GCOM:Global Change Observation Mission)」
  • 同じく1位で、スペースVLBI衛星「はるか」を引き継ぐ次期VLBI衛星ASTRO-G(VSOP-2)
  • 順位2位、実質3位は、航空機プログラムグループ静粛超音速機技術の研究開発
  • 「はやぶさ2」はその次。

 そして、予算を巡る財務省の対応は、だいたい以下のようなものだという。

  • 財務省は、「はやぶさ2」の実施に反対していない。JAXAの裁量で実施すればいいという考え。そのための独立行政法人だろうということ。
  • 財務省としては、2007年度JAXA予算案に強い不信感を抱いている模様。きちんとした既存計画のリストラを実施した上で、新規計画を立ち上げるべきところを、ずるずると失敗プロジェクトを引きずっていると見ている。
  • 槍玉に挙がっているのは「GXロケット」と「準天頂衛星」(現状では、私がどこに何を聞いても、この2計画は問題視されているという返事が返ってくる)。  他にも財務省が問題だと見ているプロジェクトは存在するらしいが、中でも上記2計画はかなり風当たりがきびしいらしい。どうも想像するに、「はやぶさ2」は上記2計画を削ってやればいい、ということのようだ。

 正直なところ、優先度の付け方が、旧NASDA、ISAS、そして旧NALとなっているあたり、まだまだJAXAの内部は縦割りできちんと構造改革がなされていないという印象を受ける。

 が、それはともかくとして、我々納税者に、「はやぶさ2」実現に向けて、できることはあるだろうか。


1)JAXA予算を増やす方向で、「はやぶさ2」計画実現を後押しする

 政治と行政の側に、「はやぶさ2」実現を訴えるメールを送る。送り先は以下の通り(なお、申し訳ないがスパム対策として、メールアドレスのアットマークは「あっと」と記述した。各自変換して送付してほしい)。


首相官邸、内閣官房、内閣府

財務省

文部科学省

2)JAXAの内部計画を整理することにより、「はやぶさ2」を実施できるだけの予算的余裕を確保する。

  • 立川敬二理事長、間宮馨副理事長:現在ホームページの問い合わせフォームはトラブルで停止中。広報の公開メールアドレス「profficeあっとjaxa.jp」に送付する。宛先は「JAXA理事長:立川敬二様、同副理事長:間宮馨様」


 以前財務省のご意見箱に投稿するにも書いたが、あくまで「はやぶさ」に興味を持ち、「はやぶさ2」の実現が楽しみであり、「はやぶさ」の近況と「はやぶさ2」に向けてに共感できるという方に、上記への意見送付をお願いしたい。

 ネットではマルチポストは嫌われるが、現実社会ではまだ対面によるコミュニケーションのほうが圧倒的に強い。これだけ多数に送るとなると、マルチポストを連想して嫌な気分になる人もいるだろうが(私も少々居心地の悪さを感じることを告白しておく)、相手は一人なので、これはマルチポストではない。それでも、送付する文面は相手の状況や興味を考えた上で、異なるものにしたほうが良いことは言うまでもない。大変ではあるのだけれど。
 もちろんリストアップした全部に意見を送る必要はない。自分なりに取捨選択して送ってもらっても構わない。

 送付先が多数になるので、くれぐれも間違いがないように。そして相手に失礼がないように気をつけて頂ければ幸いである。

 言い出した私が逃げるわけにはいかないだろう。私自身の送付内容については、後日このBLOGで公開することとする。

 なんといっても、私自身が、またあの素晴らしい体験をしてみたいのだから。

 最後にお願い。「自分は意見を出したよ」という方で、ホームページなりblogなりを持っている人は、この記事にトラックバック、ないしはコメントを付けて欲しい。後で「はやぶさ2実現に向けて」というリンク集を作りたいと思う。

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2006.06.02

「はやぶさリンク」:イオンエンジンは無事、サイエンス誌で特集

 もうご存知の方も多いだろうが、JAXA?ISASから、「はやぶさ」関連の発表が一度に出た。以下、関連も含めて、少しコメントを書く。

2006年5月末現在の「はやぶさ」探査機の状況について
 6月1日付けの毎日新聞の「イオンエンジン2基が生存」というスクープ記事に対応した、川口淳一郎プロマネのコメント。地球帰還に必要なイオンエンジン2基の動作が確認できたことを、公式に公表した。

  現在、「はやぶさ」探査機は、交信と運用には問題はありませんが、いくつか検討を要する比較的大きな問題があります。その検討には、地上試験や比較的長期の飛行履歴の調査を要するため、現時点では正確な状況をお知らせすることができません。

というのが気になるところ、「比較的大きな問題」で「地上試験や比較的長期の飛行履歴の調査を要する」となるとイオンエンジン回りか、とも思える。ともあれ焦ることはないので、公式発表を待つことにしよう。

「はやぶさ」によるイトカワの科学観測成果、科学雑誌「サイエンス」が特集!
 やっと出ました。この雑誌掲載にあたっての縛りがあったので、今まで「はやぶさ」が観測したデータの、もっとも驚異に満ちた部分が公開できなかったのだった。
 「ネイチャー」とならぶ科学誌「サイエンス」に特集を組ませたというのは、大変な快挙と言っていい。論文執筆のあれこれは、いくらかは聞いていたが、情報の整理やサイエンス編集部側との折衝など大変だったようだ。「はやぶさ」サイエンスチームの皆さん、ご苦労様でした。

「はやぶさ」プロジェクトが、Space Pioneer Award を受賞
 5月6日、米National Space SocietyのSpace Pioneer Award を受賞した。未知へ果敢に挑んで成果を挙げたことが、アメリカではきちんと評価されたということだろう。

HAYABUSA SYMPOSIUM 2006
 「はやぶさ」の成果について話し合う国際学会の案内。7月12日から14日まで。場所は東京大学本郷キャンパスの東京大学武田先端知ビルのホール(地図)。

 それでも、まだ日本の中では、「はやぶさ」の成し遂げたことに対する認識は薄い。つい先日も、在京テレビキー局のそこそこ偉い人が、「我々とししては、はやぶさは失敗したものと考えている」と言った、なんて話を耳にしたばかりだ。

 そして、「はやぶさ」の劇的なまでの成功とはうらはらに、宇宙科学は予算不足から引き潮ムードになっているし、日本の宇宙開発全体を見ても、どうにも整合性が取れて力強く前に進んでいるとは言い難い状況になっている。

 「めでたいのに余計なこと言うな」と蹴飛ばされそうだが、事実は事実。きちんと見つめた上で、少しでも前に進むように考え、行動して行きたいと思う。我々は、やればできるということを「はやぶさ」は証明してくれたのだから。


アステロイド 光の港

未踏の天地

星の姿 星間物質

凍るるところ

カメラの目に映る

モノクロの像にさへ

青春燃ゆる 生命は躍る

未踏の天地

蒲田行進曲のメロディで:あさりよしとおさん作の替え歌

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2006.03.07

本日午後7時からの記者会見

 3月7日午後7時からの、川口淳一郎プロマネの記者会見。質疑応答の要旨です。

 記者発表はJAXAホームページにアップされiています。そちらを参考にしつつお読み下さい。
 
共同通信 化学エンジン推進剤がほぼ全量喪失とあるが、相当残存しているとはどういうことか。採取容器を回収カプセルに移すというのはベーキングから試料を守るということか。

川口 残留しているのはタンク内ではなく、探査機内部や断熱材ということ。タンク内になければ推進剤として使えない。
 また、採取カプセルや回収カプセルに推進剤を入れたくないということ。まずベーキングして外へ追い出してからカプセルを閉じる。

共同通信 では、姿勢制御は化学エンジンではできないということか。

川口 11月末から推進剤系のラッチングバルブを開けようとしてきたが、うまくいかなかった。
 現状は酸化剤も残量センサーの指示がゼロ。これはまだセンサーがこわれているのか、本当に漏洩したかは分かっていない。センサー故障なら、ラッチングバルブをあけば、酸化剤を噴射して姿勢制御することはありうる。

 最悪の場合はイオンエンジン用キセノンを噴射して姿勢制御を行うことを考えている。キセノン残量は42〜44kg。計算上はキセノンによって姿勢制御をしつつ帰還することは可能な量が残っている。あくまでも計算上ではあるが。そもそもイオンエンジンが稼働するかどうかも未確認である。

不明 電源を起動する見込みはついているのか。

川口 説明があまり良くなかったかも。12月初旬に姿勢が大きく乱れた時点で、太陽電池に光があたらず電力がなくなった。1月23日の時点で、地球や太陽から70度はずれた軸でスピンをしていた。はやぶさはイオンエンジンを運転するので大きな太陽電池がついている。現在どんどん太陽を向きつつあるので、ますます電力は増えてきており、ベーキングに必要な電力は確保できる。

毎日新聞 2010年帰還のためのタイムリミットは。

川口 2007年初めではイオンエンジンは2台動いていれば帰ってくる。3台のイオンエンジンが生きているとすれば、1年以上帰還開始時期を遅らせることができる。

毎日新聞 着陸前後の状況のデータは取得できているか。

川口 昨日、本日の段階でデータレコーダーに記録は見つかっていない。一度完全に電源が落ちているので消えた模様。ただし今後精査すれば取り出せる可能性が残っているかも知れない。

東京新聞 テレメトリが取れると言うことでは、帰還に向けた作業は楽になったのか、それとも状況が判明したことで深刻さがわかったのか。どう受け止めているか。

川口 12月初旬と比べると、状況は悪くなっている。12月上旬なら2007年に帰還できる可能性があった。通信途絶ということから考えると、もう天国と地獄だ。この2月3月に回復できる確率は4割程度だった。

東京新聞 バッテリーはもうだめなのか。

川口 バッテリーは短絡が発生しており、充電すると爆発する可能性もある。今後とも使うつもりはない。惑星探査機は日陰がないので太陽電池がしかるべき方向を向いていれば運用が破綻することはない。
 ただし、電力余裕が少ない運用はできなくなる。

共同通信 推進剤漏洩はどこから起きたのか。テレメトリからは分からないのか。

川口 11月末に起きたスピン、速度変化と、今回通信回復した状況でのスピン、速度変化は一致しない。異なる部位が壊れて漏れた模様。どこが壊れたかは難しい問題。「ここがこわれた」という情報がない。

産経新聞 姿勢制御コンピュータやスタートラッカーが動くかどうか分かるのはいつか。

川口 姿勢制御コンピューターの機能は2から3週間で分かる。姿勢制御コンピューターは性格の異なる3系統搭載されており、故障していたとしてもバックアップで対応できると考えている。スタートラッカーは、スピンを止めないと機能を確認できない。今年末頃になる。しかしこれらが駄目になっていたとしても、広角カメラでスタートラッカーを代用するというような方法でできないわけではないだろう。

日経サイエンス キセノンガスで姿勢制御をするのはイオンエンジンを点火するのに必要ということか。

川口 違う。イオンエンジンの中和器からキセノンガスを噴出してその反動で姿勢を制御するということ。

日経新聞 地球帰還は厳しいのか。

川口 テレメトリが取れたことで必要条件を満たした。まだまだ帰還に向けた関門がいくつもある。イオンエンジンその他の健全性を確かめ、それらがすべて正常であれば地球に戻れる。常識的に考えれば厳しい。この探査機が生きていることが奇跡だと思って欲しい。

共同通信 ベーキングまではスピンした状態なのか。

川口 そうだ。スピンの状態でベーキングを行う。イオンエンジンの運転に合わせて三軸制御を確立する。イオンエンジンを運転しつつイオンエンジンで姿勢制御をするということになる。
 生ガスを中和器から吹いて姿勢制御するかは検討中。イオンエンジン停止時の姿勢制御は、生ガスの中和器からの噴射で行うことになるだろう。


 本日発表をした理由は、「新たなリスクをかけた運用が始まる」ということ。この段階で発表しないと「復旧した」という発表ができなくなるので(ここで笑いが起こる)。

週刊ポスト 喜びの声を聞きたいです。1月23日のビーコン取得と、テレメが取れたという時。

川口 信じられなかった。予想よりもずっと強い電波で入感してきたから。運用担当者も「本当かどうか分からないので、地上のアンテナを振って、本当にはやぶさの方向から来ている電波なのか確認してみた」と報告してきた。当日は半信半疑、翌日再度確認して、電子メール交換で全員歓喜した。スピン速度は1周50秒から1分程度で、電波の強弱がこの周期が起こる。1分のうち20秒だけコマンドを受けてくれるという状況だった。その20秒に、うまくコマンドが到達するように地上側で工夫した。

毎日新聞 どの程度の期間停電していたのだろうか。

川口 自然状態では1日0.7度程度姿勢が変わっていくので、かなりの日数は横方向から光が当たっていたはず。

時事通信 ベーキングの目的と、その温度は。

川口 ガスを排出するため。温度は設定運用温度の上限まで上げればいい。ただし時間はかかるだろう。50℃程度。

NHK ベーキング過程でガスが漏れて姿勢が乱れれば、より悪い状況になるのか。

川口 再度姿勢をロストすれば基本的には1月時点に戻るわけだが、それによってなにかが壊れてしまう可能性はある。低温になると回路基盤が膨張率の違いで割れたり回路がはがれたりということが起こりうる。
 ベーキングに使うヒーターは機体の各所に取り付けてある。

NHK イオンエンジンで姿勢制御するということは、イオンエンジンは首振りできるのか。

川口 これからジンバル機構を試験する。中利得アンテナのジンバルと同じ

宇宙作家クラブ 酸化剤が漏れたとなると爆発が起きた可能性はどう考えるか。

川口 まず本当に酸化剤が漏れたかどうかを確認しなければならないだろう。少なくとも酸化剤と燃料が接触してはいないということだろう。

週刊ポスト 次の会見のタイミングは。

川口 帰還を開始したというところだろう。ここの機器の復旧の様子はインターネットで知らせるのでいいのではないかと私は考えている。

広報 会見については別途相談させて頂きます(笑いが起きる)。


 会見終了後のコメントから。

 コーニング運動は1月の通信回復時点で、止まっていたと推定される。
 
毎日新聞「12月に『重病人が手紙を出すためにポストに行くようなもの』と言っていましたが、ポストにいけるようになりましたか」

川口「より重症になっているが、杖のつきかたはうまくなっているのかも知れませんね。」

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はやぶさは生きていた

 午後7時から、はやぶさに関する記者会見実施中です。

 はやぶさは生きていました!

 発表要旨

 1月下旬からビーコン電波が受信できはじめる。

 2月6日には、新たな姿勢制御プログラムを送り込み。キセノンガス噴射でアンテナを地球に向ける運用を実施。

 2月25日から低利得アンテナを介して8bpsのテレメトリ受信が可能に。

 3月1日に距離計測を実施・

 3月4日から低利得アンテナで32bpsのテレメトリ受信が可能に。
 12月の通信断絶以降、酸化剤も漏れたようで、テレメトリから読み取る限り、残量が燃料・酸化剤ともに全くない。バッテリーは準短絡状態。

 3月5日には軌道決定ができた。現在、はやぶさはイトカワ進行方向1万3000kmのところにあり、相対速度3m/sで飛行中。太陽からの距離は、1億9000km、地球からの距離は3億3000万kmにある。

 今後、探査機の温度を上げて漏洩した燃料・酸化剤を追い出すためのベーキングを行う。
 今年後半から来年初めにかけてイオンエンジンを本格的に起動する

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2006.01.08

「はやぶさリンク」:石橋を叩くな、渡れ!

 本ページで続いていた「はやぶさ」を巡る議論も、そろそろ出尽くしたようだ。
 私自身は、ここで議論して結論が出るとは思っていない。書き込みをしてくれた人たちが、ここで交わされた意見に基づいてもう一度考え、次の機会にまた意見を表明することが重要だと考えている。
 これまで、私自身の意見を開陳することは控えてきたが、そろそろきちんと書いておくべきだろう。

 議論の中心となったのは、1)「はやぶさ」は成功か失敗か、2)メディアはよりわかりやすく「成功/失敗」に特化して報道すべきか——ということだったように思う。まずは1)のほうを。2)については日を改めて書きます。

 昨年11月、何度も相模原の特設プレスセンターにかよいつつ、なによりも強く感じたのは、「きっとマリナー、パイオニア、ヴォイジャーといった探査機が目標に近づいた時のジェット推進研究所は、こんな雰囲気だったに違いない」ということだった。
 誰も見たことがない、未踏の地に近づくということが、その場の雰囲気すらも独特の色に染めてしまっていた。「なるほど、未知の世界に赴くというのはこういうことだったのか」と、私は思った。

 「はやぶさ」ミッションで、最も重要なことは、「日本が主体となって人跡未踏の地に初めて赴き、未だ誰も体験したことのない環境で誰も見たことがない世界を観察し、誰もやったことのないことをやろうとした」ことだ、と私は考える。

 これまでの日本の宇宙開発は、基本的に「できると分かったことをやる」という方向で進んできた。日本がロケット開発に手を染めたとき、すでに「ロケットというものが作れる」と分かっていた。日本が「おおすみ」を打ち上げた時、すでにいくつもの人工衛星が地球を回っていた。
 その後の旧NASDAミッションは、すべて「できると分かっていることを自分でやってみる」というものだった。
 旧ISASミッションも、ほとんどはそうだった。日本がX線天文衛星を打ち上げた時、すでにアメリカの「ウフル」が「宇宙に出てX線で観測すると、新しい世界が見える」ということを証明していた。オーロラ・磁気圏観測も、「エクスプローラー」によるヴァン・アレン帯発見以降、「宇宙からの観測で色々分かる」ということは判明していた。太陽観測では「ようこう」が大きな成果を挙げたけれども、その前にスカイラブの太陽望遠鏡が「宇宙から太陽を見るとすごいぞ」ということを示していた。
 過去四半世紀の旧ISASミッションは、素晴らしい結果を出したけれども、基本的に「できると分かっていることを、より先に進める」という性格のものだった。その過程における技術革新や新しい観測機器の開発、得られた科学的成果を小さく見積もる気は全くない。しかし本質の部分では「先例があり、先の見通しがある」ミッションだった。

 「はやぶさ」は違った。

  「イオンエンジンが宇宙空間で長時間運転できる」という保証はなかった。えんえんとイオンエンジンを噴射し続けて、なおかつきちんと探査機を誘導し、目的の小さな小惑星に探査機を到着させることができるかも、誰もやったことがない事柄だった。
 重力が小さな、差し渡し500mの小惑星の近傍に探査機をきちんと留め置くことができるかも分かっちゃいなかった。ましてや、接近し、着地し、サンプルを採取し、もう一度飛び上がれるかどうかは、誰も「できる」と確信を持って言うことはできなかった。例えトラブルがなくても、サンプルを持って帰れるかどうかは、はっきり「できます」と言えるようなことではなかった。

 これを無責任だと思うだろうか。「できるかどうか分からないことに国費を費やすというのは、納税者に対する背信だ」と感じるだろうか。

 そうじゃない。これこそが「未知の世界に挑む」ということなのだ。それは「運を天に任せる」というのとはまったく異なる。

 日本最初の南極越冬隊を組織した西堀栄三郎は「石橋を叩けば渡れない」という名言を残した。
 渡らねばならぬ石橋がある。大丈夫かどうか、叩いていると色々と疑念がわき上がってくる。「本当にできるのか、どうなのか」、自分の気持ちが自分を縛ってしまい、渡れる橋も渡れなくなってしまう。
 だからまず「渡る!」と決める——そう西堀は考えた。そして「石橋を渡る」ために考え得る限りの準備をする。しかし、人間は全知全能ではないので、必ず抜ける部分がある。抜けがないなんてことはあり得ない。それは、現地に赴いてからの工夫で切り抜ける。
 この考えに基づいて、西堀は越冬隊を準備し、成功に導いた。

 はやぶさのミッションを子細に観察していくと、まさに西堀が示した方法に乗っ取っていることが分かる。できるかどうか分からない。だから徹底的に準備する。それでも不測の事態は起きる。それはその場その場の判断で乗り切っていく——というように。

 「未知に挑むような危ないことを、日本はしなくていい。できると分かったことだけを着実に進めるべきだ」という考えもあるだろう。しかし私はその意見に与しない。
 「恐るべき旅路」の後書きにも書いた事なのだけれど、未知に挑む事業は、社会に活気を与える。その活気は巡り巡って、日本を、さらには世界を刺激し、根源の部分から人類社会を富ませることになる。
 例えば、パイオニアやヴォイジャーが、どれほどの刺激を人類社会に与えたかを考えてみよう。
 糸川英夫博士がペンシルロケットを飛ばしてから50年、パイオニアやヴォイジャーに遅れること30年、我々のJAXA/ISASは、やっとその場所にたどり着いたのだ。誰も行ったことがない、誰も見たことがない場所へ。

 同時に、「はやぶさ」が始まりでしかないということも、我々は認識しておく必要があるだろう。
 akiakiさん、というよりも秋田大学の秋山演亮さんが、2005年12月29日の日記に記している川口淳一郎教授の言葉は、とても重要だと思う。

今回のミッションの成功・不成功という議論はさておき、自分としてはようやく「世に問う」事が出来る形にまで持ってくることが出来たと思っている

 私には、常に端的で鋭い言葉を吐く川口プロマネが、「君の話は長すぎてケーキの蝋燭が燃え尽きちゃうよ」と言われるほどの長いスピーチをしたというのも驚異なのだけれど(一体どんなことをどんな調子で話したんでしょうか←秋山さん)。
 現状を川口プロマネは「世に問うところまで持ってきた」と認識している。


 確かに川口プロマネ以下計画に参加した人々は、「はやぶさ」で大冒険(あえてこの言葉を使おう)をやってのけた。冒険はまだ続いている。

 でも、まだまだ始まりなのだ。

 今、この瞬間もNASAが土星に送り込んだ探査機「カッシーニ」は、土星系の驚異の姿を地球に送り続けている。

Cassini-Huygens

 「はやぶさ」の先には、もっと途轍もない、驚異の世界が待っている。「はやぶさ」は必死のオペレーションであれだけのことをやりとげた。でも同時にその大冒険は、次の冒険への序奏なのである。否、これからの努力で序奏にしなくてはいけない。

 「クレージーキャッツの大冒険」を知っている人は、歌詞を思い出して欲しい。あ〜あ〜、大冒険、大冒険。でも、まだ我々は「はやぶさ」で、宇宙に対して「ちょっと百円貸してくれ」と頼んだだけなのである。

 もちろん「カッシーニ」は「はやぶさ」の何十倍ものお金をかけた巨大計画だ。比べたら「はやぶさ」がかわいそうだろう。でも、「はやぶさ」の先に、もっとすごい世界があるということを知るのは、決して悪いことではない。

 それが「百円借りる」程度であっても、我々は「はやぶさ」ミッションで、やっと未知の世界への入り口にたどり着いたのだ。胸を張って良いと思う。そしてこれから先も、胸を張って進んで欲しいと、私は思う。


 最後は、宮沢賢治「青森挽歌」のフレーズで締めくくろう。

ヘツケル博士!

