69 posts categorized "メカニズム"

2014.02.12

ドッペルギャンガー続報

 「ドッペルギャンガー」ブランドの折り畳み自転車を販売しているビーズ株式会社から、今回の2ちゃんねるの件についてリリースが出た。

【ビーズ株式会社より重要なお知らせ】当社ブランドならびに当社製品に関する誹謗中傷について

 これら一切は、当社社員を詐称する誹謗中傷であり、当社社員あるいは元社員の書き込みではありません。本件について、すでに悪意のある第三者による誹謗中傷として警察ならびに弁護士に相談しております。また、この記事を元にした事実や根拠のない情報発信についても、投稿者等に対する法的措置を検討しております。

とのこと。

 が、この発表はなぜかホームページトップからリンクされていない。
 私は、Facebookのドッペルギャンガーページで知ることができた。このFacebookページは「開発担当者+社内の有志による自発的な運営です。」ということで、会社公式ではないのだが……非公式ページからリンクして、トップページからは見に行けないというのはちょっと変だ。
 さらに、「当社ブランドならびに当社製品に関する誹謗中傷について」という文書は、なぜかテキストではなく、JPEG画像でページに貼り込まれている。これは通常、検索エンジンのロボットを避けるための手法で(本気で検索エンジンを避けるためにはメタタグを使う方法が別途存在するが)、なぜこんなことをしたのか不明である(経営陣の意向?)。

 ビーズは東大阪の中規模の企業らしいが、ネットでの危機管理にちょっと甘いところがあると思う。

 本当に危ない設計か、あるいはきちんと生産管理しているかどうかは、何台かランダムに抜き出して、破壊試験や耐久疲労試験にかければ分かるので、これは予算を持ち試験設備が使える国民生活センターや、一般財団法人・自転車産業振興協会一般社団法人・自転車協会などに期待しよう。

 ちなみにビーズは自転車協会名簿に名前がない。が、この名簿にはスギノのクランクで知られるスギノエンジニアリングのような大御所も入っていないので、関連企業がすべて加入しているわけではないようだ。

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2014.02.11

内部告発と、「自転車はきちんとコストをかけて選ぶ」ということ

 なんとまあ——
 ドッペルギャンガーという具体的なブランド名が出てしまっている内部告発スレッドだ。

内部告発ってどうやってするの?:ニュースウォッチ2ちゃんねる
もとのスレッド:ニュース速報VIP+@2ch新機能実験場

 ネタ元が2ちゃんねるであることから、さっ引いて考える必要はあるし、すでにドッペルギャンガー販売元のビーズ株式会社がなにか法務的に動いているかもしれない。このあたりは今後の情報待ちだ。

 この件に関連して私としては一般原則を強調しておかなくてはいけないと思い、書く。


 折り畳みのヒンジ、サスペンション、多段変速機——すべて自転車の設計と製造のコストを押し上げる要因だ。これらを装備しつつ安すぎる自転車は、性能と安全性の両面で「お買い得ではない」と疑ったほうがよい。

 20年以上前に、中国製造の“9800円”激安自転車が日本に入ってきた時もたまげた。それまで自転車は、変速機なしでも3万から5万はするのが当たり前だったから。
 それがいまや、アマゾンでも楽天でも1万円を切る折り畳み自転車が売られている。上に書いたように折り畳みヒンジはコスト増要因なのに。

アマゾン、折り畳み自転車を値段の安い順に並べた:2014年2月11日現在の最安値は6900円
楽天、折り畳み自転車を値段の安い順に並べた:2014年2月11日現在の最安値は6980円

 自転車は命を預ける乗り物だ。購入にあたってはきちんとコストをかけ、慎重に車種を選ぼう。
 特に折り畳み自転車、サスペンション付き自転車、多段変速機付き自転車は、それだけでコスト上昇要因を抱えているのだから、きちんとしたものを選ばないと後で大変なことにもなりかねない。折り畳み自転車で、走っている途中で折り畳みヒンジが開いたら、即転倒だ。大けがすることも考え得る。

 ずいぶんと以前、2009年に「自転車は、10万円を持って自転車専門店に行き、情報を集めてから選べ」という記事を書いた。

独断で語る賢い自転車の買い方(2009年8月17日、全部読むには無料登録が必要):人と技術と情報の界面を探る——PC Online連載)

 以下、上記記事より引用。


折り畳み自転車は、通常の自転車に比べて折り畳み機構が必要になる。これは設計と製造のコストを上昇させる要因だ。だから、きちんと作られた折り畳み自転車が欲しいのならば、通常の自転車よりも少し余計なお金を掛けねばならない。

