2008.04.25

宣伝:4月28日月曜日、ロフトプラスワンのイベントに出演します

 「やりましょうか」というプロデューサー斎藤さんの一言で決まりました。

 先般、地球を離れて旅立ったA・C・クラークについて、百戦錬磨のSF成分全開の面子が語り倒します。多分私は聴き手に回ることになるでしょう。

宇宙作家クラブpresents
「アーサー・C・クラークを語る」
『2001年宇宙の旅』など数多くの作品で知られ、2008年3月19日に多くの人に惜しまれながら永眠したSF作家の巨匠、アーサー・C・クラークを追悼し、その多大な偉業を振り返る。

【出演】江藤巌(航空宇宙評論家)、金子隆一(サイエンス・ライター)、鹿野司(サイエンス・ライター)、松浦晋也(ノンフィクション・ライター)、他

4月28日月曜日
Open 18:30 /Start 19:30
¥1000(飲食別)当日券のみ

場所:ロフトプラスワン(新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2 03-3205-6864、地図)

参考記事:いずれ星の世界へ

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2007.07.03

お知らせ:7月7日、東京・学習院でニセ科学フォーラムが開催されます

午後5時追記
  コメントにあるように、すでに締め切られたそうです。この後は参加した人のレポートに期待ということになります。


 今日中にメールで申し込む必要があるので、大急ぎの告知です。私も本日気が付きました。

 「水はなんにも知らないよ」の著者である左巻健男さんを初めとして、小波秀雄京都女子大学教授、 菊池誠阪大教授、天羽優子山形大学助教授といった、この分野の論客が一堂に会して、ニセ科学が社会に与える影響を考えます。


ニセ科学フォーラム2007(7/7土13時〜学習院中高等科 )

 マイナスイオン、ゲルマニウム、デトックス、血液型性格判断、どれもニセ科学!

先の見えない世界の中ではびこる、あやしげな「科学もどき」商品の数々。その裏で言葉巧みなスピリチュアルや癒しに流されるひとびと。科学者のチームが現代の「ニセ科学」のすがたをさまざまな角度から徹底的に解剖して、市民と科学のよいあり方を考えます。

●7月7日(土)13:00〜17:30

●会場
 学習院中・高等科(501・502教室)
(JR山手線目白駅徒歩5分、都電荒川線鬼子母神電停徒歩7分)
http://www.gakushuin.ac.jp/mejiro.html
目白駅改札を出て右(出口は1ヶ所)、2つ目の信号前の正門を入り斜め左へ

※お車でのご来場はご遠慮下さい。

●日程
受付12:30〜12:55 受付

開会挨拶 左巻健男 13:00〜13:05
1.小波秀雄: 21世紀はニセ科学の世紀? 13:05〜13:40
2.菊池誠 :スピリチュアル・ニューエイジ・ニセ科学 13:45〜14:25
3.天羽優子:「水商売ウォッチング」の現場から 14:30〜15:10
4.土佐幸子:米国のニセ科学の様子と理科教育の「探究」 15:15〜15:45
5.左巻健男:理科教育と科学リテラシーからの提言 15:50〜16:20
全体討論 16:30〜17:30

●参加費:無料
●申込先:左巻健男:rika88 @ rika.org(@の左右を詰めてください。)
参加ご希望の方は必要事項をご記入のうえ、7月3日(火)までにE-mailにてお申し込みください。会場の定員になり次第締切とさせていただきます。
※当日は、E-mail返信でお送りする受付番号を必ずお持ちください。

申込E-mailの題名は、ニセ科学フォーラム としてください。本文に、
・お名前
・所属(勤務先など)
・緊急連絡用・返信受け取り用E-mailアドレス
をご記載ください。2人以上でお申し込みの場合は、一人一人別々に以上の内容をご記載願います。

●JST研究開発テーマ:「21世紀の科学技術リテラシー」中の「市民の科学技術リテラシーとしての基本的用語の研究」(研究代表:左巻健男[同志社女子大学現代社会学部現代こども学科・教授])の研究の一環として開催。
http://www.jst.go.jp/pr/info/info231/shiryou4.html

●共催:新理科教育フォーラム(代表:左巻健男):新理科教育MLを運営。
http://www.rika.org/rikaml/

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2007.04.10

宣伝:新著「コダワリ人のおもちゃ箱」が4月10日に発売されました

Kodawaribido
エクスナレッジ
四六判300ページ、定価(税込み)\1,680、ISBN 978-4-7677-0329-6
amazon bk1(著者コメントあり)

好奇心と興味にまかせ、やりたいことを突きつめる
趣味人を超えた
コダワリ人たちの熱中人生!