わたくしがそのありがたい証明の

任にあたつてもよろしうございます

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2005.12.27

Google Danceを観察する

 はやぶさ関連といえば関連なのだが、直接はやぶさに関係ない、奇妙で、楽しい出来事が起きた。
 日経・清水編集委員への反論を書いた記事が、検索エンジンのGoogleから一時消失し、その後復活した。何が原因かは不明だが、その間Googleのどのサーバーで検索するかによって検索結果が異なる、さらには同一サーバーでも検索するたびに結果が異なるという現象が発生した。
 こういう現象はGoogle Danceと呼ばれるそうだ。多数のマシンをクラスター化したサーバー群で構成されているGoogle内部のキャッシュが更新される過程で、不整合が発生するのが原因という。

 私は、何人かの知人の協力を得てその過程を観察することができた。実に興味深かった。


 Google Danceについては、「Google 八分 の確認と対応の方法」というページが詳しく解説している。

 私は12月22日に、「はやぶさリンク」:日経新聞・清水正巳編集委員の記事に関してと題して、日本経済新聞の清水正巳編集委員が書いた「研究の失敗に寛容な風土はできるか」という記事に反論した。この記事には大きな反響があり、多数のコメントとトラックバックが付いた。これだけあちこちからリンクされると、検索エンジンでの表示順位も上がる。


 以下は12月25日朝からの経緯である。

 12月25日朝、私はネットの関連記事を漁っていて「清水正巳で検索しても松浦記事がトップに出るのに」という記述を見つけた。ご存知の通り、ロボット型検索エンジンは、さまざまな手法を使って記事の重要度を数値化し、重要な順に結果を表示する。
 興味を持った私は、各種検索エンジンをキーワード「清水正巳」で検索してみた。その結果は以下の通りだった。

清水氏オリジナル記事 松浦の12/22付け記事
Google 1ページ目2番目 1ページ目1番目
Yahoo! 1ページ目9番目 1ページ目1番目
msn 1ページ目1番目 1ページ目2番目
goo 1ページ目1番目 1ページ目3番目

kekkaari これもまた記事にしようと思い、私は記録をとっておいた。ネット社会の様相を写すひとつの例となると考えたのだ。左に掲載したのは、私の記事がトップに来ているGoogle検索結果の画像である。そのときにキャプチャーしそこねたので、これは現在の検索結果だ。

 ロボット型の検索エンジンは「クローラー」というソフトで、ネット全体の更新を常時監視して、検索結果に反映させている。上記結果もいつ変化するか分からない。12/25午後1時頃、私は再度Googleで「清水正巳」と検索してみた。

 するとGoogleの検索結果が、妙に安定しない。検索を繰り返してみると、

清水氏オリジナル記事 松浦の12/22付け記事
1ページ目2番目 1ページ目1番目

という結果と、

清水氏オリジナル記事 松浦の12/22付け記事
1ページ目1番目 掲載されず

kekkanashiが不規則に帰ってくる。この「掲載されず」は、単に掲載順番が下がったというものではない。最後まで検索結果を見ていっても載っていないのだ。Google上で記事の存在そのものが消えてしまっていた。左に掲載したのは、私の記事が落ちてしまっている検索結果のキャプチャーだ。Googleロゴがスペシャルになっているので25日のキャプチャーであることがわかる。

 Googleは世界各国にサーバーを持っており、どのサーバーでも日本語の検索ができる。試しに「www.google co.uk」(イギリスのサーバー)と「www.google.fr」(フランスのサーバー)、「www.google.de」(ドイツのサーバー)を検索するとすべてのサーバーから、

清水氏オリジナル記事 松浦の12/22付け記事
1ページ目2番目 1ページ目1番目

という結果が帰ってきた。本家Google.comでも試せば良かったのだが、ここはそのままだとGoogle.co.jpに飛ばされるので試さなかった。実はGoogle.comを使うのは簡単だったのだけれども。

 Googleはクラスター化されたサーバーを使用している。この状況は、Google日本で何らかの登録データの変化があり、それが日本国内のサーバーのキャッシュに行き渡る過程で不整合を起こしていると考えると理解できる。
 とすると次にはおそらく海外サーバーのデータ書き換えが起きるだろう。

 この時点で、私はネットに詳しい友人数名に連絡を取って、時々世界各国のGoogleにおけるキーワード「清水正巳」の検索結果を監視してもらえるように手配した。

 25日夜から早朝にかけては、Googleの「清水正巳」検索結果は、派手に踊りまくった。あちこちのGoogleサーバーで、検索をかけるタイミングによって、2種類の結果がでる状態がしばらく続いた。

 落ち着いたのは26日の朝だ。海外サーバーを含めたすべての検索で、

清水氏オリジナル記事 松浦の12/22付け記事
1ページ目1番目 掲載されず

 という結果が表示されるようになった。


 26日朝の段階で、私のところに知人から「該当記事の登録が消えている。その他のL/D記事の登録は消えていない」という連絡が入った。
 あるページが、Googleに登録されているかどうかは、そのページのURLをGoogleの検索窓に記入することで確認できる。
 さっそく確認してみたところ、清水編集委員への反論を書いた記事(URLはhttp://smatsu.air-nifty.com/lbyd/2005/12/post_08cc.html)が、Google登録から消えていることを確認した。
 トップページやその他の記事(例えば12月21日付けのCDの記事など)は登録されていた。

 そこで26日午後5時過ぎに、「松浦晋也のL/D」全体を再登録するようGoogleに申請してみた。

 この申請に意味があったのかなかったのか、26日午後6時頃から、再度Google Danceが始まった。キーワード「清水正巳」で、私の記事がトップに来たり来なかったりする。海外サーバーでも同様の状態となった。我々は、GoogleサーバーをIPアドレス単位で監視して「どこそこが踊っている」「こっちは踊っていない」と、お互いに報告し合った。

 夜半にかけて、ダンスは徐々に収束していった。27日午前1時過ぎにGoogle.comのサーバーのひとつが踊っているのを確認したのを最後に、検索結果は収束した。
 
 もちろん結果は

清水氏オリジナル記事 松浦の12/22付け記事
1ページ目2番目 1ページ目1番目

である。私の記事は1日振りにGoogleにおいて復活を果たしたわけだ。ちなみにGoogleのクローラーは、27日朝の段階で、まだ来ていない。再登録申請に意味があったのか無かったのかは、不明である。


 一体なぜこんなことが起きたのか。誰かが当該記事のデータを削除し、しかる後に復活させたのか。実は、私も最初は意図的にデータが削除された可能性を疑った。

 しかし、清水編集委員に関する記事のデータをGoogleから削除しても誰も得はしない。

 この記事が消えることで利害が発生しそうなのは、私を筆頭に、Google、清水編集委員、清水委員の所属する日本経済新聞の4者だろう。ところが、

 私は記事を検索で読んでもらえなくなって損。
 Googleは検索の信頼性が下がって損。
 清水編集委員は、ジャーナリストにあるまじき言論弾圧をした嫌疑をかけられて損。
 日経新聞は、言論機関にあるまじきネットへの圧力をかけたと疑われて損。

と、誰も得をしない。こんなバカなことを誰もするはずがない。

 おそらくは、Googleの登録データが何らかの原因で壊れ、そのまま世界中のサーバー群に壊れたデータが波及していったのだろう。その過程でGoogle Danceが発生、さらに修復の過程で再度Google Danceが起きたのだと思う。

 私としては、面白いものを見せてもらって、とても満足である。

#午後7時56分追記 また検索結果が、私の記事をはじくようになってしまった。ともあれ、しばらくは様子を見ることしようと思う。

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2005.12.26

「はやぶさリンク」:野尻抱介さんからの呼びかけ

 SF作家の野尻抱介さんが、はやぶさに関して意見・感想はこまめにJAXAにメールしましょうと呼びかけている。


 はやぶさの成果でぜひとも強調し、広く伝えたいと思うのは、kentaroさんが述べているようなこと——ものづくり、技術開発の精神を鼓舞したことです。なのでひとつ提言しておくと、
 いずれ広報、成果判断の素材になると思われるので、意見・感想はこまめにJAXAにメールしましょう>ALL。
「L/Dのコメント欄に書いたからいいじゃん、あそこJAXAの人も読んでるんでしょ?」はダメです。国民から直接寄せられた意見・感想でないと、筋として使えませんから。

 どこまでExploration?——サイエンスが主目的のミッションなら冒険を避けてオフ・ザ・シェルフという選択もあるでしょうね。でも今回は工学メインなので、新しいことをすべきだった、と。新しいことをやって、それがきちんと伝われば必ず声援は集まるし、ひいては予算獲得につながるのではないでしょうか。


 野尻さんは12月14日午前の記者会見で川口淳一郎プロマネが述べたことこそが重要だと言う。

 おそらくは

 今回、サンプルリターンを全世界で初めて試みた。宇宙開発は過去、マスコミの監視の中、びくびくしながら、確実性の高いプロジェクトを実行してきた。しかし宇宙開発には、リスクを取っても先に進むということも必要なのではないか。

 高い塔を建ててそこへのぼってみれば新たな地平が見えるものだ。そのような塔を自ら建てるという意識を鼓舞したという点でははやぶさには意味があると考えている。

のという発言を指しているのだろう。

 私も同感だ。今後とも挑む心を失わないために、JAXAにメールを送ろう。


 右上のリンク集にはやぶさまとめを掲載した。報道やJAXAからの広報も一段落した今現在、おそらくはやぶさに関するもっとも充実した索引である。管理人がどなたかは分からないが、ご苦労さまです。

 今回、ネットから自発的にこのようなリンク集が現れたことは、はやぶさの評価を考える上でも重要だと思う。一般がつまらないと思うミッションならば、このようなものは出来はしない。「面白い、だから色々なことを知りたい」という欲求を多くの人が抱いたからこそ、このようなリンク集がある。

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2005.12.25

「はやぶさリンク」:お願いが2つ

 日経新聞の清水正巳編集委員の記事を取り上げた前記事に、多くのトラックバックとコメントを頂いきました。

 引き続き、発言とトラックバックをお願いいたします。

 はやぶさリンク開始以降、このページを見ているマスコミ関係者も増えたようです。おそらくここへの書き込みとトラックバックは、プロフェッショナルのメディア関係者も読んでいると思います(毎日の元村さんもいらっしゃいましたし)。

 そこでもう一つお願い。清水委員への個人攻撃ととれる罵倒的な書き込みは控えてください。問題にすべきはあくまで、清水委員が書いた記事の内容です。特にそういう書き込みが多数というわけではないですが、もの言うときには背筋を正してということで。

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2005.12.22

「はやぶさリンク」:日経新聞・清水正巳編集委員の記事に関して

 日経新聞の清水正巳編集委員が、12月21日付けで「研究の失敗に寛容な風土はできるか」というはやぶさの評価に関する論評記事をネットで公開している。NETアイ プロの視点という、日本経済新聞の編集委員が顔と名前を出して書く記事の一つである。

 清水編集委員は、略歴を見ると、日経サイエンス編集長、科学技術部長などを歴任したベテランだ。
 しかし、この「研究の失敗に寛容な風土はできるか」は、奇妙に現実からずれた内容となっている。

 ずれた内容になってしまった背景には、「成功」と「失敗」のみに拠って記事を作成する、かつての新聞科学記事のフォーマットが崩れつつあることがあるように思われる。はやぶさは複雑なミッションであり、簡単に「成功/失敗」と分類できるようなものではなかった。
 清水編集委員の意識は、かつての「要するに成功なんですか、失敗なんですか」という記者質問に代表される、複雑な現実を単純な二分法で切り捨ててしまうフォーマットから、逃れられていないのではないだろうか。


 清水委員は、まず

「 日本の小惑星探査機「はやぶさ」による小惑星イトカワの探査ほど、成功したのか、失敗したのか分からないプロジェクトはない。」

と書く。
 しかし現実には、はやぶさの成功・失敗は細かく公表されている。イオンエンジンの長時間運転と、それによる惑星間航行には成功。自律航法を使った差し渡し500mほどしかない小惑星イトカワへのランデブーには成功。上空からのカメラや分光器を使った科学観測も成功。リハーサルを経て2回の試行で史上初の小惑星タッチダウンと上昇に成功。
 サンプル採取はサンプル採取用弾丸が発射されなかった可能性が高く不明。ただし、第一回着陸時に舞い上がったサンプルがカプセルに到達した可能性がある。
 そして地球帰還は現在のところ3年遅れ。通信回復可能性は70%程度の確率。

 これのどこが「成功したのか、失敗したのか分からないプロジェクト」なのだろうか?

 文書冒頭で現状認識を誤った結果、その後の議論も奇妙な方向へと逸脱していく。

「機構内でははやぶさは将来の宇宙探査に向けた「技術実証」が狙いだから、イトカワ到着で一応目標を達成と言っているが、飛行だけが目標と言うのではあまりに情けない。」

と書くが、まずはやぶさの目標は小惑星への飛行だけではない。はやぶさ特集:小惑星探査機「はやぶさ」の研究計画について(JAXA/ISASホームページ)に、川口淳一郎プロマネが寄稿した文章によると、はやぶさの目標は以下の通りである。

「はやぶさ」で開発・実証を目的としている4つの新技術要素は,イオンエンジンを主推進機関とした惑星間航行,光学観測による自律的な航法と誘導方法,惑星表面の標本採取技術と惑星間軌道からの直接大気再突入と回収です。あまり強調されてはいませんが,このほかにも2液小推力化学推進機関,総電力固定のデューティ制御型熱制御,イオンエンジンを閉ループに組み込むホイールアンローディング, PN-code超遠距離測距(PN-codeは送信電波に乗せる疑似雑音符号で,この符号の往復伝搬時間を測定することにより,距離を求めます。),リチウムイオン2次電池の採用など,各種の新たな衛星・探査機技術が導入されています。

 「イオンエンジンを主推進機関とした惑星間航行」は、全世界的に見てもアメリカのDeep Space 1ぐらいしか前例はない。しかも噴射の総時間数で、はやぶさはDS1をはるかに凌駕している。「光学観測による自律的な航法と誘導方法」もまた、DS1程度しか過去に例がない(これは私が知らないだけという可能性もある。関係者の指摘を待ちたい)。「惑星表面の標本採取技術」は、小惑星表面という意味ならば前人未踏の技術だ。

 これのどこが「情けない」のだろう?

清水編集委員は、続けて以下のように書く。

 科学技術の研究開発には新発見やイノベーションにつながる発明、そして一つ一つの技術を組み合わせ、全体システムをつくりあげるような技術開発プロジェクトがある。前者は未知の世界の挑戦という性格があり、失敗なしに成果を挙げるのは至難の技である。一方、後者は着実にシステムをつくることが前提であり、出来上がったシステムが動かなかったり、目標を達成できなかったりすれば失敗であり、無駄な研究開発ということにもなる。

 つまり、前者では失敗は許容され、後者では失敗は許されないということになる。はやぶさは後者になるが、研究者が意図しているかどうかは別にして成否のあやふやな発表をみる限り、失敗の責任逃ればかりが前面に出ているような印象を与える。

 まず、「新発見やイノベーションにつながる発明/そして一つ一つの技術を組み合わせ、全体システムをつくりあげるような技術開発プロジェクト」という分類が間違っている。ここでは「新たな探査を行うための技術開発/開発した技術を応用しての科学探査」と分類すべきだろう。そうすれば、前者では失敗は許容され、後者では失敗は許されないという記述の意味が通る。はやぶさは前者である。ただし「失敗は許される」のではなく、「準備に準備を重ねても失敗を覚悟の上で挑むミッション」なのだ。

 また、一連の着陸を巡るJAXA/ISASの記者会見は、そのすべて出席した者としては、十分に説明義務を果たしていると感じられた。「失敗の責任逃ればかりが前面に出ているような印象」とあるが、印象は個人のものであり、少なくとも報道に携わる者が印象を自分の意見の論拠とするべきではないだろう。

 「成否のあやふやな発表」という表現も妙だ。光ですら往復30分かかる場所にある探査機からの、極めてビット伝送速度の遅い通信を使って、「なにができたか、できないか」を判定せざるを得なかったのである。あやふやさがあったとすれば、ミッション成否判定に関する探査機の内部システムと通信システムの限界によってもたらされたもので、JAXA/ISASが人為的にもたらしたものではない。

 清水委員は、記事を以下の記述で結ぶ。

 失敗してもそれを率直に認めずに取り繕ったり、失敗を恐れて低い目標を掲げるようになったりしては科学技術立国もありえない。見境なく研究費をばらまくような研究バブルは厳に戒めなければならないし、研究の管理や成果の評価はしっかりしなければならない。だが、志の高い研究には失敗しても研究費を惜しげもなく注ぎ込む度量も必要だ。総合科学技術会議は研究の善し悪しを見抜く力が一層求められる。

 この結論には、私も異論はない。が、そこに至るまでの議論には、上に指摘した通りの大量の錯誤が含まれている。これでは結論の信頼性も揺らいでしまう。


 科学技術報道に携わって、おそらくは四半世紀を超えるであろうベテラン記者が、一体なぜこのような文章を書いてしまったのだろう。

 長らく、科学技術、特に宇宙開発の報道は「要するに成功なんですか、失敗なんですか」という記者質問に代表される、「成功・失敗の二分法」で行われてきた。「要するに」という質問の前振りはつまるところ「記者の自分は技術的なことは分からないが、」ということを意味する。裏の意味は「技術的な事を勉強する時間がないが、」であり、さらに真の意味は「技術の事を勉強する気もない」だったりする。
 だから、「要するに成功なんですか、失敗なんですか」という質問は「技術の事は分からないし勉強する気もないが、成功か失敗かは理解できる。そんな自分に分かるように説明しろ」という意味だったのだ。
 その結果、報道の中から、実際には読者に伝えるべき情報が欠落し、「成功だ失敗だ。誰の責任だ」という極めて限定された内容の記事が新聞紙面に踊るのが常だった。

 それに比べると、今回のはやぶさ関連報道は全体にずいぶんと質が上がった。
 そしてJAXAのマスコミ対応も、今回はかなり良かったと私は判断している。一般向けの広報が足りているとは思わないのだけれど、それでもメディア向けには、正確な記事を書くに十分な情報がタイムリーに提供されたと思う。ただし、的川泰宣教授、寺園淳也さんといった個人の努力に負うところが多かったことは要注意点だ。組織的な広報という点ではまだまだできることはあるし、今もなお十分ではない。

 ともあれ、かつて種子島で「衛星は遠地点高度3000km程度の軌道に入った模様」と聞かされて、「つまり種子島から3000kmの沖合に落ちたんですか」と質問した毎日新聞の記者(もうあれから8年近く経った。そろそろ毎日だとばらしてもいいだろう)や、「リレーの配線ミスか」と聞いて「リレーってなんですか?」とという史上に残るような質問をかましたNHKの記者のような、勘違い記者は一人もいなかった(正確には、東京事務所からあまりに事前勉強をしていないと思われる質問をして、遮られていた女性記者が一人いたが…週刊誌関連だったのだろうか)。
 相模原のプレスセンターや、記者会見の場で、記者間で話題になったのは、例えば「ストックホルムシンドロームのようについついJAXA/ISASに同情したくなるような状況で、どうやって正しい立ち位置を貫き、きちんとした情報を読者や視聴者に伝えるか」といようなことだった。
 それでも、例えばミニローバー「ミネルヴァ」の放出失敗にあたっては、あたかもはやぶさミッション全体が失敗したかのような記事が出た。

 一体なぜかと考えていくうちに、「報道現場の質は向上しても、記事をまとめてタイトルを付けて出向するデスククラスが、旧来の考えにとらわれているのではないか」ということに気が付いた。
 記者会見で、的川泰宣教授が「現場と会社の上のほうとは温度差がある」と発言したことからしても、会社で偉くなって報道の第一線に出てこなくなった元記者らは、どうやらまだ「要するに」の二分法の側にいるらしい。

 結局、清水正巳編集委員の記事は、二分法の残渣に基づいているために奇妙なものになってしまったのではないか——そう私は考える。

 ネット時代を迎えて、「事物を伝える」ことはメディアの特権ではなくなった。逆にメディア側が「広く伝えている」が故にウォッチングの対象となり、時には批判されるようになった。
 私も含めてプロの物書きは、決して一般大衆を軽んじることはできない。なぜなら、その中には本物のプロ、まさに記事が対象としている分野の職業人が多数含まれるからだ。私たちは、最初の事実認識の時点で、それら多数の人々の視線にさらされていることを忘れてはならない。「成功か失敗か」で複雑な現実を極度に単純化してしまうなら、信用を失うのは我々書き手の側なのだ。

 以下に、清水正巳編集委員の記事に関する記述へのリンクを作成することにします。blogで言及した方は、この記事にトラックバックをかけて下さい。また、その他Webページで言及した方は、コメント欄で申し出てくれれば、以下に追加します。

野尻ボード 野尻抱介さんの発言(12/22)
KiTさんの日記(12/22の項)
小熊善之さんの日記(12/23の項)


 また、清水委員の側から、この記事に反論がありましたら、コメント欄、メールなどでお願いできればと思います。別途、当blogで独立した記事として掲載します。もちろん、日本経済新聞のホームページで反論を行っても結構です。その際には当記事へのリンクや私の名前の掲載を行っても構いません。

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2005.12.17

「はやぶさリンク」:Lullaby of Muses

MUSES 今回のイトカワ着陸ではやぶさに興味を持った人のために、はやぶさ関連グッズの大物を紹介する。

Lullaby of Muses 甲斐恵美子

 2002年、打ち上げ前に制作されたジャズ組曲。はやぶさの行程を全11曲の組曲で表現した大作だ。

 この曲はJAXA/ISASの矢野創さんが、ちょっとした機会に天文学者にしてジャスCDのlyraレーベルの主宰者である尾久土正己さんと知り合ったところから始まったのだそうだ。「探査機のテーマ音楽が欲しい」という矢野さんのアイデアに、音楽家が応えた結果である。アルバムには矢野さんが力のこもった長文の解説を書いている。

 音楽は即興中心のハードなジャズではなく、メロディを主体とした美しいものだ。自由自在に跳ね回る中谷泰子さんのヴォーカルが素晴らしい。

 このCD、以前は相模原のISAS売店や内之浦の土産物店などでも入手できた。現在もLYRA-RECORDから通信販売で購入することができる。注文ページ。詳細ボタンを押せば、全曲の試聴も可能である。

 もしも興味が出たならばどうぞ。

12/20記 ヴォーカルの方を間違えていたので修正しました。

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2005.12.16

「はやぶさリンク」:サイエンスZERO、ネットの反響

 はやぶさの旅は続く。が、地上の報道は一段落だ。

 明日17日、NHKの科学番組「サイエンスZERO」が、はやぶさの特集を組む。

サイエンスZERO
小惑星探査機「はやぶさ」計画の全貌に迫る
放送日 12月17日(土)午後07:00〜教育
再放送 12月20日(火)午前02:35〜BS2
再放送 12月21日(水)午前00:00〜教育

 番組側は川口淳一郎プロマネと出演交渉をしていたが、はやぶさの状況が予断を許さないということで、私にバックアップの話が回ってきた。
 もしもはやぶさが今もプロマネの指示を必要とする状況ならば、私が真鍋かをりさんとテレビに出演していたのだが(残念!)、数日前に「川口先生がどうやらOKです」という電話がかかってきた。本日16日に収録が終わったはずである。

 もちろん、私が出るよりも川口プロマネが自ら計画の意義と成果を説明するほうがずっと良いに決まっている。おそらく、当事者がメディアでそれなりの時間をかけて語る最初の機会となるはずなので、興味のある方は見てみよう。


 ネットには、はやぶさの探査に関する反響が多数アップされている。そのうち、ネットならではのものを。

 まずは「はやぶさタン」。ネットのオタクカルチャーにはなんでもかんでも擬人化して名前の後ろに「タン」をくっつけて呼ぶ流れがある。

 私は3人の「はやぶさタン」を確認した。
tear dropさん:実は知り合いである。ミッション図解も作成している。
あしべ精肉店さん
藤野一宏さん

 12/17追記:野尻抱介さんによると、以下の「はやぶさタン」が更に確認された。
たゆたひ日記 はじめてのおつかい
Blogum はやぶさタンカルテ
Re:ヘッドライト・テールライト ..いくととさんイラストはこちら
鋼花製作所Lobby あきらめません

 そしてフラッシュ。主に巨大匿名掲示板の2ちゃんねるの住人が作成している。理解としては現代版「落首」と思えばいい。もちろん著作権どうのこうのというのは野暮というものだろう。
 出来のいいフラッシュは、単なるネットの落書きではなく「作品」の域にまで達している。

はやぶさ、帰って来い…
hayabusa

 日本でインターネットが一般に開放されてから10年以上経つが、過去、これほどまでにネットで一般に支持された宇宙機は無かった。
 はやぶさミッションのどの要素が、これほどまでに人々を魅了したのか。宇宙開発に関わる者はよく考える必要があると思う。

 はやぶさをはやぶさたらしめた要素、人々の耳目を集めついにははやぶさを支持するに至らしめた要素、それこそが日本の宇宙開発に長年欠落してきたものではなかったのか——私はそう思うのだ。

 それは挑むことだ。過去とは全く質の異なるチャレンジに、果敢に挑むこと。安全牌と無謀の境目の細い一線を見極め、臆せず境界線上を走り抜けること。

 過去、宇宙開発関係者は、「危険なことは国民が支持しない」「マスコミが失敗失敗と騒いで既存計画も危うくなる」と言い、安全牌の計画を推進してきた(特に旧NASDAにはその傾向が強かった)。はやぶさは、そのような行き方が言い訳の結果であったことを明らかにしたといって良いだろう。

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[Hayabusa link]: Unfinished Business

Translated by JSpace http://mole.den.hokudai.ac.jp/jspace/.Thank you.