 オートバイのようなサスペンションの付いたマウンテンバイクでも同様だ。私はこの種類の自転車には不案内なので、具体的に「○万円増しの予算で考えよう」とは断言できない。それでも、サスペンションなどの装備が追加されることで、設計と製造のコストが上昇することは理解できる。

 逆に言えば、コスト増加要因があるにもかかわらず、安い車種は、実はあまりお買い得ではないということでもある。豪華な装備を安い値段で売ろうとすれば、どこかで手を抜かざるを得ない。見えないところで手を抜いた自転車では、自転車にとって最も大切な性能――乗ったときに気持ちよく走り、気持ちよく曲がり、気持ちよく止まる――が犠牲になる。
 あまりに安い折り畳み自転車や、サスペンション装備の格安マウンテンバイク、安いにもかかわらず「24段変速!」などと変速ギアの段数をことさらに誇示している自転車などは、「見てくれを優先して、どこか見えないところで手を抜いている」と疑っておくべきである。
 良い物を作るには、相応のコストがかかるのだ。「安いけれども豪華装備」というのは、だいたいにおいて罠であると思っておこう。

 この記事を書いてから4年以上経ったが、価格帯も含め、原則は変わらない。

 良い自転車ライフのために、良い自転車を選びましょう。ちなみに、折り畳み自転車の世界最大手であるDAHONの最安値モデルはこちら。

DAHON Route:完成車価格:4万6000円
 価格.comでは、2014年2月11日現在、最低価格は3万8700円
Dahon_route2014
製品写真はDAHONホームページから引用


 私はこのあたりが、安心して乗れる折り畳み自転車の最低価格ラインだと考える。

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2013.12.30

【宣伝】コミケ85三日目に参加します(東P-37b)

 ぎりぎりの告知になってしまいましたが、明日のコミケット85にサークル「L/D」として参加します。

 場所は東P-37b。自転車島です。

新刊は、「Recumbent Jahoo!(リカンベント・イヤッホウ!)」。リカンベントと折り畳み自転車の本です。自転車のタイヤに付いての解説と考察入りです。B5モノクロ16ページ。予価300円。

 ・「「Recumbent Jahoo!(リカンベント・イヤッホウ!)」
  オフセットB5版16p 予価300円


 以下が表紙と目次です。

Recumbentjahoocomp Recumbentjahoocomp2

 こんな感じの本です。
20131230_224503  20131230_224413

 夏コミの既刊2冊も販売します。




 ・「Meet The Frog With The Ant」

 ・「2人の男の物語」

 共にオフセットA5版32p 500円


Frogantcover  2_3

 今回、音楽評論の本は間に合いませんでした。伊福部つながりで彼の師匠であるアレクサンドル・チェレプニン(1899〜1977)を調べ始めたら面白くてついつい深入りしてしまい……夏コミにうまく通れば、このあたりをまとめた本が出せるかも知れません。

 今回、体調不良なので、早めに店じまいするかも知れません(実は本日まで軽い病気だったのですが入院していたのです)。お買い物はお早めにお願いいたします。


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2013.05.07

bipod-ant:Frogとは対照的な折り畳み自転車

Antmain


 昨年末のコミケット83では同人誌まで出しているので、なにを今更なのだが、実は2年程前にBD-Frogに加えて、もう一台の折り畳み自転車を入手した。
 2010年の末頃、ネットをさ迷っていて、一台の中古折り畳み自転車が売りに出ているのに気がついた。スマートコグというメーカーのbipod-antだ。この自転車が高性能だということは、以前サイクルフェスタで試乗して知っていた。
 そして、なによりもアコーディオンのように縮む独特の折り畳み機構はメカニカルな意味で大変魅力的だった。最初のロットが完売した後、再生産が行われず、新品は市場から姿を消していた。
 中古品は、値段もこなれており、大変リーズナブルだった。結論は書くまでもない。私は、誘惑に抗しきれず買ってしまった。

 antの設計は実に良く出来ている。至れり尽くせりで、どこにも不満を感じさせない。グリップをエルゴンに、サドルを手持ちの細身のものに変えただけだが、これで十分だ。
 BD-Frogは、設計のあちこちに詰めの甘い部分がある。それがフレームの素性の良さと相まって「これはもっと良い自転車になる」とばかりに改造の意欲をかき立てるのだが。antは、そんな気を起こさせない。製品として隅々まで完成しきっていて、乗り手に不満を感じさせないのだ。その意味では、日本のものつくりの最良の部分が結晶したような自転車と言える。ちなみにスマートコグは大阪の設計会社である(生産は台湾)。

