2008.01.24

呼びかけ:「「宇宙開発に関する長期的な計画」に関する意見募集」 に意見を送って下さい

 ここでは「はやぶさ2」の件以来、何回も呼びかけを行ってきた。

 またの呼びかけだ。皆さんの声を文部科学省に届けて下さい。

 「松浦は狼少年か」と思われそうではあるのだけれど、残念ながら、一回の意見だけで動くほど日本の意志決定システムは機敏ではない。ねばり強く、機会を捉えて何度でも声を政治家や官僚、宇宙開発関係者に届けていく必要がある。

 そして一般国民からの声は、国民が思っている以上に効く。「どうせお上のやることになにいっても無駄さ」ということはない。声が一つならなしのつぶてになることも多いが、数が増えるとお上といえども無視はできなくなる。

 今回のテーマは重要である。文部科学省が「宇宙開発に関する長期的な計画」に対するパブリックコメントを募集している。締め切りは一週間後の1月31日木曜日だ

 「宇宙開発に関する長期的な計画」について(中間とりまとめ)を読んだ上で、意見を文部科学省に送る。

 「宇宙開発に関する長期的な計画」がどんなものかは、以下の通り募集要項に書いてある。

「宇宙開発に関する長期的な計画」は、独立行政法人宇宙航空研究開発機構法第19条に基づき、宇宙開発委員会の議決を経て主務大臣が定めるもので、今後20年~30年の将来の我が国の宇宙開発利用の在り方を展望しつつ、10年程度の期間を対象とし、同機構が果たすべき役割を定め、同機構の平成20年4月からの中期目標のもととなるものです。

 つまり、この文章が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の中期計画、つまり今年4月からの5ヶ年計画を規定する。逆に言えばこの文章に入らなかった項目や、実施に向けた強い文言が入らなかった計画は、5ヶ年計画の途中でどんなに必要になったとしても、後で割り込ませることは非常に困難だ。

 非常に理不尽な話だが、日本の官僚システムは硬直化した制度で動いているために、そういうことになってしまう。

 ここで間違えると、今後5年間、日本の宇宙開発は間違えっぱなしになり、さらには次の5ヶ年計画では間違いの後始末に追われ、新しいことができなくなる。

 資料の「『宇宙開発に関する長期的な計画』について」は30ページもある官僚の作文であり、読み解くのが面倒かも知れない。それでも少しでも多くの人に読んでもらいたい。全部読み切れない人は、自分の興味のある部分だけでもいい。

 官僚の作文である以上、この文章の全ての部分には意味がある。

 まず、項目の記載順番はそのまま重要度を示すものと思って良い。表向きは「平等」ということになっているが、重要だと考えるものから順番に書いていくのは、新聞記事などと同じである。
 なぜなら、そうしないと財務省や政治家への説明で困るからだ。

 具体的なアイテム名が入っているものは「絶対やるもの」だし、具体的な名前が記入されていない項目はそれよりも優先度が落ちる。はっきり書くならば、この文書に「はやぶさ2」というアイテム名が入れば、もう実施は確定となる。

 語尾が「実施する」「取り組む」「習得する」と具体的なアクションを示す動詞であるなら、その項目は優先度が高い。一方、語尾が「推進する」「努める」というような抽象的動作を示す動詞、あるいは「必要である」というような現状認識を示したに過ぎない場合は、その項目の優先度は低いと書かれているに等しい。公文書に記載されただけまし、ということになるわけだ。

 以上のようなことに注意して、まずは読んでもらいたい。その上で、「この部分の実施するは、推進するに落とすべきだ」、あるいは「この推進する、は具体的な計画名にまで触れて実施すると書くべきだ」と考え、それをパブリックコメントとして投稿してもらえればと思う。

 委員会などを傍聴していると、文書表現の問題点を指摘する委員に対して、官僚側は「そのことはここに書いてあるので」と答えるのをよく見聞する。
 もちろん本当に書いてあるわけだが、よく見ると具体的計画名の有無や語尾のニュアンスの強弱で、微妙に書き分けてあるわけだ。
 結果、物事が進行してしまってから「この計画のほうが重要ではないか」という状況が発生しても、「『宇宙開発に関する長期的な計画』においては、こちらは『実施する』アイテムでして、一方こっちは『推進する』アイテムです。どちらかといえば、『実施する』のほうを重視しなければならないわけでして…」などと現状追認を迫られたりするのだ。

 今回のパブリックコメント募集は幸いなことに文字数制限がない。問題点をきちんと指摘するコメントを投稿することができる。

 できるだけ多くの人に、コメントを投稿してもらえればと思う。

 もちろん私もする。これは今後5年間の日本の宇宙開発を決める文書なのだ。

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2008.01.16

はやぶさ2、ASIが正式検討を開始

 14日から今日までの日程で、沖縄で国際始原天体探査ワーキンググループ(IPEWG)という会合が開催されている。小惑星探査の世界的な連絡組織の立ち上げだ。JAXA/JSPECが、この分野で国際的な主導権を持つ国際協力をリードしていこうとしている現れである。

 取材に行きたかったが、どうしても行けなかった。それでも現地から情報はぼつぼつと入ってくる。

 イタリア宇宙機関(ASI)は、「はやぶさ2」打ち上げにベガロケットを使う検討を正式にはじめたことを公表したそうだ。

 さあ、面白くなってきた。

 見えてきたのは、「はやぶさ」が国際的にいかに高く評価されているかということだ。なぜ高く評価されているのかといえば、それまで誰もやったことがなかったこと、しかも大きな意味のあることを、独力で成し遂げたからだ。

 このことは、今後の日本の宇宙科学、それのみならず宇宙開発全体の指針になるのではないか。

  • 誰もやっていないことで
  • 本当に意味のあることを見抜き(はやぶさの場合は始原天体としての小惑星の探査。なかんずくサンプルリターン)
  • 持てる技術とリソースの範囲内で実現可能な計画にまとめあげ
  • それを独力で成し遂げること

 この観点からして、JAXAの次の中期計画はどう評価できるだろうか。「かぐや2」は? 準天頂衛星は? 防災衛星は? GXロケットは? HTVは?  H-IIBは?