After the press conference, I had a conversation with the Project Manager Kawaguchi:

"Professor Kawaguchi, You looked victorious today."

"Did I?"

"In today's conference you spoke a lot, and you touched the topics that you were never able to discuss in the previous conferences (i.e. the significance of the Hayabusa mission, and its direct comparison to the missions of NASA and ESA, etc.) I think you could finish this one on good terms, and this is going to open up the path to future missions. Don't you think so?"

To that , he answered:

"No, I'd rather say we are still seeking for victory in defeat. Hayabusa is still waiting for us, waiting for the return trip to earth. That's our unfinished business."

P.S. - As for the Lipovitan-Ds with special label and "Unagi Pie" that I received in the "Rocket Festival" talk live held in Dec.2, I handed them to Project Manager Kawaguchi in person today.

P.S.2 - I heard that Terakin (THE Lipovitan-D guy in JAXA "Hayabusa Live" blog!) has received two cartons of Lipovitan-D, directly from Taisho Pharmaceutical Co., Ltd, the manufacturer of the product. Apparently the people in Taisho saw the "Hayabusa Live", and decided to show their gratitude.


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[Hayabusa link]: Press Conference on 14th Dec.

Following is transration by JSpace http://mole.den.hokudai.ac.jp/jspace/ Thank you for their effort.


Here are details of the press conference. Prof. Junichiro Kawaguchi (Project Manager) and Prof. Yasunori Matogawa attended.

Explanation by PM Kawaguchi:

During the operation via Usuda station at around 1:15pm on 8th Dec, we had decrease both in signal level and the range rate from Hayabusa. Because they are decreasing slowly, we suspect it was caused by attitude disorder occurred from blowout of leaking gas.

At that time on 8th Dec, Hayabusa was in the state waiting for recovery of chemical propulsion system. It was in the spinning state with the period of about 6-min in order to help the operation to stabilizate its attitude.

The capability of attitude control with xenon jets for the ion engines was not sufficient. The disturbance torque is larger than the capability of xenon jets, and we could not stop the loss of attitude balance.

It seems that the vehicle is now in coning motion surpassing the critical nutation angle (If the vehicle in coning motion surpasses that angle, the attitude changes drastically and the vehicle turns "upside down").

Since 9th Dec, communication to Hayabusa has been stopped. According to our analysis, however, there is a 60% chance for the recovery.

From now on, we have to switch the operation policy from the regular operation to the salvation mode. We will continue the salvation mode for one year. If we can recover the vehicle by the beginning of 2007, the ion engines will ignite from that time and it will return in 2010.

Hayabusa is designed to stabilize passively, and the current coning motion will eveutually converge to the rotation around the Z axis (around the parabola axis).

It may be difficult to maintain both of the power and communication line concurrently at this moment, from the disturbance on 8th Dec.

Presently, Hayabusa is in almost the same position as Itokawa. Uncertainty of the orbit (note by translator: snipped in the original article. According to JAXA press release, I suppose "Even if supposing the uncertainty of the orbit, we can track the vehicle by orienting the Usuda antenna to Itokawa, and the risk of losing Hayabusa will be minimal.")

According to our analysis results, the possibility to satisfy the condition among the sun and the earth is relatively high after convergence of coning motion. The possibility of recover by Dec 2006 is 60%, and that by the spring of 2007 is 70%.

If we could re-ignite the ion engines by the 2007 spring, the vehicle will be able to return to the earth on June 2010.

Questions and answers session:

Kyodo Press: Was the disturbance torque caused by fuel leak? Is it the same leak occur on November 26th and 27th?

Dr.Kawaguchi: Fuel leaked twice on November was pooled in the pipes and insulation blankets. We presume that the pooled fuel blew out on December 8th. Blown fuel was very little as just 10ml or 8ml. However Xenon jet could not control the disturbance.

Mainichi Shimbun Press: I would like to confirm present communication status. And what do you think about recovery of thruster system after recovery of position?

Dr. Kawaguchi: We need directional medium-gain and high-gain antenna, to receive any signal from the probe. That is, we need good convergence of the radio beam. High-gain antenna cannot be used with very little attitude alignment mismatch. On December 8th, we lost connection while we were still in medium-gain antenna mode. So we need to send a command from the earth to switch to low-gain antenna operation through low-gain antenna. However, the wave-receiving range of the low-gain antenna is approximately 60 degree. With very unstable axis coning movement, it is impossible to keep receiving command from the earth even using low-gain antenna. The coning movement takes about one month to be stabilized enough to regain communication. Now we are waiting for that.

In this status, the probe’s communication computer enters stand-by mode by shutting down the power. This probe is designed to restart from the mode with the commands from the earth. Thus, unless the equipments are broken from lower temperature, the probe should be recovereable with commands from the earth.

Thruster system has not recovered on December 8th. It is just a speculation, but wiring to drive shutting valve could be broken by fuel leak. On the other hand, another wiring for thermometer running the same place is still working. Something may be happening.

Mainichi Shimbun Press: Is there possibility for the recovery of thruster system?

Kawaguchi: We'd like to try recovering it. After recovery of communication, we'd like to start recovery for the thruster system. But there is a risk of total loss of the vehicle during the recovery process. We must get things going carefully considering the risk.

Tokyo Simbun Press: Is the coning motion converging? On what do you base the recovery chance of 60% over the coming year?

Kawaguchi: Convergence is based on the physical law. The direction of the rotation axis after convergence is a crucial key for the recovery; it's a matter of probability. The probability of communication recovery by Dec 2006 is 60%, and that by the 2007 spring is 70%.

Asahi Shimbun Press: Is there a possibility for failures of other equipments from three-year extension? And what about the running cost during the extension?

Kawaguchi: Of course, the probability of equipment failures will increase. We have to restart them from the almost freezing state. The figures I put before does not mean that "it can return to the earth with 70% probability"; it means that "for the 70% probability of communication recovery, we will continue the operation."

It costs, of course. If the government and citizens think it's not worth their money, we have to abandon the operation. But the JAXA committee on yesterday did not say we should give up. For details, please ask the JAXA officers.

Yomiuri Shimbun Press: Please tell us your impression about extension of return.

Kawaguchi: Very depressing for me. I expected the achievement of the mission in good condition; the 3-years extension will increase risks and make the operation harder.

However, we think we can recover with good reason. Still, even if it's recovered, the probe is fill of wound now and the return trip will be very hard. Yet, if there is any chance, we have a will to give it a try.

Nikkei Science: How will the recovery of the thruster system affect the return?

Kawaguchi: Currently, the recovery of the thruster system is not the requirement for the return trip to the earth. We have a plan of return trip by controlling the attitude with xenon jets after we get the leaked gas out of the probe by heating the vehicle. It is still in the planning phase, and we are studying its viability.

(Next from the Sagamihara campus...)

Astronomy Monthly(Gekkan Tenmon): Are there any change in your view on the sample retrieval after these events? How much scientific discovery could you make out at this point? You're experiencing another difficult situation now, what is the biggest lesson you've learned in these troubleshooting experience?

Kawaguchi: We haven't been able to download any new data, so our view is still unchanged. Status of the vehicle did change, and there are possibility of data being lost. If minimum power supply is available the data will hold, but we can't tell for sure at this point.

As for scientific discovery, we still have undisclosed informations, but the science community plans to open them to the public as soon as possible.

There are considerable amount of information that only Hayabusa could gather. We won't be repeating on its content for today. At some future date we will publish a formal summary. I consider that these results funded by national taxes should be primarily available to this country. We fear that if these data spread, any researcher from other countries could release a paper as first author. And of course contribution to the world must be considered, too.

As for achievements in engineering, we think that achievements in overall operations have a prominent importance, not only in troubleshooting.

We attempted the first sample return in this world. Space development in the past was nervously carrying out projects with solid chance of success under close watch by the mass media. But we think it is also neccesary to take risks and go on forward for the space development to progress.

If you build a hight tower and climb it you will see a new horizon. Hayabusa has inspired the morale toward building such tower on our own, and I think Hayabusa was meaningful on that account.

I suppose that neither NASA nor ESA can issue a proposal on sample return right now. At least they have to have success to the level of Hayabusa for that. So if there is Hayabusa 2, it would be something that only Japan can do. We look forward to it by all means.

Astronomy Monthly: Are there any similar plans outside Japan after Hayabusa?

Kawaguchi: Numerous project proposals like sample return or ion engines have emerged after the launch. Maybe Hayabusa did touch these off. We're receiving proposals for joint operation. This is because they fear there is too much risk to do this alone, they have to have us involved. But I think we can take the lead on the next plan, rather than just to be in part of the plans from other countries. This is my personal opinion, not of JAXA as a whole. I'll get in trouble if you get this as a consensus in JAXA.(laughter in the audience)

Tokyo Simbun Press: Does the return method without the thruster system utilize xenon jets?

Kawaguchi: Yes.

Tokyo Simbun Press: Can the xenon jets generate sufficient power in the return phase?

Kawaguchi: First, the attitude control and the orbit control are different matters. Operation of the ion engines has no problem now. But in order to operate them, the attitude has to be maintained properly. We will use xenon jets for that. We think we can do it.

Kyodo Tsushin Press: What will happen when convergence of coning motion stops?

Kawaguchi: It has two alternatives, whether the power can be provided to the solar batteries or not, and whether the communication can be established or not; The possibility that both conditions are satisfied is 60-70%. Hayabusa has quite large solar battery paddles for its ion engines. When it does not use the ion engines, they can generate power enough for recovery, even if the direction of the sun is not aligned considerably.

Sankei Shimbun Press: Are you going to wait for stabilization of the attitude in the operation over the next several months?

Kawaguchi: By the beginning of February, the attitude will be stabilized and we can decrease the frequency of the operation, to two or three days in a week. Then it will recover by the autumn. That's our estimation.

Currently, there is a possibility that fragments of commands reach the vehicle. So we are automatically and continuously transmitting commands.

Nature: Please tell me details about that NASA and ESA cannot provide such proposals like yours.

Kawaguchi: I have no intention of picking a quarrel with NASA or ESA (laughter in the audience) ... You may have seen the demo of running ASIMO, but if you ask if we could pull off that kind of stunt, we can't, at least in a short period of time. We have to consider political context in space programs. We are required to pursue the matters with high feasibility because they are tax-supported. Please note it's just my personal opinion. (laughter in the audience)

But, this tendency leads to the mainstream of the space development combining established technologies, called "off-the-shelf technology". Stardust by NASA is one example.

This plan is very easy to consider from the administrative view; Cheap and safe. Highly effective if it matches to the scientific purpose.

However, off-the-shelf way has no future, if there exist no more ready-made technologies on the shelf.

When such time comes, can NASA or ESA really shift their policy from combination of ready-made technologies? I think it will be hard. The more capable a bureaucrat is, the more hesitation he feels, I think.

But, because we have experienced the Hayabusa mission, we can say distinctly, for example, that "we can do at least the landing on an asteroid." A large number of application of research collaboration for us indicates the background that we are the one who can declare "we can do it".

Again, let me make sure that I don't intend to speak against NASA or ESA.

Mainichi Shimbun Press: How much is the chance of succeeding to return to the earth?

Dr. Kawaguchi: If Hayabusa is healthy, I will be confident of the return. But present condition of the probe is like a ill person that could be drop dead with a sneeze. Returning to the earth is like telling serious ill person to go to a postbox far away and drop a mail. Fortunately just one of four ion engines is enough to bring Hayabusa back to the earth. The condition is not very strict. To be back in 2007, all ion engines had to be healthy. But changing the plan to 2010 made requirment for power from ion engines much smaller. Of course, long term flight increase the possibility of failure.

Mainichi Shimbun Press: Is it getting worse than the situation on 7th December?

Kawaguchi: I think it stays unchanged. Drop of the temperature freezes the thruster oxidant. It causes the decrease of its volume, increasing the risk for another leakage. There are various factors and prediction is difficult. But it does not mean more difficulty in the return, for there are no new troubles.

NHK: Is the communication suspended currently, including the beacon mode? Isn't there any problem by complete discharge of the batteries?

Kawaguchi: it is suspended including the beacon. The batteries are of no concern to the return. As long as the attitude is proper and the solar batteries can generate the power, it can return to the earth.

NHK: Is the vehicle temperature OK, though the power is completely down?

Kawaguchi: It's unexpected. Because the heaters are off, the inside of the vehicle is in the temperature unexpected in advance. No doubt it's severe.

NHK: From which direction did the gas blow out on 8th December?

Kawaguchi: We don't know now.

X-Knowledge: I'd like to ask you what kind of unreleased data will be released from now on, as far as you know.

Kawaguchi: High-resolution images, of course. Gravity mapping with high precision, results of infrared and X-ray spectrographs ... the genre is as explained so far. Results of initial analysis will be corrected in the beginning of next February. A large-scale conference on the moon and planets will be held at Johnson Space Center in next March. We will release results there.

Monthly Star Navigation (Hoshi Navi): On the JAXA's website, success criteria for Hayabusa mission is 200 points now. How is the current rating?

Kawaguchi: Only the reentry of the capsule remains. As for big factors, four of them have finished ... I'd like to say so, but sampling result is now quite ambiguous. I think 70% has been completed. Once the rating as defined prior to launch reached 100 points, the succeeding points acquired are the same to me. I'll be satisfied if you evaluate it in good-mark system.

Aviation Week: In return to the earth, do you go through the procedure of stopping the ion engines, attitude modification by xenon jets, and restart of the ion engines? And can the xenon freeze?

Kawaguchi: Exactly for the operation procedure. While xenon freezes at -110 degrees Celsius, we think the temperature will not decrease that far because the sunlight always shines it.

Astronomy Monthly: Even on the return in 2010, will the return point be Woomera, Australia? And what is the most difficult in the return?

Kawaguchi: The return point is Woomera. The most difficult thing is sustenance of the attitude. It is almost a miracle that we can keep operation even though the wheels and thrusters have troubles. The thruster system have to be recovered after enough and serious consideration on risks. Attitude control by xenon jets is sufficient in usual situation, but now it's also severe under the situation to be almost in critical condition by just one sneeze.

NHK: Won't the designed life be expired in more than 7 years of operation?

Kawaguchi: The designed lifespan of the vehicle is four years. This operation exceeds it.

Yomiuri Shimbun Press: Is there any influence on other probes from now on?

Kawaguchi: In some projects in the developing phase now, there may occur the interference in utilization time of Usuda Station; SELENE, the moon probe, at this situation. I think it can share the time successfully. After that, it will be all right up to 2010.

Prof. Matogawa: Final word. Thank you very much for your media coverage. The coverage will converge for a while, but anyway thank you for your all-night coverage. This time we had the largest coverage system since the "Ohsumi" (the first Japanese satellite launched in 1970) mission. Yesterday I had a meeting with newspaper editors, and I felt a significant temperature difference from frontline press reporters. I thought that your enthusiasm in frontline reporters is not spread to the higher level. Please propagate it above (laughter in the audience).

This time, Hayabusa team have grown greatly in a few months, and some young members have proposed new mission ideas. Among JAXA executives, an atmosphere that "we must support them" have been coming up.

We will continue releasing our news frequently.

We appreciate your continued understanding and cooperation.

( Translated by JSpace http://mole.den.hokudai.ac.jp/jspace/ )
よろしくお願いいたします.

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2005.12.14

「はやぶさリンク」:未完のミッション

 記者会見の記事にちょっと足りない部分(書ききれずに語尾が書いていない部分などがあった)を書き加えました。

 記者会見終了後、川口プロマネに、「『勝った』と思っているのではないですか」と聞いてみました。
「勝ったって?」
「今日、先生はよく話しましたし、今までの記者会見ではとても触れられなかった話題(はやぶさの意義やNASA、ESAとの比較など)にも触れてますから。次につなげることができたと考えているのではないですか」

 答えは以下の通り。

「いや、私としてはまだ『負け』と思っていますよ。何しろ今も、はやぶさは未完のミッションですから」

追記:ちなみに、ロケットまつりで受け取った特製ラベルのリポビタンDと、うなぎパイは、本日、川口プロマネに直接お渡しました。

追記その2:リポDで一躍有名になったテラキンさんのところにはblogを読んだ大正製薬関係者から、直々にリポビタンDが2カートン届いたそうです。

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「はやぶさリンク」:12月14日午前の記者会見

記者会見の様子です。

 出席者は川口淳一郎プロマネと、的川泰宣教授。

川口プロマネの説明

 12月8日午後1時15分頃の臼田局可視で、受信レベルの低下とレンジレートの減衰が発生。受信レベルとレンジレートがゆっくり減衰していることからガス噴出に伴い姿勢異常が生じたと推定される。

 12月8日時点で、はやぶさは化学推進の復旧待ち状態の状態。姿勢の安定を図るために周期6分ほどのスピン状態に入っていた。

 イオンエンジン用キセノン噴射による姿勢制御の能力は十分ではなかった。外乱トルクがキセノン噴射の制御能力を超えており、姿勢が崩れていくのを止めることはできなかった。
 探査機は現在、臨界ニューテーション角(これ以上のみそすり運動が起こると姿勢が大きく変動して探査機が“ひっくり返る”状態になる)を超えるコーニング運動(みそすりの首振り運動)に入っていると考えられる。

 12月9日以降、はやぶさとの交信は切れている。ただし解析の結果、復旧の可能性は60%ある。

 今後運用方針を、通常運用から救出モードへの転換が必要になる。救出モード運用は1年間継続する。2007年初めまでに復旧できた場合にはその時点からイオンエンジンを運転して2010年に地球帰還させる。

 はやぶさは受動的に安定するよう設計されており、げんざいのみそすり運動は最終的にZ軸(パラボラアンテナ回りの軸)の回転に収束するようになっている。

 現時点では12月8日の外乱によって、電源と通信回線の両方が常時確保できない可能性がある。

 現在はやぶさはイトカワとほぼ同じ位置にある。軌道不確定性を考えても地上局からの再捕捉はできる。

 解析結果によるとみそすり運動収束後に、太陽と地球との条件を同時に満たせる可能性は比較的高い。2006年12月までに復旧できる可能性は60%、2007年春だと70%となる。
 2007年春までにイオンエンジンを再稼働させれば、2010年6月の帰還が可能になる。

質疑応答

共同通信 外乱トルクの原因は、燃料のリークか、それは11月26日と27日に発生したものか。

川口 11月の両日に漏れたものが、探査機内の配管内や断熱ブランケット内などにたまっており、12月8日になって噴出したものと推定している。12月8日に噴出したのは燃料にして10ccとか8cc程度の僅かな量。しかし、現状のキセノン噴出ではこれでも制御しきれなかった。

毎日新聞 現状の通信状況を確認したい。姿勢復旧後のスラスター系復旧の見通しはどうなっているのか。

川口 探査機から何らかの信号を送ろうとすると指向性を持ったミディアムゲイン、ハイゲインのアンテナを使わざるを得ない。これはどれだけ電波ビームを絞って送信するかということだ。ハイゲインアンテナは、姿勢が少しでもずれると送信できなくなる。
 12月8日には、ミディアムゲインアンテナを使うモードのまま通信が切れてしまった。したがって、ローゲインアンテナ経由で地上からコマンドを送って、ローゲインアンテナを使うモードに入れなくてはならない。
 しかしローゲインアンテナでも電波を受かる範囲は60度程度であって、おおきなみそすり運動を起こしていると、ローゲインアンテナでも常時地上からのコマンドを受信できなくなる。現在はこの状態。
 現在の推定では、みそすり運動が通信可能なまでに減衰するのに1ヶ月以上かかる。現在はみそすり運動が減衰するのを待っている。

 この状態では電源が落ちて通信を司るコンピュータ待機状態に入る。これは、地上からのコマンドを受けるとリスタートするように作られている。従って、待機状態の間に温度低下などで機器が壊れない限り、地上からのコマンドで復旧させることができる。

 スラスター系は12月8日の時点で復旧には至っていない。ここからは推定になるが、リークに伴って遮断弁を駆動する配線が破損したかとも思えるが、同じ場所を走っている温度計測配線は生きている。何が起きているは十分な検討が必要。

毎日 スラスター系復旧の見通しはあるのか。

川口 復旧に努力したいと思っている。通信が復旧したらスラスター系復旧に入りたい。ただし、スラスター復旧過程で探査機全損ということもありうる。リスクを検討して慎重に進めなくてはならない。

東京新聞 首振りの大きさは収束の方向に向かっているのか。復旧確立が今後1年で60%の根拠は。

川口 収束は物理の法則である。首振り運動収束時に回転軸がどちらを向いているかが、復旧の鍵となる。これは確率だ。2006年12月までに通信可能になる確率は60%、2007年春までだと70%となる。


朝日新聞 3年延長により他の機器が故障する可能性は。また、その間の運用コストは。

川口 機器故障は当然可能性が上がる。ほとんど凍結状態から再立ち上げするので、先ほど出した確率は「70%の確率で地球に戻れる」ということではない。70%で通信復旧できる可能性があるなら、運用を続けようということだ。
 当然経費はかかる。政府と国民の判断によって非効率と判断されれば運用をやめざるを得ないが、昨日のJAXA役員会では、止めろということにはならなかった。これ以上はJAXA役員に聞いて頂ければと思う。

読売新聞 帰還日程の延期の感想を。

川口 私としては残念の一言である。順調にミッションが達成できることを期待していたわけで、3年間延びることで、リスクは増えるし運用も難しくなる。
 しかし、我々としては合理的理由から復旧はできると考えている。たとえ復旧したとしても、満身創痍であって地球帰還は容易ではない。少しでも可能性があるなら、帰還に挑む心づもりだ。

日経サイエンス スラスター系復旧と帰還の関係はどうなっているのか。

川口 現状、スラスター系の復旧を地球帰還の条件にしていない。探査機の温度を上げて漏洩ガスを十分に放出してから、キセノン噴射で姿勢を制御しつつ地球に戻る方策を考えている。この方法は現在完全に確立はしていない。その方向で検討を続けている。

相模原へマイク

月刊天文 サンプル採取について、その後見解に変化はないだおるか。現時点までにサイエンス的成果はどの程度出ているのだろうか。現在また大変な事態を迎えて、一連のトラブル対処について得られたもっとも大きな教訓はなにか。