——突き抜けてしまった人たちはいつもほがらか。
趣味を超えて「好き」のコダワリをつきつめていった人たち
突き当たる課題難題も楽しみ、高みに突き抜けろ
そんな人たちを現在の活動も交えて紹介


    ●線路を敷いて本物の蒸気機関車を走らせています!−羅須地人鉄道協会 

    ●小さな力で楽々走れる自転車を作っています!−織田紀之

    ●公道を走るバイクやサイドカーを自作しています!−オートスタッフ末広

    ●学生たちと、本物の人工衛星を作っています!−中須賀真一

    ●東京の都心で美しい天体写真を撮っています!−岡野邦彦

    ●自分の全てを記憶させる、自作の電脳住宅に住んでいます!−美崎薫

    ●リッター4000キロ走る車を作っています!−中根久典

    ●世界一のプラネタリウムを作っています!−大平貴之


 本書は、趣味の域を超えて自分の楽しみが社会的な意味を持つまでの域に達した人を「コダワリ人」と命名し、そんな人たちを訪ね歩いたルポルタージュです。2002年から2003年にかけて1年半の間「日経WinPC」誌に行った同名の連載に基づき、継続して活動している方をセレクトし、さらに再取材を行ってまとめました。

 実際、世の中にはすごいことを実に楽しげにやってしまう人たちがいるものです。その数は、決して少なくありません。彼らのたどった道のりは決して平坦なだけではなかったですが、実際にあった誰もが難関突破のプロセスをも楽しみつつ、とんでもないところへと突き抜けていました。
 こういう人たちが増えていくと、世の中も楽しくなるんじゃないか、そうだといいな、という気持ちで書いた本です。

 読んで頂ければ、と思います。

本書を担当した編集者、今村さんによる紹介

#著者から一言。画像では分かりませんが、実物の表紙は、白地ではなくパールの地のとてもきれいなものです。今までの私の本で一番よくできた表紙じゃないでしょうか。この表紙はとてもうれしかったです。

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2006.07.08

宣伝:7/20、7/29、新宿・ロフトプラスワンのイベントに出演します

 下記の通り、新宿・ロフトプラスワンのイベントに出演します。

●7/20(木)
宇宙作家クラブpresents
「小松左京&谷甲州,『日本沈没』を語る」
7/15に映画「日本沈没」も公開。そして小説「日本沈没」第二部も発売。小松左京氏とともに第二部作者の谷甲州氏をお招きしてのトークライブ。この対談イベント、必見!
【出演】小松左京(作家)【Guest】谷甲州(作家)
【聞き手】松浦晋也、笹本祐一
18:30Open/19:00Start
前売¥2300/当日¥2500(共に飲食別)
前売はロフトプラスワン店頭にて7/9〜発売

●7/29(土)
宇宙作家クラブpresents
「ロケットまつりスペシャル 「はやぶさは舞い降りた」 」
小惑星からのサンプル採取をミッションに宇宙を行く・小惑星探査機「はやぶさ」。その「はやぶさ」チームをお呼びしてのトークライブ!
【Guest】橋本樹明(ISAS=JAXA宇宙科学研究本部教授)、久保田孝(ISAS助教授)、矢野創(ISAS助手)
【聞き手】松浦晋也、笹本祐一、浅利義遠
Open18:00/Start19:00
¥1200(飲食別)<当日券のみ>


 共に会場は
ロフトプラスワン(新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2 03-3205-6864)