「それができたら、日本と是非とも協力したい。ロケットぐらい提供したっていい」と外国に思わせるだけのミッションになっているだろうか。

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2008.01.08

はやぶさ2計画は生きている

 相模原の宇宙科学研究本部に来ている。新年恒例の宇宙科学シンポジウム出席のためだ。
 会場は机をはずして椅子だけが一杯に並んでいる。そこに人が一杯。15年ほど前の、椅子も机も入って、しかも結構空いていた科学衛星シンポジウム(宇宙科学シンポジウムの前身)を知っているだけに、「ずいぶんと遠くまで来たもんだなあ」という感慨を禁じ得ない。

 午前中は現在運用中のプロジェクトに関する発表。最後に川口淳一郎教授が「はやぶさ」の発表をした。

 おそらくこのページを見に来るネットユーザーの誰しもが知りたがっている話を。

 後継計画「はやぶさ2」は生きている。イタリア宇宙機関(ASI)の長官から立川JAXA理事長に宛てて「共同で計画を進めたい」旨の書簡が届き、立川理事長が「前向きに検討しましょう」という返事を出したとのこと。探査機を日本が、イタリアが「ベガ」ロケットを提供するという形式を考えている。このほかNASAとも協力の検討を進めているそうだ。

 ただし、JAXA内部でのゴーサインはまだだそうだ。川口教授が「私は理事長ではありませんから」と、言葉を濁すシーンもあった。

 結局のところ、この件に関するJAXAの内情は「既存計画で手一杯、新規計画向けの金なんかない」に尽きる。さっさとつまらん失敗プロジェクトをやめて、その分を「はやぶさ2」につければいいのに、というのは無責任な部外者の言い分であって、当事者としてはなんとかして既存計画を成功させる、ないしは成功ということにして終わらせる必要に迫られている。そして旧三機関の力関係というのはJAXA内に厳然と存在しており、ISASの立場は決して強くない。

 その中で、川口教授以下月惑星探査推進センター(JSPEC)は、天上の「はやぶさ」と同じぐらい、いやそれ以上に粘り腰を発揮している。「海外からロケット取ってこい」という、ほとんど昔話の主人公が遭遇するような無理無体に対して、ロケットを取ってこれそうな情勢を作り上げつつあるのだ。

 私思うに、昨年度の予算折衝で、たった5000万円ではあるが「次の小惑星探査機」の名目で予算がとれたことはとても大きな意味があった。予算というのは一度名目が立つとなかなかつぶせない。2006年の段階で、予算項目をとれたことで、JSPECは計画継続に向けて粘る足がかりを得た。

 そう考えると、一般からのあちこちへのメールは決して無駄ではなかったのだろう。

「2011年か2012年には打ち上げたい。その後はしばらく(おそらくは目標天体の軌道の関係で)打ち上げのチャンスがなくなる。2003年(はやぶさ打ち上げ)の次が15年空くというのでは、プログラム的探査の意味がなくなってしまう。15年といえば人が働く期間の半分ですよ」と、川口教授は言っていた。

 昔話なら、主人公はいくつもの無理難題を知恵で切り抜け、最後は「幸せに暮らしましたとさ」で終わる。もちろん小惑星探査はそんなわけにはいかない。予算が付いてゴーがかかっても、開発、打ち上げ、運用と、次の難関が続くのだ。


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2007.11.24

はやぶさの「祈り」

Mezamenasai

 辛気くさい話ばかりでもいけないので。

 11月23日から、「祈り」が公開された。ネットでも観ることができる。

  • 「はやぶさ物語」:プロジェクトチームインタビューも素晴らしい。左サイドバーから「祈り」を見ることができる。

 CGで再現した小惑星探査機「はやぶさ」の探査の様子に甲斐恵美子さんらの「はやぶさ」に寄せたジャズをかぶせた番組だ。

Ririku

 記者会見では、「癒し系」といい、報道でもそのあたりが強調されていたが、それ以上に、「はやぶさ」が小惑星イトカワでなにをしたかを、主観として追体験できる出来となっている。

 この「主観として」というのが重要。自分がはやぶさになった気分になれるわけだ。

 CG再現映像は、イトカワ近傍でのはやぶさの動きを忠実に再現したもの。私は「スラスターの噴射回数まで合わせた」と聞いている。演出は主に時間軸の圧縮で行われている。実際のタッチダウンは一晩かかっているわけで、そのままでは映画の尺に入らない。

 ただし、CG映像制作後も、データの解析は進んでおり、現在ではタッチダウン時の挙動が、より明確になっているとのこと。その分は「祈り」の画像には反映されていない。

Descend

 「祈り」は各地の科学館などでも上映されている。上映場所はこちら

 また、「祈り」は来年春にはDVD化される。DVDには「祈り」に加えてもう一本の科学映画「『はやぶさ』の大いなる挑戦!! 〜世界初の小惑星サンプルリターン〜」、を収録。資料を収めたCD-ROMも附属する。

 以下は11月19日に開催された「祈り」に関する記者会見の席で、「はやぶさ」イオンエンジン担当の國中均教授から聞いた、「はやぶさ」現状のあれこれ。

 「はやぶさ」は現在、第一期軌道変換の1700m/sを達成し、スピンモードに入れて冬眠中。次の軌道変更は2009年2月から。400m/sの軌道変更を行う。詳細については公式サイト参考のこと。

  • 行きは、はやぶさをイトカワにランデブーさせる必要があり、はやぶさの位置と速度の両方をイトカワに合わせなければならなかった。帰りは、はやぶさと地球の位置を合わせればいいので、その分楽ではある(注:速度の差は、採取サンプルを入れた再突入カプセルが大気圏で減速することにより吸収する)。
  • これまでに実施した1700m/sの速度変更は、軌道の近日点付近で行う必要のあるものだった。残る400m/sは遠日点で行うべき速度変更。
  • 1つだけ残っているリアクションホイールは、これまでの帰還行程でも何度か止めている。冬眠中もヒーターでホイール付近の温度を一定に維持しているので、2009年2月の立ち上げで、回転しないということはないだろうと考えている。しかし立ち上げ後にどれだけの期間、正常に動作してくれるかは未知数。
  • 最後のホイールが駄目になった場合に備えて、イオンエンジンの噴射と噴射方向のジンバリングとで、三軸姿勢を維持しつつ必要な軌道変換を行うための検討を開始している。その場合、新たな制御ソフトウエアをはやぶさに送り込む必要があるだろう。はやぶさ遠日点付近にいる限られた時間内に、400m/sの加速を終えることができるかどうかが、かなり難しい問題となる。

 画像は記者会見で配布された、「祈り」のキャプチャー。冒頭、宇宙を漂う「はやぶさ」に女神(ミューズであろう。声は声優の富沢美智恵さん)が「めざめなさい」と呼びかけ、意識(!)を取り戻した「はやぶさ」がイトカワでの冒険を振り返るという構成になっている。

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2007.11.15

11/12読売夕刊のコラムに「はやぶさ2」登場

 11月12日の読売新聞夕刊2面のコラム「夕景時評」に「宇宙開発と民意」というタイトルの記事が掲載された。執筆者は編集委員の知野恵子さん。

「『はやぶさ2』実現のために声を上げて——。ジャーナリストの松浦晋也さん(45)がインターネットで呼びかけている。」

で始まって、はやぶさ2を巡る動きを簡潔にまとめ、「実は宇宙好きという隠れファンは結構多い。そんな人の支援を引き出し、民意参加型の第2のはやぶさ誕生となるか。注目される。」と締めている。