川口 新たなデータダウンロードをできていないので、見解に変化はない。現在また探査機の状況が変わったので、データは消えてしまった可能性もある。電力がわずかでも供給されていれば、データは保持されるのだが、現状では確定できていない。
 サイエンス成果については、まだ公開していないものもあるが、出来るかぎり速やかに公表したいとサイエンスコミュニティは考えている。
 はやぶさのみが得られた情報は、かなり多い。これについてここで繰り返すことはないだろう。多少先にあるがきちんとしたまとめを公表することになるだろう。我が国として国民の税金でまかなわれた成果は、その成果を我が国が享受する必要があると考えている。データが拡散すると、他国の研究者が第一著者となるペーパーが出てしまう可能性もある。もちろん全世界への貢献も考えなくてはならない。
 エンジニアリングの成果では、トラブルシューティングのみならず運用全体で得られた成果を重要だと考えている。
 今回、サンプルリターンを全世界で初めて試みた。宇宙開発は過去、マスコミの監視の中、びくびくしながら、確実性の高いプロジェクトを実行してきた。しかし宇宙開発には、リスクを取っても先に進むということも必要なのではないか。

 高い塔を建ててそこへのぼってみれば新たな地平が見えるものだ。そのような塔を自ら建てるという意識を鼓舞したという点でははやぶさには意味があると考えている。

 現状、NASAもESAもサンプルリターンもおそらくプロポーザルを出せないだろう。少なくともはやぶさレベルまでは成功させなくてはならないから。
 だからはやぶさ2があるとすれば、これは日本にしかできないだろう。是非ともやりたい。

月刊天文 はやぶさ以降、似た計画は外国で立ち上がっているのだろうか。

川口 打ち上げ以降、海外からサンプルリターン、イオンエンジンといったプロジェクト提案が次々に出ている。これははやぶさが触発したものか。我々に共同実施の申し込みも来ている。これは、我々を巻き込まないとこわくて出来ないからだ。
 だが、私としては他国の計画に参加するのではなく、われわれが主導して次の計画を進めていってもいいのではないかと思う。これはJAXA全体の意見ではなく、私の意見だ。JAXAの意見と思われては困ってしまうのだが(笑いが起こる)

東京新聞 スラスター系を使わない帰還の方法とはキセノン噴射で行うのか。

川口 そうだ。

東京新聞 帰還段階になるとキセノン噴射は十分な力を発揮するのか。

川口 まず、姿勢と軌道は別物だ。イオンエンジンの運転には現状問題ない。しかし運転するには姿勢をきちんと保たなくてはならない。そのためにはキセノン噴射を使う。それはできると考えている。

共同通信 首振りが終わるとどういう状態になるのか。

川口 太陽電池に電力が供給できるかどうか、通信が確立できるかどうか、の二者択一であって、両方が成立する確率が60〜70%ということである。イオンエンジンを搭載しているのではやぶさはかなり大きな太陽電池パドルを持っている。イオンエンジンを運転していなければ、太陽の方角がかなりずれていても、復旧に必要な電力を発生できる。

産経新聞 今後数ヶ月の運用は姿勢安定を待ち続けるということか。

川口 2月上旬には姿勢が安定するので、運用をまばら、一週間に二三日にしてしてもいい時期となる。そうすれば秋頃までに復旧するだろう、という見積もりだ。
 現在は、切れ切れにでもコマンドが届く可能性があるので、自動的にコマンドを送信し続ける仕組みを動かしている。

ネイチャー NASAやESAはそのようなプロポーザルを出せないということをもっと説明して欲しい。

川口 NASAやESAにケンカを売っているつもりはないのですが(笑いが起きる)…ASIMOが走りましたけれど、すぐにあれをやれといってもできない。宇宙開発はポリティカルに進めざるを得ない。税金を使っているので確実性の高いことを追求せざるを得ないのだ。あくまでも個人的見解ですよ(笑いが起きる)。
 しかし、これを続けていると、確実な技術を組み合わせて行う宇宙開発が主流になってしまう。オフザシェルフテクノロジーという。アメリカのスターダストはこれだ。
 これは行政的には非常に考えやすい計画だ。安いし安全。うまくサイエンスの目的に合致すれば非常に効果的である。
 しかし、オフザシェルフテクノロジーは、棚の上の出来合い技術がなくなれば、そこでお終いだ。
 その時に、NASAやESAが、出来あい組み合わせの状態からポリシーを転換できるかどうか。私は難しいと考える。有能な役人であるほど、転換に躊躇すると思う。
 しかし我々ははやぶさをやったおかげで、例えば「小惑星への着陸まではできます」とはっきり言うことができる。共同研究の申し込みが多い背景には、我々なら「できる」と言い切れるということがあると考えている。
 くれぐれもNASA、ESAの悪口を言っているのではないことを付け加えておく。

毎日 地球に帰還できる確率はどの程度か。

川口 健全な探査機ならかなり自信を持てるのだが、現状はくしゃみひとつで危篤に陥る状態である。帰還は、重病人にポストまで歩いて貰ってはがきを出そうとしているようなものだ。イオンエンジンは4基中1基生きていれば帰ってこれるので、非常に条件は緩い。2007年帰還だとイオンエンジンが健全でなくてはならなかったが、2010年になったことでイオンエンジンにかかる負荷は非常にゆるくなっている。もちろん長時間になることで故障確率は上がるのだが。

毎日 12月7日時点と比べてもっと難しくなっているのか。

川口 私は同じと思っている。温度が下がるとスラスター酸化剤も凍る。凍ると体積が縮小するので、新たな漏洩が発生する危険性もある。さまざまなファクターが存在して予測は難しい。しかし新たなトラブルがなければ、帰還が難しくなったというわけではない。

NHK 現状ビーコンも含めて通信は切れているのか。バッテリーが放電しきったことで問題はないのか。

川口 ビーコンも含めて切れている。バッテリーは帰還には関係ない。姿勢さえ正しくとれて太陽電池が電力を発生できれば帰還できる。

NHK 探査機温度は、完全に電源ダウンしても大丈夫なのか。

川口 想定外ではある。ヒーターが切れてしまうので、探査機内部は、事前の想定外の温度となる。きびしいことは間違いない。

NHK 12月8日にどの方向からガスが噴出したのか。

川口 現状では分かっていない。

エクスナレッジ 未公開データで、これからどのようなものが出てくるか分かる範囲でお聞きしたい。

川口 もちろん高精細画像がある。高精度の重力マッピング、赤外とX線分光の結果…ジャンルとしてはコレまでに説明した通り。初期解析の結果は来年2月の初めに集まる。来年3月ジョンソン宇宙センターで月・惑星に関する大きな会議があるので、そこで成果を出していくことになるだろう。

月刊星ナビ 今ホームページ上ではミッション達成度は200点になっているが、現状の採点はどうなっているか。

川口 残されているのはカプセルの再突入だけである。大きな要素としては、4つまで終わった…といいたいところだが、サンプル採取が非常に曖昧なってしまっている。7割以上はできていると考えている。
 打ち上げ前の採点表で100点を超えれば、私としては同じだと思っている。加点法で見てもらえれば私としては満足である。

エイヴィエーションウィーク 帰還の時はイオンエンジンを止めてキセノン噴射で姿勢修正、またイオンエンジン起動という手順を踏むのか。またキセノンの凍結はありうるのか。

川口 運用はその通り。マイナス110℃でキセノンは凍結するが、太陽が常時当たっているのでそこまで温度が下がることはないと考えている。

月刊天文 帰還場所は2010年でもオーストラリア・ウーメラか。また帰還で最も難しいのは。

川口 帰還はウーメラ。もっとも難しいのは姿勢維持だ。ホイールもスラスターもトラブルを出してなお運用をできているのが奇跡のようなものだ。スラスター系はリスクを十分考えつつ復旧を図らねばならない。キセノン噴射による姿勢制御は、通常ならば足りるのだが、くしゃみひとつで危篤ということなので、きびしいことは変わりない。

NHK 7年以上の運用となるが設計寿命は尽きないのか。

川口 探査機の設計寿命は4年。それを超える運用となる。

読売新聞 今後の探査機に影響を与える可能性はあるのか。

川口 現在開発フェーズにあるプロジェクトでは、臼田局の利用時間に干渉が生じる可能性がある。現状では月探査機「セレーネ」がある。これはうまく時間をシェアできると考えている。以後、2010年までという範囲では大丈夫だろう。

的川 最後に一言。どうも取材ありがとうございます。しばらくは報道は収束するでしょうが、徹夜取材ありがとうございます。今回は「おおすみ」以来の取材体制を敷いて貰いました。昨日、論説委員との懇談がありましたが、現場の記者の方と大分温度差があるのを感じました。現場の記者の方の熱気が上に伝わっていないと感じましたので、皆さん、よろしく御願いします(笑いが起きる)。
 今回、僅か数ヶ月ではやぶさチームも大きく成長しましたし、「こんなミッションをやってみたい」という若手も出てきました。JAXA役員の間でも「これはサポートせねば」と言う雰囲気がでてきている。
 今後ともニュースがあればなるべくひんぱんに出していこうと思っている。
 今後ともよろしく御願いします。

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「はやぶさリンク」:速報、帰還は2010年6月に

 記者会見が始まりました。

 12月8日に再度燃料の漏洩が発生。その後現在に至るまで復旧ができないでいる。復旧可能性は比較的高いが、帰還を2010年6月に延期する。

 詳細は、追ってアップします。

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2005.12.13

「はやぶさリンク」:明日14日、朝9時30分から記者会見

 明日、12月14日水曜日朝9時30分から、JAXA東京事務所に置いてはやぶさ関連の記者会見があります。

 午前11時頃には記者会見の概要をアップできるかと思います。

Press Conference about Hayabusa present status, will held at 9:30 14rh Dec. JST.

I intend to upload Japanese article at 11:00 or so.(S.MATSU)

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2005.12.07

[HAYABUSA link]: Press Conference at 16:50 on 7th Dec. JST

Following is the transration by Mr.zunda. Thank you!

Quick update from the press conference:

It seems unlikely that the bullet has been shot during the landing on Nov. 26th. (Comment by PAKU: To be precise, the JAXA www page says that the operation team has not confirmed data that shows a shot in the downloaded telemetry.) Chemical thrusters have not recovered yet. Altitude of the vehicle has been controlled with the ion engine. (Note by zunda: the JAXA www page says that they are using xenon gas for the ion engine as propellant.)

Hayabusa will leave Itokawa later than Dec. 14th. Journey plan is still being built.

Details will be posted here after the press conference.


Following is the transration by Mr.RogueEngineer. Thanks a lot!

Rough translation to English (briefing part only, no Q and A session):

The report from the press conference on 4:50 PM, attended by Project Manager Junichiro Kawaguchi and Professor Matogawa.

Briefing from Project Manager Kawaguchi:

As already reported, the recover operation from the safe mode is not going well. On November 19th, we established beacon communication with low-gain antenna.

From November 30th, we started communication with on/off radio signal (1-bit communication).
On December 1st, intermittent communication of 8bits/sec with low-gain antenna was established.

From that, we found out:

As a result of attitude control on November 27th, it seems that electricity loss has occurred due to great change in attitude or other cause.
Vaporization of the fuel that leaked inside of the probe might have caused drop of temperature of significant number of equipments. At the same time, loss of electric power caused deep discharge of battery. These seems to have resulted in resetting of electrical module in the system. We are still analyzing the details.

On December 2nd, we tried restarting chemical engine (thruster), but we had marginal thrust, and it was not fully operational.

On December 3rd, we confirmed that misalignment of the direction of high-gain antenna and the Sun-Earth was getting larger, that was, 20 to 30 degrees. As a emergency attitude control, we decided to use xenon gas, which was normally used for ion engine operation, and started writing software for that.

On December 4th, we executed attitude control with xenon gas emission.

On December 5th, the alignment of high-gain antenna and Sun-Earth has recovered to 10 to 20 degrees, and we are having communication of 256bits/sec with medium-gain antenna. However, the probe is slowly rotating, and we are only having intermittent communication, once in 6 minutes.

As of December 6th, Hayabusa is at 550km from Itokawa. The distance from the Earth is 290,000,000km. Currently we are reactivating the only remaining reaction wheel, and it is running at 1000rpm.


Mainichi: Does it mean the bullet was fired, but the data was lost?

Kawaguchi: The data from firing equipment cannot be replayed unless we set the probe to launch mode. We did not have the time to switch the mode. Because the data could be lost if the firing equipment is reset due to loss of electricity, on Nov. 26th, we sent a command to transfer the data to data recorder and write protect it.

However, on 27th, we had loss of electricity and equipment reset of large scale. We lost the absolute time data of DHU (Data Handling Unit) and partition data of data recorder (DRAM). That means, we can replay data recorder, but we don't have the data that we fired the bullet.

But we still could replay the command sequence during the descent. According to that, in the sequence prior to the touchdown, there was a command to inhibit firing of the bullet by switching the bullet firing equipment back to safety mode. We are still investigating why such a command was included in the sequence.

The data we gained so far is spotty, but all the data we have suggests that "the bullet was not fired". Our take is there is 80 percent chance that the bullet was not fired.

Yomiuri: When will you be able to say anything conclusive from the analysis of data?

Kawaguchi: We are having hard time interpreting some of the data. On the first landing, the probe was exposed to high temperature from Itokawa, but the temperature of bullet firing equipment was higher on the second landing, suggesting that the bullet was fired. That is inconsistent with other data.
With current communication speed, we cannot download the image data. Once we could download the image, we'll be able to see the touchdown attitude and more detailed information could be drawn.
Before we start the operation of ion engine, we wish to download as much data as possible, and when we have sufficient data, we would like to hold a press conference for debriefing.

Anyway, the amount of data is scarce and they are inconsistent. We cannot draw any conclusion yet.

Kyodo Tsuusin: Of the record kept in the data recorder, some is lost and some is still there?

Kawaguchi: Data recorder uses DRAM and we lost partition information. That usually means all the data is lost. But when we tried download small amount of data, we could retrieve what looks like valid information.

Kyodo Tsuusin: As for the safety mode of the bullet firing equipment, did you send wrong command, or was there an error in writing inside the probe?

Kawaguchi: We don't know yet.

Following is the transration by Mr. nao. Thank you for your.effort.

Rough translation (cnt'd). Sorry for my poor English.

Kyodo Tsushin: Can the vehicle return to Earth by departure after 14th Dec?

Kawaguchi: That schedule is based on the case that we can fix the vehicle with the quickest process. We have prepared a orbit plan to start the return on 14th or 15th and reach the Earth in June 2007.

However, the thrusters are yet in bad condition. Without thruster recovery, the vehicle cannot keep the attitude. From now on, we try to recover the thrusters by rebooting powers or changing temperature of the thruster system.

If thrusters don't recover, the vehicle will return using attitude control by emitting xenon jet for the ion engines. In this case, if the attitude falls down, we have to stop the ion engines, restore the attitude by xenon jet, and then boot the ion engines again. Because the booting process of the ion engine takes considerable time, there is a risk for lacking enough running time for the engines to return to the Earth, which indicates an emerging alternative way to extend the return timing.

Kyodo Tsushin: Is there a possibility to change the pickup point in Australia to somewhere?

Kawaguchi: Indeed, the extension of return timing will increase the re-entry speed or the re-entry angle of the capsule, leading to larger risks for the capsule.

NHK How is the attitude control by xenon gas, concretely?

Kawaguchi: The vehicle has four ion engines, and the orifice of each engine has a neutralizer with four nozzles per engine in order to neutralize the jet gas electrically. The nozzles are openable and closable. By opening or closing the nozzles to emit neutralized xenon gas jets, we are controlling the attitude. Its propulsion force is very small.


Following is the transration by Mr.volunteer . Thank you!

Nikkei Science: Are the posture control on 11/27 and the power loss that followed related, or are they two independent events?

Kawaguchi: It is highly probable that the two events are related. Back in the operation on 27, thruster output was very small. So we restarted the spin which was once stopped, and at the same time sent commands to take more distance from Itokawa since it was getting closer to the asteroid.

Asahi: What do you think of the possibility that the sample were stirred up by the landing and actually gathered? And your comment on this turn of the situation where you couldn't retrieve the sample at the rate of 80%?

Kawaguchi: Escape velocity from Itokawa is equivalent to the speed of a pencil dropped from 0.5 millimeter height. It would only bounce up 0.5mm on earth, but on Itokawa where the gravity is small it would jump up more than 10 meters. Buton the second touchdown, the vehicle actually touched the ground for only a second and ascended back, so the sampler horn ascended with the sample, thus the sample would not have reached the capsule. In the touchdown on 20th the vehicle landed on the surface for substantially long time, so we think it is highly probable that the sample that were stirred up have entered the capsule.

We were able to take all the technical procedures aimed for collecting the sample. In that sense, we think that this landing has not lost its significance. Of course we're very determined to retrieve the sample. This is already an area beyond engineering demonstration. The fact that the projectile did not fire is, in a word, discouraging. We think it is essential for us to keep up our motivation for the return flight.


Following is transration by Mr.nao. Thank you very much.

Tokyo Shimbun: What is the neutralizer of the ion engines? And I'd like to know how the disorder in the thrusters is related the A/B dual systems mentioned in the last conference.

Kawaguchi: When the vehicle emits the cations, it gets charged negatively. Then the cations are attracted the negative charges and cannot leave it. So, the cations are needed to be neutralized electrically by anions. The neutralizer emits the negatively-charged gas to neutralize the jet plasma.

The disorder of thrusters is due to the movement failure of latching valves. We are trying to manage to move the latching valves by restarting the power for the valves or changing the temperature of the valves.

Yomiuri: Can the situation change if captured images are downloaded?

Kawaguchi: Yes, but here I cannot assure the success of download.

Space Authors Club: Do you mean that the latching valves of both A and B systems are stuck in with the closing state?

Kawaguchi: Yes. It seems that, on 27th Nov, several kilograms of the fuel was leaked inside the vehicle. The temparature dropped by vaporization. It is not the oxidant but the hydrazine that is leaking. On 2nd Dec, we sent commands to open the A/B latching valves, but they didn't move. It may be caused by problems in the power or wiring on the valve driving system. Freeze of valves or pipes is unlikely because we are now heating each parts in order to release the out gas. Open of the valves might cause the leakage again, but with comprehension of such risks, we are trying to move the valves.

Aviation Week: How is the operation by utilizing NASA DSN?

Kawaguchi: We are provided the usage of 70m antenna for 2 hours per day till tomorrow, by the kindness of NASA. In addition we are going to request support by the 34m antenna for one more week.

Aviation Week: You said that the reaction wheel are rotating with 1000 rpm. How is it with respect to the rated value?

Kawaguchi: We'd like to use it with 2000-3000 rpm in consultation with the vendor. They are designed for about 5000 rpm in max.

Jiji Tsushin: Did the leakage occurred inside the vehicle?

Kawaguchi: We confirmed from acceleration data on 26th that it leaked also outside through the top side.

When communication was disrupted by the large attitude disorder on 27th, there was a leakage of several kilograms, though we do not know if it is outside or inside. Its ground is the event that there occurred the downward propulsion force and the spinning speed decreased on 30th. It can be explained by our speculation that the fuel leaking inside the vehicle evaporated and blew outside.

Jiji Tsushin: Are the xenon or the thruster fuel enough for return to the Earth?

Kawaguchi: I think xenon lasts enough if there are no more disturbance.

Unknown: Is the leakage inside the vehicle stopping?

Kawaguchi: Stopping. If it continued, the vehicle temperature would decrease by vaporization heat. Now we are heating the vehicle to vaporize and eject the leaked fuel remaining inside.

Unknown: Are you stopping the leakage, or did it stop by itself?

Kawaguchi: I think that we stopped it. Now the both latching valves are closed and the leakage is stopped.

Sky Traveler (Gekkan Temmon): In the case of missing the return chance by 15th Dec, supposing we'll wait for three years for its return, then will Hayabusa travel along with Itokawa?

Kawaguchi: I think it will go away sufficiently from Itokawa. It will go further and further off Itokawa. FYI, the three-years waiting is just a candidate, and a pattern with three-and-half years is also possible. At this moment we focus on June 2007.

Mainichi: Is the reason of the thruster leakage unknown?

Kawaguchi: Yes. The touchdown itself is unlikely to cause it because the leakage occurred on the top side of the vehicle. The temperature dropped down due to vaporization on 27th, but on the contrary, the temperature increased on 26th. We have to give a consistent explanation after analyzing such data.

Tokyo Shimbun: Did the success of attitude control by the ion engines increase the chance for the return to the Earth?

Kawaguchi: We had no way in the last press conference, but now the situation got better than that. But we cannot evaluate definitely whether it is sufficient for the return.

Tokyo Shimbun: You concluded the success by finish of the sequence on 26th. Does the sequence finish even with a wrong command inserted?

Kawaguchi: Yes.

NHK: As for scientific data, Have you already downloaded the data up to 25th? And is there possibility to download the current data during the return cruise?
Kawaguchi: (The data up to 25th is) Already downloaded. We will download the data at the touchdown before starting the return cruise. After cruising phase starts, it will be difficult to make enough time for download.

NHK: Is the battery charged now?

Kawaguchi: It has restored again. Hayabusa is designed to work without the battery as long as its attitude is normal. I think that it has no obstacle for the cruise. The battery of Hayabusa has a capacity only for 40-min operation of the whole system.

NHK: How long can it be extended to achieve the return in June 2007?

Kawaguchi: We aim the return start by the mid of December, understanding some disadvantages in re-entry. If it is extended to the late December, the return on June 2007 will be harder.

Unknown: When did you confirm that the bullet did not fire?

Kawaguchi: Around 3:00pm on 6th. It was a deep shock to me, too. I told it to Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology in this morning.

Sky Traveler (Gekkan Temmon): Were you unable to confirm the bullet firing on the finish of the sampling sequence?

Kawaguchi: In order to confirm the action of firing equipment, we have to switch the operation mode of the vehicle to the another one, the lift-off mode. On 26th we considered that it worked because the sequence worked well.

Akahata: Did you assume the attitude control by the xenon gas in advance?

Kawaguchi: No, we didn't assume it. This idea was proposed by the ion engine team when the thrusters did not move on 2nd Dec.

I myself was planning to control the attitude by operating the ion engines. But the ion engine team comprehended well the movement range of the nozzles, and gave me a proposal that the jet by the neutralizer can change the attitude.

At that time, the attitude of the vehicle was sliding by 1 degree per day, and without the proposal what we could do would be almost only to watching the dying vehicle.

Nikkei: Is the replacement of the sequences an artificial error?

Kawaguchi: The detail is unknown in the current situation. Let us keep it "No comment" now.

Unknown: You said that the data might be lost by the battery discharge. Which date have you already downloaded the data for, and which date is the data stored in the DRAM for?

Kawaguchi: First, the reason is not the battery discharge, but the decrease of power output; the battery team would get angry (to hear that).

The DRAM must keep a few megabytes data around the touchdown, but we could download only a slight part. The images with high-reso have large sizes.

Sky Traveler (Gekkan Temmon): We already got an image picturing the target marker on the descending phase. Did you obtained any images after that?

Kawaguchi: That image is the latest.

Sankei: Did you confirm whether the command to switch the firing equipment to the safety mode executed?

Kawaguchi: We have to confirm it by data to be downloaded.

Aviation Week: Which do you set a priority on, the return to the Earth or download of the data?

Kawaguchi: Not decided yet. It depends.

Weekly Post: How do you keep motivation during such critical situation?

Kawaguchi: Because our final goal is to return to the Earth, of course.