Antfolding 独特の折り畳み機構は、全体でヒンジが14ヵ所もあるという特異なものだ。通常、折り畳み自転車は、いかに少ないヒンジで小さく折りたためるかが設計上の課題だ。DAHONはヒンジ1つの2つ折りだし、R&Mは前後サスペンションのピボットがそのまま折り畳みヒンジになる構造にして、折り畳み専用ヒンジをなくしている。
 antの場合、アコーディオンのように平たく折り畳みたいという要求が先にあり、そのためには14ヵ所ものヒンジが発生することを厭わなかったということのようだ。
 平たく畳めるので、畳んだ状態でのハンドリングは良好だ。そのままスーパーや喫茶店に持ち込んでも、文句は言われない。おそらくはベビーカーと同じように見えるのだろう。
Antfoldingpoint 標準で付いてくる折り畳み時の移動用コロも効果的だ。実はantを買うにあたって「折り畳み自転車は、軽量化を徹底して持ち上げて歩いたほうがいいのか。それとも軽量化はほどほどにしてコロを装着し、転がして歩いたほうがいいのか」を自分で試してみたいという意図も存在した。この件については、折り畳み自転車愛好家の中でも意見が分かれている。輪行バッグを肩に提げて移動したほうが機動性が高いことは間違いない。しかし一方で、コロで転がした方が楽だということも事実である。
 やってみた結果はといえば「一長一短」。当たり前といえば当たり前なのだが、どちらも向き不向きがあって絶対的に有利ということはない。また、持ち運びが楽かどうかは、折り畳みの手間や折り畳み形態にも左右され、製品全体で考えないといけない。その自転車が一貫した設計思想を持っているかどうかが使い勝手を左右する。
 antは見事なまでに一貫した設計思想を持つ折り畳み自転車だ。アコーディオンのように平べったく折り畳むということを至上命題にして、設計上発生する困難をすべて受け止め、解決して製品化している。その潔さにはほれぼれする。
 一方、問題点もいくつか存在する。まず12.5kgもある重量。コロで転がせるのであまり気にはならないが、それでも手に持つとずしっとくる。
 そして14インチのタイヤは、12インチと同様に選択肢がほとんどない。オリジナルでは台湾のDUROという会社が製造した14×1.5のスリックのタイヤを履いている。が、これが抵抗の大きそうなロードノイズを発生する。なにかもっといいタイヤはないかなと探しているが、今のところ見つからずにいる。
 同じスマートコグのbipod mintという車種は同じ14インチでも1.25インチの細身のタイヤを装着している。antも1.25インチにしたら若干走行抵抗は減るかな、と思うのだが、フレームに無理な負荷がかかりそうな気がするのでタイヤ交換には至っていない。

Antsocks1 antは、その特異な折り畳み形状のため、通常の輪行バッグが使えない。スマートコグは専用の「アントソックス」という輪行袋を販売していたが、ホームページによると品切れだ。入手不可能と思い、自分で縫製することを考えていたら、コミケで「普通に売ってますよ」と売っている自転車店を教えてもらい、入手することができた。
Antsocks2 このアントソックスがまた良く出来ている。antにぴったりの寸法で、しかも小さい。かぶせた状態でコロが出るので、押して歩くことができるし、畳めばステアリングヘッドに取り付け可能という至れり尽くせりっぷりだ。Frogの純正バッグが「Frogも入る普通のバッグ」であるのに比べると、アントソックスはantに最適設計されたant専用備品であって、トータルのシステムとしての使い勝手は雲泥の差がある。
Antsockssize ただし、12.5kgの重量は、色々軽量化を進めたFrogと比べると肩に食い込む。軽量化するにしても、全体がぎりぎりまで煮詰めた設計になっているので、そもそも交換可能な部位が少ない。さらには性能的にもデザイン的にも全体バランスが崩れそうで、部品を交換するのもためらわれる。
 また、アコーディオン方式の折り畳みで小さくなるとはいえ、もとから小さく設計されたFrogに比べるとやはりかさばる。
 ともあれ、輪行バッグが入手できたので、これからあちこちに行ってみようと思っている。

