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2014.02.12

ドッペルギャンガー続報

 「ドッペルギャンガー」ブランドの折り畳み自転車を販売しているビーズ株式会社から、今回の2ちゃんねるの件についてリリースが出た。

【ビーズ株式会社より重要なお知らせ】当社ブランドならびに当社製品に関する誹謗中傷について

 これら一切は、当社社員を詐称する誹謗中傷であり、当社社員あるいは元社員の書き込みではありません。本件について、すでに悪意のある第三者による誹謗中傷として警察ならびに弁護士に相談しております。また、この記事を元にした事実や根拠のない情報発信についても、投稿者等に対する法的措置を検討しております。

とのこと。

 が、この発表はなぜかホームページトップからリンクされていない。
 私は、Facebookのドッペルギャンガーページで知ることができた。このFacebookページは「開発担当者+社内の有志による自発的な運営です。」ということで、会社公式ではないのだが……非公式ページからリンクして、トップページからは見に行けないというのはちょっと変だ。
 さらに、「当社ブランドならびに当社製品に関する誹謗中傷について」という文書は、なぜかテキストではなく、JPEG画像でページに貼り込まれている。これは通常、検索エンジンのロボットを避けるための手法で(本気で検索エンジンを避けるためにはメタタグを使う方法が別途存在するが)、なぜこんなことをしたのか不明である(経営陣の意向?)。

 ビーズは東大阪の中規模の企業らしいが、ネットでの危機管理にちょっと甘いところがあると思う。

 本当に危ない設計か、あるいはきちんと生産管理しているかどうかは、何台かランダムに抜き出して、破壊試験や耐久疲労試験にかければ分かるので、これは予算を持ち試験設備が使える国民生活センターや、一般財団法人・自転車産業振興協会一般社団法人・自転車協会などに期待しよう。

 ちなみにビーズは自転車協会名簿に名前がない。が、この名簿にはスギノのクランクで知られるスギノエンジニアリングのような大御所も入っていないので、関連企業がすべて加入しているわけではないようだ。

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2014.02.11

内部告発と、「自転車はきちんとコストをかけて選ぶ」ということ

 なんとまあ——
 ドッペルギャンガーという具体的なブランド名が出てしまっている内部告発スレッドだ。

内部告発ってどうやってするの?:ニュースウォッチ2ちゃんねる
もとのスレッド:ニュース速報VIP+@2ch新機能実験場

 ネタ元が2ちゃんねるであることから、さっ引いて考える必要はあるし、すでにドッペルギャンガー販売元のビーズ株式会社がなにか法務的に動いているかもしれない。このあたりは今後の情報待ちだ。

 この件に関連して私としては一般原則を強調しておかなくてはいけないと思い、書く。


 折り畳みのヒンジ、サスペンション、多段変速機——すべて自転車の設計と製造のコストを押し上げる要因だ。これらを装備しつつ安すぎる自転車は、性能と安全性の両面で「お買い得ではない」と疑ったほうがよい。

 20年以上前に、中国製造の“9800円”激安自転車が日本に入ってきた時もたまげた。それまで自転車は、変速機なしでも3万から5万はするのが当たり前だったから。
 それがいまや、アマゾンでも楽天でも1万円を切る折り畳み自転車が売られている。上に書いたように折り畳みヒンジはコスト増要因なのに。

アマゾン、折り畳み自転車を値段の安い順に並べた:2014年2月11日現在の最安値は6900円
楽天、折り畳み自転車を値段の安い順に並べた:2014年2月11日現在の最安値は6980円

 自転車は命を預ける乗り物だ。購入にあたってはきちんとコストをかけ、慎重に車種を選ぼう。
 特に折り畳み自転車、サスペンション付き自転車、多段変速機付き自転車は、それだけでコスト上昇要因を抱えているのだから、きちんとしたものを選ばないと後で大変なことにもなりかねない。折り畳み自転車で、走っている途中で折り畳みヒンジが開いたら、即転倒だ。大けがすることも考え得る。

 ずいぶんと以前、2009年に「自転車は、10万円を持って自転車専門店に行き、情報を集めてから選べ」という記事を書いた。

独断で語る賢い自転車の買い方(2009年8月17日、全部読むには無料登録が必要):人と技術と情報の界面を探る——PC Online連載)

 以下、上記記事より引用。


折り畳み自転車は、通常の自転車に比べて折り畳み機構が必要になる。これは設計と製造のコストを上昇させる要因だ。だから、きちんと作られた折り畳み自転車が欲しいのならば、通常の自転車よりも少し余計なお金を掛けねばならない。

 オートバイのようなサスペンションの付いたマウンテンバイクでも同様だ。私はこの種類の自転車には不案内なので、具体的に「○万円増しの予算で考えよう」とは断言できない。それでも、サスペンションなどの装備が追加されることで、設計と製造のコストが上昇することは理解できる。