Prof. Matogawa: No other vehicles in the past have ever been so robust as Hayabusa. It overcomes 8 times even after experiencing 7 failures (a Japanese proverb). I think the belief by Project Manager (Prof. Kawaguchi) is keeping the team up.


That's all.

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「はやぶさリンク」:12月7日午後4時50分からの記者会見

 午後4時50分からの、記者会見です。出席者は川口淳一郎プロマネと的川泰宣教授。

JAXA発表文


まず川口プロマネから説明。

 すでにお知らせしているように、セーフモードからの復帰が不調。11月29日に低利得アンテナによるビーコンの通信を確立。

 11月30日から、電波オンオフによる通信を開始(1ビット通信)を開始。
 12月1日にはローゲインアンテナを使った8ビット/sの通信が断続的に回復。

 その結果以下が判明。

 11月27日に指令した姿勢軌道制御の結果、大きな姿勢喪失または何らかの原因による電力喪失が発生した模様。
 探査機内部に漏洩した燃料の気化に伴い、かなりの機器に大幅な温度低下が発生すると共に発生電力の低下によってバッテリーに深い放電が発生し、システム全般の電源系が広い範囲でリセットされたと推定される。詳細は解析中。

 12月2日。化学エンジン(スラスター)の再起動を試みたが、小推力を確認するも本格的には起動せず。

 12月3日、探査機のハイゲインアンテナ軸と太陽、地球のなす角度が20ないし30度へ拡大していることが確認された。緊急の姿勢制御方法として、イオンエンジン運転用のキセノンガスを噴射による姿勢制御を行うことにして、運用ソフトウエアの作成を開始。

 12月4日、キセノンガス噴射による姿勢変更を実施。

 12月5日、太陽、地球とハイゲインアンテナ軸が10度〜20度まで回復し、現在はミディアムゲインアンテナ経由で256ビット/sの速度で通信ができている。ただし、探査機がゆっくりと回転しているので、ミディアムゲインアンテナによる通信は6分に1分といった間歇的なもの。

 12月6日現在、はやぶさはイトカワから視線方向に550kmのところにいる。地球からの距離は2億9000万km。現在1基だけ残っているリアクションホイールを再起動し、1000rpmでの回転を確認している。

質疑応答

毎日 弾丸は発射されたがデータが消えているということか。

川口 火工品動作のデータは探査機を打ち上げモードというモードに入れないと再生できない。11月27日以降、モードを変更する余裕がなかった。このデータは火工品回りが瞬断でリセットされると消えてしまうので、26日にデータをデータレコーダーに転送した上で上書きを禁止するよう命令した。

 しかし27日にはかなり大規模な電源の放電とリセットが起きた。DHU(データハンドリングユニット:データを処理して送信する中枢機能を持つ装置)の絶対時刻データやデータレコーダー(DRAM)のパーティション情報すら消えてしまっている。このため、現状データレコーダーは再生できているものの、その中に弾丸が発射されたというデータは残っていない。

 ただし、降下中に送信したコマンドが再生できた。すると着地前のシーケンスに弾丸発射系統を安全モードに戻して発射できないようにするコマンドが、まぎれこんでいたことが判明した。なぜそんなコマンドが紛れ込んだかは現在解明中。

 現在までに断片的なデータしか得られていない。が、これまでに得られたデータは「弾丸が発射されなかった」とすると整合性がある。私共の感触としては8割がた発射されなかったと思っている。

読売 現在のデータ解析はいつ終わって、はっきりしたことが分かるのか。

川口 データには解釈に困るようなものものある。1回目は長時間着陸してイトカワにあぶられたにもかかわらず、2回目は弾丸発射装置が1回目よりも高温になっている。これは弾丸が発射されたことを示唆している。矛盾しているわけだ。
 現状の通信速度では、画像データをダウンロードできない。画像がダウンロードできれば、着陸直後の姿勢が分かるので、もっと詳しいことが分かると思う。
 イオンエンジンの運転開始前には、なんとかしてデータは可能な限りダウンロードしたいと思うので、そのときにまた記者会見を開いて説明したいと思う。

 とにかくデータは少なく、相互に矛盾している。ここで即断することはできないと考える。

共同通信 データレコーダーに格納されていた記録は、失われているものも残っているものもあるのか。

川口 データレコーダーはDRAMであり、パーティション情報が失われているので普通に考えれば、データは失われていると考えるのが自然だ。しかし、短い情報を試しにダウンロードしてみたところ、一見それらしいデータが出てきたということである。

共同通信 安全装置のコマンドは、誤ったコマンドを送信したのか。それとも、書き込みなどでエラーが発生したのか。

川口 まだ分からない。

共同通信 14日以降の帰還で無事に帰還できるのか。

川口 このスケジュールは、最速で探査機をたて直した場合ということで決まっている。14〜15日に帰還を開始すると、2007年6月に帰還できる軌道計画を用意している。

 ただし、現在もなおスラスターが不調である。スラスターが復帰しなくては、姿勢を保てない。今後スラスター系の電源再立ち上げや、スラスター系温度を変えるといった方法で、スラスター系の復帰に向けて努力する。
 スラスターが復帰しなければ、イオンエンジンに使うキセノンを噴射することで姿勢を保ちつつ帰還することになる。この場合は、姿勢が崩れるとイオンエンジンを止めて、キセノンを噴射して姿勢をたて直し、またイオンエンジンを起動するということが必要になる。この場合、イオンエンジンの軌道はかなり時間がかかるので、こうなると帰還に必要なイオンエンジンの運転時間をとれなくなる可能性がある。
 となると帰還を遅らせるオプションが浮上する。

共同通信 回収場所をオーストラリアから変える可能性はあるのか。

川口 確かに次期が遅れると、再突入カプセルの速度が速くなるか突入角度が深くなるかなので、カプセルのリスクは大きくなる。

NHK キセノンガスによる姿勢制御は具体的にどんなものか。

川口 イオンエンジンは4つ搭載しているが、その噴射口に噴射ガスを電気的に中和する中和機というものがありそこにノズルが1エンジンにつき4つ付いている。ノズルは開閉可能。そのノズルを開閉することで、中性のキセノンガスを噴射して、姿勢を制御している。推力は非常に小さい。

日経サイエンス 11月27日の姿勢制御と、その後の電力喪失は関係あるのか、独立したものか。

川口 関係ある可能性が高い。27日の運用ではスラスター出力が非常に小さかった。このため、一度とめたスピンを再開させ、同時にイトカワに近づきつつあったので、遠ざかるように指令を出した。
 本日取得できたテレメトリによれば、この時探査機は大きく姿勢を崩して太陽電池パドルに太陽光が当たらなくなり、バッテリーを放電してかなりの機器が落ちたようだ。
 姿勢を崩した理由は、スラスター配管が一部凍結して2基一組で噴射すべきスラスターが一方しか噴射しなかったためと現状では推測している。

朝日新聞 着陸によってサンプルが舞い上がって、採取された可能性については。また一転して、8割方試料が採取できなかったとなってしまったことについてコメントを。

川口 イトカワの脱出速度は、0.5mmの高さから鉛筆を落とした速度だ。地球上ではバウンドしても0.5mmしか飛び上がらないが、重力の小さいイトカワでは何十mも飛び上がる。ただし、2回目は1秒しかタッチせず、上昇したのでサンプラーホーンもサンプルと一緒に上昇する形になり、サンプルはカプセルに届かない。20日のほうは、かなり長時間接地していたので、舞い上がったサンプルがカプセルに入った可能性はかなり高いと考える。
 
 サンプル採集に向けての技術的手順はすべて踏むことができた。その意味では今後のサンプルリターン計画に対しては、今回の着陸の意義は未だ失われていないと考えている。もちろん我々はサンプル採取にかなり執着している。これは工学実証を超えた領域だ。
 弾丸が発射されなかったということは、落胆の一言である。今は帰還に向けたモチベーションを保つことが重要だと考えている。

東京新聞 イオンエンジンの中和機とはどんなものか。また、スラスターの不調は、前回説明があったA-B2系統とどう関係しているのかを知りたい。

川口 プラスイオンを打ち出すと、探査機はマイナスの電荷に耐電する。そのままでは探査機のマイナス電荷に引かれてプラスイオンが出て行かなくなる。そこで、出たプラスイオンにマイナスイオンを吹き出して電気的に中和する必要がある。マイナスに帯電したガスを吹き出して噴射プラズマを中性化するのが中和機である。

 スラスター不調は、ラッチングバルブがきちんと動作してくれていないためである。ラッチングバルブを駆動する電源をリスタートしたりラッチングバルブ温度を変えるなどして、なんとかしてバルブを動かそうとしている。

読売新聞 画像がダウンロードできれば状況が変わる可能性はあるのか。

川口 その可能性はある。しかしこの場では、ダウンロードできるとは確約できない。

宇宙作家クラブ ラッチングバルブがAB両系統とも閉位置で動かなくなっているということか。

川口 そうだ。27日の時点で、どうやら数kgの燃料が探査機内部に漏出したようだ。気化によって温度が下がった。漏洩しているのは酸化剤ではなくヒドラジン。12月2日に、A系B系のラッチングバルブを開くコマンドを送ったが動かなかった。動かない理由に関しては、バルブ駆動系の電源や配線系の問題が考えられる。現在アウトガスを逃がすために、各部の温度をかなり上げているので、バルブや配管の凍結は考えにくい。バルブを開けると再度リークが発生する可能性はあるが、そのリスクを理解した上で、バルブを動かそうとしているところである。

エイビエーションウィーク NASA局による運用は。

川口 NASAの好意で1日2時間、70mアンテナを明日まで提供してもらえている。さらに一週間34mアンテナの支援を要請するつもり。

エイビエーションウィーク リアクションホイールは1000rpm回っているということは定格に対してどの程度なのか。

川口 製造メーカーとも協議して今後2000〜3000rpmで使っていきたいと考えている。最大5000rpmぐらいまで使えることになっている。

時事通信 リークは探査機内部に起きたのか。

川口 26日の時点で、上面から外部にも漏れたことが、加速度から確認できている。
 27日については姿勢を大きく乱れて通信が切れた。この時は内部か外部か分からないが数kgの漏洩があった。その根拠として、30日に下面方向に推力がかかり、スピン速度が減少するという事象が確認されている。これは内部にリークした燃料が探査機内で気化して外部に噴出したと考えるとつじつまがあう。

時事通信 キセノンなりスラスター燃料は地球帰還まで持つのか。

川口 キセノンはこれ以上の外乱がなければ持つと考えている。

不明 探査機内部のリークは止まっているのか。

川口 止まっている。続いていれば気化熱で探査機温度が下がるはず。現在、探査機を暖めて内部の残存リーク燃料を気化し、追い出している。

不明 漏洩を止めているのか、それとも勝手に止まっているのか。

川口 止めていると考えている。両ラッチングバルブは閉じており、漏洩は止まっている。

月刊天文 15日までに帰還できなかった場合、3年後まで待つとすると、はやぶさはイトカワに並走して待つことになるのか。

川口 イトカワからは十分に遠ざかることになると思う。イトカワからどんどん遠ざかる。ちなみに3年後というのは一つの候補であり、3年半後というパターンもある。現在は2007年6月にこだわっている。

毎日新聞 スラスターのリーク原因は不明ということでいいのか。

川口 その通りだ。探査機上面から起きているので、着陸が原因とは考えにくい。27日には気化で温度が下がったが、26日には逆に温度上昇が起きている。こういったデータを解析して一貫した解釈をしなくてはならない。

東京新聞 イオンエンジンのほうで姿勢制御できるとなると帰還の可能性は増えたのか。

川口 前回記者会見の段階ではお手上げだったが、現在はそれよりは改善されている。ただしこれで帰還に十分かと言えば、まだ明言は難しい。

東京新聞 26日にシーケンス終了をもって成功としたが、間違ったコマンドが挟まった場合も、シーケンスは終了するのか。

川口 その通りだ。

NHK サイエンス的データについては、25日までの分はダウンロードできているのか。また、帰還途中に現状のデータをダウンロードする可能性は。

川口 ダウンロード済みである。着陸時のデータは帰還飛行開始前にダウンロードする。帰還飛行が始まってしまうとダウンロードは時間的に難しくなる。

NHK バッテリーは現状充電されているのか。

川口 再度持ち直している。はやぶさは、姿勢異常が無い限りバッテリーを使わない設計になっている。今後の飛行には支障はないと考えている。はやぶさのバッテリーは全システムを40分だけ持たすだけの容量しかない。

NHK 2007年6月の帰還のためには、どこまでひっぱれるのか。

川口 再突入が多少不利になることを覚悟して12月中旬の帰還を目指している。下旬になると2007年6月の帰還は困難になる。

不明 弾丸が発射できなかったということを確認したのはいつ頃か。

川口 6日の午後3時頃。私にとっても大きなショックだった。本日午前中には文科省に説明している。

月刊天文 サンプル採取シーケンス終了時に、弾丸が出たことは確認できなかったのか。

川口 火工品の動作を確認するには探査機の動作モードを打ち上げモードという別モードに入れなくてはならない。26日はシーケンスが動いたということで動作したと確認した。

赤旗 キセノンガスによる姿勢制御は最初から想定していたのか。

川口 想定していなかった。これは、 12月2日にスラスターが動かなかった時、イオンエンジンチームから提案を受けた。
 私自身は、イオンエンジンを動作させて姿勢を制御しようと考えていた。
 ところがイオンエンジンチームはノズルの向きの可動範囲をよく理解しており、中和機の中性ガス噴射で姿勢を変更できると提案してくれた。
 この時、探査機姿勢は毎日1度ずつずれていっており、そのままでは探査機が死ぬのを見守るだけということになるところだった。

日経新聞 シーケンスの入れ替わりは人為ミスか。

川口 詳細は現状では不明だ。ノーコメントとさせていただきたい。

不明 バッテリー放電でデータが失われた可能性があるということだが、いつの時点までのデータがダウンロード済み、でいつの時点までのデータがデータレコーダーに入っているのか。

川口 まず原因はバッテリー放電ではなく、電源の出力低下である。バッテリーのチームが怒るので。
 データレコーダーには着陸前後の数メガバイトのデータが入っているはずだが、現状までにダウンロードできたのはほんのわずかである。容量が大きいのは高分解能の画像である。

月刊天文 我々の貰っている画像はターゲットマーカーが写っている降下途中の画像だが、その後の画像は得られているのか。

川口 その画像が最後だ。

産経新聞 火工品を安全側に戻すコマンドを実施されたと確認されたのか。

川口 今後のデータダウンロードで確認しないといけない。

エイヴィエーションウィーク 帰還とデータダウンロードとどちらを優先するのか。

川口 決まっていない。状況によると思う。

週刊ポスト 危機的状況の中でどのようにしてモチベーションを保っているのか。

川口 やはり最終目的が帰還だからだ。

的川 歴代の探査機の中でこれだけロバストな探査機はないです。七転び八起きです。プロマネの信念がチームをささえている、と私は思います。

以上

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「はやぶさリンク」:弾丸は発射されなかった可能性大

 速報です。

 11月26日の第二回着地で、弾丸が発射されなかった可能性が大。スラスターは依然回復せず。イオンエンジンを使って姿勢の制御を実施。

 イトカワ出発は14日以降。帰還計画は検討中。

 詳細は記者会見終了後にアップします。

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「はやぶさリンク」:本日12/7 午後4時50分より記者会見

 表題の通り、午後4時50分より、JAXA東京事務所で川口淳一郎プロマネが出席しての記者会見があります。

 私も出席します。なにかわかり次第アップします。

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2005.11.29

「はやぶさリンク」:午後3時からの記者会見

午後3時から記者会見開始

 リリースが二通。一つが第二回着陸のまとめ。もう一通が現状の分析。

 川口 土曜日に着陸の結果と今後の計画について説明したが、もう一度、説明する。もう一通が気になるでしょうが、こちらから説明します。

 第2回降下の詳細です。「はやぶさ」の第2回着陸飛行の結果と今後の計画について

 2通目のリリース。現在はやぶさが陥っている状況について。

川口 探査機現状について。(ここでリリースを読む。「はやぶさ」の第2回着陸飛行後の探査機の状況について)。

 はやぶさのスラスターの配管は。分離可能なA系統B系統2系統の冗長系となっている。どちらか一方だけでも三軸制御が可能。11月26日の第二回着陸時の上昇において、B系統に切り替えて日本時間9時過ぎに逆噴射を行った際に、B系統スラスターからリークが発生した。このためA系B系両方の、弁を閉鎖し、はやぶさはセーフモードに投入された。
 リークが起きたのは探査機上面(ハイゲインアンテナがある面)のB系スラスターと推定。

 26日夜DSN、27日臼田の運用で、セーフモードからの復帰を目指したが、残るA系統スラスターが十分な推力を発生しなかった。このため姿勢制御を回復することができなかった。
 A系統で、弁トラブルによる閉塞か、配管内凍結が起きている模様。
 11月27日、運用終了時に再度セーフモードに投入して運用終了。しかし28日臼田局運用では、探査機とのコンタクトが取れず。
 本日午前10時過ぎ、ビーコン回線が回復。復旧運用を開始。現在テレメトリ回線の回復と再度のセーフモード投入を目指している。

 現状からすると、復帰のためには相当の時間がかかる模様。


 以下質疑応答です。

時事通信 スラスター12基のA系統B系統とは。

川口 A系統6基、B系統6基ということ。

時事通信 接地着陸とスラスタートラブルの関係は。

川口 ないと思うが、これは推測の域を出ていない。

時事通信 A系のトラブルの詳細は。

川口 我々もミステリーだと思っている。推進剤は残っており、きちんと圧力もかかっている。遮断弁も開いているという信号が帰ってきている。弁開閉は機械的な動きをセンサーで得ているので信号が誤っているとも考えにくい。
 A系推力の配管には断熱材が巻いてあり、探査機内部を走っている。ところが配管の温度が一部で非常に低温、マイナス30℃にも下がっていることが判明している。配管の熱的収支が変わってしまっているようだ。しかし、その部位が凍結しても、他のスラスターで姿勢制御ができるはずなのだが、その他のスラスターもまた推力が出ない。
 27日に送ったスピンをかけて姿勢を安定させるという命令が通っていた。しかしスピン状態ではスピン軸が地球をきちんと向いていないと、ハイゲインアンテナによる高速通信ができない。本日は1パケットの取得を目指して運用したが、結局取得できなかった。

朝日新聞 B系上面スラスターはいくつか。

川口 上面4つは、A系2つ、B系2つ。このうちB系の一つがトラブルを出している模様。現状ではAとBの両方が使えないという2つのトラブルが起きているように見える。こういう事例は宇宙開発でよく発生するが、往々にして単一の原因で2つの事象が発生していることが多い。
 もっとも、実際はどうなのかは先入観を持たずに故障原因を解明したい。

朝日新聞 地球への帰還への影響はどのようなものか。

川口 まず姿勢制御の回復に全力をあげる。

毎日 B系統トラブルは復旧が可能なものなのか。28日の通信不能というのはどういう状態だったのか。

川口 B系統が、リークを起こしたことは間違いない模様。B系統の遮断弁を閉じるとリークが止まった。
 例えばリーク部位のヒーターを止めて凍結するに任せてリークを防ぐというようなことも考える必要もあるかも知れない。しかし、現状判断に必要な情報が不足している。

 28日の段階では、探査機はミディアムゲインアンテナを使用していた。このため姿勢が大きく傾くと通信ができない。この場合、まず探査機の受信機を地上からの電波にロックさせる。地上局からの電波を周波数領域でスイープさせ、探査機の受信機をロックする。その後、地上からコマンドトーンというサブキャリアを送信すると、探査機上のコマンドを受け付けるようになる。これで、探査機のアンテナをローゲインアンテナに切り替えて、通信を確立する。

 探査機の姿勢が不安定な場合、この手順はなかなか通らない。何度か繰り返す必要がある。28日は、10回行ったが、通らなかった。今日はうまい具合に通すことができて、ローゲインアンテナでの通信が可能になった。


毎日新聞 復旧作業のタイムリミットはどうなっているか。帰還時期が近づいているはずだが。

川口 リミットはあるがまずは探査機を復旧させなくてはならない。努力はするが、はっきりといつまでに復旧できるかは分からない。もしも12月初旬にイトカワを出発できないとなると、別の手段を考えなくてはならない。

NHK 配管が低温になっているのはどこか。

川口 探査機の上面側の内側だ。こちらは太陽の入射があるのでそんなに温度が下がらないはず。非常に不可解な状況である。

NHK セーフモードに近い状態とはどんな状態か。

川口 セーフモードに入れる時に探査機を回転させ、次にスラスターで首振り運動を止める。今回は首振り運動を止めることができなかった。

NHK 姿勢制御なしで帰還できる可能性は。

川口 姿勢制御が回復しないと、イオンエンジンの噴射方向を決めることができず、帰還フェーズに入ることができない。いくつか選択肢はあるが、現状がまだ分からないのでなんとも説明のしようがない。

産経新聞 12月の帰還が不可能になった場合、帰還がありうるのか。

川口 4年待つと別の帰還タイミングが存在する。ただしそれだけ待つと故障可能性も上がるので、それがいいかどうかはまた考えなくてはならない。

NHK 今、はやぶさとイトカワの位置関係は。再度のセーフモード以降を指令するとはどういうことか。

川口 現時点では推測の域を出ていないがイトカワから数十kmのところにいるはず。26日時点では6kmのところにいた。行方不明と言うことは考えられない。地上局からきちんと捕捉できる。
 再度のセーフモード移行とは、通信回線を確保するということ。それにより、対策を打つ時間を稼ぐ。

エイヴィエーション・ウィーク NASAのDSNとの協力は考えているのか。もしDSNを使えない場合にはどうするのか。

川口 DSNによる支援は11月30日と12月1日に、34mアンテナの使用時間を確保している。現在NASAの70mアンテナを数日使いたい状況だが、これはカッシーニ、ボイジャーなどの運用に使っており、NASAもそう簡単には解放できない。リクエストしてみようと思っている。現在使えるローゲインアンテナで、1パケットのデータを取得するためには大きな地上アンテナのほうが良い。
 探査機運用のために、ハイゲインアンテナは必須ではない。観測データを高速にダウンロードするために搭載している。探査機運用にはミディアムゲインアンテナがあれば十分。そのためにはとりあえず1パケットのデータがあれば中利得アンテナで地球との通信が確立できる。その受信に、70mアンテナを使いたい。

ネイチャー 今回のエンジンの問題は第1回着陸での30分の着陸と関係あるのか。

川口 なんとも言えない。今日の段階では断定できない。

時事通信 NASAから着陸成功のお祝いは来ているか。

川口 世界中からたくさん来ている。が、現状がこれなので、なかなか返事しにくくて困っている。

東京新聞 次の判断、今後の見通しはいつ頃得られそうか。

川口 大変難しい質問だが、ひとつはDSN70mをつかうこと。この話が通れば1パケット取得はできるだろうと考えている。もしもDSNでも駄目ならば、例えば「のぞみ」でも行った1ビット通信を使って探査機自身が自分の状況を知らせるという方法を使うかもしれない。今日の段階では、いつまでにどうなるというのは言いにくい。

東京新聞 では、NASAの70mアンテナのリクエストを出すのが最初のオプションか。

不明 スラスターのリークが起きているのは燃料か、酸化剤が、

川口 燃料だ。A系で凍結しているのは、両方である。

不明 ヒーターはどうなっているのか。解凍にヒーターは使えないのか。

川口 ヒーターで暖めると隣はもっと高温になってトラブルが起こるということもあり得る。やみくもにヒーターを付けるのは危険だ。とにかく現状を把握しなくてはならない。

不明 第1回の着陸の際に、スラスターのヒーターセンサーに問題が出ていたが、それは関係あるのか。

川口 その問題は2回目の着陸の前に解消した。

不明 12月上旬までに帰らないといけないのか、どこまで引き延ばせるのか。

川口 帰るだけであれば、比較的12月中旬までは引っ張れる。最後にオーストラリアに降下させる角度が変わってくるのでカプセルに加わる熱量が増加する。これをどこまで許容できるかである。残念ながら、カプセルへの熱流入量の許容範囲は大きくない。

以上です。

Following is translation by Mr. nao. Thank you.

