5月2日
渋滞を避けるために、午前6時半に、AX-1に乗って自宅を出る。湘南大橋を渡って国道129号、厚木インターから東名高速に乗って一路静岡へ。渋滞覚悟だったがするすると進む。これなら大丈夫と富士川SAで1時間ほど昼寝。午前10時半に静岡インター出口で、はたぼうさんと合流。
はたぼうさんは大学の後輩だ。日頃は「松浦先輩!」「なんだ、はたぼう(もちろん実名で呼んでいるわけだ)」という間柄なので、以下はたぼうと書かせていただく。
私は大学で模型クラブというところに所属していた。プラモデルマニアの集まりででろでろとプラモデルを作っていたわけだ。そこに入ってきたのがはたぼうだった。彼は1年ほどで辞めてしまったのだが、その後も我々の交友は続いた。共に放浪癖があり、妙にウマがあったのである。
私はバイクで休みのたびに日本のあちこちをうろうろしていたが、彼は私以上に活動的だった。自転車で日本を走り回り、台湾を走り、銀輪部隊よろしくマレー半島を走り、オーストラリアを走り回った。
私は成績が悪く、就職の時に「出版社に行きたい」といったら就職担当の先生から「お前のためにしてやれることはない。一刻も早く会社回りをしろ」と言われたが、彼は成績が良く、学校推薦で自動車会社にエンジニアとして就職した。現在は名古屋方面で働いている。
その後、はたぼうはバイクに乗り始めた。そして、年に数回、お互いの中間地点の静岡あたりで落ち合って一緒にツーリングをしているのである。
今回の目的地は、安倍川の源流に近い山梨との県境に近い梅ヶ島温泉。昼前についたが、最初に入湯を予定していた「黄金の湯」という浴場は観光客で一杯。入るのを諦めて梅ヶ島温泉街へと向かう。
まずは昼食。いかにも観光地な食堂で山菜蕎麦を注文する。手際悪くもたもたと注文を取っているので、「これは駅蕎麦みたいなのがでてくるかもな」と話していると、意外に本物の蕎麦でおいしかった。一緒に注文したイワナの塩焼きも新鮮で美味。
その食堂に湯治場が付属していた。定員7名と張り紙がしてあったので混んでいるかと聞くと「今おひとりさんだけですよ」。これはいいかも知れないと、ここで温泉に浸かる。小さいけれども露天風呂もある清潔な浴場。当たりだったかも知れないと喜んでいると、後から入ってきた親子連れが「『黄金の湯』よりきれいだねー」と話している。単純硫黄泉の透明な湯に心ゆくまで浸かる。
出てから周囲を見回して、湯を送るパイプ配管を発見。ここの湯がきれいだった理由が分かった。源泉に一番近いのである。店の人に聞くと「ここから下の温泉街にパイプで湯を持って行っているんですが末端では湯温が下がるので追いだきをすることもある」とのこと。
そのままのんびりと休んでから、静岡に戻ってホテルにチェックイン。フロントで「桜エビを食いたい」というと、「えび金」という店を紹介される。予約電話まで入れてもらっていざ店へ。
場所はちょっと目立たない雑居ビルの2階。我々が着いた時は店は空っぽだったが程なく満席になる。桜エビは駿河湾の味覚。さあ、桜エビを食い尽くすのだ。まずは生と唐揚げと釜揚げ。
うまい!生エビはほんのり甘く。唐揚げは香ばしく、釜揚げは肉の歯ごたえが良い。桜エビこそ天が与えた駿河湾の自然の恵み。もう止まりません。各種桜エビ料理を次々に注文して焼酎を飲みまくる。
話題ははたぼうの職業柄、自動車のことが多くなる。
前から気になっていたことを聞く。昨今大流行の3列シート7人乗りの最後部座席は安全なのか。
さすがに、はたぼうは言葉を選びつつ慎重に答える。
「前輪と後輪の軸の間は丈夫に作ってあるんで大丈夫です。でも、そこからはみ出してオーバーハングに座席を作るとなると安全性の確保のためにオーバーハング部を大きく補強することになります」
つまり着座ポイントがオーバーハング部に入る3列シートは2列シートと比べて難しいんだろう。
「確か、3列目でシートベルトを締めていなかった子供が衝突で放り出されて死んだという事故があったな」
「シートベルトは後ろの席であっても締めるべきです」
「でも、実際には後部座席に行くほど安全意識がいい加減になる」
「こわいところですよね」
「なあ、そこまでして3列にしたって、走っているクルマに乗っている乗員の平均は確か1.5だか6人だったよな。3列の設計にしても、その3列が生きる局面はごく少ないわけだ。ならば2列の設計のほうが使われ方を考慮すれば合理的なのでは。3列シートにすれば車体も大きくなるから取り回しは難しくなるし、重くなって燃費にも影響するだろ」
「でもね、市場は3列7人乗りを欲しがっているんですよ」
「売れ方からしてそうなんだろうな。いったい普通の日本人は何を考えているんだろう」
私の本職のほうで聞き捨てならない話を聞く。
「最近の新入社員は、クルマにカーナビが着いていないと混乱しちゃうんですよ。『カーナビもないのに目的地にどういったらいいか分からない』って」
これは恐ろしい。カーナビはアメリカの国防総省が開発・運用しているGPSという衛星システムを利用している。GPSは本来軍用に開発されたものだ。一応、日米間では1998年に「小渕・クリントン合意」というのがあって、今後の継続利用が確認されているのだけれども、アメリカが大統領選挙の度にがらっと方針を変えることはご存じの通り。
アメリカが「おまえんとこにGPS使わせてやらない」と言ったら、それだけで昨今の若者は道に迷ってしまうのである。これは「自立した国家」だの「普通の国家」といった議論以前の問題だ。測位衛星に関する国家的戦略の不在は、以前からあれこれ指摘していたが、事態はここまで進行していたとは。
そんなこんな会話をしつつ看板まで居座って、桜エビを食いまくる。最後は桜エビのかき揚げ茶付けで締め、ホテルに戻って沈没。
写真は、はたぼう氏のZZR-250(手前)と私のAX-1(奥)。梅ヶ島温泉にて。
注記:少々書きすぎた点もあり、公開後修正しました。ネットは難しいです。