 逆に言えば、コスト増加要因があるにもかかわらず、安い車種は、実はあまりお買い得ではないということでもある。豪華な装備を安い値段で売ろうとすれば、どこかで手を抜かざるを得ない。見えないところで手を抜いた自転車では、自転車にとって最も大切な性能――乗ったときに気持ちよく走り、気持ちよく曲がり、気持ちよく止まる――が犠牲になる。
 あまりに安い折り畳み自転車や、サスペンション装備の格安マウンテンバイク、安いにもかかわらず「24段変速!」などと変速ギアの段数をことさらに誇示している自転車などは、「見てくれを優先して、どこか見えないところで手を抜いている」と疑っておくべきである。
 良い物を作るには、相応のコストがかかるのだ。「安いけれども豪華装備」というのは、だいたいにおいて罠であると思っておこう。

 この記事を書いてから4年以上経ったが、価格帯も含め、原則は変わらない。

 良い自転車ライフのために、良い自転車を選びましょう。ちなみに、折り畳み自転車の世界最大手であるDAHONの最安値モデルはこちら。

DAHON Route:完成車価格:4万6000円
 価格.comでは、2014年2月11日現在、最低価格は3万8700円
Dahon_route2014
製品写真はDAHONホームページから引用


 私はこのあたりが、安心して乗れる折り畳み自転車の最低価格ラインだと考える。

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2011.12.08

はやぶさ2で野田事務所に嘆願書を送った

 野田佳彦首相の事務所に、はやぶさ2予算に関して嘆願書を送った。

 文章は以下の通り。

内閣総理大臣 野田佳彦さま


小惑星探査機「はやぶさ2」
平成24年度予算案における予算大幅圧縮に関する嘆願

松浦晋也
科学技術ジャーナリスト/ノンフィクション・ライター

 私は、主に宇宙関連分野で文章を発表して生計を立てている者です。3年程前に、民主党本部でGXロケットと宇宙基本法関連のレクチャーが開催された際に、講師として招かれ、その席で野田さまとお会いしております。このような嘆願書を送ることをお許し下さい。
 この嘆願は、小惑星探査機「はやぶさ2」の平成24年度予算「日本再生重点化処置」について、特段の配慮を願うものです。

 初代はやぶさについてはご存知のことと思います。平成15年(2003年)に打ち上げられた日本初の小惑星探査機です。プロジェクト・マネージャーである川口淳一郎JAXA教授の指揮のもと、平成17年(2005年)に小惑星イトカワの探査を実施し、平成22年(2010年)6月にイトカワの岩石サンプルを地球に持ち帰ることに成功しました。はやぶさ2は、その後継機で平成26年度(2014年度)の打ち上げ、小惑星1999JU3を探査し、平成32年(2020年)地球帰還を予定しています。はやぶさの成果を引き継ぎ、さらなる科学的成果と、宇宙及び地球に関する人類の知的資産の蓄積を、日本自らの手によって目指す計画です。
 平成24年度予算要求において、はやぶさ2は文部科学省から「日本再生重点化処置」で73億円を要求しています。探査機の製造には数年がかかります。平成26年度打ち上げのためには、満額執行が不可欠です。
 しかるに、12月6日の第三回政府・与党会議において、はやぶさ2の来年度予算の圧縮が了承されました。
 予算が圧縮され、平成26年打ち上げを逃せば、計画は実質中止に追い込まれます。それは、日本の宇宙事業が諸外国より相対的に少ない予算の中で、長い時間をかけてやっと一つ達成した世界的アドバンテージが無に帰することを意味します。

 地球から目的地の1999JU3という小惑星への打ち上げチャンスは限られていて、次は平成31年(2019年)、その次は平成36年(2024年)です。2019年は到着時の太陽と地球との角度が悪くて、小惑星への着陸リスクが大変に大きくなります。2024年には初代はやぶさに若手として参加した研究者が定年となり、経験の継承と発展はおろか、研究者・技術者集団を維持することすら不可能になります。1999JU3はC型という特殊かつ科学探査の価値が高い小惑星であり、はやぶさ2の能力で行ける範囲に他のC型小惑星は存在しません。
 探査機の製造には数年の時間が必要であり、そのためにはメーカーに支払いをしなくてはなりません。平成26年(2014年)打ち上げのためには、平成24年度予算において、73億円の要求を圧縮することなく通すことが必要です。

 平成26年打ち上げを維持しないと、はやぶさ2は実質中止になるのです(正確にはH26から27にかけて打ち上げチャンスがあります。年度を跨ぐのですが、星の運行は地上の予算制度など顧慮しませんから、ここではH26と表記しました)。

 はやぶさ2が中止になると、昭和62年(1985年)以降、大変な努力の末に世界で初めて日本が達成した「小惑星からのサンプルリターン」という偉業にまつわるもろもろ(技術的蓄積、科学的成果)がすべて途絶し、無に帰します。
 日本の成果を知り、その科学的価値を認識したアメリカは今年度からはやぶさと同様の小惑星サンプルを持ち帰る探査機「オシリス・レックス」の開発を開始しました。予算総額ははやぶさ2の3倍です。小惑星サンプル採取と持ち帰りには、それだけの価値があるとアメリカも認識したわけです。オシリス・レックスは2016年(平成28年)打ち上げ、2023年(平成35年)帰還を予定しています。
 はやぶさ2は当初は平成22年(2010年)打ち上げを予定していましたが、財政状況その他で実現は4年遅れました。研究者は論文が書けない4年間を耐え、技術者とメーカーは収入の当てがない4年間をしのぎ、はやぶさ2の実現に向けて動いてきました。はやぶさ2には、それだけの価値があるからです。ぎりぎりの努力は今や限界に近づいています。