 小さなコラムでも、マスメディアに載る意味は大きい。知野さん、どうもありがとうございます。

 JAXAへのはやぶさ2実現希望のメールが約80通、宇宙開発委員会に約30通という数字は、私も初めて知った。

 もしも「ネットの跳ね返りが騒いでいるだけだよ」と考えている人がいるなら、思い直してもらいたい。

 過去に、たとえ数通でも「ぜひ、このミッションを実現してほしい」という投書が、一般から届いたミッションがあっただろうか。

 80通は、一部のマニアが騒いでいるだけの80通ではない。その背後にはメールを出すほどではないが、「はやぶさ2」が見たいと思っている、もっともっと多くの物言わぬ普通の人たちがいる。

 皆、JAXAに期待しているのだ。

 あらためて、「はやぶさ2」実現に向けて呼びかけたい。

「未来を見たいのならば、声を届けて」と。

 メール送り先などははやぶさ2を実現させよう勝手にキャンペーン、当blogではここここを参考にして欲しい。


 知野さんは、H-IIロケット第1段のLE-7エンジンが爆発事故を繰り返していた頃から、ずっと宇宙関係を取材してきたベテランだ。あの頃からずっと、継続的に宇宙関係をウォッチングしてきたジャーナリストは、今やほんの一握りとなってしまった。その中の一人である。

 もう大分時間が経ったので、ばらしてもいいだろう。拙著「H-IIロケット上昇」に、LE-7エンジンのトラブルが続いていた時期、広報を担当していたNASDAのN氏(本を見れば名前が出ているが、ここでは頭文字にしておこう)の自宅に夜討ち朝駆けをかけ、玄関前でN氏をつかまえて取材し、周囲からあらぬ噂を立てられそうになった女性記者が登場する。

 若き日の知野さんの勇姿である。

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2007.11.07

「はやぶさ2」同時打ち上げの計算、50周年ラッシュ

 先日、nikkeibp.netにH-IIAで「はやぶさ2」打ち上げは可能?~相乗り打ち上げの可能性に言及しないJAXAという記事を書いた。ここで私は簡単な計算を行い、H-IIA相乗りで「はやぶさ2」は特段のコスト増加なしに打ち上げ可能であることを示し、相乗りの候補として、ASTRO-G(2012年打ち上げ予定)と、GPM(2013年打ち上げ予定)が存在すると指摘した。

 すると、非常にありがたいことに世界ロケット記念館というホームページを運営しているLH2さんという方が、私が行ったよりもきちんとした計算を行ってくれた。

 LH2さんの検討によると、ASTRO-Gと「はやぶさ2」の同時打ち上げは、キックモーターを使わなくとも第2段3回目の着火を行うことで可能になるという。

 私は直接LH2さんとは面識はないが、航空宇宙学科の学生さんであると聞いている。今年のエイプリルフールには「GXロケット、計画変更へ」というヨタ話を飛ばし、そのあまりの出来の良さにJAXAロケット関係者が動揺したという快挙を成し遂げている。

 なにしろ野田司令が野尻ボードで「で、改めてお願いですが、エープリルフール・ネタには、パロディだと、もう少し分かりやすいようにしてもらえますか?」と懇願したのだから、大したものだ(野田さん、私思うにこの件に関してはエイプリルフールのネタを一人歩きさせて、影響を受けてしまうような宇宙開発のプロの側に問題があるのでは?もしも役所とか財政当局とか政治家が影響されるとしたら、エイプリルフールを見抜けない彼らが宇宙政策をどうこうしていることの危うさのほうがよっぽど問題では?)。

 こういうきちんとした検証ができる人が、どんどん増えてもらいたいなと思う。宇宙という分野は、物理法則がそのまま適用できるので、簡単な計算ならば自動車や飛行機よりもずっと単純だ。LH2さんが行ったような計算ができる人が増えて、JAXAのやっていることを計算で検証できるようになれば、それだけ日本の宇宙開発は透明かつ公正なものになるだろう。


閑話休題
 日本ではあまり話題にならなかったが、今年の10月4日は世界初の人工衛星「スプートニク1号」が打ち上げられてから50周年だった。

 実は、今年の11月3日は、スプートニク2号の50周年だった。映画「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」でストーリーのバックグラウンドとなる、初めて軌道に乗り(それ以前も弾道飛行で宇宙に行った生物はいた)、帰ってこれなかった犬の打ち上げがあった日である。可哀想な犬クドリャフカは、打ち上げ数時間後に過熱のために死亡していたそうだ。


 1950年代から60年代にかけて、宇宙開発は急速に進展した。つまりこれからしばらくの間、宇宙は50周年ラッシュになるのだ。ざっとこんな感じで——

  • 2008年1月31日:アメリカ初の衛星「エクスプローラー1号」打ち上げ50周年
  • 2008年3月17日:アメリカの「ヴァンガード1号」打ち上げ50周年(現在軌道上にある最古の衛星)。
  • 2009年1月2日:最初の月探査機ルナ1号打ち上げ50周年
  • 2009年9月4日:ルナ2号打ち上げ50周年(最初の人工物体月面到達)
  • 2009年10月7日:ルナ3号打ち上げ50周年(最初に月の裏側を撮影)

 もう少し関連本が出るかと思っていたが、スプートニク50周年に出たのはこの本だけだった。長年朝日新聞の科学部で宇宙開発を取材してきた著者による、この50年に飛んだ衛星の紳士録である。科学的に華々しい成果を挙げた探査機あり、地味に技術開発を進めた衛星あり、半世紀もあると随分と人間は色々なことをやってきたというのが分かる。今のGPSにつながる「トランジット」や、最初の気象衛星「タイロス」といった、地味であまり知られていない衛星についても取り上げている。また、取材の現場で見聞したこぼれ話も今となっては興味深い。  宇宙開発に興味があるならば、持っていて損はない一冊だ。

 スプートニク1号については、宇宙開発史の桜木さんが、謎のスプートニク打ち上げロケットT3(pdfファイル)という面白い記事を公開している。ソ連がロケットの正体を隠したものだから、西側ではいかなる推測が出回ったかのまとめだ。実際のR-7ロケットよりも格好良い図が出てくるのが、今となっては笑える。