Antlast

 こんな良く出来たantだが、現在新品を入手することはできない。色々うわさはある。コストダウンのために製造工場を台湾から中国に移そうとしたら、中国の工場が必要な精度で部品を加工できなかっただとか、加工コスト高騰で、とてもじゃないがリーズナブルな価格では出せなくなっただとか。が、うわさでしかない。スマートコグが正式コメントを出していないので、真実は分からない。
 ただ、中国のBtoBサイトアリババで、折り畳み自転車を検索しても、antの模造品が出てこないというのは、一つのヒントになるかも知れない。ここを見ると、山のようにA-BikeやらSTRIDAの模造品は出ている。モバイキーにいたっては、電動化した模造品まで出ている始末だが、antの模造品はない。スマートコグの他の製品も模造品はないので、図面が流出していないからかも知れない。あるいは、現状の中国自転車産業では手を出せない高精度を必要とする設計なのかもしれない……このあたりの勘ぐりは、想像を楽しむだけに留めておくべきだろう。

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2013.05.04

BD-Frog:タイヤをKidsPlusに交換した、山田耕筰の「赤とんぼ」

Kidsplusmain

 結局やってしまった。BD-Frogのタイヤを幅1.95インチのCityJetから1.75インチのKidPlusに変更した。共に独シュワルベ製。CityJetは廃番になったようで、シュワルベはこの他に、幅2インチのBigAppleを出している。
 以前、12インチタイヤの供給が心配だと書いたことがあるが、Frog購入以来5年間、きちんと高品位タイヤの供給は続いている。これは子供用のBMX(バイシクル・モトクロス)の車両が12インチタイヤを使っていて、世界的には結構な市場が存在するということが関係しているようだ。何にせよ、ありがたい話である。

Kidsplus1 CityJet(右)とKidsPlus(左)を比べると、これだけ違いがある。直径も若干小さくなっているのがはっきりと見て取れる。これだと走行感覚もかなり軽くなるだろうと期待しつつ作業を進める。

Derailer 今回は合わせて、ディレイラーの上のプーリーを12Tのものに交換した。リアハブに使っているシマノ・カプレオはトップギアが9Tという小径車用のハブ(通常はトップが11T)だが、時折ギア飛びするのが気になっていた。もっときちんとギアとチェーンを噛ませるには、と考えてディレイラーの上プーリーを大きくすることを思いついた次第。13T位入りそうだが、まずは12Tで様子を見ることにした。新しいプーリーは台湾のKCNC製。

 やや細いKidsPlusへの交換で、大分脚回りはすっきりした印象だ。ただしボリューム感はなくなり、ちょっと弱々しくも見える。このあたりは慣れだろう。
 走行は予想通りかなり軽くなった。一方で軽くなった弊害も出て来た。車輪の慣性モーメントが小さくなった結果、若干車体の安定性が低くなるのがはっきり実感できてしまったのだ。走行抵抗は小さいにこしたことはないし、車輪は軽いに越したことはない。軽量化・抵抗軽減と走行安定を両立させるには、若干車輪の外周に質量が集中しているようなタイヤがあればいいのだが。
 ちなみにタイヤ1本の重量は、CityJetが390g、KidsPlusが350g、BigAppleが325gとなっている。BigAppleだと、タイヤが太い分外周に質量が集中しているだろう。タイヤ単体も25g軽くなるというのは魅力的。ただしタイヤ圧はKidsPlusが最大で65psi(0.46MPa、4.4気圧)かけられるのに対して、BigAppleは最大55psi(0.38MPa、3.7気圧)である。走行抵抗軽減にはタイヤ圧を高くできるほうが有利だ。
 改めて2インチ幅のBigAppleに入れ替えるべきなのだろうか。自転車のタイヤは比較的安いので、こういう悩み方ができてしまうのである。
 12Tのプーリーを入れたことで、目論見通りギア飛びはかなり改善した。ただし完全になくなるには至らなかった。現在11Tが入っている下プーリーを10Tに落として、上を13Tにしてみるべきかも知れない。ただし、変速性能に影響が出てくる可能性もあるので、うまく行かなかった場合、部品をどう使い回すかを考えた上で、プーリーを購入する必要がある。