 なによりも、小惑星からの物質サンプル持ち帰りという世界初の試みに挑み、数多の困難に打ち勝って成功を収めた者に対して、国が後継機を実質的な開発打ち切りとすることの、国民心理への影響を憂慮します。はやぶさの帰還カプセルは、全国各地で展示され、老若男女を問わず多くの人々がその偉業に触れました。その中には、はやぶさの飛行に胸弾ませた子供も多くいました。
 彼らに「日本という国は、政府自らが、成功する者を罰する国だ」ということを、事実をもって示してしまって良いものでしょうか。多くの子供が「この国では成功すると罰を受ける」と思ってしまえば、日本の未来は閉ざされます。

 それは、民主党の第一の理念「透明・公平・公正なルールにもとづく社会をめざします」に逆行する行為ではないでしょうか。

 内閣総理大臣としての野田さまの見識を信じ、「日本再生重点化処置」におけるはやぶさ2の平成24年度予算について特段の配慮を賜りたいと強く願うものです。

#追記:勝手ながら同内容を、メール及びファクシミリで送らせて頂きます。


平成23年12月8日

(住所・電話番号・メールアドレス)

 送付先は、野田首相のホームページにある。
 メールアドレスはすべてのページの一番下に書いてある post@nodayoshi.gr.jp
 ファクシミリ番号は後援会である未来クラブのページに書いてある。

 紙という実態の重みもあるので、署名を入れたファクシミリも送付した。内容は全く同じで、ファクシミリは、署名などの挿入位置を変えて体裁を整えている。

 政治家に嘆願書を送る時の秘訣。

1)政治家は忙しい仕事なので、なるべく短く簡潔に書く。ビジュアルで一発で理解できるようなものが一番良い。ひとつの目安はA4用紙に12〜14ポイントの文字で印字して1枚に収まること。私は文章しか書けない上に、くどい質なのでどうしても長くなって2枚になってしまった。

2)礼節を守り、決して失礼な事や攻撃的なことは書かない。目的はあくまでも自分の主張を相手の心に届けることで、自分の怒りをぶつけることではない。

3)きちんと自分の身分を明かし、それを証明できる住所などを添えること。個人情報の漏洩を心配する必要はない。もしも事務所が個人情報を漏洩したら、昨今の情勢からしてその政治家は失脚する。きちんとした事務所は、個人情報の管理はしっかりしている。ここは相手の事務所の力量を信じるべき局面である。

 最後にファクシミリ送付した文面の画像ファイルを掲載する。ファクシミリを通した後も読みやすく要点が一目で分かるように心がけた。

 どんなときも最後の最後まで諦めることなく、自分のできる限りのことをする。いうまでもなく、これは初代はやぶさが私たちに教えてくれたことである。

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2010.08.05

はやぶさ2・イプシロン、宇宙開発委員会の決定はGO

 本日午前中に開催された、宇宙開発委員会・推進部会での審議を傍聴した方によると、来年度予算でのはやぶさ2の開発研究フェーズ入りと、イプシロンロケットの開発フェーズ入りは、GOという結論になったとのことだ。

 今朝の日経新聞に、「はやぶさ後継探査機機2014年打ち上げ 文科省、予算要求へ 」という記事が出ていたので、多分宇宙開発委員会は通過するだろうと見ていた。日経の記事によると、来年度予算の概算要求で「十数億円」を要求。さらに文科省としては新設の特別枠で別途要求する意向のとことだ。
 実際、2014年打ち上げを目指すとなると、来年度十数億円ではまったく足りない。50億円近く必要なはずだ。従って、特別枠で相当な額を確保する必要がでてくる。

 来年度予算が確定するまで、まだまだ紆余曲折があるだろうが、まずは一歩前進だ。

 …傍聴、行くつもりで準備していたのだが、締め切りに追われて行けなかった。残念である。

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2010.07.31

2002年7月26日のはやぶさ

 本日のJAXA相模原キャンパス一般公開は、1万7000人の人出だったとのこと。行かれた方、ご苦労様でした。

 以下に掲載するのは8年前の2002年7月26日、相模原キャンパスにて組み立て真っ最中のはやぶさの写真だ。この日、私は組み立て中のはやぶさを取材した。もちろんこの時点でははやぶさという名前は付いていない。MUSES-Cである。

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 探査機本体を横方向から見たところ。右側にイオンエンジンがついているこの時点では、はやぶさはなじみ深い金色でもないし、太陽電池パドルもハイゲインアンテナも付いていない。一見するとただの箱である。

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 イオンエンジンは、ダストカバーで覆われていた。カバーの素材は、パソコン部品を梱包する静電気がたまらないタイプのシートのようだった。隅には化学推進スラスターが付いている。はやぶさの化学推進スラスターは、日本初のヒドラジンと四酸化二窒素を使う二液式だった。それまで、日本の衛星・探査機はヒドラジンを触媒で分解する一液式を使用してきた。二液式は複雑になるが性能が向上する。二液式スラスターの開発は、はやぶさの地味ではあるが大変重要な成果である。