 そういえば、かぐやの月周回軌道投入も、スプートニク50周年と重なったのだけれど、メディアはほとんど取り上げなかったな。

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2007.11.02

はやぶさ2の現状とはやぶさ

 11月になった。

 以前、10月末がタイムリミットであるとして、「はやぶさ2」への応援をお願いした。

 現状について、私も大分取材が難しくなっている。


 だが、ひとつはっきりしていることがある。

「はやぶさ2構想はいまなお生きており、生き残りの道を探っている」。

 まだまだ計画の命運はつながっている。

 「はやぶさ」の成果は、世界的にも高く評価されている。後継機があるなら協力したいと考える国も少なくはないらしい。

 あちこちにメールをしてくれた皆様。しようとおもっている皆様。今しばらく、「はやぶさ2」への支援をお願いいたします。私は、「はやぶさ2」計画が、日本のプログラム的探査、さらには惑星探査への道を拓くと考えています。

 よろしくお願いいたします。

 まだまだメールは有効です。送り先については、こちらを参考にして下さい。もちろんそれ以外の送り先も有効であると考えます。


 本家「はやぶさ」は、ついに地球まであと400m/sのところまでの加速を達成した。

 川口プロマネが、月・惑星探査推進グループの事実上のリーダー格として忙殺される中、イオンエンジンを開発してきた國中教授がはやぶさ帰還に向けて執念を燃やしている。國中さんとしては、帰って来なければイオンエンジンの有効性を実証したことにはならない。

 これからしばらくの間、はやぶさは冬眠モードでの運用に入る。次の難関は、軌道の近日点に近づき、機器を起動する際に、ただひとつ残った姿勢制御用リアクションホイールが正常に起動するかどうかだ。

 はやぶさに搭載した3台のリアクションホイールは、製造上は同じロットである。うち2つが破損し、停止したということは、残る一つが動いていること事態が奇跡に近いということを意味する。

 長期間の停止をリアクションホイールが、乗り切ることができるか。それが次の関門となる。

 それにしてもあと400m/s、はやぶさの帰還を祈らずにはおれない。

 JAXAにおいて「はやぶさ2」構想に反対する側の論理は、「JAXAには金がない」だ。

 私は、「はやぶさ2」以前にスクラップにすべき計画はいくらでもあるだろう、という立場を取っている。アノ計画この計画、結局のところ「ここまでひきずってしまった計画を保持するためにかかる金」というのがある。

 私としてはJAXAも文科省も宇宙開発委員会も、そっちをどうにかするほうが先だと思うのだ。

 それは日本国民と真正面から向き合い、情報を共有することにもつながる。

 難しいことかも知れないが、LUNAR-Aでできたことが、アノ計画この計画でできないとは思わない。

 それは日本の宇宙開発を健全化し、未来に進むために必要なことなのだから。ここで逃げたら、あとで後進にもっと酷い状況を手渡すことになるのだから。

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2007.10.15

2ちゃんねるに出る

 この週末、2ちゃんねるに実名で出ていた。天文気象板にある「小惑星探査機はやぶさ」というスレッドだ。2ちゃんねるは1スレッドが1000メッセージで一杯になるので、新たなスレッドを立てるという仕様になっている。私が出たのはpart 27(過去ログに落ちている)と現行スレッドのpart 28である。

 「はやぶさ2」に関して、自分の知ることを質疑応答で出しておこうと思ってのことである。

 以下は一連の書き込みその中で書いたことだ。「役に立つ」「役に立たない」という議論は、往々にして「今の自分たちに具体的にどう役に立つかが分かる」ということと混同される。
 しかし実際に「何が役立つか」は、そう簡単に分からない。おおくの公共投資が「役立つ」という名目で実施されていることを思い出そう。

 天文学の例を見るように、世界の探究、知識への追求は、過去、必ず人類に大きな恩恵をもたらしてきた。その流れの先頭に、太陽系探査が立っていると考えるべきではないだろうか。

 そう考えない理由を、私は思い当たらない。

 以下は2ちゃんねる天文・気象板の「小惑星探査機はやぶさ part27」スレッドの974番コメントにかき込んだものの再録だ。「科学への貢献という理念だけでは納税者の支持を得られないのでは」という問いに対する回答である。


>科学への貢献・国際社会への貢献等と言う崇高な理念「だけ」では、巨額を投じる
>に納税者の支持を得ない。

 例えば天文学を不要不急の学問と思っている人は今も多いです。
 しかし実際には、緯度経度を定め、天測による航法を可能にし、時刻を定め、度量衡の基本となり、核物理や相対論の基礎となる観測結果を得たのは、天文学です。

 今や、量子力学と相対論なくして生活が立ちいかないのはご存知 ですよね。量子力学なくして半導体デバイスはありえません。また、 GPSは相対論的な補正をしてはじめて正しい位置を測定します。

 天文学ほど実用に役立った学問はないとすらいえるかもしれません。

 かつて世界を制したイギリスには、今も人口比で日本の10倍の天文学者がいるそうです。
 今、世界を牛耳っているアメリカが、基礎科学にがっちり投資しているのはご存知のとおりです。

 一見不要不急に思える基礎科学は、長い目でみるともっとも実用的な科学でもあり、国の繁栄の土台となるものなのです。

…と、いうことを、納税者にきちんと語り続けるのが、私の仕事だと思っています。

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2007.10.13

これまでのミッションの価値

 プログラム的探査を主張するためには、今、私達の日本が、どのような価値のある探査を行っているかも重要となる。出発点がしっかりしていなくては、その上にどんなにしっかりした仕組みを作り上げても、成果としては貧弱なものになってしまうだろう。

 過去22年の間に、日本は3回、4機の探査機を惑星空間に送り出してきた。ハレー彗星を目指した「さきがけ」「すいせい」、火星探査機「のぞみ」、そして「はやぶさ」だ。

 76年に1回の国際共同ミッションの一環として打ち上げられた「さきがけ」「すいせい」(1985)は、ハレー彗星接近という特別な機会を利用したものだった。観測内容は同時期に打ち上げられた各国の探査機を分担され、その後の彗星探査は、核に高速の人工物体を打ち込む「ディープインパクト」(アメリカ)、彗星核への着陸を目指す「ロゼッタ」(欧州)まで、大分間が空いた。
 だから、ここでは考慮の対象からはずそう。日本でも彗星核サンプルリターンが検討されているが、これは技術的に考えると、おそらく「はやぶさ」の成果の延長戦上での実施ということになるだろう。

 ここでは、「のぞみ」「はやぶさ」についてのみ考えることにする。

 実は現在、それぞれ後を追う、追従者が出てきている。

Osiris 「はやぶさ」の追従者は、アメリカの「オシリス」だ(Photo by NASA)。イオンエンジンを使って小惑星にタッチダウンし、土壌サンプルを採取して持ち帰るという、まさに「はやぶさ」そのものの構想である。現在、アメリカの小型探査機シリーズ「ディスカバリー」の候補として選定中である。10月末から11月にかけて、選定結果が公表される予定だ。