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2005.11.14

宣伝;11月17日(木曜日)、新宿・ロフトプラスワンでトークライブ「小松左京、かく語りき」が開催されます

 このところはやぶさ関連の記事ばかり書いていて、告知が遅れてしまいました。表記の通り、小松左京トークライブが開催されます。
 聞き手として私も出演します。


「小松左京、かく語りき」
地球、自身、宇宙…神に至るまで縦横無尽に語る!
【出演】小松左京(作家)
【聞き手】笹本祐一(SF作家)、鹿野司(サイエンス・ライター)、松浦晋也(ノンフィクション・ライター)
11月17日(木曜日)
18:30Open/19:30Start ¥2000(飲食別)

ロフトプラスワン :新宿・歌舞伎町

※前売発券あり。ローソンチケットにて11/6〜発売(Lコード:35578)

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2005.10.23

素晴らしき4D2U

 野尻ボードより。

国立天文台4D2Uプロジェクト

 素晴らしい!!一つ一つ見ていくと、それだけで時空を超えた旅に出た気分になる。いつの間に、国立天文台はこれだけのことができるほどの広報マインドを持つようになったのだろうか。

 私は直接知らないのだけれども、天文普及関係の知人によると、東京天文台という名前だった頃の天文台の広報は最低に近かったそうだ。典型的お役所仕事で、応対は悪く、情報サービスは使いにくく、しかも直そうという機運は皆無だったという。その後、国立天文台が発足し、渡部潤一先生が広報担当となって、ずいぶんと改善されたと聞いてはいた。聞いてはいたが、これほど美しく衝撃的な普及広報ページを作成するほどになっているとは。

 繰り返そう。なんと素晴らしい。

 この仕事にはデザイナーの小坂淳氏が参加している。広報に、優れたデザイナーが参加することの重要性を、誰が気が付いたのだろう(そう、広報はその意味では広告に近い性格を持つ)。国立天文台に拍手である。


 本日、参議院神奈川選挙区補選。前外務大臣の自民党・川口順子候補が当選した。

 投票率は32.75%。こっちは全くもって素晴らしくないな。

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2005.10.17

「戦ふ東條首相」(昭和18年)

 2回、スニークプレビューをしたネタを公開しよう。

 これだ。右の本である。

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 「聖戦書帳 戦ふ東條首相」という、戦争中の子供向け絵本である。昭和18年4月発行、小田俊與という人の編・著。奥付によると5万部を印刷している。当時は紙が配給になっていたはずなので、異例の印刷部数である。定価は2円80銭。子供向けの本としてはかなり高額である。出版は博文館。今も続いている出版社だ。

 内容といえば、当時一流の画家や詩人による、全編これ東條英機ヨイショなのである。昭和18年だから、東條英機は権力の絶頂にいる。時局とはいえあまりにあんまりなおべんちゃらで、よくも一冊の本を作ったものだ。

 その内容はと言えば——一部見出しを抜粋すると


  • 「世界にとどろく大獅子吼(原文は旧字体、以下同様)」(東條首相、帝国議会で演説)
  • 「鉄壁完たり東條内閣」(組閣)
  • 荒鷲の育て親(航空兵団を視察)
  • 靖国の子と共に(靖国神社参拝)
  • 兵と共に(演習視察)
  • 鶴はし戦士を激励(炭坑視察)
  • 盟邦の子供(日本軍占領地域の子供らの頭をなでる)
  • 日々此戦争(首相職務に精励)
  • 生きた戦陣訓(編著者の小田によるヨイショ)

 とまあ、こんな具合だ。これだけ持ち上げられた人物が、二年半後に、戦犯として拘束されると思うと、なんとも言えない気分になる。

 一部を画像で紹介すると——

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 これは「敬神」というページ。「東條首相は、毎朝のやうに明治神宮や靖国神社に参拝し、皇国の安泰を祈り奉り、護国の英霊に心から感謝の誠を捧げることを欠かしません」。とある。

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 これは「軍神の子」というページ。「東條首相は、軍神加藤少将家を弔問して三人の遺児を激励しました」とある。加藤少将とは加藤隼戦闘隊で有名な加藤武夫中佐のこと。昭和17年に戦死して、二階級特進で少将となった。