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 反対側、再突入カプセルが付く側。下部にサンプラーホーンが見える。まだカプセルは付いていない。外壁に搭載機器が装着されているのに注意。はやぶさは搭載スペース節約のため、壁面内部だけではなく外側にも機器を搭載した。

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 ハイゲインアンテナ。アンテナ面の設計は火星探査機「のぞみ」に使ったハイゲインアンテナと同じ、3軸織りの高弾性CFRP製。

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 ダミーの治具に搭載されたタンク。通常、衛星・探査機は、力のかかる軌道変更用エンジンを中心に、円筒形の力を受ける部材(スラストチューブ)を持つスラストチューブ構造を採用することが多い。しかし、はやぶさは、強力な推力を発生するエンジンを持たない代わりに、微小推力のイオンエンジンを搭載している。このため、本体は壁面パネルで力を受けるモノコック構造を採用している。タンク類は内部の仕切り(バルクヘッド)に装着される。

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 ダミーの本体に取り付けてある、左右の太陽電池パドル。畳んだ状態である。

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 この日、組立の現場では、サンプラーホーンの展開試験を行っていた。「3、2、1」という秒読みと共にサンプラーホーンのラッチがはずれ、ホーンが延びる。無重力の宇宙空間での展開を前提に設計されているので、重力のある地上でそのまま展開すると、すとんと下に一気に伸びて、場合によっては壊れる恐れがある。この日の試験では、作業者がサンプラーホーンの下を手で支えて、そろそろと伸ばしていった。

 この時点で開発スケジュールは非常にタイトなものになっていた。「綱渡りどころか、ひも渡り状態が、糸渡りになっている」という説明が、今も耳に残っている。
 この8ヶ月半後、MUSES-Cは内之浦からM-Vロケット5号機で打ち上げられ、「はやぶさ」と命名されたのだった。


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2010.07.29

30、31日はJAXA相模原の一般公開です

 明日から2日間、JAXA宇宙科学研究所・相模原キャンパスの一般公開だ。

 はやぶさの帰還で、宇宙研を知って、今回初めて見学に行こうという人も多いだろう。
v初心者のために、Twitterに集う宇宙開発愛好家が、注意事項をまとめている。また、この手の見学の強者である、しきしま・ふげんさん(「現代萌衛星図鑑」著者)も、見学の注意をまとめている。
 初めて行こうという人は読んでおいたほうがいいだろう。


 特に今年ははやぶさ人気でかなりの人手が予想される。十分な準備(天候にもよるが日除けとボトル飲料と、スニッカーのようなちょっとした食べ物は必要)と、行き帰り(楽をしようと思わずに、JR横浜線・淵野辺駅から歩くのがベストだと思う)の算段をきちんとして赴こう。

 注意事項はいろいろあれど、実際にプロジェクトを動かしている人たちが説明に立つ、得難いイベントだ。節度ある態度で臨めば、一日楽しく有意義な体験ができると思う。

 そして大切なこと。宇宙開発も、宇宙科学も、太陽系探査も、どれも今年だけで終わるものではありません。私たちの知的好奇心が続く限り、ずっと進展していくものです。もしも今年、はやぶさに興味を持って一般公開に行き、「ああ、面白かった」と思えたならば、ずっと興味を持って見ていきましょう。来年の、再来年の一般公開にも足を運びましょう、
 宇宙への道のりに終わりはないのですから。

 楽しんできて下さい。

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2010.07.26

推進部会第2回会合・野口飛行士の菅首相表敬訪問

 本日、宇宙開発委員会・推進部会第2回会合が開催された。私は傍聴に行けなかったので詳細はまだ把握していないが、大塚実さんが傍聴に行って、一部資料を自分の日記に掲載している。大塚さんは部会の雰囲気を一部Twitterに流している。

 追記:推進部会を傍聴した@nikoさんと、がじゅまるんさんが、コメント欄に会合の様子を投稿してくれている。どうもご苦労様です。配布資料はネットにアップして大丈夫です。あの場で配った時点で公開資料となっています。


 推進部会第1回の資料も宇宙開発委員会のページに掲載された。


 かなりの量の資料が公開された。はやぶさ2、イプシロンロケットともに興味があるなら必読。次回の推進部会は8月5日(木)の10:00〜12:00に開催される。議論の集約が行われる模様。

 オンライン報道は今のところ、日経のみ。


 ただ、これは今日の推進部会の内容というよりも、今日宇宙開発委員会のページに掲載された前回の資料を読んで書いた記事のように思える。日経はオンライン有料化を進めており、無料版に出ている情報を絞ってはいるのだけれど。

 本日は、野口聡一宇宙飛行士が、菅直人首相を表敬訪問した。その場でもはやぶさの話題がでた模様。


首相表敬訪問が終了。はやぶさから日本の有人ロケットの話題まで、いろいろお話しさせて頂きました。

 報道によれば菅首相は宇宙予算について、特に積極的な発言はしなかったらしい。

 同席した宇宙航空研究開発機構の関係者が宇宙関連予算が減っていると指摘すると、首相は「財政は厳しいが、子どもに夢を与えられるプロジェクトはいい」と述べるにとどめた。 (日経新聞より)

