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2004.05.01

宇宙旅行協会の設立総会に出席する

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4月24日

 昨日の取材で体力の余裕がまたなくなってしまった。じり貧状態で部屋を片づける。とりあえずほぼ三週間ぶりに部屋に掃除機をかけることができた。

 「その程度がどうしたというのか。男おいどんは、押入のパンツにキノコが生えておったぞ」と言われそうだが、この茅ヶ崎に仮寓する毒男一匹、清潔にしていないと仕事の効率があがらないのである。

 といいつつも、部屋の片づけもそこそこに東京へ。外苑前の機械振興会館で開かれた宇宙旅行協会の設立総会に参加する(スペースレフの記事)。この組織は年若い技術者の五月女剛さんが設立したもの。五月女さんは、東工大卒業後川崎重工勤務を経て現在はアメリカで働いている。そこで宇宙観光旅行を目指す運動に触れて日本でも同様の運動を起こそうとして、今回NPOを設立したのである。

 スペースシャトルの運航が停止し、国際宇宙ステーションの維持がソユーズロケットとソユーズ宇宙船に依存している状態で、「宇宙旅行」とはこれいかに、と思う人も多いかもしれない(何も感じない人はもっと多いかもしれない。悲しい現実だ)。しかし「宇宙観光旅行」は宇宙輸送システムに対する現実的な需要として期待されている。

 誰だって宇宙に行ってみたいでしょ。ならば後は値段次第だ。行きたいのなら行動しようというわけである。

 アメリカのスペースツーリズムソサエティの代表のジョン・スペンサー氏の講演から始まり、以下1990年代にロケット協会が中心になって検討された観光用有人宇宙船「観光丸」構想の中心だった磯崎弘毅氏、JAXAで再利用型実験機の研究をしている稲谷芳文先生、そして経済学の観点から宇宙観光のための技術開発をと説いてきたパトリック・コリンズ氏と講演が続く。

 コリンズさんの講演が過激、「私は日本人じゃないからはっきり言います」と流ちょうな日本語で、「日本が有人開発をやるなんてまだまだ」という井口雅一宇宙開発委員会委員長の発言を名指しで批判、今年の6月に宮崎で開催されるISTSという学会で宇宙観光旅行のセッションを削った戸田勧実行委員長(現JAXA理事)をこれまた名指しで批判。

 「今まで全世界で宇宙開発に100兆円ものお金が使われました。日本もこれまでに4兆円を投資しています。でも、今一番便利に使えるロケットは1950年代に一番最初に開発されたソユーズロケットで、現役で運用している有人宇宙船は30年以上前に開発されたソユーズ宇宙船。これの意味するところは、日本も含めた世界各国の宇宙機関は過去何十年も莫大なお金を使うだけで何もしてこなかったということです」

 うわ、そこまで言うか、という発言だが、こと宇宙輸送システムに関する限りは全く同感だ。2001年のデニス・チトー氏が行った世界初の宇宙観光旅行で使われたのはソユーズロケットとソユーズ宇宙船だった。宇宙商業化時代を開くとして華々しく登場したはずのスペースシャトルではなかった。

 これから出現するロケットは、どれもソユーズより安くてソユーズより安全でなければいけないはずなのだ。JAXAの次期基幹ロケットはそうできるだろうか。できないなら、それこそそんなロケットは作るだけ無駄だとすら言える。

 終了後の懇親パーティのあいさつをしたのは冨田信之・武蔵工業大学教授だった。以前私の書いた「H-IIロケット上昇」に「メモ魔」として登場いただいた方だ。なんと五月女さんは、冨田先生が東工大で教えていた時の教え子だとのこと。

 パーティでは色々な方に声を掛けられ、名刺を交換する。若い人たちと話をするのは楽しい。

 パーティ終了後、先だって宇宙作家クラブで講義をしてもらった矢野夫妻と、飲み屋へ。豆腐料理と芋焼酎で「この宇宙開発の閉塞状況をどうするか」というような話題で話し続ける。矢野さんも私も鹿児島通いで覚えた芋焼酎のお湯割りをがばがばと呑み、話題はあちこちにゆらゆら。「都立西高のおそるべき宇宙人脈」とか。

 写真は懇親パーティでの冨田先生(中央)と五月女氏(左)

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Comments

おお。日記、復活ですね。お待ちしておりました。もっとも私の方のニュース日記も更新滞りがちですが;
秋田に来て生活に何の不満もないのですが、唯一残念なのは都内で行われている様々な催しに参加出来ないこと。特にその後のささやかな?飲み会に参加出来ないのは、とっても残念です。いつも松浦さんの日記を拝見しながらうらやましがっています。歴史は夜作られると言うのに。しかたないので秋田で仲間を増やそうかと画策中ですが。。。お国柄?かなかなか難しいです;