Rough translation. Please refer to the next post and the JAXA press release for details.

[Trouble occured in thrusters of both the system-A and the system-B]

At 3:00pm, The press conference released an announce as shown in the title above. Communication to the vehicle is being kept by beacon mode. Today's operation is now being executed after re-entry to the safemode.

Following is an abstract of the press release.

The thrusters consist of two systems, A and B, for redundancy. In ascending from the secong touchdown on 26th Nov., a leakage occured in the system B and Hayabusa entered to the safe mode. They tried to recover from the safe mode in operation via DSN at 26th night and Usuta on 27th, but the remaining system-A thrusters did not generate enough propulsion force.

It seems that some trouble in valve may cause obstruction, or the pipes may be frozen.

Operation on 27th Nov. ended by making the vehicle enter to the safe mode again, but they failed to contact the vehicle on the 28th.

After 10:00am today, the beacon line was recovered and they started the operation for recovery.


Following is translation by Mr,nao. Thank you.

Here I privide a rough translation. Sorry in advance for poor quality. If you find any mistakes or typos, please tell me.


The press conference started at 3;00pm.

I got two press releases, one for summary of the second landing, and one for current condition.

(snipped. details are available in JAXA website.)

Kawaguchi: The thrusters consist of two systems, A and B, for redundancy and can work separately. Even only one system can afford the three-axes control enough. In ascending from the second touchdown on 26th Nov., at reverse thrust after switching to B on around 9:00am JST, a leakage occurred in the system B. So we closed the valves in both A and B, and entered Hayabusa to the safe mode. We assume that the leakage occurred in the B thruster on the top (the side with the high-gain antenna) of the vehicle.

We tried to recover from the safe mode in operation via DSN at 26th night and Usuta on 27th, but the remaining system-A thrusters did not generate enough propulsion force. So we failed to restore the attitude control.

It seems that some trouble in valve may cause obstruction, or the pipes may be frozen.

Operation on 27th Nov. ended by making the vehicle enter the safe mode again, but they failed to contact the vehicle on the 28th.

After 10:00am today, the beacon line was recovered and they started the operation for recovery. Now we are trying to restore the telemetry line and re-enter the safe mode.

Looking at current situation, we think it takes considerable time for recovery.

Jiji Tsushin: What do A and B in the 12 thrusters mean?

Kawaguchi: Six for A and another six for B.

Jiji Tsushin; Is the trouble related to the landing?

Kawaguchi: I think it isn't, but it's a just speculation.

Jiji Tsushin: Please give us the detail for the trouble in system A.

Kawaguchi: We think it is a mystery too. Fuel remains enough and the pressure is proper. Signals sent to us says that the block valves are open. The errors in the signals are unlikely because we get the mechanical motion by sensors.

Pipes of the system A is installed inside of the vehicle, and covered with thermal insulator. On the other hand, we found that the temperature of a part of pipe is quite low to be -30 degree Celsius. It seems that heat balance of pipes are changed. But even if that part freezes, it is likely that other thrusters can afford the attitude control. However, other thrusters do not generate enough power too.

The vehicle accepted the command to stabilize the attitude by spin, sent on 27th. In spin state, however, incorrect facing of the spin axis to Earth inhibits the high-speed communication by the high-gain antenna. We tried to get one packet, and we failed.

Asahi Shimbun: How many B thrusters on the top?

Kawaguchi: The four on the top consist of two for A and two for B. One of B seems to be in trouble. Now it seems that there occur two troubles in A and B. Such incidents occur quite often in the space development, but in many cases the two derive from a single event.

Anyway, we'd like to investigate the cause without prejudice on how it is.

Asahi Shimbun; How does it have influence on the return travel?

Kawaguchi: We now will concentrate our efforts on recovery of attitude control as the top priority.

Mainichi: Can the trouble in B be fixed? How is the situation in disconnection on 28th?

Kawaguchi: I think it's sure that the system B had a leakage. The leakage stopped when we closed the valve.

For example, the leakage might be prevented by turning off the heater at the leakage point to let it freeze, but we have too little information to judge it.

Maybe, I think, the medium-gain antenna was used on 28th. A large inclination of the attitude inhibits communication. In such situation, first, we make the receiver of the vehicle to lock on the radio wave from earth. The vehicle sweeps the wave in the freq domain and locks the receiver. Then, after we send subcareer called command tone from earth, the vehicle get to accept commands from vehicle itself (?). Then the antenna was switched to low-gain one and communication is established.

This procedure doesn't work well and has to be repeated, when the
vehicle attitude is unstable. We tried 10 times on 28th and failed. Today we succeeded it and established communication by the low-gain antenna.

Mainichi: When is the time limit of the recovery operation? Time to come back is approaching.

Kawaguchi: Though there is a limit, what to do first is the recovery. We'll do the best but I'm not sure when it recovers. If the vehicle cannot leave Itokawa in early December, we have to consider alternative ways.

NHK: Which part of the pipes is in low temperature?

Kawaguchi: Inner side of the top of the vehicle. It is expected that this part is unlikely to be so cold. Quite strange situation.

NHK: What does the "state similar to the safe mode" mean?

Kawaguchi: In entering the safe mode, the vehicle is rotated and then the swing motion is suppressed by thrusters. This time, the swing was suppressed.

NHK: Is there possibility for return without the attitude control?

Kawaguchi: Without attitude control, the jet direction of the ion engines cannot be determined and it cannot enter the return phase. Although there are several alternatives, we can tell nothing without understanding the current condition.

Sankei: If the return in December is impossible, is there any possibility of return?

Kawaguchi: There exists another return timing after 4 years. But its possibility has to be considered because the risk of disorder increases after such long time.

NHK: How is the geometrical configuration of Hayabusa and Itokawa? And what does the re-entry to the safe mode mean?

Kawaguchi: It's just a speculation; Hayabusa is now several score kilometers above Itokawa. It was 6km on 26th. We don't think it is missing. We can track it correctly from earth.

Re-entry to the safe mode means the establishment of communication line. It allows us to temporize for next operation.

Aviation Week: Are you planning to use NASA DSN? What if you cannot use DSN?

Kawaguchi: As for DSN support, we reserved the 34m antenna on 30th Nov and 1st Dec. We'd like to use the NASA 70m antenna for a few days, but now it is used for operation of Cassini and Voyagers etc. and it's hard for NASA to release it. But we are planning to request it. Larger ground antenna would be suitable for getting one-packet data by the low-gain antenna available now.

A high-gain antenna is not always required for operation of the vehicle. It is installed for high-speed download of observed data. A medium-gain antenna is enough for operations. One packet data at least is needed for establishment of communication to Earth by medium-gain antenna. We want to use the 70m antenna to receive it.

Nature: Is this engine trouble related to the landing for 30 minutes in the first descending?

Kawaguchi: It's difficult to judge at the present.

Jiji Tsushin: Did you get congratulations for success in landing from NASA?

Kawaguchi: We get many from all the world. But we are now confused about what to answer under such situation.

Tokyo Shimbun: When are the next judgment or prospects available?

Kawaguchi: Very difficult question. One is usage of the DSN 70m antenna. If we can use it, we can get one-packet data. If it fails, we may use the way to notice the vehicle the condition of itself by 1-bit communication, which was used in the Nozomi mission. It's hard to tell you the concrete dates and prospect at this moment.

Tokyo Shimbun: Then, is the first option is the request for the NASA 70m antenna?

Unknown: Is it the fuel or oxidant that is leaking in the thrusters?

Kawaguchi: Fuel. Both is frozen in the system A.

Unknown: How is the heater? Can't you use heater to melt the freeze?

Kawaguchi: Temperature of the neighbor parts would raise accompanied with heating, leading to the risk of another trouble. Reckless heating is dangerous. Anyway we have to understand the current condition.

Unknown: There was a trouble in the heater sensor of the thruster in the first landing. Is it related?

Kawaguchi: That problem was solved before second landing.

Unknown: Must the vehicle leave Itokawa by the beginning of December? How long can it be extended?

Kawaguchi: We can extend it to the mid of December, if it has only to return. The angle for falling down to Australia will change and the heat on the capsule will increase. It depends on how much heat is permitted. Unfortunately, allowable heat influx to the capsule is not large.

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「はやぶさリンク」:速報、はやぶさ、A/B両系統のスラスターでトラブル発生

 午後3時からの記者会見で、タイトルの通りの発表がありました。ビーコンモードにより探査機との通信はできています。本日は再度のセーフモード投入の運用を行っているとのこと。

 以下は配布されたリリースの要約です。

 スラスターはA系統B系統2系統の冗長系となっている。11月26日の第二回着陸時の上昇において、B系統からリークが発生し、はやぶさはセーフモードに投入された。26日夜DSN、27日臼田の運用で、セーフモードからの復帰を目指したが、残るA系統スラスターが十分な推力を発生しなかった。
 A系統でで、弁トラブルによる閉塞か、配管内凍結が起きている模様。
 11月27日に再度セーフモードに投入して運用終了。しかし28日は探査機とのコンタクトが取れず。
 本日午前10時過ぎ、ビーコン回線が回復。復旧運用を開始。

 記者会見は続いています。続報をお待ち下さい。

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2005.11.28

「はやぶさリンク」:着陸ミッションを終えて

 JAXA広報からの連絡によると、28日の運用もセーフモードからの復帰に費やした模様。三軸制御を確立して、ハイゲインアンテナを使って着陸時に取得したデータをダウンロードするのは明日29日以降となる。データが解析されて公表に至るには、さらに数日を必要とするだろう。

 はやぶさは、小惑星への着陸と土壌サンプル採集という前人未踏のミッションを完遂した。これから地球に向けた最後の行程が始まるが、リアクションホイール3基中2基が壊れ、代替となるスラスターは推進剤残量が少ない。帰途も又、困難なものとなるだろう。帰途の無事と、ミッションを締めくくる再突入カプセルの回収成功を祈るものだ。

Following is translation by Mr, nao. Thank you.

Here is a rough translation of the first part of the post. Sorry for
my poor translation. The remaining paragraphs describing
Mr. Matsuura's impression are not included.


According to JAXA public information office, they expended the
operation on the 28th upon recovery from the safe mode. It will be
after the 29th to establish the three-axes control and download data
acquired in touchdown via the high gain antenna. It will take more
several days for announcements of analyzed data.

Hayabusa accomplished an unexplored mission of touchdown on the asteroid and sampling of its soil. The final travel to Earth will start. But two of three RW are broken and thrusters as an alternative do not have enough fuel. It would also be a hard return. We wish the safety homeward and the success of retreiving the reentry capsule as a closing of the mission.

 以下、私の印象を、簡単にまとめる。

1)日本が初めて、人類、ひいては地球に生まれた生命の最前線に到達して、一つの仕事を成し遂げた。

     これは言うまでもないことだろう。深宇宙探査のようなフロンティアに出て行く行為において世界初ということは、人類のみならず地球生命すべてにとっての最前線へと出て行く行為なのである。  私はプレスルームで、「そうか、アメリカのJPLはいつもこんな雰囲気で仕事をしていたのか」と思った。

2)しかし、これをもって「日本の宇宙科学は世界のトップに踊り出た」というのは早計である。

     確かに他惑星からの土壌サンプル採取という点では、日本の宇宙科学は世界のトップに立った。しかし、それのみが宇宙科学ではない。かつて旧ソ連は火星や金星に何機もの探査機を送り込んだ。現在、欧州は火星に探査機を送り込み、彗星に着陸する探査機を運用中、そして金星にも探査機を向かわせている。

     言うまでもなく、アメリカは現在10機以上の探査機を実際に運用している。火星では4機もの探査機が探査に従事しており、5機目も火星に向かう途上だ。土星周回軌道には「カッシーニ」がおり、2機のボイジャー探査機は太陽系を離れてなおも有用な情報を送ってきている。
     マスコミとしては、「日本の宇宙科学は世界のトップに踊り出た」という見出しを打ちたいところだろうが、それは誤りだ。正確には日本は「世界のトップクラスに向けて、やっと第一歩を印した」ところなのだ。

3)「はやぶさ」は、リソース(予算、打ち上げ能力、地上局)の不足を、運用チームが負担を引き受けることで実現した。

     はやぶさのハイゲインアンテナは本体に固定されている。本当はジンバル機構によって向ける方向を変えることができれば、探査機がどんな姿勢になっても地球との高速通信を維持できる。しかし軽量化のためにジンバル機構は省略された。

     はやぶさの太陽電池パドルは本体に固定されている。本当はジンバル機構によって向ける方向を変えることができれば、探査機がどんな姿勢になっても電力を確保できる。しかし軽量化のためにジンバル機構は省略された。

     日本は長野県・臼田町にしか地上局を持っていない。着陸のようなぶっつづけの運用が必要な時は、アメリカのDSN(深宇宙ネットワーク)を借りるが、事前の予約が必要な上、アメリカの探査機が優先であるので、使いたいときに使えないと言うことが起こる。

     これらの設計や、システム不備による負担はすべて運用チームが身を削ることで引き受けている。

4)「はやぶさ」を「日本惑星探査の最盛期」としないためには、少なくともいくつかのリソースを補充する必要がある。それは予算処置によって可能だ。

     まず必要なのは24時間運用を可能にする地上局だろう。南米とアフリカに1局ずつ、70m級のパラボラアンテナを持つ深宇宙探査用の地上局を建設したいところだ。同時に設置から20年を経て老朽化が始まっている臼田局の近代化改修も必要だろう。

     もう一つは、宇宙科学全般の問題だ。かつて宇宙科学研究本部は、年間1機の科学衛星を打ち上げていたが、現在は計画の大型化と予算の縮小が相まって、年間1機を打ち上げることができなくなってしまっている。
     当面年間1機体制の回復を図り、将来的には年2機体制を実現したい。ただしそのためには計画管理体制の改革と人材育成が必須となるだろう。

     はやぶさのような深宇宙探査については、この20年にハレー彗星に向かった「さきがけ」「すいせい」、火星探査機「のぞみ」、そして「はやぶさ」と4機を打ち上げた。平均5年に1機ということになる。これを将来的にはせめて3年に1機にしたい。あまり間を空けると、ノウハウが失われ結果として失敗の可能性を高めてしまう。

5)本ホームページへのアクセスや、コメント、トラックバックを見る限り、「日本人は、失敗にきびしいから」「そもそも前人未踏のことをするのに向いていない」、「だから予算を出そうにも国民の合意が得られない」とする説明は間違っている。

     第1回着陸の日の本blogアクセス数は7万9000、第2回着陸では11万4000のアクセスがあった。  これを多いと見るか少ないと見るか。  また、一連の「はやぶさリンク」の記事に付いたコメントやトラックバックに、はやぶさの探査に対する否定的なものはなかった。  「お前ははやぶさを応援しているんだろ、だったら肯定的なコメントやトラックバックばかりなのは当然だ」と考えるべきか。

     少なくとも、こと深宇宙探査について「予算を出そうにも国民の合意が得られない」という言葉は当たっていないように思われる。そしてまた、深宇宙探査は日本国の全予算を使う物ではない以上、全国民的な支持がなければ支出できないということはないだろう。少なくとも現状以上の予算を出してしかるべきなのではないだろうか。
     予算増額は「関係者が誠心誠意、予算の有効活用を行う」ことが前提となる。とはいえ、しかし、5年間、127億円という予算でこれだけの成果を挙げた分野に、それなりの報酬があってもしかるべきと思う。
     一番恐ろしいのは、「この金でこれだけの成果を挙げることができたなら、この経験を持って次はもっと安くやれ」と予算を削られることだ。「なにをバカな」と思うかも知れないが、結構世間にはこのような例が多い。

 後戻りすることなく、バブルに踊ることなく、進もう。
 一歩ずつ、確実に。星の世界へ。

#最後に

 記事の英訳に協力してくれた、5th star管理人さん、RogueEngineerさん、zundaさん、naoさん、木下充矢さん、そしてコメントとトラックバックをつけてくれた皆さん、このページを訪れて記事を読んでくれた人たち——

 どうもありがとうございました。

「はやぶさリンク」は、一応はやぶさがイトカワを離れて帰途につくまでは続けますが、毎日の更新はおそらくこれをもって終わりになると思います。
 「情報が少ないのだから、せめてリンク集でも作ろう」と思ったものが、ここまで発展するとは思ってもいませんでした。

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2005.11.27

[HAYABUSA link] The press conference at 16:00 JST 26th

Fokkowing is translation by Mr. RogueEngineer. Thank you.

Rough English translation of this entry
(press conference part only, no translation for Q and A session):

Here is a report of press conference at 4:00 PM.

People attended: Project Manager Junichiro Kawaguchi, JAXA Executive Director Hajime Inoue, Professor Kuninori Uesugi (Mission Adviser), and the chairman for this conference, Professor Matogawa.

Prof. Kawaguchi: We are giving a summary of the events from last night to today. This is the second attempt of landing, following the first attempt on November 19th. In the first landing attempt, we did a touchdown and Hayabusa stayed on the surface for 30 minutes. In the second landing attempt today, we aimed for the sampling that did not take place in the first attempt. Just after the first landing, Hayabusa entered safe mode and flew far away from Itokawa. It took us a week to get it back to original position.
At around 10:00 PM yesterday, we started descent from the distance of 1km. We used optical navigation to guide Hayabusa first, then we switched to the vertical descent phase at around 6:00 AM. Vertical descent is a maneuver to send Hayabusa to the MUSES-SEA on Itokawa along with the direction of the gravity. Once we enter that phase, there is basically no way to remote control from the ground. At 6:52 AM, we issued a dummy sequence of launching target marker. During the descent we found the target marker from last landing attempt, and we avoided the risk of confusing guidance system with multiple target markers.
Target marker was originally intended to help the horizontal guidance, but from the first landing attempt, we gained experience of guiding Hayabusa without target marker. So we planned a sequence of descent and landing that does not rely on the target marker for today's attempt.
At 6:53 AM, the probe was descending at the rate of 4 to 5cm/s; at 35m from the surface, we stopped laser altitude meter, followed by the start of LDR 2 minutes later. At 7:00 AM, with hovering, attitude adjustment according to the terrain was done. Shortly after that, it switched to beacon operation from telemetry.
At 7:03 to 7:05, the mode of laser range finder was switched from range finding mode to sampler control mode. For today's attempt, we used the parameter to use fewer safeguard to achieve full execution of the sequence. That means Hayabusa will not start ascent without firing the bullets.

At 7:35 AM, we confirmed two bullets (projectiles) were fired.

At 8:35 AM, we switched to the DSN Usuda. Data replay has started at Usuda.

Shortly before 11:00 AM, a trouble, possible leakage, was detected in the thruster system.
Actually we were seeing the sign of this problem during the descent phase, but at that time we switched to the backup system and continued the descent.
When we switched to the main system from the backup system and started the thruster operation, the same problem occured. Due to the attitude change, the probe automatically switched to the safe mode. After that, we controlled the valve to stop the leakage.

We'll use the next three days to get it out of the safe mode. Getting out of the safe mode will be our first priority. After that we'll start downloading of the data.

The amount of leakage of propellant does not seem to hinder the current operation. But it definitely raised the bar of making Hayabusa back to Earth.

Because of the leakage incident, we are not able to see the detail of sampling yet. However, the sequence of the onboarded computer is confirmed to have executed normally. We expect the touchdown attitude was good, but we'll have to wait for the completion of data downloading for definite answer.


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Following is translation by Mr. zunda. Thank you very much, Mr. zunda.


Rough English translation of a part of the Q and A session:

Mainichi: Could we explain that Hayabusa fired the bullets and then taken off, at this time?

Kawaguchi: Exactly. Hayabusa is designed to discharge the bullets after detecting lengthwise or traverse transformation of the sampler horn. The data shows that it detected a traverse transformation and discharged the bullets. To sample more, two bullets were fired with an interval of 0.2 seconds. Hayabusa touches down at a speed of 10 cm/sec and the sampler horn shrinks 10 cm. Then, it would wait a second before ascending.

Mainichi: What did you feel when you knew the landing? How was the operation team?

Kawaguchi: We were glad with great joy. Hayabusa controlled itself according to the terrain, touched down, and ascended. The sequence was just what we wanted. All were so happy, including me, of course.

NHK: I may be repeating, but, does the fact that the sequence has been done mean that the sample is acquired?

Kawaguchi: I myself think so. However, we have to collect circumstantial evidence to make it sure. I would like to wait for evidence (in data).

Kyodo: I heard that not much of extra propellant is left. Is there a possibility for another try?

Kawaguchi: I personally feel that an enough quantity of sample has been collected so that it might not be necessary to decent again. I am convinced that the operation team thinks the same. After confirming the discharge of the bullets from the down-loaded data, we will start preparation for a return.

TV Asahi: At this point, has the mission surmounted the difficulties?

Kawaguchi: I have thought that the sample collection is the most difficult part. The homeward journey is basically the same as the outward journey. Reentry to the atmosphere from the interplanetary space is waiting in the last lap. Nevertheless, I fell that we have surmounted 80% of difficulties.

NHK: Everything went without a hitch this time. What was the point for this success?

Kawaguchi: I think that the accuracy in guidance navigation was the key. We aimed to follow the last trajectory. It should not have been exactly the same; however, the last touch down was a very good reference to navigate the vehicle accurately. We have prepared many ingenious tools from two plus one rehearsals and two touch downs. These tools proved fruitful.

Sky Traveler (Gekkan Tenmon): How is the thruster? What happens if you can not restore it?

Kawaguchi: We do not know what happened yet. If it is leaking, it means that the vehicle has flown not only in the smooth space. It would never happen in the space. It might be prove that the thruster has landed on another body. Anyway, we have not confirmed a leakage. Phenomena around the thruster make me think that it is a leakage.

Next from the Tokyo office...


...and there is an another translation by Mr. 5th star manager. Thank you, Mr. 5th star manager.


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And following is translation by Mr. nao. Thank you Mr. nao for your effort.


Rough translation (cnt'd). Sorry in advance for possible mistakes and worse quality than former two sophisticated translators.

Asahi: I'd like to make sure. What do you think as a circumstantial evidence to confirm the sampling?

Kawaguchi: For example, vertical standing posture of the sampler horn with respect to the (asteroid) surface. We confirmed it by telemetry data. I'd like to give you the assured facts after carefully investigating the datails.

Nikkei Science: You said that the team has acquired the skill for guidance navigation. I think the disorder of the wheel made the hard task much severer. But you overcame it to acheive the sampling. It means increasing remarkable achivement in acquisition of skills, isn't it?

Kawaguchi:: Exactly. Absence of the wheel causes disturbance by the thruster on the vehicle. On the descending in the rehearsal, we found substantial errors in the position and speed. Based on such experience, we knew completely what to do this time, and we could execute them successfully.

Fuji Sankei Business Eye: Did you confirmed the operation of the pyrotechnics?

Kawaguchi: We'd like to receive data from NASA Madrid tonight, but it will be difficult because Hayabusa is in the safety mode now.

Fuji Sankei Business Eye: Did the leakage stop?

Kawaguchi: We are not sure if it is the leakage, but over-consumption of the propulsion system is stopped.