 まあなあ、宇宙関係に無駄がないかといえば全然そんなことはないからなあ。

 ただし、首相として、「政治が宇宙関係のやることばかりを増やす(ISSに情報収集衛星、両方とも自民党政権の置き土産ではあるが)一方で、予算を増やしていないどころか削っている」という、これまでの経緯は把握しておいて欲しいところ。この問題の解決は政治にしかできない。

追記:NHKは日経と同じ語句を全く逆に解釈して報道している。

「私も小さいころは、ロケットを造ったりロケットに乗ったりしたいと思っていた」と述べ、宇宙への憧れを語りました。そのうえで菅総理大臣は「国の財政事情が厳しいという問題はあるが、宇宙プロジェクトは子どもたちや、将来に夢を与えることができる」と述べ、厳しい財政事情の中でも政府として宇宙開発に最大限の支援を行う考えを示しました。(NHKニュースより)

 さて、どちらが正しい解釈なのか。

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2010.07.16

推進部会が開催される

 本日7月16日午前中に、はやぶさ2開発研究入りと、イプシロンロケット開発入りを審議する、宇宙開発委員会・推進部会が開催された。
 残念ながら私は傍聴に行けなかった。先回りして書いておくと、来週火曜日のはやぶさ再突入カプセル・キュレーションの定例記者会見も別途用事があって出席できない。可能な限りはやぶさ関連の会見は追っていくつもりではあるが、身は一つしかないので致し方ない。

 報道によれば、今日の推進部会では、はやぶさ2の詳細が提出されたようだ。報道は主にコストについて伝えている。

 どの報道も基本は同じ内容。はやぶさ2予算として、本体148億円に運用などで16億円、合計164億円という数字が出てきたという内容だ。一部ではH-IIAロケットを使った打ち上げ費用100億円という数字も出ている。昨日の毎日新聞報道が打ち上げも含めて約270億円いう数字は大枠で正しかったようだ。ついでに三菱重工業が公開していないH-IIA打ち上げ経費も、本体製造と打ち上げ運用経費込みでおよそ100億円ということも見えた。

 推進部会はあと2回、この議題で開催されるとのこと。

 昨日も書いたが、はやぶさの127億円に対して21億円増というのは妥当なところだ。同型機とは言え、開発開始からは13年が経っており、もはや製造していない部品も多い。欠品の出る部位は今の部品を使ってもう一度組み直すしかない。そもそも、2003年の打ち上げ時点でも、あのすべてが初物づくしだった機体を127億で作れたことのほうが奇跡に近い。
 打ち上げ経費はM-Vを使えば64億円だったわけだが、このあたりは廃止した文科省はどう考えているのだろうか。また、打ち上げ能力はかなり余るはずなので、実現した場合はどんな相乗りになるかも興味深い。

 報道の中では朝日だけが政治側の動きについて報じている。

 川端達夫文科相は同日、はやぶさ2の開発について「政府全体の宇宙方針にかかわること」として、仙谷由人官房長官と前原誠司宇宙開発担当相(国交相)に宇宙開発戦略本部での検討を要請したことを明らかにした。


 現在、霞が関では宇宙庁設立を巡り、内閣府と文部科学省が宇宙関連の管轄がどちらが取るかで綱引きを繰り広げている。文部科学省が、宇宙開発の権限を根こそぎ内閣府に持って行かれる事に対して抵抗しているわけだが、実は宇宙庁設立となった場合の妥協案として「学術の性格が強い宇宙科学は文科省に残す」というプランが浮かんでは消えを繰り返している。
 ここで問題なのは「太陽系探査は学術なのか」ということ。X線や赤外線、太陽観測、磁気圏観測などの衛星は、そのまま国立天文台と合併できるだろうが、では探査はどうか。

 はやぶさやはやぶさ2は、JAXA月・惑星探査プログラムグループ(JSPEC)の管轄だ。JSPECが発足した理由は、アメリカが有人月探査計画を言い出したために、探査が単なる宇宙科学というよりも、国際宇宙ステーション(ISS)のような巨額の予算を使う大規模プロジェクトになる可能性が出てきたためだった。その後、今年念頭のオバマ新宇宙政策により、有人月探査は中止ということになったが、現在米議会で行われている議論では、オバマ新政策への不満と反発が、議会側から吹き出している。アメリカの状況が落ち着くにはもう少しかかりそうだ。

 文科省としては、まだわずかながら巨大公共投資に化ける可能性を残している探査も自分の懐に残したいところだろう。もっと言えば、国民的反響が続いているはやぶさ関係を、自分の管轄で押さえておきたいところだろう。

 川端文科大臣のオリジナル発言を聞く限り、はやぶさ2について前原宇宙担当大臣と仙谷官房長官に、はやぶさ2についてそちらでも考えてくれと話した、ということだけである。とはいえ、それぞれ政治家の間の会話にはやぶさ2が出てきたということは大きな意味を持つ(なにしろ今までそんなことはなかったのだ)。そして、そこには官僚側の思惑も被さっているのだろう。


