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2004.04.14

三重に行き、「のぞみ」打ち上げの取材をする

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4月13日 曇りのち晴れて夕方からまた曇り。

 朝の8時から出かける。小田原経由で新幹線で名古屋へ。さらに在来線に乗って約2時間、午後1時過ぎに三重県は二見浦に着くと、駅には林紀幸さんが迎えにきていた。お元気そうでなにより。自動車で林さんの自宅へ。

 林さんは、「日本で一番たくさんロケットを打ち上げた男」だ。笹本祐一さんが「宇宙のパスポート2」(bk1amazon)で「ロケットの神様」として紹介しているからご存じの人もいるかもしれない。スプートニク1号が打ち上げられた翌年の1958年に18歳で技官として東京大学糸川研究室に就職。以来、定年になるまでの42年間に打ち上げたロケットの数は430機という、現場たたき上げの人である。現在は故郷の三重県は二見浦で、歴史的建造物(明治初期に皇族を迎えるために建てられた)の「賓日館」で事務局長をしておられる。

 今回は、1998年7月4日に打ち上げられた火星探査機「のぞみ」の打ち上げ準備作業が具体的にどのようにして進められたかを聞くためにおうかがいした。林さんのお宅で資料をひっくり返しつつ、話を聞く。

 多くの人々にとってロケットというのは、テレビで見る打ち上げ前後のせいぜい30秒程度のものでしかない。しかし実際には、ロケットは工場で作られ、発射基地に運ばれ、組み立てられ、そして最後に発射されるものなのである。その過程では色々なことが起こる。小さなミスであっても重なれば重大な事故につながる。一つ一つ問題をつぶして、しかも期限内に仕事を完成させなくてはならない。

 私は機械関係の記者として働く過程で、「現場ほどおもしろいものはない」ということを学んだ。ロケット打ち上げ第一線に42年という林さんの話がおもしろくないはずがない。

 その林さんが言う。
「H-IIAの事故調査ね、あんなふうに集まって資料を見ながら会議をしたって本当のことはきっとわからないよ」
「現場に出ないとわからないと」
「そう。ノズルが事故原因だということになっているけれど、たとえば現場でノズルを誰かがうっかりけっとばしちゃっていて、そのことを黙っていたとしたら、これは書類ではわからない。現場に行って現場の人と話をしないとね」

 重い発言である。

 賓日館は、現在観光客を受け入れて一般公開されている。林さんの車で賓日館へ。本日は休館なのだが、事務局長権限で見学させてもらう。一見地味な建物でありながら、天井や欄間など細かいところが異様なまでに凝った作り。日本の職人仕事の精華だ。鳥羽に出て、ホテルの喫茶店でまた話し込む。

 帰りは鳥羽駅からまた名古屋へ。どうせなら小田原に止まる「ひかり」に乗りたいなあと思いつつ、ちょうどやってきた「こだま」でだらだらと小田原まで2時間かけて帰る。

 写真は私(左)と林さん(右)。

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