Fuji Sankei Business Eye: What influence will that have on the return trip?

Kawaguchi: We recognize that it has got harder now. It depends on the operations from now on.

Next from the Sagamihara Office...

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Following is translation by Mr. zunda. Thank you for your effort !

Last part of English translation from the Q&A session

... Back to the Sagamihara campus:

Fuji TV: Please excuse us repeating but could you please give kids in front of TV an easily explanation about what we can understand from the mission, which turned out to be successful?

Kawaguchi: On scientific side, we will be able to unveil the history of the solar system. Prof. Fujiwara in the audience is more adequate to explain. However, I am not sure if his explain would be easier or not (laughter).
On the engineering side, we are starting to see an era that vehicles make round trips to other planets. It might be too early as Hayabusa is still to come back.

Fuji TV: How will Japan's space exploration go after this mission?

Kawaguchi: Going to the deep space is not all of space exploration. However, I think this mission is meaningful if this mission stimulates science and engineering. Director Inoue and Prof. Uesugi, would you like to add something? (Both just smiled)

Akahata: Could you tell us about lives in November of you and your team, including hours of sleep?

Kawaguchi: We are exhausted. In November, we made six round trips to Itokawa and this was the first time we did not make emergency diversion (laughter). Furthermore, the thruster is having a trouble after the ascent. It is like experiencing a number of rocket launches at a time.

Weekly Post: Was the target marker dropped last time used for navigation?

Kawaguchi: We planned the flight plan not to use a target marker. However, when it were found, the data recorder was programmed to record it. Actually, we could find the target marker.

Weekly Post: In a sentimental way, could we say that the 880 thousand names guided Hayabusa to Itokawa?

Kawaguchi: Yes.

Sky Traveler: How is a quarantine facility for the sample going? How are analysis arrangements set up?

Kawaguchi: Fuel for homeward journey might be a problem. However, I would like to see the quarantine facility set up. We are working on it. Analysis will be done in Japanese and international institutes.

Sky Traveler: Is allocation of the sample changed?

Kawaguchi: No.

Sankei: How much sample can we acquire with the two bullets?

Kawaguchi: About a few milligrams. As we thought we are sampling regolith, two bullets were shoot. More dust will fly by shooting a bullet to regolith, but the sampler can only trap a little.

Unknown: What kind of conditions were set to abort landing to avoid dangers?

Kawaguchi: We reduced the conditions to three: 1) When the laser altimeter lost its readings, 2) when two of four laser range finder beams lost their readings, and 3) when attitude adjustment according to the terrain goes over 60 degrees. Last time, the obstacle sensor was set to the lowest sensitivity, and still gave a false alarm. Therefore, we ignored the obstacle sensor.
Actually, the obstacle sensor detected something again at this time after adjusting the attitude according to the terrain. It did not abort the sequence.

Matogawa: Director Inoue, would you have comments?

Executive Director Hajime Inoue: We have accomplished unique results within small budgets and limited launch vehicles. I feel sure that we have been doing right thing in front of this big achievement. I wish that the success will provide a tailwind to Japan's space exploration.

Hayabusa is a mission with clear targets. The operation team made step-by-step tests and operations to produce the results. I respect them.
It was also the first time to communicating with the media. There has been a number of failures. However, you helped us. Thank you very much.

Matogawa: Could we have a comment as the mission adviser, Prof. Uesugi?

Uesugi: I thank everyone who showed responses on the network. Prof. Kawaguchi and his staff learned a lot. Control errors were reduced from cm/s in the first rehearsal to mm/s in the last trial and at this time. I would like to acknowledge the improvement in 20 years since the first satellites: Sakigake and Suisei.
There is no other example that a vehicle touched down to and taken off from a body other than a moon. Thank you.

Prof. Matogawa read a statement from JAXA president: omitted here as this would be uploaded to the JAXA www page.

Matogawa: We have been receiving encouragements about the target marker with the 880 thousand names via e-mails and phone. Thank you the media who published warm articles.

Moving to a photo session...

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2005.11.26

「はやぶさリンク」:イトカワ上の署名入りターゲットマーカー

88
 JAXAが公開したターゲットマーカーの画像です。

広角航法カメラで撮像した画像で
19日に投下したターゲットマーカ(88万人署名いり)が
小惑星表面にあるのがわかります。
「はやぶさ」の影の斜め左上。


88_2


撮影日時は、探査機時刻で
世界時で11月25日21時24分
日本時間で11月26日午前6時24分
(注:JAXA広報から撮影時間訂正の連絡がありました。午前6時24分、降下途中に撮影された画像です。午後11時11分記す)

高度は、約250m

提供:JAXA

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「はやぶさリンク」:午後4時からの記者会見

4scientist
 午後4時からの記者会見です。

 出席者は川口淳一郎プロジェクト・マネージャー、井上一宇宙科学研究本部長、ミッション・アドバイザーの上杉邦憲教授、司会の的川泰宣教授。

川口 昨夜から本日にかけての経緯を説明する。11月19日の第1回にひきつづくもの。第1回はタッチダウンと30分の着陸を行った。第2回は第1回では完遂できなかったサンプリングを目指した。第1回の後、セーフモードではやぶさはイトカワからずいぶん遠くに飛び去ってしまったので、一週間かけて突貫でスタートラインに戻した。
 昨日の午後10時頃、1kmのところから降下を開始。光学航法ではやぶさを誘導し、午前6時頃、垂直降下に移行。垂直降下とは、イトカワのミューゼス海へと、重力に沿って移動する機動。このフェーズにはいると基本的に地上からはリモートコントロールできない。午前6時52分、仮のターゲットマーカー発射シーケンスを発行している。ターゲットマーカーが複数あると誘導システムが混乱するので、投下しなかった。降下途中から、前回のターゲットマーカーが観測されていた。
 ターゲットマーカーは本来、横方向の誘導制御に用いるが、前回の着陸の成果として、ターゲットマーカーを使わなくても誘導ができる自信ができたので、基本的にターゲットマーカーを使わない前提で降下・着陸のシーケンスを組んだ。
 午前6時53分、探査機は4〜5cm/sに降下、高度35mでレーザー高度計に利用を停止、2分後にLDR使用開始、午前7時に14mでホバリング、地形にならう姿勢制御を行った。テレメトリ送信からビーコン運用へ。
 その後、午前7時3〜5分、レーザー距離計は、距離測定モードから、サンプラー制御モードへと変更された。今回は、ガードを減らしシーケンスの継続を重視するようにパラメーターが組んであった。従ってこの後は、弾丸を発射せずに上昇してくることはないようになっている。

 午前7時35分、2つの弾丸(プロジェクタイル)を発射したことが確認された。

 午前8時35分、運用を臼田局に切り替え。臼田でデータ再生を開始。

 午前11時前に化学推進エンジン(スラスター系統)にリークと思われるトラブルが発生。
 実は接近降下中に予兆と思われる事柄が発生していたが、バックアップ系に切り替えて運用していた。
 バックアップから再度主系統に切り替えて噴射を行ったところ、再度同じトラブルが発生した。姿勢が崩れたために、探査機は自律判断でセーフモードに入った。その後、地上からバルブを操作して、リークを停止。

 今後、3日ほどをかけて、セーフモードからの立て直しを行う。立て直しを優先させて、その後にデータダウンロードを行う。

 推進剤リーク量は、当面の運用には問題ない。しかし、帰還に向けての運用はますます厳しくなったと認識している。

 サンプリングについては、リークが発生したので現在に至るまで詳細を把握できていない。しかし、搭載コンピューターのシーケンスはすべて正常に実行されたことが確認できている。接地時の姿勢は崩れてはいなかったと推測しているが、詳細はデータダウンロードを行ってからとなる。

 質疑応答

毎日新聞 今回は弾丸が発射されて離陸してきたと解釈して良いのか。

川口 その通り。サンプラーホーンの変形は奥行き方向と横方向の両方の変化を検出して、弾丸を発射する設計になっている。データによると横方向の変形を検出して弾丸を発射した。弾丸はサンプル採取量を増やすために、0.2秒間隔で2発発射している。着地は10cm/sで行われ、サンプラーホーンはその時に10cm縮む。そこから離陸までの時間が1秒ということ。

毎日新聞 着地を知ったときの気持ちと、運用チームの様子を知りたい。

川口 大喜びした。地表にならった姿勢になって着地、上昇という狙ったとおりの動作をしたので、大喜びである。もちろん私もだ。

NHK くどいようだが、一連の動作が行われたということはサンプル採取ができたということなのか。

川口 私自身はできたと考えているが、確信を持って言うためには状況証拠が必要。証拠(であるデータ)を待ちたい。

共同通信 推進剤がきびしくなっているということだが、もう一回のトライはあり得るのか。

川口 私自身の現在の心境では、サンプルは収集できたと考えているので、もう一度降下しないでもいいのではないかと考えている。運用チームでも、同様に考えていると私は確信している。ダウンロードデータで弾丸発射が確認されれば、帰還準備に入ることになろう。

テレビ朝日 現時点でミッションは山を超えたといっていいのか。

川口 サンプル採取が大きな山であるとは考えていた。復路は基本的に往路と同じである。最後には惑星間空間の再突入を控えているが、これで八割の山を超えたと感じている。

NHK 大分今回はスムーズだったが、今回の成功のポイントはどこだったのだろうか。

川口 誘導航法の精度確保にポイントがあったと考えている。今回は前回と近いところを狙って誘導した。多少前回とはずれたはずではあるが、前回の着陸が非常によいレファレンスになっており、精度良く探査機を誘導できたのではないかと思う。創意工夫で様々なツールを準備してきたのが実を結んだのではないか。リハーサル2回プラス1回と、タッチダウン2回で経験を積んだ結果だろう。

月刊天文 スラスターの現状はどんなものか。修復出来ない場合にはどのような影響があるか。

川口 何が起きたかは現状ではわからないが、リークが起きているというのは単調な宇宙空間を飛んではいなかったということだ。宇宙空間を飛んでいては起きようがない。違う天体に降りた証拠といえるのではないだろうか。
 なおリークと完全に確認されたわけではない。そう思われる事象が起きているということだ。

#東京事務所にマイク移る。

朝日新聞 確認だ。採取できたとするための状況証拠とはどんなものか。

川口 例えば表面に対して探査機のサンプラーホーンが垂直になることだ。これはテレメトリで確認できている。詳細データをきちんと見た上で確実なところをお話したい。

日経サイエンス 誘導航法に習熟したということだが、ホイールの故障でもともときびしいチャレンジが、ますますきびしくなった。それを克服してサンプル採取を成し遂げたということは、技術の取得という点ではより一層の成果があったということか。

川口 その通りだ。ホイールが使えないということだけで、スラスターによる外乱が探査機に加わる。リハーサル段階の降下では、かなり大きな位置や速度の誤差があった。そういった経験に基づいて、本番ではすべてやるべきことが分かっており、それを順調にこなすことができた。

フジサンケイビジネスアイ 弾丸発射の火工品の動作は確認できたか。

川口 今晩マドリッド局運用でも、データ取得を目指したいが、セーフモードに入っているので、かなり難しいだろう。

フジサンケイビジネスアイ リークは止まったのか。

川口 リークかどうかは依然不明だが、推進系の過剰消費は止まっている。

フジサンケイビジネスアイ 復路への影響は。

川口 きびしくなっていることは認識している。今後の検討次第だろう。

#相模原にマイク移る

フジテレビ くどいようだが、テレビを見ている子供達に今回のミッションが成功したことでどんなことが分かるかをわかりやすく説明して欲しい。

川口 サイエンスとしては太陽系の歴史を知ることができるということだ。客席に藤原教授がいるので、そちらのほうが適任だが、彼だと説明が簡単になるかどうか(笑いが起きる)。
 エンジニアリングの面では他の星との往復飛行を行う時代が見えてきたということだ。まだ帰ってきてもいないので申し訳ないのだが。

フジテレビ これで日本の宇宙開発はどのように向かっていくのか。

川口 深宇宙探査が宇宙開発のすべてではない。が、このようなミッションが、理工学に刺激を与えるならば意味があると考える。井上本部長、上杉教授、いかがですか(両者笑っただけだった)。

赤旗 11月に入ってからの睡眠時間を含めた先生自身とチームの生活を説明していただければ。

川口 疲労困憊しております。11月にはイトカワとの地表を、6往復をしたが非常離脱でなかったのは今回のみ(笑)。しかも今回は上昇後にスラスターのトラブルが起きた。ロケットの打ち上げをまとめて体験した気分だ。

週刊ポスト この前投下したターゲットマーカーは誘導に使ったのか。

川口 今回はターゲットマーカーを使わないという前提で計画を組んだ。しかし、発見できれば、データレコーダーに記録を残すということにしてあり、実際発見できたのである。

週刊ポスト 情緒的な言い方になるが88万人の名前がはやぶさを導いたといっていいいか。

川口 いいだろう。

月刊天文 サンプル回収後の検疫設備はどうなっているか。資料分析はどのような体制で行うのか。

川口 復路の燃料が問題ではあるが、ぜひ検疫設備を作ってほしい。今現在その方向で動いている。試料分析は国内外の機関とで体制を組んでいる。

月刊天文 試料の配分の比率は変わっていないのか。

川口 変わっていない。

産経新聞 弾丸2発でどれほどのサンプルを回収できるのか。

川口 やはり数百ミリグラムだろう。レゴリスからの回収になるだろうと考えて2発打った。レゴリスに弾丸を撃ち込むと飛散量は多くなるがサンプラーにトラップできる量は少ない。

不明 危険を回避してアボートする設定は、今回どんなものだったのか。

川口 3つにまで条件を減らしている。1)レーザー高度計が高度を見失った時、3)レーザーレンジファインダーが4本のビームのうち2本が距離測定が不可能になった時、3)地形にならう姿勢制御の量が60度を超えた時——の3つ。障害物については、前回はもっとも感度が低いという設定で挑んだが、それでも障害物が検知されてしまった。そこで、今回は障害物検知のによるアボートを切っている。
 今回も、地形にならう姿勢制御の後、障害が検出された、それでもアボートせずに降りたということである。

的川 井上本部長、コメントをどうぞ。

井上一宇宙科学研究本部長 これまで我々は小さな予算と限られた打ち上げ手段で、ユニークな成果を挙げてきた。今回のような大きな成果を挙げることができて、我々のやってきた道が間違ってはいなかったと感じることができた。今回の成功が、日本の宇宙開発に対して追い風になってくれればと思う。

 はやぶさは目的がはっきりしたミッションであり、ひとつひとつ試験を行い段階を踏んで、成功を手にした。運用チームに尊敬の念を抱くものである。
 マスコミ対応も、このようなミッションが初めてで、色々不手際はあった。が、皆様に助けられてここまで来られた。ありがとうございます。

的川 ミッション・アドバイザーの上杉教授、一言を。

上杉 ネット上などのすごい反応で我々を支えてくれたことに感謝する。川口教授以下、皆素晴らしい習熟だった。最初のリハーサルではcm/sの誤差があったが、前回や今回の降下はmm/s単位で制御を行うことができていた。最初の、さきがけ、すいせい以来20年以上、ここまでできるようになったことを感謝したい。
 月以外の天体に着陸し、離陸してきたのは他に例のない成果である。ありがとうございました。

 ここで、JAXA理事長談話を的川教授が読み上げる。JAXAホームページにアップされると思うので省略。

的川 88万人の名前を載せたターゲットマーカーについては、ここ数日激励のメールや電話を数多く頂いた。またマスコミの皆さんも暖かい記事をありがとうございます。

 写真撮影へと移る。

 最後に、広報を担当した斎藤潤さんについて。「私の正式な肩書きは助教授待遇の主任研究員です。松浦さんに助教授と書かれたので『斎藤さん、出世したんだって』と大分言われました」とコメントされました。
 間違いではないので、とりあえず本blog「はやぶさリンク」終了まで、「斎藤助教授」と書くことにします。

   ## ## ##

 とにかく——
 はやぶさは現在セーフモードにある。スラスターにはトラブルが発生している。これを解決しなければ帰還できない。

 しかし、はやぶさ、川口プロマネと運用チームは、もっとも大変な仕事、小惑星表面上からのサンプル採集を達成したのである。

 写真は、左から、的川教授、井上本部長、川口プロマネ、上杉教授。撮影:喜多充成

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「はやぶさリンク」:セーフモード移行を確認、記者会見は午後4時から

午後2時44分、的川教授登場。

「はやぶさはセーフモードに入りました。運の強い探査機です。不死鳥というか…川口プロマネから午後4時に記者会見にしたいという伝言がありました。また、地上局予約ですけれども、今日の夜7時半から午前0時までNASAマドリッド局の予約が取ってあるそうです」

 記者からの質問の確認。

「採取したサンプルが探査機姿勢によって出て行かないかということですが、きちんとトラップされるようになっています。よほど探査機が揺さぶられない限り大丈夫です。接地についての確認はもうちょっと待って下さい」


Translation by Mr. RogueEngineer. Thank you.


Rough English translation of this entry:

At 2:44 PM, professor Matokawa came into the pressroom.

"Hayabusa is in safe mode now. Seems like strong luck is with this probe. It's like we are seeing a phoenix... I have a message from project manager Kawaguchi, saying he wish to hold a press conference at 4 PM. As for the reservation of Deep Space Network, we got Nasa Madrid from 7:30 PM to 0:00 AM tonight."

Answer of previous question from the reporter:
"As for the concern of the collected sample getting away because of attitude change, the sample should be secured enough and unless there's extremely wild maneuver, you don't have to worry about that. Please give us a bit more time for the confirmation of touchdown."


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「はやぶさリンク」:臼田可視終了が迫り、セーフモードへの移行コマンドを送信

 午後1時48分、的川教授登場。
 
「先ほどからの状況変化について。

 さっき打ったコマンドで言うことを聞かないスラスターがあることが確認された。間歇噴射のモードで吹きっぱなしなのか、燃料と酸化剤のどちらかが吹いているか不明。

 12基のスラスターをひとつずつ全部を試すと時間がかかるので、最小のテストでトラブルを発見できるような組み合わせでスラスターを吹いている。しかしそのままでは臼田局の可視では結果が間に合わないので、セーフモードへ移行させることにした。セーフモードになると太陽指向でスピンをさせるので、スラスターはすべて停止する。

 10個ばかりのコマンド列を立て続けに打った。スラスターの動作確認コマンドとセーフモード移行のコマンドだ。コマンドの結果は2時10分にははやぶさに届きはじめる。臼田局可視の間に結果が確認できるはず。現在は、万一セーフモードに入らなかった場合の対策を検討している。

 現在、はやぶさとの間はミディアムゲインアンテナでつながっている。リンクは継続的にとれている。サンプル採取成功の条件である2つのうち、LRFの接地時の姿勢はテレメトリで確認できた。接地時の姿勢は正常。火工品の動作状況は、まだ確認できていない。

 臼田直後はDSNの予約を取っていない。明日の臼田可視、つまり午前8時半からの可視が直近となる。その前にDSNの利用が取れるかどうかは現在交渉中。」

 記者からは、着地の状況を尋ねる質問が続くが、的川教授の答えは繰り返しとなる。
 
「一連のサンプリングのオペレーションが終わったら、帰還に向けた推進剤残量の推定などの“帰り支度”に移る。明日から帰り支度にかかれるかと思ったのですが…」

 スラスターのトラブルについて、「推定としては、前回の着地時にスラスターが本体を支えたことは間違いない。これがトラブル原因となった可能性は確かにあるが、現状では推定でしかない」

 記者会見は、という質問が出るが「臼田からのオペレーションが終わるまで待って下さい。現状、川口君に近づけない…」

 的川教授退場。ぶらさがり取材の記者が後を追う。

Translation by Mr. RogueEngineer. Thank you.


Rough English translation of this entry:

At 1:48 PM, professor Matokawa appears to the pressroom.

"Situation update.

The last command revealed one or more thrusters is not responding. We still don't know whether they are still in periodical fire mode, or just emitting either fuel or oxidizer only.

Because checking all twelve thruster sequentially will take too long, we are engaging thruster in convination in order to find the problem in fewest possible steps. But the result will not make it before the end of Usuda connection, so we decided to switch to safe mode. With safe mode, Hayabusa keeps the attitude of facing the sun and all the thrusters will stop.

We sent about ten commands one after another in sequence. They were for checking of the thrusters and switching to safe mode. The result will reach Hayabusa at 2:10. We will see the result while we still have the Usuda connection. Currently we are discussing backup plan in case Hayabusa did not enter the safe mode.

Now we have a connection to Hayabusa with medium-gain antenna. The link is stable. As for the two criterias of successful sample collection, we could confirm one of them, that is, the landing attitude with LRF was right. We had a good touchdown. We are yet to confirm the bullet dischagement equipment has worked or not.

We don't have the reservation of DSN after Usuda. The earliest connection reestablishment will be the next Usuda, that is 8:30 AM tomorrow. We are in negotiation to make other DSN available to us.

Reporters ask the details of the landing, but professor Matokawa's answer is the same as the last one.

"Once the sampling operation has completed, we'll switch to 'homecoming operation' mode. Originally I thought we could start the homecoming as early as tomorrow, but that's not the case."

As for the trouble with thruster, he said "we know that during the first landing attempt, one or more thrusters touched the ground, and that may be the source of this trouble. But it's still a speculation."

A reporter asked the time of the press conference, but he answered "please wait till the operation through Usuda is finished. We can't disturb Kawaguchi-kun now..."

Professor Matokawa leaves, reporters follows him.

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「はやぶさリンク」:川口プロマネがコマンド送信卓に張り付いた

午後1時37分
 川口プロマネは、コマンド送信卓の横に立ち、時折その回りに関係者が集まってきている。議論は終わり、復帰コマンドを送信する段になったということか。的川教授もコマンド送信卓の横に付いた。

 臼田局の可視は、午後2時50分まで、午後2時18分までに送信したコマンドは、臼田局可視内で結果を確認することができる。


Translation by Mr. RogueEngineer. Thank you.

Rough English translation of this entry:

At 1:37 AM:
Project manager Kawaguchi is standing on a side of command console, staff gathers and leaves there periodically. Looks like the discussion has ended and now it's time to send a command for recovery action. Professor Matokawa also came to the command console.

Connection through Usuda will be lost at 2:50 PM. The result of the commands sent before 2:18 PM will be seen through Usuda.

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「はやぶさリンク」:ストリーミング映像

 一般向けのストリーミングは終了したが、プレスルームには運用室からの画像が引き続き流れている。
 運用室に川口プロマネ以下、運用チームが集まっている。音声がないので詳細は不明だが、かなり集中した議論をしている模様。川口プロマネが身振り込みで何かを説明している。
 スラスター不調がどの程度のものなのかは、画面から読み取ることはできない。

 午後1時21分、運用チームがコマンド送信用の卓周辺に集まった。なんらかのコマンドを送信する模様。スペクトルアナライザー表示にピークが出ていない。ハイゲインアンテナによるリンクは切れている模様。

Translation by Mr. RogueEngineer. Thank you.

Rough English translation of this entry:
The public streaming has finished, but pressroom is still getting the video from operation room.
We are seeing project manager Kawaguchi and members of operation team are gathering in the operation room. We can't see the detail because we are receiving no voice, but looks like they are having intense discussion. We see project manager Kawaguchi is making gestures to explain something.
We can't tell the extent of thruster problem from the video.

At 1:21 PM, operation team gathered around the console for sending command. Looks like then are going to send something to Hayabusa. No peak can be seen in the spectram analyzer display. The connection through hi-gain antenna seems to be lost.