 ナチスを利用してV-2を作ったフォン・ブラウン以来、宇宙開発を引っ張ってきたのは政治に利用されるふりをして政治を利用したパイオニアたちだった。
 なにがあっても恐れる必要はないと、私は思っている。新たな計画が実施できれば、そのことにこそ意味がある。

「……研究に必要なら、悪魔からだって金をふんだくって突進する。“悪魔に負けなきゃいい”という信念だ。」(小松左京「日本沈没」より。幸長助教授による田所博士評。小学館文庫版上巻p.168)

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2010.07.14

開発研究(フェーズB)と開発(フェーズC)

 本日の宇宙開発委員会を傍聴してきた。話題の中心は、M-Vロケットの実質的後継ロケットのイプシロンの開発入りと、はやぶさ2の開発研究入り。委員会の冒頭では、イカロスのこれまでの成果の報告もあった。

 使用された資料はJAXAのホームページで公開されている。

 はやぶさ2は一歩前進だが、まだまだ崖っぷちの状況が続いている。来年4月から開発を始めないととてもではないが打ち上げが間に合わないが、今回は「開発研究段階への移行できる状況になったので、宇宙開発委員会で審議してもらいたい」ということなのだ。一方、イプシロンロケットは「開発段階へ移行できる状況になったので、審議してもらいたい」である。

 開発研究とか開発といった紛らわしい用語は、計画の各段階を示すもの。遡れば米航空宇宙局(NASA)が計画管理に使っていた「フェーズA〜D」という用語を日本語化したものだ。

  • フェーズA「研究(あるいは概念検討)」:新しい宇宙機やロケットをどんなものにするかのコンセプトの検討を行う
  • フェースB「開発研究」:コンセプトから一歩踏み込んで、設計作業を実施してより現実的に実現可能性を探る。一部新期技術は先行開発を行ったりもする。
  • フェーズC「開発」:実機の設計と製造
  • フェーズD「運用」:実機の運用

 今回はイプシロンが、「実物の開発に入るよ」という段階に来た。いっぽう、はやぶさ2は、まだ「開発」段階にまで至っていない。その一歩手前のステップアップである。

 今回の審議の中で明らかになったが、目標とする小惑星1999JU3に対するはやぶさ2の打ち上げウインドウは2014年7月。ロケットの打ち上げ能力が十分にある場合は、地球スイングバイを省略可能で、この場合は2015年(おそらくは7月)に打ち上げることができる。

 だいたい探査機は実機組み立てに1年、その後の試験に1年、射場作業にまあ4〜6ヶ月はみておくのが普通だ。これだけで2年半。2014年7月打ち上げとなると。2011年度初頭から開発を開始したとしても、3年半しかない。設計や製造、試験でトラブルが出ると、簡単に数ヶ月の時間が吹っ飛ぶ。本当にぎりぎりだ。
 それでいて、今日の議題は、「開発への移行」ではなく、「開発研究への移行」なのである。

 今年度内にもう一回ネジを巻いて、「開発開始」への手順を踏むことができるかどうか。今回の説明に出席していたJSPECの長谷川義幸統括リーダは、記者に対して何度も「ぎりぎりです」と繰り返していた。

 今日の委員会審議でもっとも興味深かった点は、青江茂委員が、はやぶさ2は理学ミッションで押すのではなく、技術開発要素のある工学的技術開発の部分も前に出すべきでは、と示唆していたことだろう。以下、その場で取った審議内容のメモより。説明に立ったのは吉川真准教授と長谷川統括リーダ。



井上委員
 海外の動向は?

吉川
 アメリカ、ニューフロンティアという枠でオシリスという探査機が提案されている。打ち上げは2018ぐらい。

井上委員
 技術基盤を作るのは大事。深宇宙港構想(資料中に関連が記述してあった)とはやぶさ2との関係は何か。

吉川
 地球帰還後に、探査機の本体を地球スイングバイをしてラグランジュ点を狙う。

青江委員
 整理の仕方、説明の仕方の問題だが、「期待できる成果」で、科学の成果が資料の4.5.7ページに書いてあるが、すべて方法論だ。方法論で区分けしてある。そういう整理がいいのか、サイエンスとして「生命の起源に迫る」「太陽系の生成に迫る」というような区分けで整理をするのがいいのか、何を狙うかで整理するのとどっちが分かりやすいか考えてもらいたい。普通の人に分かりやすいような整理方法を検討してもらいたい。

池上委員
 水について。C型小惑星に水が存在するのか。

吉川
 含水鉱物である。飲めるものではないない。

青江委員
 月の水も同じなのかな。

長谷川
 月の場合は水酸基があるということで、じゃばじゃばあるわけではない。

池上委員
 打ち上げウインドウはどうなっているか。

吉川
 2014年7月。ロケット能力があればスイングバイなしで2015年打ち上げ。次は2019年だが到着後の条件が良くない。同じ条件を狙うならさらにその次ということになる。

池上委員
 はやぶさ1から、必要な技術は修得できたと言えるのか。

吉川
 うまくいったところを確実性を高め、うまくいかなったところはうまく行くように設計を見直す。

長谷川
 はやぶさ1はロバスト性が完全ではない。太陽系往復飛行の技術として現状確立したかというと、まだ完全ではない。まだもう一息成熟させる必要がある。はやぶさ2は、まだ技術を確立する過程。