 全編こんな調子なのだ。驚くべきことには、「荒城の月」で有名な土井晩翠が、「東條首相に寄す」という詩を寄稿している。

 廟堂いくたび風貌変えて
 最後に東條陰雲破り
 霹靂轟き清風起る

と、おべんちゃらでも素晴らしく格調高い。

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 巻末にはご丁寧に「東條兵団」なる歌の楽譜まで掲載されている。作曲は、中山晋平、古賀政男などと共に「歌謡界四天王」と言われた大村能章だ。

 この本は、大学のクラブの後輩で、現在は某大手新聞社で記者をしている軍服コスプレイヤーU君が、「コミケで分析書を出して下さいよ」という条件で譲ってくれた。その約束を果たせぬままかなりの時間が経過してしまったので、一部ここで公開する次第。

 いったい何だってこんな本が、あの戦時中に出てしまったのか。

 実はこの本の細かい解説が空席通信on the netというページにある。学生諸君へと題されたページだ。

 同ページによると、どうやら編著者の小田俊與が、この奇妙な本を読み解く鍵らしい。

 画帳の編著者小田俊與は、敗戦後、社会大衆党などの党首を名乗って衆議院、参議院、東京都知事など、選挙のたびに立候補し落選する、「泡沫候補」の常連だった人物だ。選挙のつど、公報に記載される経歴が微妙に異なるので真偽の程は定かではないが、ある選挙公報によると、一九四二年には「首相秘書官」、つまり東條首相の秘書官をしていたとある。

 つまり時局に乗ろうとして、政治の周辺を飛び回っていたかなり軽薄な人物だったらしいのだ。どうやら、そんな人物が、飛ぶ鳥を落とす勢いだった東條英機におべんちゃらするために、こんな本を作らせたらしい。

 小田が東條首相の秘書官というのが事実ならば、企画の存在を東條が知っていた可能性がある。知っていて、こんな本の出版を許したとしたら、当時の東條はかなり浮かれていたということになる。正直、この本には現在の北朝鮮の「偉大なる将軍様」とよく似た雰囲気がある。天皇の忠臣を自認していた東條に、将軍様になる意志はなかったろうが、周囲には勝手に東條を将軍様へと祭り上げる雰囲気があったのだろう。つまり、それほどの権力を東條は手中に収めていたわけだ。


 東條英機に関しては、ここ数年再評価の動きが出てきている。再評価にあたっては、戦後ひたすら沈黙を守ってきた東條家の人々が、佐藤早苗氏による一連の「東條もの」以降少しずつ生身の東條英機の有り様を語り始めたということが大きいだろう。

 が、この本が示すのは、子供向けおべんちゃら本が出るほどの権力の腐臭が、最盛期の東條周辺に漂っていたということではないだろうか。

 私としては、東條が松前重義をはじめとした反対者を、徴兵年齢が過ぎているにも関わらず徴兵し、しかも激戦地に追いやったことを重く見る(Wikipedia東條英機の項、現在の一般的な評価を参照のこと)。理由はどうあれ、東條は明らかに権力を濫用している。首相としての東條は同時に権力を濫用する人物だったということだ。

 東條家の人々は、東條英機を良き家庭人だったと語る。しかし首相に良き家庭人という資質は必須ではない。逆に権力の濫用をしないという資質は必須だ。石原莞爾の「東條一等兵」という酷評はともかくとして、権力の濫用という一点を見ても、彼は首相の器ではなかったのだろう。

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2005.09.07

「箕作秋吉の遺産」を聴く

 茅ヶ崎の図書館はCDの貸し出しも行っている。棚を見ていると「箕作秋吉の遺産」というCDがあったので借りだした。

 箕作秋吉(みつくりしゅうきち)(1895〜1971)は1920年代から60年代にかけて活動した作曲家。理学博士でもある。意外と作曲家は理工学系出身が多い。
 日本の五音音階を生かした作品を発表し、独自の音楽理論体系まで作り出したという人だ。CDは「箕作秋吉先生生誕95周年記念楽譜刊行会」が企画したもの(なぜきりのいい100周年じゃなかったのだろう?)。どうやらお弟子さん筋の関係者の手による非売品のようだ。箕作は茅ヶ崎に住んでいたので、その関係で図書館にあったのだろう。