Kidsplus2
 ところで、トップの写真の赤とんぼタイルはなにか、というと、茅ヶ崎にある山田耕筰「赤とんぼ」の歌碑なのである。山田耕筰は、大正15年(1926)に40歳で一家を挙げて茅ヶ崎に引っ越してきて、以後6年間を過ごした。「赤とんぼ」は昭和2年(1927年)の作である。
 湘南海岸は秋になると、相模川を飛び下ってくる赤とんぼが乱れ飛ぶ。山田耕筰にインスピレーションを与えたのは、あの赤とんぼの大群だったのかも知れない。ちなみに三木露風が歌詞となる詩を発表したのは、大正10年(1921年)のことである。
 が、こちらを見ると、作曲経緯についてかなり身も蓋もないことが書いてある。確かに、あれほどアクセントとメロディの一致にこだわった山田耕筰にして、「赤とんぼ」は妙ではある。
 作曲後しばらく忘れられていて、昭和30年(1955年)の映画「ここに泉あり」(同年2月公開)で、一気にヒットしたというのもびっくりだ。砂川基地闘争の強制執行のクライマックスで敵も味方も「赤とんぼ」を合唱したという有名なエピソードが翌昭和31年(1956年)の10月13日。ということは、砂川では「みんなが知っている懐かしい童謡を歌った」のではなく「当時の流行歌を歌った」と考えるべきなのだろう。
Akatonbo

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2013.04.26

5年目のBD-Frog

 しばらく記事を書いていなかったBD-Frogだが、現在こんな状態になっている。
201304frog1

 見かけでは分からないが前後のハブはセラミックボール入りになった。

 小径車はハブの回転数が高い。このためスムーズに走るにはハブの抵抗軽減が重要になる。ところがシマノの小径車用のハブ「カプレオ」はコストダウンのためかハブ内面の加工が意外と荒い。
 一昨年11月、「ふじのくにCYCLE FES.2011 in 新東名」というイベントに参加して、開通前の新東名高速をFrogで89kmばかり走った。高速道路なもので、2%程度のだらだらの上り下りが連続する道だったのだが、そのだらだら下りで、どんどん普通の自転車に抜かれたのである。これは走行抵抗の低減を図らねばならぬと思ったが、実際の作業は今年までずれ込んでしまった。

Fujinokuni

 ちなみに12インチの小径車での参加は自分だけかと思っていたが、どうやら他に同じ12インチのOX Pecoで参加した方がいるようだ。

 セラミックボールは舟辺精工が通信販売しており、自分でも加工可能なのだが、Frogでは東京・曙橋の小径車専門店イークルにお願いした。というのも、最初は抵抗の少ないハブでゼロからホイールを組むつもりでイークルに相談していたのだが、現物を見せたところ、特殊な加工をしてあるので代替ハブが入らないことが判明。そのまま既存のハブにセラミックボールを入れることになった次第。

 研磨とセラミックボールの効果は予想以上に大きかった。ぐっとエネルギーロスが減ったのが体感できる。が、その代償として今度はタイヤがかなりの抵抗となっているのが実感できるようになってしまった。今入れているシュワルベのCityJetというタイヤは幅が1.95インチもあって太く、重い。実はより細くて軽いタイヤも手に入れてあるのだが、現在のCityJetが寿命になってから入れ替えるつもりだった。さあ、どうしたものか。



201304frog2 サスはサイクルショップしぶやのスプリングから、台湾製のオイルダンパー入のMulti-Sに交換した。現在は日本のショップでも買えるようだが、私は円高絶好調時にeBayで安く購入。
 これは効く。かなり効く。ペダリング時のエネルギーロスが目に見えて減り、走行時の姿勢も安定した。BD-1ないしFrogに乗る方にはお勧めだ。BD-1/Frogのサスはダンピングをバネの内側に押し込んだエラストマに持たせるという簡便な機構を採用しており、ダンピングが十分ではない。このため、以前からラジコン車用のダンパーや、バイク用のステアリングダンパーを使った改造が行われたりしていた。が、それらは結構高度な機械加工を伴い、だれでもできるというものではなかった。どこかがきちんと効くダンパーを組み込んだサスを出してくれないかなと思っていたら、元気な台湾自転車産業からこのような製品が発売されたというわけ。

 もともとFrogはタイヤサイズが小さい分、フロント回りの比剛性がBD-1より高い。このためフロントフォークの剛性が低いというBD-1の欠点はかなり緩和されているのだが、Multi-Sと組み合わせることでやっと理想的なセッティングが出たな、という印象である。ダンパーの容量が小さいので、耐久性はどの程度あるのか不明だが、壊れたらその時はそれまでと思って、がんがん使っていくつもりである。