青江委員
 吉川さんの説明だと、サイエンスを強調していたけれども、そんなにサイエンスを強調しないでも、もっとはやぶさ1の技術をよりちゃんとしたものにするとういうことなのか。

長谷川
 だから、プレゼン試料は方法論で分けて書いている。

青江委員
 サイエンスのほうをかなり全面に出した説明をしているけれど、サンプルを持って帰ってくるテクノロジーをきちんとしたものにする、ということを完全にパラレルに説明してもいいかなと思う。そちら方向でも検討してもらえればと思う。

吉川
 我々もそのように考えている。

池上委員
 大きな探査という流れの中の位置付けもできるといいな、と思う。サイエンスだけではなくエクスポラレーションで位置づけるということ。サイエンスだけで押していくと、サイエンスの側はやりたいことがいっぱいあるのでフラストレーションを感じてしまうかもしれない。

松尾浩道研究開発局参事官
 今回は開発ではなく、開発研究への移行である。ただし開発フェーズ移行で審議すべきことも可能な限り審査する。

 実は、はやぶさ2に関して科学者の側から、「理学ミッションとして実施するには、危険性が大きい。もっと確実な構成にすべき」という声が出ている。青江委員の発言は、「では、より工学ミッションの要素を押し出して開発フェーズ入りすべきでは」という、霞が関の中での筋の通し方を示唆したものだといえる。同委員は、1970年代から科技庁で宇宙行政に携わってきた筋金入りの官僚出身者だ。その示唆は、現状と照らし合わせると興味深い。

 今回驚いたこと。

 はやぶさ2の審議の後も、宇宙開発委員会は別の議題の審議が続いたのだが、終わって、吉川准教授と長谷川リーダが退席した途端、傍聴していた記者達が我先に退席して後を追い、文科省の廊下で臨時のぶら下がり取材となった。
 今まで傍聴していて、委員会途中で一気に記者が退席するのを見たことがない。現在の一般の興味がどこにあるかが、こんなにはっきりと形になるのを初めて見た。

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2010.07.11

ロゼッタのルテティア観測成功、探査機による小惑星観測の歴史

 一夜開けると、ロゼッタによる小惑星ルテティアの接近観測は成功しており、鮮明な画像がESAのホームページで公開された。

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Photo by ESA

 素人ならば「へえっ」で終わってしまうような画像から、科学者は呆れるほど大量の情報を読み取る。これからが楽しみである。
 すでに、ここにも時折コメントを書いている会津大学の平田成さんによるTwitterのつぶやきが 小惑星ルテティアについてという形で、まとまっている。SF作家の野尻抱介さん、林譲治さん、サイエンスライターの鹿野司さんなどが、画像を見ながら、平田さんと意見を交換している。

 データ公開の素早さは、今後日本も見習わねばならないところだろう。2005年11月のはやぶさによるイトカワへのタッチダウンの時は、初めてのこと故ではあったのだが、データ公開ポリシーが混乱し、一般が見たいと思う画像がなかなか公開されないということもあった(このあたりの過去記事を参照のこと)。現在金星に向かっている探査機「あかつき」では、手際よく、一般をうならせるようが画像が出てくることを期待している。

 今回のロゼッタのような、小惑星の近傍を通過するフライバイ観測は、過去にも何回か行われている。昨日書いたティティウス・ボーデの法則のn=3の位置、太陽から2.8天文単位の近辺には多数の小惑星が存在して、小惑星帯、メインベルトと呼ばれる密集領域を形成している。密集といっても、広大な太陽系の中に小さな小惑星が浮かんでいるだけだから、実際にはすかすかだ。スターウォーズ「帝国の逆襲」に見るような、ごんごん岩の塊が飛んでくるようなイメージは間違いである。

 メインベルトは火星と木星の軌道の中間にある。だから、火星を超えて木星の向こうまで向かう探査機は、軌道をうまく調整することができれば、小惑星の近くを通過し、観測を実施できる。

 外惑星方向を目指した最初の4機の探査機。アメリカの、パイオニア10号/11号、そしてヴォイジャー1号/2号は、小惑星フライバイ観測を行わなかった。その事情を私は知らないが、おそらくは最初の外惑星観測ミッションだったので、惑星観測を最優先にして失敗にもつながりかねない余計なことをしなかったのだろう。

 というわけで、最初の小惑星フライバイ観測の栄誉は、アメリカが木星に向けて打ち上げた探査機ガリレオのものとなった。

 2機のボイジャー探査機が、木星やら土星やらの惑星にフライバイ観測を行った。ならば次は惑星を回って長期間観測を実施する探査機だ——というわけで、ガリレオは木星を周回しつつ、木星本体と周囲の衛星を観測する探査機として開発された。最初の打ち上げ予定は1986年で、1989年に木星に着く予定だった。  ところが1986年1月28日にシャトル「チャレンジャー」爆発事故が起きて、打ち上げにシャトルを使うはずだったガリレオは事故に思いきり振りまわされてしまう。そのあたりの経緯は、拙著「スペースシャトルの落日」に書いたので興味のある方はどうぞ(と、宣伝)。
 ともあれ、1989年10月18日にスペースシャトル「アトランティス」で打ち上げられたガリレオは、1991年10月29日、小惑星ガスプラから1600kmのところを通過し、史上初の小惑星へのフライバイ観測を行った。