 秋田はかつて公費使って飲み放題天国でして、ばれて県庁が宴会を自粛したら飲屋街がさびれたという笑えない前歴を持っていますね。

 情報は確かにきびしいでしょうね。インターネットで大分楽にはなりましたが、まだまだ人に会うことによって得られる情報は多いです。

 ところで秋田にいるのですから、地元のおいしいきのこを使ってカレーを作ってみませんか。

キノコカレーはあの後2度作っています。特に変なキノコは入れていませんが、秋田産の椎茸なんか、味が良く出ておいしいですね。あと、最近は山菜取りのシーズンです。この春から入った研究室の大ボスは釣りと山菜取りが大好きで、最近は毎週土曜日午後は山菜取りです;コゴミやタラの芽など、天ぷらにして食べたり、しとげをおひたしにして食べたりしています。かなり美味です。等と書くと、秋田でのうのうとたらふく食って満足してるなと言われそうでいかんですが(^_^;<でも最近また太った気がする;

男鹿半島の付け根にある寒風山は、秋田市や男鹿・八郎潟の埋め立て地が一望出来る、非常に気持ちの良いちょっとした小山です。ここでパラグライダーが気持ちよさげに舞っているのですが、この機会にパラグライダーの技術を習得してしまおうと思っているのは内緒です<ますますさぼっていると思われてしまいます;

>>田でのうのうとたらふく食って満足してるなと言われそう
 おいしいものが食べられるというのは大切なことですよ。「良い食事をせずして良い研究ができるはずがないではないか」と返せば良いのです。もちろんパラグライダーについても「人生に楽しみなかりせば人類の進歩もなし」と言えばいいということで。

>>寒風山
 低い単独峰でしょうか。風が弱い時には全方向に飛び立てそうですね。風が強いと乱気流が発生しますから注意です。富士に落ちたBOAC機になっちゃう(古い!)。

なるほど。その通りですね。しかしパーマネントの職が見つかるまでは、多少やつれてみせて、先生方に”おお、こいつに職をやらねば死にそうだな”とプレッシャーをかけてみるのも一つの手かと。


そんな話はさておき、本日新しく配属された研究室の用事で能代にある、秋田県立大の木材高度利用研究所に行ってきました。実はここ、JAXAの多目的試験場の入り口のところすぐにあります。そこでついでに、今度の先生を連れて多目的試験場にもご挨拶に伺いました。そこで場長に聞いてみると、今年も予算が取れたら秋口にRVTの打上を検討している、とのお話でした。次はまた3年後ぐらい?と思っていたので、うれしい誤算でした。今年やってくれたら、また見に行きたいと思います。お時間があれば、また是非皆さんで連れ立っておいでください。その前に予算が通ると良いんですが(^_^;

旧知のお二人のお話に割り込んでしまい、申し訳ありません。
私、秋田県に住んでいる神谷と申します。秋田放送の報道部で
記者をしております。松浦さんの「われらの有人宇宙船」を
拝読し、感想メールを送らせていただこうと松浦さんのページを
拝見しているうちに、「秋田」の文字を見つけました。
秋山さんがお仲間を増やそうとご画策中とのこと。是非是非、
加えていただけたら、と思い、コメントさせていただきました。

こちら、有人宇宙飛行、宇宙開発、大賛成で、自分でも行って
みたい口です。まずは手始めに、宇宙旅行協会の西海岸ツアー
に行ってみようか、なんて思っています。
ネット上であれ、飲み会であれ、宇宙に夢を持って活動なさって
いる方とお近づきになれたら、こんな幸せなことはありません。
どうぞよろしくお願いいたします。

>>今年も予算が取れたら秋口にRVTの打上を検討
 それは素晴らしい。RVTはものになるにせよならないにせよ、もっと頻繁にがしがし運用すべきものだと思います。理屈と実践は物事を動かす両輪です。で、日本の宇宙開発は実践が足りなくなってしまっているのですから。

 ちなみに昭和30年夏に最初に道川で打ち上げられたペンシルロケットは高度600mに到達しました。RVTはまだ45mです。つまり現状のRVTは、ペンシル以前なのです。
 もちろん稲谷先生は、そのことをきちんと理解した上で、一歩でも前に進もうとしているのだと思います。

 問題はユーザーですね。1)RVTならではのミッション、2)観測が国際協力のような形でRVT開発を促進する形のプレッシャーとなるもの——つまりかつてのIGYのようなものがあればいいのですが。

>>神谷さん
 おお、こちらも見つかってしまいましたか。よろしくお願いします。

>神谷様
なんと。感激です。秋田で宇宙関連に御興味を持って頂いている方と御連絡が取れるとは。現在は学会出席のため上京中ですが、13日以降は秋田にいますので、また一度お会い出来ればと思います。こちらで詳細を書くのもなんですので、メールにて御連絡差し上げますね。

>松浦様
RVTに限る訳じゃないのですが、いろいろとプレッシャーをかける圧力団体?かどうかはわかりませんが、これから社会人になろうとしている学生の視点からつっこんだディスカッションが出来るような会合がもてない物かと、本日はYuri's nightの東京会場運営をしてくれた学生の方といろいろと話し合ってきました。秋口頃に何かやりたいと思っています。宇宙関連3000億円の市場を3兆円にするには?といった内容でのディスカッションを考えてるのですが、またアイデアがまとまりましたら御連絡します。是非ご参加頂いて檄を飛ばして頂ければと思っています。

>>ご参加頂いて檄を飛ばして頂ければ
 了解しました。

 檄を飛ばすだけではいけないのですよね。自分も色々とやっていかないと、二二六事件の青年将校をあおるだけあおった北一輝とか真崎甚三郎になってはいかんでしょう。

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