201304frog4 リアもMulti-Sに交換したが、なかなか良い感じだ。このサイズの中にどうやってダンピング機構を組み込んでいるかは不明。ひょっとしたら各種エラストマを組み合わせているだけかとも思うのだが、ともあれなかなか効果的にダンピングを効かせてくれる。純正のハードエラストマよりもぼよんぼよんする感覚は小さい。また、サードパーティのスプリングとエラストマを組み合わせたリアサスよりも若干長めのストロークは確保できているようだ。

201304frog3 ヘッドパーツは、定番のクリスキング製に交換した。こちらも円高最盛期にeBayにて購入。すくなくとも自転車趣味にとっては円高は、けっこうな福音であったことは間違いない。BD-1/Frogは1-1/8のマウンテンバイク用ヘッドパーツを上下逆に使用する。以前のクリスキングのヘッドパーツは、逆に使用すると彫り込まれた「CRIS KING」の文字が上下逆さまになってしまったが、現在のモデルは上下を揃えて取り付けることが可能になっている。
 さすがは定番というべきか、ステアリング回りの剛性は体感できるほど向上し、なおかつ回転もスムーズになった。ステアリングダンパーが欲しいほどだ(それは本末転倒)。

 2007年12月に購入してから5年ちょい。ぼちぼちと改造は続いている。だいぶ理想の折り畳み自転車に近づいてきた感がある。
 が、分かる人には分かるでしょうが、ここからは金がかかるのだよなあ……(もちろんつまらない夢を追わなければいいのだ、が)。

Azumino
 改造ばかりしているのではなく、ちゃんと走ってますよ、ということで一枚。昨年の秋、安曇野を走った時の写真。

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2012.08.22

自転車2.0/3.0を思いついた背景

 もうちょっと軟らかく、自転車2.0/3.0のことを。

 基本的には自転車とリカンベントの両方に乗って、けっこうな性格の違いを感じている中から出て来た発想なのだが、最後にぐいっと後押ししたのがこれだった。

Varnatempest

 これはカナダのVarna handcycleという会社が作った、人力速度記録車「Verna Tenpst」という車両だ。男子人力一人乗り、200m区間というカテゴリーで、2012年8月現在、133.28km/hという記録を持っている。地上最速の人力車両だ。

 「これにモーターアシストつけたらすごいことにならないか」と思ってしまったのである。
 
 もちろんレコードブレイカーは公道を走る車両と色々違うから、そう簡単な話でもないのだけれど、それでもぎりぎりまで抵抗を減らすと人一人のパワーだけでもここまで速度を出せるということに感激し、それを一般化するにはどうすればいいかと思った時に、電動アシストという解が浮上してきたのだった。

 背景には、ここ数年、せっせと湘南平へヒルクライムに通っていたということもある。湘南平は、湘南海岸大磯にある小高い山の上の公園で、ふもとから公園まで上る1.5kmほどの急坂が、自転車のヒルクライマーたちの練習場所になっている。ある日ぜいぜい息を切らしつつ上っていると、おばちゃんの乗った電動アシストのママチャリが軽やかに私を抜いて上っていったのだ。
 くやしいよりも、「おお、電動アシストやるじゃないか」と思ってしまった。

 そうして情報を集めてみると、電動アシストはけっこうつかえる技術であり、にもかかわらず今の日本で、電動アシスト自転車が中高年向けなのは、警察の規制が、そのように仕向けているからだということが分かってきた。

 なんともったいない。警察の規制を取っ払い、リカンベントにでも取り付けたらこれは、原付よりも使える乗り物になるかも知れない。それどころか、ベロモービルに付ければ自動車よりも省エネで自動車並みに使えるものになるかもだ。

 そこであれこれ考え、調べ、コンセプトとして練り上げたのが自転車2.0/3.0というわけなのである。

 この本は売れないと悲しいので、もう一度アマゾンへのリンクを張っておく。ステマ:ステルスマーケティングに対してモロマという言葉があるそうだが、この場合はなんというのだろう。
 ともかく、本というのはまずは「そういう本が存在するよ」というフラグが人々の間に広まらないと手にもとってもらえないのである。


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2012.08.19

「自転車2.0」と「自転車3.0」

 新著「のりもの進化論」が発売されました。一部の方にはもうお手にとって頂けましたことと思います。

 残念ながら私の本はいつも部数が少ないのでなかなか実書店でぱっと見付けることがむずかしい。しかも、すぱっと既存の分類に収まる話を書いているわけではないので、本屋のどの棚に行けばあるのか迷うこともあるだろう。そういう方はネット通販が便利だ。