 もちろん選定に漏れて消えてしまうこともありうるが、私の聞いた話では、「オシリス」が選ばれる可能性が高くなっているという。

 選定されればオシリスは2011年に打ち上げられる。

 「のぞみ」は火星本体ではなく、火星の希薄な大気の状態を調べる探査機だった。
 旧ソ連の探査機「フォボス」の観測から、火星は上層大気からかなりの量の酸素がイオンの形で流出していることが判明している。それも数億年オーダーで、火星の大気がなくなってしまうほどの勢いだ。
 どんなメカニズムで酸素が流出しているのか、酸素は減っているのはどこかから補充されているのか——これらの問題は地球という星の大気環境を知る上でも重要である。比較対象の相手があるとないとでは、研究の進展が変わってくる。
 しかし「のぞみ」はトラブルにより、火星周回軌道に入ることなく終わった。

 アメリカは現在、小型の火星探査機シリーズ「マーズ・スカウト」を実施している。現在、最初のマーズ・スカウト「フェニックス」が火星南極地域への着陸を目指して、火星へ飛行中である。

 NASAは次のマーズ・スカウトを2011年に打ち上げる予定で、現在、ミッションの選定を進めている。
 多数の提案の中から、2007年1月に、2つの候補が勝ち残った。「メイブン(MAVEN)」と「グレート・エスケープ」だ。年内にはこのどちらかが、正式の「マーズ・スカウト」として選ばれることになる。

・メイブン(MAVEN:Mars Atmosphere and Volatile Evolution mission)
 正式名称は「火星大気と揮発性物質進化ミッション」。火星の気象及び大気の変動のありようを高層大気のイオン圏をも含めて調査しようというミッションだ。

・グレート・エスケープ(The Great Escape):火星高層大気を調査するミッションだが、読んだ通り高層大気からの酸素が逃げ出している過程の解明を大きな目標として掲げている。

 両ミッションの詳細は月探査情報ステーションのニュースが詳しい。

 つまり、どちらが選ばれても、「のぞみ」が果たせなかった観測を実施するミッションということになるのだ。

 現在宇宙探査の最大勢力であるアメリカが、過去20年かけて日本が実施した2ミッションの後追いをするということは、何を意味するのか、すこし考えてもらいたい。

 日本の研究者達が、乏しい予算の中で考えに考えて、意味のあるあるミッション、科学的価値のあるミッションを選んで実施していることを意味する。

 つまり、日本は、プログラム的探査の出発点としてふさわしいだけの質の高いミッションを選択し、実施してきているということである。

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2007.10.12

「はやぶさ2」に注目する理由

 昨日の記事を読んで、「感情的に煽っている」「陰謀論だ」と思う人もいるようだ。確かに昨日は、現状説明は書いたものの、私が「はやぶさ2」を支持する理由を明確には書いていなかった。

 以下、私の意図を要約して説明しよう。私が「はやぶさ2」に注目する理由は2つある。

まず、「プログラム的探査」の重要性。

 私は、継続的、計画的に太陽系探査を進める「プログラム的探査」が、今後の日本の宇宙開発に必須と考えている。探査は継続的に実施しなくては意味が薄れるし、その場合今回の探査機と次の探査機を一連のものとして構成や目的を明確にしたほうが成果が大きくなるからだ。

 実は1970年代にプログラム的探査への動きがあった。

 日本で最初に惑星探査の重要性を主張して行動したのは、東北大学の大家寛教授(当時)だった。1)まず行きやすい金星に、2)2機の探査機を送り、3)次いで火星、4)その次に木星——という主張は、まさにプログラム的探査そのものだった。

 この主張が通らなかった経緯は、拙著「恐るべき旅路」に書いた。

 大家教授の意見が通らなかった結果、「さきがけ」「すいせい」は別のセンサーを搭載することになり、成果を増したが、「同型機を2機打ち上げる」習慣がつかなかったことは、極端に言えば火星探査機「のぞみ」の失敗に遠くつながっているかも知れない。

 「はやぶさ2」が動き出すか否かは、1970年代以来30年振りに訪れた、日本にプログラム的探査を根付かせるチャンスなのだ。ここで失敗すると、また後々に禍根を残すのではないかと私は危惧している。

 もうひとつは、「科学衛星こそが、技術開発の源泉」となりつつある現状では、宇宙科学を予算削減の対象と考えるのではなく、むしろ技術開発のテストベッドとして積極的に捉えるべきではないかという考えである。

 昨今の科学観測の高精度化により、科学衛星の実現にはハード、ソフトの両面で最先端技術の開発と採用が不可欠になりつつある。高精度の姿勢制御や高出力太陽電池、高感度、多波長のセンサー素子など、かつてならば技術試験衛星が担っていた宇宙での技術開発を、科学分野が担うようになってきている。

 その一方で技術試験衛星は、巨大化し、失敗が許されなくなってきたせいもあって、試験要素以外は極端に保守的になってきつつある。実際問題として「きく8号」は情報通信研究機構の縄張りのようになってしまっており、しかも実施する実験アイテムが実用化する見込みは立っていない。

 とするなら、宇宙科学分野に注力することで、宇宙での技術開発力を保持しつつ、同時に世界最先端の科学観測成果を上げるというのが正しいいき方ではないかと考えるのである。

 そのためにも、科学衛星や探査機がある程度以上の頻度でコンスタントに打ち上げられる環境を作る必要がある。

 以上2点、私が「はやぶさ2」に注目し、下記のような呼びかけを行う理由である。

 もちろん、根底には「またはやぶさが見たイトカワのような光景を見たい」「見知らぬ太陽系各所を探査したい」という欲求があるのは言うまでもない。

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2007.10.11

はやぶさ2に向けて、最後のお願い

Pioneer10 Voyager1 Garileo

Cassini Newho

上、左から、パイオニア10(1973)、ヴォイジャー1(1979)、ガリレオ(1995)

下、左から、カッシーニ(2000)、ニュー・ホライズン(2007)

Photo by NASA


 まずは写真を5枚掲載することにする。その意味は、この記事の最後で種明かしすることにしよう。

 この前の「ロケットまつり」終了後にちょっと話した、「はやぶさ2」ののこと。

 当方がもたもたしていうちに、コメント欄でうーぱーさんにハッパを掛けられてしまった。

 そう、現在「はやぶさ2」を巡る状況は非常に厳しい。10月末がひとつの区切りになり、そこまでに海外の打ち上げ手段を調達できないと、計画自体がつぶれるという状況になっている。

 「はやぶさ」の冒険を目の当たりにし、今、「かぐや」が送ってくる月の映像にわくわくしている私達にすれば、日本国民が宇宙開発に何を求めているかは、非常に明確に思える。