 さらにガリレオは、1993年8月28日には小惑星イダから1万500kmのところを通過して観測。イダは差し渡し60kmほどのでこぼこのじゃがいも形状をしていたが、なんと差し渡し約1.6kmの衛星を持っていることを発見した。小惑星を回る衛星が見つかったのはこれが初めてで、見つかった衛星はダクティルと命名された。
 なお、ガリレオは1995年に木星に到達し、8年間、木星の周囲を回って木星本体及びその衛星を観測した。2003年に軌道制御用推進剤が尽きたので、木星本体に落下させ、運用を終了している。

 次が、同じくアメリカの小惑星探査機NEARシューメーカー(1996年打ち上げ)だった。この探査機、当初は「NEAR (Near Earth Asteroid Rendezvous」という名前だったのだが、打ち上げ後の1997年に計画の中心人物だったユージン・シューメーカー博士が交通事故死したことを受けて、計画終了後に「NEARシューメーカー」と改名された。
 NEARシューメーカーの目的地は小惑星エロスだったが、それに先だって、1997年6月27日に小惑星マティルドから2400kmの距離を通過し、フライバイ観測を行った。
 同探査機は2000年2月14日、小惑星エロスの周回軌道に入ることに成功し、小惑星とランデブーした史上初の探査機となった。その後1年間の観測の後、2001年2月28日にエロスへ着陸し、ミッションを締めくくった。

 次に外惑星方向に向かった探査機は、アメリカの土星探査機カッシーニ(1997年打ち上げ)だ。しかしカッシーニは大規模な小惑星フライバイは行わなかった。2000年1月23日に小惑星マサースキーを160万kmの距離から撮影しただけである。

 冥王星に向かったアメリカの探査機ニュー・ホライズンズ(2006年打ち上げ)も小惑星を観測している。同探査機は2015年に冥王星をフライバイ観測する予定で、2010年7月現在、天王星軌道のやや内側を、太陽系外に向けて飛行している。ニュー・ホライズンズはまず、2006年6月13日に、小惑星APLに10万1867kmまで接近してフライバイ観測した。APLというのは奇妙な名前だが。ニューホライズンスの開発と運用を担当するジョンズ・ホプキンス大学・応用物理研究所(Applied Physics Laboratory:APL)の名前にちなんだものだ。

 カッシーニとニュー・ホライズンズの間に、我らがはやぶさのイトカワ探査が挟まる。2005年9月12日に小惑星イトカワから20kmのポジションに到達、約2ヶ月探査を行い、11月にイトカワに降下してサンプル採取に挑んだ。11月20日の第1回のサンプル採取で、はやぶさはイトカワに着陸後、また上昇し、月以外の天体に着陸し、また上昇した世界初の探査機となった。その後今年6月13日の地球帰還までの旅路については皆さんも知っての通りである。

 そして、ロゼッタだ。ロゼッタは、2008年9月5日に小惑星シュテインスに1700kmまで接近してフライバイ観測を実施した。2番目の、そして最後のフライバイ観測が、今回のルテティアである。

 まとめよう。これまでに人類が接近観測した小惑星は以下の通りである(観測順)。小惑星名にはWikipediaへのリンクをつけた。

  1. ガスプラ(ガリレオによるフライバイ観測:1991年)
  2. イダ/ダクティル(ガリレオによるフライバイ観測:1993年)
  3. マティルド(NEARシューメーカーによるフライバイ観測:1997年)
  4. マサースキー(カッシーニによる遠距離フライバイ観測:2000年)
  5. エロス(NEARシューメーカーによるランデブー観測:2000〜2001年)
  6. イトカワ(はやぶさによるランデブー観測:2005年)
  7. APL(ニュー・ホライズンズによる遠距離フライバイ観測:2006年)
  8. シュテインス(ロゼッタによるフライバイ観測:2008年)
  9. ルテティア(ロゼッタによるフライバイ観測:2010年)

 ここまでで9個。接近観測に限ると7個(イダの衛星ダクティルを数に入れると8個)。ランデブーによる詳細観測を行ったのはエロスとイトカワのみだ。数十万個もの小惑星があることを考えると、ごくごく一部である。

 今後の予定だが、現在アメリカの小惑星探査機ドーン(2007年打ち上げ)が、小惑星ベスタを目指して飛行を続けている。ドーンは、はやぶさ同様イオンエンジンを使って飛行している。はやぶさが往復飛行のために“高効率”のイオンエンジンを使ったのに対して、ドーンは、小惑星帯のベスタとケレスという軌道の異なる大型の小惑星2つに連続してランデブー観測をかけるために、イオンエンジンを採用した。
 ドーンは来年、2011年8月11日にベスタとランデブーし、翌12年5月まで観測を行う。12年5月にベスタを出発して、2015年2月にセレスにランデブー、同年7月まで詳細観測を実施する。その後、推進剤や機材の寿命に余裕があれば、ドーンをさらなる観測対象に向かわせることが検討されている。


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