 録音はラジオ放送に使ったテープと戦前戦中のSPレコードの復刻によるもの。おせじにも音質が良いとは言えない。曲目は以下の通り。括弧内は作曲年代

  • 「ピアノと室内管弦楽のための小協奏曲」(1953)
  • 「日本古謡を主題とする管弦楽のための3楽章」(1963)から第1楽章と第3楽章
  • 「芭蕉紀行(バリトンとオーケストラ)」(1937)より
  • 「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」(1935)
  • 「ローマン組曲(ピアノ)」(1927)より
  • 「小曲集(ソプラノと管弦楽)」(1929)より
  • 「三つの悲歌(バリトンとオーケストラ)」(1943)より
  • 「働く人のために(合唱)」(1947)より

 冒頭の「ピアノと室内管弦楽のための小協奏曲」が鳴りだしたとたん「そうそう、これだよ」と思わず口に出してしまった。そうだった。中学の頃、つまり現代音楽に興味を持ちだした頃に、戦前の日本人作品というと、まさにこんな曲をイメージしていたのだ。つまり五音音階を基調に、のったりのったりと進む歯切れの悪い曲を。
 なんでそんなイメージを持ったのかといえば、おそらくは音楽の授業で聴かされた近衛秀麿編曲の「越天楽」と、同じ頃にラジオで聴いた清瀬保二作曲の「日本祭礼舞曲」あたりのイメージがごっちゃになったからだろう。もちろん、そのイメージはその後武満徹、三善晃、そしてなかんずく伊福部昭と聴き進めて、ひっくり返ったわけだけれども。

 そして今、こうやって古い録音で箕作の音楽を聴いていると、私が戦前の日本音楽の特徴だと思いこんでいた歯切れの悪さが、実は曲ではなく当時の演奏に問題があったということが分かる。演奏技術が曲に追いついていなかったのだ。
 多分、このCDに収録されている曲は、現在の卓越した技術を持つ演奏家が、クリアな音質の現在の技術によって録音を入れれば、全く異なる印象を持って蘇るはずだ。誰でも知っている「さくらさくら」で異様な雰囲気の変奏曲を構成する日本古謡を主題とする管弦楽のための3楽章」の第3楽章など、なかなか面白い響きを作り出している。

 「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」は、巌本眞理、草間(後の安川)加寿子という、当時のゴールデンコンビが演奏しており、演奏そのものは素晴らしい。しかし、針音バリバリのSPの音質のため印象がしぼんでしまっている。朗々とヴァイオリンが鳴る曲なので、派手な音質のヴァイオリニストが演奏すれば映えると思う。

 曲は十分面白いのに、こうやって古い録音の私家版でしかCDを出せないというのは、悲しいことだ。私としては、せめて「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」をいい録音で聴いてみたい。

 ところで、箕作はその作品以上に、音楽史上の大失策で名前を残している。昭和22年、17歳の武満徹は、茅ヶ崎の小和田に住んでいた箕作秋吉を訪ねた。作曲を教えて欲しいと押しかけたのである。しかし箕作は、この未来の大作曲家を追い返してしまったのだった。後に箕作が語ったところによると、あまりに武満少年がみすぼらしい身なりをしていたので怪しんで追い返したのだという。

 作家の中井英夫は、このエピソードに感動して17歳の武満を「襤衣の天使」と形容したエッセイを書いた。でも、私はもっと単純なことなんじゃないかと思う。
 たとえイタい行動を取る若者であっても、人を見かけで判断しちゃいけないのだ。
 

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2005.09.03

イベント:神奈川県・二宮町で「宇宙塵」関連の展示と講演会があります

 神奈川県・二宮町図書館で、地元の柴野拓美さんと「宇宙塵」関連の展示及び講演会が開催されます。

二宮町図書館開館30周年記念行事

1.地域資料展示
 小隅 黎(柴野拓美)氏と 宇宙塵ー日本SFの軌跡。
 町内在住のSF作家・評論家・翻訳家、小隅黎(柴野拓美)氏の著作や日本SF小説の歴史などに関する資料を展示します。
 とき 9月13日(火)−19日(月 祝)9:30−17:00
 ところ ラディアン展示ギャラリー
 *入場自由、無料。