 太陽系全域の探査だ。

 しかし、そのさきがけとなるべき「はやぶさ2」は今、予算の帳尻合わせのために危地に立っている。10月末に向けて、現在急速に事態は動いている。

 「はやぶさ2」に始まる、プログラム的探査に必要な予算は、JAXA全体の5年間の予算からすれば、大きな額ではない。

 にもかかわらず、GXロケットを初めとした遅延と予算超過を繰り返す積み残しの不良債権的計画に押されて、JAXAは今、未来に向けたもっとも貴重な宝石を自らゴミ箱に放り込もうとしている。

 だが、諦めるのはまだ早い。関係者は実現の可能性を必死で探っている。計画を好感を持って迎え、打ち上げ手段の提供を検討しようとする海外機関もあるようだ。

 私は、見たい未来を実現するために、声を上げる時だと思う。上げ続けることが未来につながると思う。

 皆さんの声が、「はやぶさ2」を、ひいてはその先にある日本の宇宙探査を実現する鍵となる。

 訴えるべき相手として、私は以下の3つの組織を選んだ。


1)文部科学省・宇宙開発委員会(メールアドレスはvoiceアットマークmext.go.jp)

2)内閣府・総合科学技術会議(http://www.iijnet.or.jp/cao/cstp/opinion-cstp.htmlから送付)

3)JAXA経営企画(メールアドレスはprofficeアットマークjaxa.jp)

 

 すでに議論や実態がかなり進んでいることを考慮して、即効性がありそうな送り先を選定した。

 宇宙開発委員会は、委員長以下5人の委員宛となる。

委員長     松尾 弘毅   元宇宙科学研究所所長
委員長代理   青江 茂    元日本原子力研究所副理事長
委員      池上 徹彦   前会津大学学長
委員(非常勤) 野本 陽代   サイエンスライター
委員(非常勤) 森尾 稔    元ソニー株式会社取締役副会長

 総合科学技術会議は、以下の委員宛となる。

閣僚
福田 康夫 内閣総理大臣
町村 信孝 内閣官房長官
岸田 文雄 科学技術政策担当大臣
増田 寛也 総務大臣
額賀 福志郎 財務大臣
渡海 紀三朗 文部科学大臣
甘利 明 経済産業大臣

有識者
相澤 益男(非常勤議員) 東京工業大学学長
薬師寺 泰蔵(常勤議員) 慶應義塾大学客員教授
本庶  佑(常勤議員) 京都大学客員教授
奥村 直樹(常勤議員) 元新日本製鐵(株)代表取締役 副社長、技術開発本部長
庄山 悦彦(非常勤議員) (株)日立製作所取締役会長
原山 優子(非常勤議員) 東北大学大学院工学研究科教授
郷 通子(非常勤議員) お茶の水女子大学学長
金澤 一郎 日本学術会議会長 ※関係機関の長

注意:それぞれきちんと宛名に個人の名前を入れること。でなければ、メールは各委員まで届かず、途中で止められてしまうかもしれない。
 メールが組織全体で処理する形にならないように、個人への宛名は必須である。

 総合科学技術会議は、人数が多く、メールフォームが1000文字以内となっている。短い文章で的確に意見を言うため、相手を絞る、何通かに分けて出すといった工夫が必要になるだろう。

 JAXA経営企画は、「広報気付、経営企画部御中」ということになる。

 正直、ここで私が書いている事を、すぐにJAXA広報は気が付くと思うので、「また松浦さんが余計なことをして」ということになるかも知れない。それでも、JAXA広報は一般からのメールを差し止めてるというようなことはしないはずである。

 この文章を読んでいるあなたが、一昨年の「はやぶさ」の探査を、一喜一憂しながら見守った経験の持ち主ならば、少しの勇気を奮い起こしてメールを書いてもらえれば、と希望する。

 見たいものがあるならば、「見たい」と口に出して言わなくてはならない。欲しい未来があるのなら、「欲しい」と宣言して行動するべきだ。黙って待っているだけで、望む世界がやってくるはずがない。

 「はやぶさ2」が、C型小惑星に降下する勇姿を見たいのならば、ほんの少しの行動してみよう。


 以下は、先だってnikkei BP.netで書いた実現の瀬戸際に立つ「はやぶさ2」~国内外の高評価と対照的なJAXA内での冷遇 (2007年9月25日掲載)の、その後も含めた現状である。


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「はやぶさ2」を巡る状況(2007/10/11)

 「はやぶさ2」実現にあたっての問題は、今後5年のJAXAの中期計画が、予算見積もりに縛られているということ、そしてその中に、国際宇宙ステーション、準天頂衛星、GXロケットといった、予算超過と計画遅延を繰り返したアイテムが多数存在し、処理されざる不良債権として予算を圧迫しているということにある。

 そして、文科省、宇宙開発委員会、JAXA経営企画部などは、予算を増やしたり不良債権を損切りするのではなく、そのまま抱えたまま新規アイテムを抑制することで、予算の枠内の中期計画を策定しようとしている。

 洋の東西を問わず、宇宙予算が危機的状況に陥った場合、真っ先に割を食うのは宇宙科学、それも新分野に乗り出そうとする新しい宇宙科学だ。

宇宙科学の予算が切られる理由

 宇宙科学には、学問的興味から行う不要不急の宇宙開発というイメージがまとわりついている。そして、公共事業的な巨大計画は、一応「ほら、このように役立ちます」ということを主張した上で予算を取っている(それが本当に役立つのかどうかは全く別だ)。

 予算額も大きいので「産業に与える影響が大きすぎる」という理由からメスが入ることはない。

 そこには、予算の多寡にかかわらず、1アイテムは1アイテムという役所の都合も存在する。1アイテムを財務その他で通す手間は、アイテムの大小にかかわらず同じだ。そして、産業政策としては予算の大小のみが問題となる。「小さな計画沢山」よりも「ビッグプロジェクトが少数」のほうが、管理もしやすいし、話も通しやすい。

 そして小さな計画を多数切ったほうが、「ほら、このように計画を削減して予算を節約しました」と説明もしやすい。

 「はやぶさ2」は、一番切られやすい宇宙科学の範疇にあり、しかも太陽系探査という新しい分野である。さらに、「はやぶさ2」を出発点とした一連の「プログラム的探査」の出発点でもある。このことを経営企画の側から見ると、「はやぶさ2を認めると、はやぶさ2のみならず、その後もずっと支出することになるのではないか」という危険を感じることになる。