 今回の主題。「のりもの進化論」では「自転車2.0」と「自転車3.0」という新しい概念を提示したが、それってどんなものなのか。

 本文中は以下のように定義した。

  • 自転車2.0:以下の特徴を持つ人力の乗り物
    • 徹底した走行抵抗の軽減
    • 可能な限りの軽量化
    • 洗練された制御系を持つ電動アシスト
  • 自転車3.0:自転車2.0をソーシャル化したもの

 既存の電動アシスト自転車に似てはいるが、自転車形状にはこだわっていない。極端な話、電動ローラースケートでもいいし、足漕ぎボートがベースでもいい。また、基本的に現在の電動アシスト自転車にかかっている出力規制は無視している。「洗練された制御系」というのは、その時々の状況に合わせて最適なアシストを提供するという意味だ。本体附属のセンサーで運転者の体温や脈拍に応じて最適なアシスト、場合によってはオートマによる最適なギア比提供を行うことも考え得る。
 自転車3.0のソーシャル化というのは、ネットによって提供される様々な情報を駆使して、運転者に最適な移動を提供するという意味だ。カーナビのようなナビゲーションを手始めに、雨を避けたり、向かい風を受けにくい道を選んで走ったり、坂の多い経路、少ない経路を選べたり、暑い日は日陰になる区間が長い経路を示したり、ということだ。

 そんな乗り物が、ありうるのか。ありうるとしたらどんなものになるか、そのような乗り物を社会が受け入れるには社会インフラの側はどのように変化する必要があるか、法制度はどうあるべきか、といったことを本書では考察してみた。

 キーワードとして「アリストテレス号」と「ニュートン号」という仮想の乗り物を想定し、考えを進めている。

 この考え方が正しいのかどうか、私としては多くの人に考えてもらいたいと思っている。


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2012.08.17

宣伝:8/18に新著「のりもの進化論」(太田出版)が発売されます

Norimono

 立て続けですが、こちらは単著です。以前ワイヤードビジョンに掲載した連載「松浦晋也のモビリティビジョン」(連載時の記事はリンク先で読めます)を下敷きにして大幅改稿した、「人間にとって、社会にとって、移動とは何か?よりよいモビリティとは?」を考察する一冊です。元々は、乗り物について気楽に書いていくという趣旨だったのですが、だんだんモビリティと社会、モビリティと法律、地震や津波のような大規模災害とモビリティ——とテーマが拡がり、本書の最後では都市の空間デザインや、社会全体のエネルギー消費とモビリティというところにまで踏み込むことになってしまいました。

内容紹介
リカンベント、ベロモビール、電動一輪車、HSST、ツボグルマ……科学ジャーナリストとして活躍する著者が送る、乗って、見て、考える 体験的のりもの考 !

【目次】


  • 序章
  • 第1章 自転車進化論
    自転車の有用性を再考する/ハードウェアとしての自転車/「乗る」と「持ち運ぶ」の狭間で/自転車と社会制度/人力が持つ大きなモビリティの可能性
  • 第2章 アリストテレス号からニュートン号へ
    Human Powered Vehicleの可能性/来るべき「自転車2.0」/「自転車2.0」を可能にする社会
  • インターリュード 目的に対する最適デザインとユーザーの慣れについて
  • 第3章 自動車を巡る基本的な構図
    自動車と道路は不可分、ではそのコストを払うのは誰?/大きくなる自転車/「ツボグルマ」の理想と現実/自動車を小さくするために/電気自動車の将来性と、その社会的費用
  • 第4章 新たな利便は創出されたか
    たそがれ未来のモノレール/いいモノレール、悪いモノレール/間違いの根本にある顧客不在/便利な公共交通機関を手に入れるために
  • 第5章 住みたくなる街のモビリティ
    甦る路面電車/悩ましきコミュニティバス/よりよく動く、よりよく住む、よりよく生きる/「幻想吉祥寺」の都市計画/ミニマムエネルギー、マキシマムモビリティ
    あとがき

 本書の中で提案している「自転車2.0」「自転車3.0」という新しい移動手段の概念については、同時期の別連載「人と技術と情報の界面を探る」(PC Online)でも考察しています(連載時の原稿は無料登録をすれば読めます)。
 このPC Onlineの連載も、大幅改稿の上で電子ブック「格安自転車を使うことで失われる3つの感覚〜自転車2.0への提言 」に収録してあります。併せて読んで頂ければと思います。

