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2004.06.03

宇宙開発委員会を傍聴する

5月13日

 午後から下記の通りの宇宙開発委員会の特別部会を傍聴する。

第5回特別会合を下記の要領で開催いたします。

1. 日時 平成16年5月13日(木) 14:00〜16:00
2. 場所 文部科学省10階2・3会議室


3. 議題案
(1) JAXAにおける検討状況(その4)
(2) 民間における検討状況
(3) 欧州の体制について
(4) 報告書骨子案について
(5) その他

 官庁の会議というのは昨今結構傍聴できるようになっている。で、私は宇宙開発委員会の傍聴になるべく出かけるようにしているのだが、多くの場合、傍聴は拷問に近い。面白い会話には聴き手を巻き込む躍動が感じられるものだが、宇宙開発委員会の議論に躍動を感じることはまれである。

 「国民から税金を集めて官僚が配分する」というシステムの非効率さを実感したければ、一介の市民として霞ヶ関の公開会議に傍聴に入るのが一番である。学生諸君には社会学習に好適だ。

 とはいえ、この日はかなりまともな議論がなされていた。まともな意見が出てくるぐらいで喜んでいてはいけないのだが。

 基本的にはH-IIAの信頼性確率のための体制を話し合ったのだが。井口委員から「もっと根本のところから信頼性を上げる方法はないのか。技法を開発して21世紀の物作りに使えるようにしなければ」という発言がでる。「世間は厳しすぎるというのをいいわけにしてはいけない。むしろこの雰囲気を利用してより安全なシステムを作るぐらいの気でないと」とも。栗木委員「衛星でもロケットでも『使い続けるんだということ』を政府がどこかで言わないといけないだろう」、川崎委員「計画の継続性というのを考えなくてはいけない。準天頂衛星などは最初の3機の後はどうするかなど」。すべてまともな意見である。

 しかし、製造と開発のプライム化ということで何もかも三菱重工に押しつけてしまっていいのだろうか。そのことについて突っ込んだ意見はなかった。

 何よりも「今、アメリカから借りてきている気象衛星はとっくに設計寿命が尽きている。もしも秋の台風シーズンに気象衛星がないという状況になって大被害が出たら一体誰が責任を取るのか」ということは一切出てこない。日本だけではない。気象衛星はアジア地域が使う国際貢献衛星であり、もしも日本が衛星を切らしたことでそれらの国に被害が出たら、それだけで日本の威信は失墜するだろう。

 気象衛星の打ち上げには、日本の国際的な信用がかかっている。可能な限り早く打ち上げなければ、極端な話台風で死者が出る可能性だってあるのだ。

 今回は、山之内秀一郎JAXA理事長が出席していたが、ずっと黙っていた。最後で発言を求められ「提言はしたが実効性がなかったで終わってしまう可能性が高い。『みんなが忘れたらおしまい』ということにしたくない」と言う。明らかにいらだっているのが感じられる。

 簡単なのだ。日経ものつくり誌には書いたのだけれども、もうH-IIA6号機の事故原因も対策もはっきりしている。誰かが「俺が責任取る」といえばいいだけなのである。「俺が責任を取る。打ち上げろ」といえばいいだけなのだ。そして、言葉通りに振る舞えばいいだけの話なのだ。なのに。

 終了後、やはり傍聴に来ていた旧知のA氏と少々会話。彼は現在官庁に出向中。「私は11月の事故以来すべての会合を傍聴していますが、今日はまともでしたよ。前回なんて…」。ああ、とため息。

 その足で、日経WInPC編集部へ。また編集部にこもって原稿原稿。終電近くまで粘って原稿を提出、ゲラを持って帰る。

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