 だから、「こんなものを、この予算の厳しい時期に認めるなんて、とんでもない」という思考に走ってしまうわけだ。

 だが、少し考えれば、健全な組織において経営企画セクションが果たすべき本当の役割は、

 1)今後の宇宙計画にとって何が必要かを真剣に考え抜き、
 2)本当に必要な計画とそうではない計画を先入観や過去の経緯を廃して峻別し、
 3)本当に必要な計画にのための予算は、なにがあっても充当する、
 4)ないしは、実施できるだけのバックアップを行う、

 ということではないだろうか。

 そして宇宙科学は、宇宙開発全体の中で、「常に行うべき事業」という地位を占めている。決して宇宙開発全体の中に占める割合は大きくないが、常時実施しつつ、次に向けた種子を蒔いていかなくてはならない。

 プログラム的探査は、未来に向けて、今こそ蒔くべき種子である。


宇宙科学を厚遇している気分になる事情


 困ったことに、JAXA経営企画セクションが「十分に宇宙科学には厚く付けた」という気分になる事情が存在する。

 次期固体ロケットの開発と、同ロケットで打ち上げる小型科学衛星が、次期中期計画に盛り込まれたことだ。次期固体ロケットは、当初開発費が100〜120億円ということだったが、この1年間の検討によりロケットが、そもそも無理がある2段式から技術的にまともな3段式になり、低軌道500kgから1.2tに能力が向上したなどの理由から200億円に増加した

 余談だが、昨年にM-Vが中止になった表向きの理由「今後4年間、内之浦のM-V発射施設を維持し、PLANET-CをM-Vで打ち上げた場合のコストは106億円になる」を、思い出してもらいたい。当時ISASは100億円でM-V第1段を改良する希望を持っていた。結果として施設維持費を考えても新ロケット開発は、M-V改良と同じだけのコストがかかることになったわけだ。

 既存ロケットを改良したほうが、信頼できる大きなロケットが入手できるのが道理である。

 次期固体ロケットの開発費用が200億円に増えたことは、ロケットの開発には喜ぶべきことだ。しかし、合理的なロケット構成を採用し、必要なコストを積み上げた結果が200億円であるということは、「そもそも、無理やりの理由を付けてM-Vを廃止に追い込んだのではないか」という疑惑に対する傍証になるであろう。

 そして、次期固体ロケットで打ち上げる小型科学衛星は1機40億円と見積もられている。

 「これだけ付けたのだから、次期中期計画で、もう宇宙科学はいいだろう」というわけである。

 しかし、そうではない。次期固体では十分なサイズの探査機を惑星間軌道に投入する能力はない(今のところ、ではあるのだけれども)。宇宙科学を次期固体に絞るということは、「日本は太陽系探査に手を出しかけたけれども、金がないから手を引きます」ということにつながるのである。
 本当に金がないならともかく、その一方で不良債権的計画は、ずるずると進行しているのだ。


なぜ、月探査WG? 「惑星」はどこにいったのか?


 宇宙開発委員会でも、JAXA経営企画セクションと連動したかのような動きがある。

 現在、宇宙開発委員会は、月探査ワーキンググループで、月探査をどう進めるかという議論が行われている。

 名称に気をつけてもらいたい。なぜ「月探査ワーキンググループ」なのだろうか。JAXAに今年度新設されたJSPECは「月・惑星探査推進グループ」だ。JAXAとしては月探査と惑星探査は一体であるという認識に立ち、まとめて推進するという意志を、組織名に示したわけである。では、なぜ宇宙開発委員会が、独立行政法人となり裁量権を増したJAXAの意志を無視しするような名称のワーキンググループを発足させたのだろうか。

 表向きは、「月に議論を絞りたいから」ということであり、惑星探査については第一回会合で報告を受けてはいる。

 だが、このような名前から入るという方法は、官僚が自分の意向を通す時によく使う手段である。後で「そもそもここは月探査について話し合う場所だから」と、惑星探査に関する議論そのものを不可能にしてしまうわけだ。

 なぜ惑星が抜けたのか。おそらく、「はやぶさ2」及びそこから始まるプログラム的探査が、議事録の残る宇宙開発委員会において、議論の対象にならないようにするためである可能性が高い。もっと具体的にいえば、宇宙開発委員会で「はやぶさ2」について語ることを禁じ手にしたわけだ。
 公的書類である議事録に、「プログラム的探査による惑星探査」「その先導ミッションとしての『はやぶさ2』」という言葉を残したくないのであろう。公的書類に言葉をを残すと、それを足がかりにさらなる主張を行うことが可能になる。
 宇宙開発委員会としては、そんな面倒な事態にしたくはないのだろう。

いいわけとしての「かぐや2」

 先だって10月5日の月惑星WGの会合後、各種メディアに、「かぐや2(セレーネ2)」の構想が一斉に出た。これはおそらく文科省の記者クラブでのレクチャーで、文科省側がしゃべったのだろう。

 これも妙な話だ。JSPECでは、プログラム的探査として、「かぐや(セレーネ)」による月周回探査、セレーネ2による月着陸探査、さらにその先のセレーネXによる月土壌サンプルリターンという流れを考えていたはずだ。これらは一つの流れで考えるべきものであり、ひとつを取り出して語るものではなかったはずである。

 なのになぜ、今、この時点で、かぐや2だけがことさらに強調されるのか。

 宇宙開発委員会(ないしはその一部)は、予算が足りないので次のJAXA中期計画では、かぐや2のみを盛り込み、その先のセレーネXにつながるプログラム的探査については、「やるかも」という程度の言質すら与えたくないのではないか。

 「かぐや2」がこのタイミングでことさらに出てくる裏には、「金がないから、かぐや2だけだぞ」という意志があるというわけだ。私達はうっかり「かぐや2が出てくるのだから、当然その次も期待していいのだろう」と思いがちだが、ロジックとしては「かぐや2は認めてやるから、それで満足しておしまいにしろ」という言い方も成り立つのである(ここらへんは、前にも書いた「官僚の文書は文面のロジックがすべて」という実態にもつながる)。

 なぜJSPECの抱える構想の中で、「はやぶさ2」ではなく「かぐや2」が選ばれたかといえば、将来アメリカの有人月探査に参加する可能性を考慮してのことだろう。

 確かに、こうして次期中期計画で、プログラム的探査の芽を潰しておけば、予算的にはJAXAは安泰ということになる。

 だが、このまま議論が進めば、次のJAXA中期計画では「かぐや2」だけ、その先はもう太陽系探査なんて大それたことは日本としてしない、というルートが、公文書の文言の中にできてしまう。

 プログラム的探査、そしてそのさきがけである「はやぶさ2」をつぶしてしまうということは、この先の日本の太陽系探査をもつぶしてしまうことにつながりかねないのである。

 一部からは「そんなことはない」と反論されそうな気もするのだが、公的文書に書かれた言葉が一人歩きし、強力な強制力を発揮することは、ここを読んでいる人ならば先刻承知だろう。
 