 連載時には“次の自転車”として、ティム・オライリーを真似て「自転車2.0」という言葉を使ったのですが、今回本書を執筆中に「さらにその先があり得る」と気がついて、新たに「自転車3.0」という言葉を使った次第です。
 このあたりは、自分が各種自転車やリカンベントに乗っていなかったら気がつくことはなかったでしょう。「実際に乗ってみる」ことはとても重要です。

 ともあれローラースケートやスケートボードから、自転車に電動アシスト自転車、「自転車2.0」に「自転車3.0」、自動車、鉄道、モノレール、新交通システム、路面電車などなど、「移動する道具」とその未来について横断的に色々考えてみたよ、という本です。

 読んで頂ければ幸いです。

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2010.07.06

M-Vロケットの振動

 M-Vというロケットには色々な誤解がまとわりついている。その一部には私が本に書いたことが拡散してしまったものもある。きちんと訂正していかなくてはと思う次第だ。

 それらの誤解の一つに、「M-Vは振動が大きくて、衛星にとって“乗り心地”が悪いロケットだ」というものがある。

 実は私も、「恐るべき旅路」でそのようなことを書いてしまっている。
「しかし、PLANET-B程度の程度の探査機を火星に送れるか送れないかぎりぎりの打ち上げ能力、そして繊細な探査機に影響を与えかねない打ち上げ時の大きな加速と振動と音響がM-Vの実際だった。」(「恐るべき旅路」朝日ソノラマ版p.190より)。

 あながちそうでもないよ、ということを教えてくれたのはISAS関係者ではなく、角田の研究者の方だった。

「松浦さん、H-IIAにもSRB-Aが2本ついているよね。それぞれM-Vの第1段と同じぐらいの大きさがある。これが振動を発生しないと思う?M-Vと同じようなものだよ」
「しかし、M-Vの第1段のほうが高速燃焼をするから、振動も大きいのでは?」
「それは絶対的な差ではないよ。M-VとH-IIAの振動環境の差は、ランチャーにあるんだよ」

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 この写真がM-Vのランチャーの根元だ。通常ロケットの発射台の下は、煙道という噴射煙が抜けるトンネルが掘ってあるが、このランチャーにはない。その代わりフレームデフレクターと呼ばれる、噴射の炎を受け止める斜面が作ってある。

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 こちらは、わかりづらいと思うが、種子島宇宙センターのH-IIA用吉信射点の下にある煙道を、上からのぞき込んだところ。LE-7Aエンジンと固体ロケットブースターSRB-Aの噴射ガスは斜面を下って海側に抜けていく。

 煙道の役割は、単に噴射ガスを逃がすというだけではない。エンジン始動時には一気にガスが噴射するので衝撃波が発生する。煙道は、衝撃波が反射でロケット側に戻るのを防いでいる。ガスが抜ける側に大きく広い空間が確保されていれば、衝撃波は反射せずに拡散していく。

 ところで、M-Vのランチャーには煙道がない。ということは第1段点火時の衝撃波はもろにフレームデフレクターで反射し、ロケット側に戻っていって搭載した衛星を思いきり揺さぶることになる。打ち上げの間に衛星が受けるショックの中で、この衝撃波が一番強烈なので、衛星はこれに耐えるように設計製作しなくてはならない。

 「M-Vの強烈な振動」とは、第1段点火時に反射で戻ってくる衝撃波だったのである。つまり、ロケットの問題ではなく、発射設備の問題だったのだ。M-V開発時には、M-3SIIのランチャーとM-Vランチャーを並べ2機種を並行運用することも検討されたが、ランチャー設備をゼロから揃える予算がないという理由から、M-3SIIを退役させてランチャーをM-V用に改修することとなった。当然、煙道を掘って、衝撃波の反射を防ぐだけの予算も確保できなかったとのことである。

 気は心の対策として、M-Vのフレームデフレクターはいくぶんえぐってある。M-3SIIロケットまでは、このえぐりすらなかった。

 この件に関して、とあるISAS衛星の開発に携わった技術者から聞いた話。
「あの反射波に耐える設計のために、どれだけ衛星開発に苦労したことか。衛星にかける追加の試験費用を考えると、実は煙道を掘り抜いたほうがトータルでは安く付いたのではないですか」

 ちなみに、ロケット発射時の衝撃波の研究が一番進んでいるのは、ご多分に漏れずロシアなのだそうだ。ロシアの発射設備をどれもかなり大きく余裕を取った煙道を持っているとのこと。


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