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2004.09.24

「なんだかね」という口癖が伝染する

 最近、妹が甥と姪を連れて頻繁に実家に戻ってくる。父の病状が進み、入院してしまったためだ。ついに痛み止めと酸素吸入なしに過ごせなくなってしまった父だが、孫である甥と姪が来るととてもうれしいらしく、相好を崩している。

 で、この夏にめでたく五歳となった甥を観察していて気が付いた。彼は今、おしゃべりしたくてたまらない年頃で、ああでもないこうでもないと話しかけてくる。その出だしが、「あのねあのね、なんだかね」なのである。「あのねあのね」はいい。しかし「なんだかね」とはなにか。

 子細に説明すれば「なんだかね」は「なんだかねっ」というように一気に発音され、その後ろに少しの休息が入る。おおよその感じだが「なんだかね」が0.3秒、休息が0.7秒ぐらいで、合計1秒ほどだろうか。しかし、これから自分が何事かしゃべろうとしているというのに「なんだかね」とはどういう意味だろう。

 どうやら、彼は話し出しの時点では「何を話すか」について確たるイメージを持っておらず、とにかく「話したい」という衝動のみにかられているらしい。だから「あのねあのね、なんだかね(空白)」という定型句で時間を稼いで、その間に何を話すかを頭の中で組み立てているようなのだ。「なんだかよくわからないけれど話したい」、だから「なんだかね」ということだ。

 面白いなあ。

 心理学では、「ある感情が先行して行動を起きるのではなく、行動の結果として感情が生まれる」ということが実験で証明されている。意志や感情があって行動が生まれるのではなく、行動を正当化するように意志や感情が生成されるのだ。もっとも私は、この実験を「感情と行動は相互作用を起こして生成される」と解釈している。

 どうも甥を観察していると、感情に先行する行動のさらに以前に、「衝動」というべきものがあるのを感じる。そして衝動は、単なる本能ではなく、かなり高度に組織化されたもののように思えるのだ。集合無意識とか魂とか、トンデモな説明に頼るのは容易だが、そうではない説明はできるだろうか。

 そんな甥の相手をしているうちに、自分にも「なんだかね」という言葉が伝染してしまった。私が「なんだかね」という言葉を発声したら、「ああ、甥に伝染した奴だな」と思って欲しい。なんだかなあ(これはちょっと用法が違います)。


 その甥だが、母親の眉毛の形を整える道具で、片方の眉毛を自分で落としてしまった。現在は珍妙な顔をしている。横で見ているうちにどうしても自分でやってみたくなったらしい。

 「空手バカ一代だな」と言ったら、きょとんとしていた。そりゃそうだ。

 甥と姪の預けられている保育園では、甥の眉毛が元に戻るのと、現在8ヶ月の姪が立ち上がって歩き出すのとどちらが早いか、などと言われているとか。

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Comments

「空手バカ一代」、話についていけた一人です。
(So What っすけど。。。:-)
山篭り、ですね?
----
八谷さんの、「さんくす・ている」
装着が藤四郎一人で工作なしにできるなら
買いたいです。:-)

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