20年前のデジャヴ


 実のところ、月・惑星探査に関する宇宙開発委員会の議論は、私に強烈な既視感を感じさせる。

 前にも同じようなことがあった。

 20年前、私は日経エアロスペースの記者として、1987年から88年にかけて、当時の宇宙開発委員会が実施した、宇宙開発政策大綱という当時の中期計画の改訂作業を取材した。1987年度はまず「長期政策懇談会」というワーキンググループで理念をとりまとめた「長期ビジョン」を作成し、88年度に、長期ビジョンに基づいた大綱改定の議論をしたわけだ。
 この時、長期ビジョンには様々な目標が盛り込まれた。ところが実際の改訂作業に入ると、事務方である科学技術庁・宇宙企画課が「予算がない」ということを理由に、徹底的に長期ビジョンに掲載された計画を削り、結局でき上がった大綱は、夢も希望もないしょぼくれたものになってしまったのだった。
 当時の議論には、民間からも委員として多数参加していたのだけれども、その誰もが「なんでせっかく策定した長期ビジョンを無視してまで、科技庁は大綱の内容を削り続けるんだ」と不満を漏らしていたのをはっきりと覚えている。

(余談であるが、当時の科技庁・宇宙企画課課長は、青江茂・現宇宙開発委員長代理だった。今回の動きに似たところがあるのは、あるいは青江氏個人の“官僚としての仕事の手癖”が出ているのかも知れない)

 1988年の大綱改定は、結局バブル経済による税収増、そして崩壊後も続いた科学技術重視の中で、宇宙予算がそこそこ増えたことによってその問題点は隠蔽された。とりあえず予算が増えたので、危機的状況は当面回避できたのだ。

 しかし今回、予算増加を見込める国家財政ではない。財政が萎縮している今、「やらない」としてしまったら、本当に必要なことでもできなくなってしまう。


せっかくの芽生えを潰すのか


 確かに、「はやぶさ2」をつぶすということは、お役所的にはとてもスマートな解法だ。予算超過を起こさない。余計な予算を財務に要求する手間もない。既存計画を恥を忍んで潰す必要もない。

 しかし同時に、国民の期待にも応えていない。当面、役所的に平穏無事なだけで、その先になにか素晴らしい成果が得られる見込みがあるわけでもない。ただ、宇宙産業にだらだらと金を流し続ける、公共事業的計画のみが生き残ることになる。

 そして、「はやぶさ2」の終焉は、火星探査機「のぞみ」、小惑星探査機「はやぶさ」でせっかく芽生えた、日本の太陽系探査への動きを、すでに予算が付いている金星探査機「プラネットC」と、欧州との協力ミッションである水星探査機「ベピ・コロンボ」のみで打ち止めにしてしまう可能性が高い。

 検討が始まっている「のぞみ」後継機も、「はやぶさMark2」も、電力ソーラーセイルによる木星スイングバイ・黄道面脱出ミッションも、その先、2020年代の木星探査機も、「金欠日本はそれでいいんだよ」という力ない言葉とと共に、すべてなしになってしまうかも知れない。

 私としては、そのような事態は、来て欲しくはないのである。


 ここで、冒頭に掲載した5枚の写真の解説をしよう。これらはすべてネットで拾ってきた歴代の探査機が撮影した木星の画像から、大赤斑周辺を同じ縦512ドットで切り出したものである(パイオニア10の撮影した大赤斑は、木星全景しか見つからなかった。確か撮影していたはずだが)。

 それぞれの画像は、取得したセンサーも、撮影に使った波長や画像処理手法、撮影した距離やフライバイの相対速度も違う。さらにはネットに掲載するためにJPEG圧縮も受けているので、単純に比較できるものでもない。

 それでもボイジャー1号とガリレオを比べると、ガリレオのほうがより細かい気流の流れが写っていることが分かる。

 カッシーニの画像はガリレオよりもかなり遠い距離からフライバイで撮影しているが、にもかかわらずかなりの細部までを写し取っている。同じくフライバイのニューホライズンは、よく見ると、木星周回軌道から撮影したガリレオ並の精度で渦巻く流れを写し取っていることがわかるだろう。

 最初の、木星近傍を無事に通過できれば上出来だったパイオニア10から、一瞬のフライバイでも詳細観測を行うことが可能になったニュー・ホライズンへ——できることを、できるところから少しずつ、回数を繰り返してより詳細な観測へ。プログラム的探査とは、このようなデータを積み重ねていくことなのである。


 日本国民が望む宇宙開発とはどんなものだろうか。

 アメリカにお客様として乗せて貰う有人飛行ではない。

 機密保持を理由に、役に立っているかどうかすら国民に開示されない、情報収集衛星でもない。

 今になって測位信号の受信強度がどうのこうのと、最初に立てたコンセプトの筋の悪さを取り繕う議論をしている準天頂衛星でもない(そもそも準天頂衛星は2000年前後のコンセプト検討時点で、検討に参加した技術者ほぼ全員が「技術的に筋が悪いからやめろ」と主張していた)。

 ましてや、5年のはずの開発期間が10年になり、開発費は2倍かかり、上げるペイロードすら定かではないGXロケットでもない(霞が関界隈で、「何機上げたらIHIを納得させて計画中止にできるか」などという軽口が出てくるロケットの開発を続けていること自体がふざけている)。

 真に望むのは、未知の世界を探り、確実に「この世界」に対する知見を増やしてくれる、そんな宇宙活動なのである。

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2007.04.26

帰還開始にあたって補足

 はやぶさ帰還開始の報に、少し補足を。

 打ち上げ直後の運用初期は、よくイオンエンジンが異常を検出して自動的に動作を停止していた。が、現在、イオンエンジンの運転は安定している。

 地上側の臼田局は、地球が自転しているので1日8時間しか、「はやぶさ」と通信できない。通信不可能な16時間の間にイオンエンジンが停止しても、再起動は次の通信時間に行うしかない。それだけ時間を消費し、加速に使える時間が減ることになる。

 イトカワへの行程では、イオンエンジンを安定させて、時間のロスを減らすことが重大な課題だった。

 現在、Dエンジンはもちろん、ややおかしくなりかけているBエンジンも、動作は安定しており、連続運転をしても問題を起こすことはほとんどないという。これは帰還成功に向けての明るい側面だ。

 一方、今後、はやぶさが帰ってくるか、それとも帰還不可能となりミッションを終了するか、そのどちらかの結果を迎えるまで、運用チームには常以上の負担がかかることになる。

 通常、惑星間空間を航行する探査機の運用は淡々としたものだ。ほとんどの機器は電源を落として眠っているし、軌