八谷和彦さんに会う
9月7日の「宇宙ステーション利用シンポジウム」には、八谷和彦さんが来てくれて少し立ち話をした。ネットでは知っていたのだけれども会うのは初めて。こうやって会いに来てくれる人がいるのはとてもうれしい。
パソコン雑誌に勤務していた時、八谷さんが手がけた「ポストペット」が発表された。なにしろ私は鈍い方なので「ピンクのクマがメールを運ぶって、それ何が面白いの」という第一印象しか抱けなかったのだが、職場の女性達が「カワイイ!」と喜んでいたのを覚えている。結果はもちろん私の感性の敗北で、「ポストペット」は類似商品まで産み出しつつ一世を風靡し、ネット社会に「バーチャルペットな実用ソフト」というジャンルを定着させた。以来、私は八谷さんの仕事に感心させられ続けている。
その八谷さんがはてなダイアリーでこんなことを書いている。川端裕人さんが「夏のロケット」を書き、触発されたあさりよしとおさんが「なつのロケット」を描き、あさりさんに相談された野田司令が本気で超小型ロケットの性能計算をした――という経緯を見てきた者として、八谷さんのように考える人が出てきたことはなんとも感慨深い。
やりましょうとも。ロケット打ち上げのように楽しいことを国家に独占させておくことはない。
日本の宇宙開発は、基本的に開発路線を可能な限り絞って一本化するという道を歩んできた。現在、糸川英夫が日本ロケットの父とされているが、糸川と相前後して、あるいは糸川に触発されて、東京大学以外の大学でもロケットを開発しようとする動きがあったのだ。しかし文部省は、ロケット研究を東大・宇宙航空研究所(現在のJAXA宇宙科学研究本部)に集約して、他大学の芽を摘んだ。
どうやら、「ロケットのような金食い虫を他の大学でやられたらたまらない」ということだったようだ。ひょっとしたら「言うことを聞かないのは糸川だけでたくさんだ」という官僚支配の面からの理由もあったかもしれない。
競争する土壌を官僚が根こそぎにしたことは、結果として日本の宇宙開発に大きな害悪をもたらしたと思う。物事が発展するには、様々な人が手前勝手な希望を抱いてどんどん参入するというフェーズが必須ではないだろうか。
「オールジャパンで効率的な予算運用を」というのは一見もっともな意見に思えるが、オールジャパンに集約してしまえば競争原理が働かず、結果として構造的な怠慢と腐敗で効率はかえって低下してしまうのである。
少々の無駄を惜しめば大いなる無駄を出すことになるのだ。
八谷さんのようなこれまで宇宙開発とは関係がなかった人が、どんなに小さくてもいいからロケット開発に参入してくれば非常に面白いことになるだろう。
目標はどんなに小さくても、地上から飛び上がり、衛星軌道に到達する、真に「ぼくらのロケット」と呼びうるロケットだ。
先日、茨城で中小企業が集まって小型ロケットを作るという報道もあった。だいたい、ロケットを作れるのが三菱重工と石川島播磨重工だけというのも実は奇妙な話じゃないだろうか。
「ロケットを作るも勝手、失敗して痛い目に遭うのも勝手。弁当と怪我は自分持ち」
もっともっと、希望を持った人々がわらわらと集まって来て欲しいと思う。
そういった動きを国が邪魔しないように、きちんと監視し、意見をいっていかなくてはなあ。
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