2.講演会 宇宙塵の軌跡ー日本SFと柴野拓美氏ー
 SF研究家 牧眞司氏に、柴野氏の業績や日本SFの歴史、SFの面白さを語っていただきます。(9/13注:横田順弥氏体調不良のため、講師が牧氏に交代しました)
とき 9月18日(日)14:00−16:00
ところ ラディアン ミーティングルーム2
講師 牧眞司氏(SF研究家)
 定員 80人 参加費 無料
申込み 8月3日(水)9:30から電話0463−72ー6913か図書館カ
ウンターで受付。
  (定員になり次第締切)


 以上、興味のある方はどうぞ。

 「宇宙塵」は日本最古のSF同人誌。現在も活動を続けており199号を出している。「宇宙塵」からは、星新一、広瀬正、山田正紀など、そうそうたる作家達がデビューしている。次は記念すべき200号だ。
 発行人の柴野拓美さんは、本業(教師)の傍ら「宇宙塵」発行と翻訳、創作(小隅黎名義)で活動してきた。最近ではE・E・スミスの「レンズマン」シリーズを改めて翻訳しなおした(創元推理文庫から発売中)。

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2004.11.20

父の原稿を公開する(その2)

 亡父が書いた原稿を、昨日掲載した通り、もう一本公開する。

「北京の景観を見て、絶対君主制を考える」という文章だ。北京の景観から説き始め、中国という国の成立を考えていくという内容だ。

 この文章は1998年の3月に書かれている。

 父は、中国首脳部では、朱鎔基首相を高く評価し、その一方で江沢民国家主席を「あいつはバカだ」と言ってはばからなかった。2004年9月に江沢民は国家主席を引退すると発表した。死の床についていた父は、苦しい息で「あんなバカヤロウはさっさと辞めるべきだったんだ。ざまあみろだ。辞めるのが遅すぎたよ」と毒づいた。

 父はそういう人だった。


 いつも通り「続きを読む」以降に掲載するので、読みたい方だけクリックして、読んでください。

Continue reading "父の原稿を公開する(その2)"

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2004.04.05

「宇宙塵」に拙文が掲載される

uchujin.jpg

 4月4日は雨も降り肌寒い一日。部屋の掃除と整理とあれこれ買い出し。

 数日前に柴野拓美さんから届いた包みを開けると、SF同人誌「宇宙塵」の最新号(198号)だった。私は「コロリョフ最晩年の家を訪ねる」という一文を寄稿している。メインは野尻抱介さんの短編「沈黙のフライバイ」、そして1977年に行われた小松左京・柴野拓美対談の採録(目次)。

 昨年6月にモスクワに行った際に、ソ連宇宙開発の父にしてアメリカが恐れた「設計主任」、セルゲイ・コロリョフが最晩年を過ごした家を訪れた。掲載と相成ったのは、その時のことを書いた文章である。

 とてもうれしい。日本SFの先駆者であり翻訳者でもある柴野さんが主宰する「宇宙塵」は日本最古にしてもっとも長く続いているSF同人誌だ。過去に数々の傑作を掲載し、数多の才能を発掘してきた。そこに文章を載せることができたこと、そして「沈黙のフライバイ」というファースト・コンタクトテーマの傑作と並んで掲載されたことが素直にうれしい。

 実際、SFというのは思考を合理的な形で解放する有力な手段だと思う。この「合理的な解放」というところがとても大切だ。ドラッグから宗教に至るまで、精神を解放する手段を人間は色々開発してきたけれど、あくまで合理的に解放してくれるのはSFだけだろう。

 コアなSF関係者からは「SFを手段としてしか見ていないのか」とか「SFは人間の非合理性をも取り込むことができる」とか色々といわれそうだけれども、でも私にとってSFはなによりも、すぐに固まりたがる自分の思考を柔軟にしてくれる道具であり、同時に読書の楽しみの大きな部分を占める文学形式でもある。