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「はやぶさリンク」:探査機の姿勢が安定していない、記者会見は午後2時50分以降に遅れる模様

 午後0時35分、的川教授登場。ちょっと表情が硬い。

「およそイトカワから5kmほどの地点で、地上からのコマンドによるスラスター噴射で、イトカワから遠ざかるのを止めた。しかし、現在やや姿勢が不安定。X軸、Y軸方向のスラスターが間歇的に噴射が続いている。このため現在データのダウンロードが中断している。

 これを止めなくてはならない。上昇時の間歇的な噴射モードが停止できないという状態だ。いずれかのスラスターに異常が発生している可能性があるが詳細は調査中。現在、スラスター動作を止めるための“より強い命令”を送信した。例によって結果が分かるまで32分かかる。
 万一トラブルが発生している場合は、不調のスラスターを停止する。スラスターはどのスラスターが故障しても、他のスラスターで代替できるような構成になっている。
 午後2時50分まで臼田局可視の間、姿勢の安定とデータのダウンロードに全力を尽くす。川口プロマネはそちらにかかりきりになるので、記者会見は午後2時50分以降になる可能性がある。

 確実にサンプルが採取できたかどうかの判断は、1)弾丸発射のための火工品がきちんと作動したかどうか、2)着地時のレーザーレンジファインダーによる姿勢データによって正しい姿勢で着地したか——の2点をもって確認したい。これらのデータはまだダウンロードできていない。これから姿勢を立て直し、できれば臼田局の可視時間内にダウンロードしたい」

 記者からは、イベント時刻の確認などが出た。本当に弾丸を発射したのか、という質問が相次ぐが、的川教授の答えは「まだデータをダウンロードしていない。ダウンロードをお待ち頂きたい」ということだけ。

 そうこうしているうちに東京事務所に、午後1時から予定だった記者会見に合わせて、つぎつぎに記者が到着する。その都度最初から説明し直す的川教授。

 東京事務所から女性の声で「探査機はやかわ(?!)が、イトカワに着陸したことについて、もうちょっと情景描写ができる説明を…」という質問。的川教授「…サンプル採取の手順はご存知ですか」「いえ、あんまり知らないんですが」、東京事務所の司会が「こちらのほうで説明します」とさえぎる。

「喜びも半ばという、大変申し訳ない状況なのですが、また確認して30分後ぐらいに戻ってきます」と、的川教授退場。

Translation by Mr. RogueEngineer. Thank you.

Rough English translation of this entry:

At 0:35 PM, professor Matokawa came into the press room. He looks a bit tense.

"At about 5km from Itokawa, we sent a command to fire the thruster to stop Hayabusa from getting farther away from Itokawa. However, the attitude of the probe is unstable now. Thrusters of X and Y axis are still periodically engaged. Because of it, the download operation of data is currently suspended.

We have to stop it. It is in the periodical thruster fire operation mode used for liftoff, but we are not still unable to disengage it. Either one of the thruster may be in trouble, but we are still under investigation. Now we sent a "stronger command" to stop the thruster. It will take 32 minutes to see the result.
If it is caused by the trouble in a thruster, we'll stop the thruster that is not working. If any one of thrusters stops, Hayabusa still use other thrusters to continue the operation.
Connection through Usuda will be lost at 2:50 PM. Until that time, our first priority will be attitude stabilization and data download. Project manager Kawaguchi is going to be fully engaged, and we may delay the press conference to 2:50 PM or later.

The decision of whether we got the sample will be based on the two criterias:
1) the equipment for bullet dischargement has worked or not
2) the probe has landed with right attidude according to attitude data from laser range finder.
The data for these criterias are not downloaded yet. We are going to stabilize the attitude, and if possible, finish the downloading before we lose the connection through Usuda."

Reporters asked several questions to confirm the exact time of events, followed by a lot of questions regarding if the bullet was successfully discharged, but professor Matokawa simply answered "We have not download the data yet. I wish you to wait for the completion of the downloading operation."

Meanwhile, more reporters, to cover the press conference scheduled at 1:00 PM, arrived at the Tokyo office, and started asking the same questions. Professor Matokawa was answering them patiently.

From Tokyo office came a women's voice, questioning "Will you tell us more visual detail of tha landing scene of the probe Hayakawa(?) to Itokawa?" Professor Matokawa answered "...Do you know the sequence of sample collection?" "No, I'm not sure..." The staff of Tokyo office cuts in with a comment "we will tell her the details."

Professor Matokawa leaves with a comment "sorry to keep you in such a suspence, but I will check the situation again and get back to you in half an hour."

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「はやぶさリンク」:今、確実に言えること、サンプラーホーンに何かが触れた

 午前9時58分、斎藤助教授が登場。早口で、現状を説明した。

「今、確実に言えることは以下の三点だけです。

 着陸時に走るソフトウエアはすべて正常に動作したことを、テレメトリにより確認しました。

 次に、姿勢が安定しており、探査機はセーフモードに入っていません。すでにハイゲインアンテナによる通信が確立しています。

 最後に、現在、ハイゲインアンテナによるダウンリンクを始めています。担当者が、届いたデータを片っ端に解析しています。

 我々としては、まだこれ以上のことは推測になってしまうと考えています。次の記者会見で、ダウンロードしたデータの解析結果が出せると思います。

 現在探査機は43cm/sの速度でイトカワから離れつつあります。午前10時現在、はやぶさはイトカワから5.2kmのところにあります。

 WCTというのは、イトカワを撮影した画像の重心を目指して降下するというモードです。ターゲットマーカーを追尾する時にはターゲットマーカー追尾モードという別のモードに入ります。
 着地からサンプル採集、離陸に至る一連のシーケンスの最後には、「WCTに戻ること」という命令が入っている。探査機がWCTになっているということは、間接的にすべてのシーケンスが正常に動作したことを意味します。」

 「自分の担当があるので」と、あわただしく斎藤助教授は出て行った。

 記者会見は本日午後1時からを予定。ただし、データ解析の進捗状況によって時間は多少前後する模様。


 直後、川口プロマネから、電話がプレスルームに入る。記者の「着陸時間は何時何分か」という質問に対する回答。「探査機時間で午前7時7分、サンプラーホーンが何かに触れた」というものだった。


Translation by Mr. RogueEngineer, thank you!

Rough English translation of this entry:

Associate professor Saito appeared at 9:58 AM and made a quick comment.

"The following three things is all we can say for sure for now:

First, we confirmed through telemetry that the all of the software used for the landing sequence worked.

Second, the attitude of Hayabusa is stable and it is not in the safe mode. The connection with high-gain antenna is already established.

Finally, we started downlink operation through high-gain antenna. The staff is analyzing all the data as soon as it arrives.

Making further comment would be based on just speculation and we are not going to say further. On next press conference we think we can show you the result of analysis of downloaded data.

Currently the probe is leaving Itokawa at the rate of 43cm/s. As of 10 AM, Hayabusa is 5.2km away from Itokawa.

WCT is a mode for the descent, aiming at the center of the picture of Itokawa. There's another mode, "target marker following" that is used for aim for the target marker.
The sequence of touchdown, sample collection, and liftoff ends with the command 'return to WCT'. Seeing the probe in WCT mode implies all the sequence is normally executed."

Saying "I've got a work to do", Associate Professor Saito left the room in hurry.

The press conference is to be held at 1:00 PM.
According to the progress of data analysis, the time may change.

Shortly after that, project manager Kawaguchi called the pressroom to answer the previous question from the reporter "what was the exact time of landing?" He said "7:07AM on probe time, sampler horn touched something."

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[HAYABUSA link]:Success!

Following is translation of my article by Mr. RogueEngineer. Thank you, Mr. RogueEngineer !

At 8:48 AM, professor Matokawa appeared.

"We still don't know the attitude of the probe when it fired the bullet, and whether it hit the surface, but all the sample accuisition sequence worked. Hayabusa should be in a mode called 'WMT' after the accuisition sequence, and we first tryed to confirm that. When we saw it's in WMT mode, everybody wildly cheered. If the bullet hits the surface, I'm almost sure we have gotten the sample"

Reporter: "What did Kawaguchi say?"

"He was called to the scene and said 'Hey, it's working!'"

Reporter: "What's the status of Hayabusa?"

"Everything is OK, including attitude, power from solar panels, etc..."

Reporter: "Is Kawaguchi going to give it another try?"

"Everybody is worried if he's going to say that. (laughter) Supposing if there's another one, are you ready for the report?"

I'm so glad to be here! (Matsuura)

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「はやぶさリンク」:データダウンロード中

 午前9時38分。的川教授登場。

「現在、データが次々にダウンロードされています」

記者「ターゲットマーカーは最初から使わないつもりだったんですか」

「いや、降りていったら前回のマーカーが見つかったので、それを使おうということになりました」

 的川教授は記者の質問に答えている。各イベントの正確な時刻は何時かという質問が多い。


Translation by Mr. RogueEngineer. Thanks!

Rough English translation of this entry:

9:38 AM, professor Matokawa appeared.

"Data is getting downloaded now."

Reporter: "You did not release another target marker. Was it planned from the beginning?"

"No, we found the marker from the previous attempt when we were descending, and decided to use it."

Professor Matokawa is answering further questions from the reporters. Many of the question is about the exact time of the events that happened.

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「はやぶさリンク」:成功の瞬間

20051126c 成功判明時の運用室の様子。臼田局とはやぶさとの交信が回復した。サンプル採取は成功したのかか、それとも失敗なのか、関係者がコンソールに集まってきた。代表取材による撮影、午前8時43分。

20051126d 成功が判明し、ほっとした様子の川口プロジェクト・マネージャー。もう一度サンプル採取をやるかどうかは、この人の考え一つ。推進剤残量はきびしいが、弾丸もターゲットマーカーも残っている。代表取材による撮影。午前8時45分頃。

20051126es ストリーミングのWebカムに向かってVサインを出す笑顔の的川教授。あと2回じゃありません。Vサインです。(撮影:喜多充成)


Following is translation by Mr. RogueEngineer. Thanks a lot!(by Matsuura)

Rough English translation of this entry:

(First Picture) The operation room shortly after the confirmation of mission success. The connection of Usuda and Hayabusa is back on line. The staff is gathering in front of the console to see if the sample accuisition was a success or not. Picture taken by the press at 8:43 AM.

(Second Picture) Kawaguchi project manager looks relieved to see the operation was a success. Now it's all up to him if there will be another sample accuisition attempt or not. The situation of remaining propellant is critical, but we still have bullets and a target marker onboard. Picture taken by the press at 8:45 AM.

(Third Picture) Professor Matokawa, smiling and showing a V sign to the streaming Web cam. It's not "let's do another two attempts", it's a V sign! (picture taken by Mitsunari Kita)


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「はやぶさリンク」:成功!

 午前8時48分 的川教授登場。

「弾丸を打った時の探査機の姿勢、つまり弾丸を撃った方向はまだ分からないけれども、サンプル採取シーケンスはすべて正常に動作しました。採取後はWCTというモードに入っているはずなので、それをまず確認しました。モードに入っているのを確認して、わっと一同湧きました。そして私がVサインを出したわけです。弾丸を地面方向に打っていれば、ほぼ間違いなくサンプルは採取されているはずです」

記者「川口先生は…」

「呼ばれて、『お、動いているな』と」

記者 「はやぶさはどうなっていますか」

「姿勢、太陽電池の発生電力など、すべて正常です」

記者「川口先生はもう一回やるつもりでしょうか」

「みんなそれを恐れているようですね(笑)。もう一回やるとして、皆さんまた取材に来られますか」

 来て良かった!(松浦)

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「はやぶさリンク」:Vサイン

 午前8時40分、ストリーミングに的川教授のVサインが出た。少なくとも、サンプル採取に伴うソフトウエアが起動したことは確認できた模様。

 プレスルームでは「Vサインじゃなくて、あと2回やるという意味じゃなかろうか」などと言っている。

午前8時45分
 採取用の弾丸発射を確認。その後も順調。

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「はやぶさリンク」:管制室の状況

20051226a 代表取材による午前7時16分頃の運用室の状況です。

20051126b 同上。

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[HAYABUSA link]:Translation to English

GO/NO GO decision at 6:23 JST
Hayabusa has been turned to ascend
Connection with Usuda should be re-established at around 8:10.

Thank you, Mr. RogueEngineer!

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「はやぶさリンク」:成否が分かるのは午前8時10分過ぎ

 午前7時42分、「わかんないよーっ」と、言いつつ的川教授登場。

「ビーコンのままなので、まだ何も情報が入っていません。ただいま臼田局に切り替えているので、そちらからダウンリンクがとれれば状況が取れると思います。ミューゼス海に降りたならば正常にサンプルが取れたはずです。この場合、ドップラー変位がきれいに取れるはずなんですが、今回ドップラーが乱れました。理由は不明です。ただし探査機が横に流れて岩の多い地域に行ってしまった場合は、こういうことが起きうる。高度22mと判断した時点では、ビームの一つが17m、もうひとつが30数mという数字を出したので、傾斜地の上に流れた可能性があります。予定地点から60mも外れると通称『八ヶ岳』と呼んでいる岩石地域に入ってしまいます。午前8時10分頃に、臼田局との通信が確立するはずなので、すべてはそれ待ちです。運用室でも、『もう何もわからない』と、待ちの姿勢に入りました」

「上昇に転じたということが分かった時、川口君は『もう一回やるか』と言いました。すると周囲は『ふわーっ』という感じになりましたが…川口君はファイト満点です。僕が『川口君はやる気だね』というと、わっと笑いが起こりました」。

 ストリーミングを見ている記者が「川口さん笑っているようですが」

的川「もう他にやることがないから笑っているんでしょう」

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「はやぶさリンク」:3つ目のターゲットマーカーを放出せず、前回のマーカーを使用

今、新情報が。3つ目のターゲットマーカーは、放出していない。前回とほぼ同じ場所に降りたので、前回放出してイトカワ表面に設置したターゲットマーカーを接近に使用した。

 推進剤の問題をのぞけば、もう一度着陸を試みる可能性を確保した。

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「はやぶさリンク」:上昇に転じる

 予定タッチダウン時刻は探査機の時刻で午前7時10分頃。地上には7時26分過ぎに、タッチダウンということになる。

 プレスセンターのストリーミングを見ていると、7時20分過ぎに一度、ビーコンの入感が途切れた。その後7時26分頃にビーコンが再度入感。午前7時28分頃に、「上昇に転じた」というアナウンスがあった。

 Live blogには「何らかの理由によって上昇に転じた」と掲載された。

 タッチダウンしたかどうかは、午前11時頃にハイゲインアンテナによる通信が回復しないと分からない。タイミング的にはタッチダウンを行い、上昇してきたと考え得る。しかし、上空数mで離脱した可能性も現時点では否定できない。

 とはいえ、運用室に詰めている人々の表情は平静。決して険しくはない。

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「はやぶさリンク」:最終判断はGO

午前6時26分 的川教授登場。

 「午前6時23分にGOとなりました」

 斎藤助教授登場。
「はやぶさは、午前6時過ぎから垂直降下を開始しました。午前6時23分に、川口プロマネはGOと判断し、継続のコマンドを送信しました。はやぶさは6時23分現在、高度370m、降下速度は12cm/sです」

 斎藤助教授は足早に退場。的川教授が後に残って質問に答えている。

「着地は予定より10分ぐらい遅れるかも。前回に比べると、たった一回を経ただけれども慣れてきた感じですね。これが3回目となると逆に危なくなるのですけれど」

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「はやぶさリンク」:相模原プレスルームより

午前5時20分、プレスルームに的川泰宣教授登場。

「私が運用室を出る時には高度520mという数字が来ていました。垂直方向の制御を厳密に行い始めました。もう臨戦態勢です。イトカワの一番半径の大きいところは過ぎました。由野台(イトカワ表面で一番大きな岩石、さしわたし50m)を撮影しようと狙っていたんですが、デルタVと重なって撮影できませんでした。狙っていた連中は文句言っていました。
 はやぶさは安定しています。レーザー高度計もきちんど動いています。川口君の顔が仏のようですよ(笑)。寝不足のせいかも知れないけれど。

 (ストリーミングを見て)上杉君(上杉邦憲教授)は帽子かぶってます。目立つものだから(上杉教授は総白髪)。でも派手な服を着ていれば同じだよね(笑)」

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2005.11.25

「はやぶさリンク」:blog更新は午後10時から、ストリーミングは午前3時から, [HAYABUSA link] Live blog beigins 1300UTC, Streaming begins 1800UTC.

 今晩から明朝にかけてのはやぶさ第2回着陸の中継予定です。

 Live blogは、午後10時の降下開始から更新を始めます。
 管制室の画像ストリーミングは、午前3時から始まります。

 すべてがうまくいった場合のスケジュールは以下の通り。すべて時間は「その頃」です。

 午後10時:降下開始。これ以前よりはやぶさはイトカワに接近を続けており、降下オペレーションの開始を宣言するという意味。
 26日午前4時:そこまでの航法誘導の状況が公表される。
 同6時:着陸GO/NO GO判断
 同7時:着陸・サンプル採集
 同11時:はやぶさとの通信が確立し、着陸の成否が分かる。
 同13時:記者会見。

Live blog will start 22:00 JST, 13;00 25th UTC.
Streaming from the operation room will start 3:00 26th JST, 18:00 25th UTC.

The schedule (with success of the mission) is as fllows,

22:00 25th JST, 13:00 25th UTC: Mission begins.
4:00 26th JST, 19:00 25th UTC: Announces how about guidance navigation.
6:00 26th JST, 21:00 25th UTC: Go / No go decision.
7:00 26th JST, 22:00 25th UTC: Touchdown
11:00 26th JST, 2:00 26th UTC: Telemetory recovers, enables to get inforamation from Hayabusa.
13:00 26th JST, 4:00 26th UTC: Press conference.

Timeline may change by conditions.

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「はやぶさリンク」:はやぶさの軌道修正は成功、今晩から明日にかけて第2回着陸へ

 11時5分付けのJAXA広報よりのメールによると、昨晩行った軌道修正は成功したことが確認できました。現在はやぶさはイトカワから5kmの位置にあります。今晩から明日にかけて、第2回着陸を実施します。

 The correction maneuver last night is confirmed all rigiht. Now Hayabusa is 5km far from Itokawa. The operation team is to try the second touchdown from 25th night to 26th morning JST.

Touchdown will occur at 7:00 26th JST , 22:00 25th UTC.

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2005.11.24

「はやぶさリンク」:25日から26日にかけて第二回着陸を実施


 24日午後6時から記者会見が開催されました。25日〜26日の着陸は実施します。ただし今夜の軌道修正がうまくいったならば、という条件付きです。軌道修正の結果が分かり、最終的なゴーサインが出るのは、明日の昼過ぎとなります。着時時刻は午前7時前後となります。

Hayabusa is to try the second attempt touchdown. Small correction manuvour will be made tonight JST. If Operater comfirm the result of correction is right, Hayabusa is to go surface of Itokawa again.
Touchdown will occur about 7:00 26th JST.


午後6時ちょうどに川口プロマネが登場

 本日の状況 順調に飛行中。現状では25日から26日にかけて着陸を行う。今晩NASA局経由で、軌道修正を行う。これがうまくいけば、25日に着陸を実施する。

 26日午前7時過ぎ(探査機時刻)で着陸を予定。それ以前にビーコンモードにはいるので、リアルタイムの把握はできない。順調に行ったとしても、臼田局からの通信が回復して、なんらかの情報を出せるのは午前11時過ぎになる。

 着陸時の温度上昇は、テレメトリでは最大6〜70℃だった。機器の故障はない模様。外部に露出しているセンサーには影響が出ている。今夜から明日に向けて対策を施す。
 下半分が接地していたことによるセンサーのコンタミネーション:これまでに確認したところでは影響は出ていない。
 
 イトカワ近傍に行かないと動作を確認できない機器もある(レーザーレンジファインダーなど)、これはその場で確認する。

 19-20日の着陸では、トラップを7〜8つ設定していたが、第2回の着陸ではシーケンスの継続性を高める方向でパラメーターを変更することを考えている。

質疑応答

相模原から

エイビーエーション・ウィーク 10cm/sで着陸したことで舞い上がったダストが回収できるのではないかと言われているが、どうするのか。

川口 今夜、サンプル室の一つをふたをする。

共同通信 推進剤を大分使ったはずだが、どの程度の状況になっているのか。ターゲットマーカーを落とす前にアボートしたら、再度挑戦するのか。

川口 推進剤については帰途の姿勢制御をどれだけ正確に行うかにかかっている。これで、データ送信レートが決まる。往路は8bpsという通信速度も経験した。1日の運用時間を1時間に制限するというようなことをすると、推進剤は節約できる。今は、帰途の運用を犠牲にしてもサンプルを取るということである。しかし、それも楽観的ではない。
 もしも、接近降下の早い段階で中断すると推進剤には影響が小さい。影響があるのは最後の段階の垂直降下から後だ。推進剤への影響が小さければリトライしたい。

不明 ハヤブサが着陸していた時の気持ちを聞きたい。

川口 率直に大喜びでした。運用チーム全員がです。自分は着陸よりも離陸に意味があると思っている。過去にNASAのNEAR探査機が強行着陸をしている。はやぶさは着陸、離陸してなお機能している。

#東京事務所にマイク移る

時事通信 着陸時にセンサーにひっかかった障害物は分からなかったのか。

川口 探査機近傍の画像は得られていない。ターゲットマーカーの降りた場所の画像は得られているので今後、近くに反射光を出す障害物があったかどうかを検討する。

毎日新聞 推進剤の残りを具体的に知りたい。シーケンスが前回より1時間遅れる理由はなにか。前回の記者会見で下方向への加速を行うかも、と言っていたが今回は行うのか。

川口 推進剤の残量は把握しているが、数字が一人歩きする可能性があるので非公開としたい。イトカワの自転周期が12時間ちょうどではないので、1時間ずれる。前回も下向きに2cm/sで加速して最終的な自由落下に入るというシーケンスになっていた。この数字は増やすかも知れない。

NHK 問題のあるセンサーの具体的内容を知りたい。シーケンス継続性を高めるの中身は。今回は、ごろんと着地しないような条件を組むのか。

川口 現在問題になっているのはヒーターのひとつのセンサー、ヒーターそのものには問題はない。はやぶさのヒーター制御はかなり進歩したもので、前回と違う設定をするだけである。
 例えば障害物検出センサーのスレッショルドを変えるというようなことを行ってシーケンス継続性を高める。
 最後の最後の判断については、地上からのコマンドを送るという可能性は残る。だから、着陸してしまう可能性は残る。すべてが自律的に判断できるというわけではない。

東京新聞 今夜の軌道修正は何時に結果が分かるか。センサーを建て直すというのはどういうことか。

川口 NASA局から、現在計画では午前1時に軌道修正を行う。順調に作業が進めば22時まで早めたい。反対なら午前3時ぐらいまでずれ込む。
 センサーについては

月刊天文 20日の最終降下では、実際には着陸していた。これは誤差が10mあったということか。また、ドップラー変位の誤差はどの程度か。

川口 私自身は非常に低高度に降りたとは思っていた。降下速度を持って降りているのに着地していないのはおかしいと感じていた。その時点では、着地シーケンスが停止しているとは思っていなかった。着地しているのに、離陸してこないということは考えられないと思っていた。
 当日着陸したとコメントできなかったのは、このような背景がある。
 ドップラー変位は速度を測るもので、積分すれば距離が得られる。しかしこれは誤差が発生する。我々は地表からの距離を使って誤差を時々修正するという方法で誤差の発生を防いでいる。精度は数十m程度だ。

#東京事務所から

不明 軌道修正の結果を受けた最終判断を聞きたい。

川口 明日の臼田局可視で軌道修正の結果が確認できる。この数字が出せるのは午前11時前後となる。

以上です。

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