 久しぶりにミルクティーが飲みたくなり、低温殺菌牛乳を買ってきてフォーションの紅茶をいれる。私はコーヒーより紅茶、レモンティーよりもミルクティーが好きだ。ミルクと茶葉がそろわないとおいしいミルクティーにはならない。同時にベルギーのブラックチョコレート(茅ヶ崎くんだりであっさり入手できるのだからずいぶん便利になったものだ)などもちょいとかじって午後の一時を気分良く過ごす。ああスノッブ。

 写真は「宇宙塵」最新号の表紙。恥ずかしいのでちょっと小さく。

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2004.03.29

ひたすら眠る

 28日は起きたら午後5時。風呂と食事という生きるための最低限のメンテナンス作業を行い、また寝る。こういう日は引用でごまかすことにする。

宝石の限りない
眠りのように

——西脇順三郎「宝石の眠り」より

 西脇順三郎の詩は大好きだ。今は代表作「旅人かへらず」も入手可能になってるので、よろしければ読んでみて欲しい。SFファンには、田中芳樹氏の「銀河英雄伝説」第8巻で「魔術師、還らず」として本歌取りされていることで有名かも。

おやすみなさい。

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2004.03.02

大先達の話を聞く

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午後、永福町へ。当地に住む宇宙開発の大先達、黒田泰弘さんにインタビュー。こちらのためのインタビューだが、当方が忙しかったり黒田さんが体調を崩されたりで延び延びになっていた。そろそろ片を付けようということで、本日は午後一杯話を聞く。今年で84歳になられるはず。

 黒田さんは、NASDAが最初に開発した衛星打ち上げ用ロケット「N-I」の、開発ヘッドを務めた人だ。陸軍の軍人だった黒田さんは、戦後航空研究が禁止され、多くの日本の航空人が飛行機を諦めた時、なんと米軍立川基地で飛行機整備の仕事に潜り込んだ。そしてチャンスをつかみ、航空が禁止されている日本からアメリカへ、航空研究の名目で留学してしまう。

 そこで黒田さんは、ロケットと出会った。

 「ロケットエンジンの噴射炎を見て、人生が変わった」という。帰国後、なんとしても日本でロケット開発を立ち上げようと粘りに粘り、ついにアメリカからの技術供与によるN-Iの開発にたどり着く。

 黒田さんの話には、私にとっては歴史的な人物が何人も出てくる。戦後、米軍に雇われて製図作業をしていた堀越二郎(ゼロ戦設計者)、「もう日本の飛行機なんてダメだよ」としょんぼりしていた木村秀政(航研機やA-26長距離機の設計者)——なかでも印象深いのは久保富夫(百式司令部偵察機の設計者)の話だ。

 帰国後、黒田さんはロケット開発を立ち上げようとして三菱重工に就職する。しかし、航空自衛隊向けのF-86戦闘機のライセンス生産が始まる時期で、「飛行機だ!」と沸き立っていた三菱に黒田さんの話を聞く人はいなかった。黒田さんは戦中の名設計者だった久保富夫にロケット開発を訴える。昼休み、テニスをしながら久保は言ったそうだ。「黒田君、もう日本で飛行機は無理だ。これからは自動車の時代だよ」。

 その言葉通り、久保氏は三菱自動車へと転じて後に社長を務める。久保時代の三菱自動車は「コルト」を初めとした今もファンがいる名車を次々に開発することとなった。

 ロケットに向かう人がいて、飛行機に執着する人もいて、自動車へ希望をつなぐ人がいる。これが歴史だ。今日、私は歴史の言葉を聞いてきたのだった。

 帰途、渋谷を通る。東急文化会館はもうなくなっていた。13歳まで三鷹台に住んでいた私にとって、渋谷の五島プラネタリウムは好奇心を満たすこの上なく楽しい場所だった。数年前、プラネタリウムが閉館した時はとても悲しい思いをしたものだ。しかし、今や東急文化会館そのものが取り壊されてしまい、屋上の半球ドームもない。残っているのは連絡通路に張られた写真のパネルだけだ。これもいずれなくなるのだろう。

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