四十九日を行い、矢野さんと対談する
11月3日は、少々早いが父の四十九日法要。お寺から坊さんに来て貰い、自宅にて母と我ら兄弟のみの質素な法要を執り行った。およそ虚飾を呼びうるものすべてにあかんべえを食らわすタイプだった父には、これ以外のやりかたを思いつかない。
面白いもので、このような伝統的プロセスを踏むことで、確かに父が自分の側に帰ってきたということを実感する。正確には遺伝子を受け継ぐ自分の裡に、父と共通の部分を再発見するということなのだろうが、悪い気分ではない。
キリストの復活を、「人々の心の中に、キリストの人となりが強く蘇ること」と解説したのは遠藤周作だったが、凡人たる父と、凡人たる私の間でもミニ復活があったとも言えるのかも知れない。
義弟の自動車で、駅まで坊さんを迎え、送る。道すがら話すことは
「晴れてるなあ」
「晴れてますねえ」
「あー、バイクで箱根行きてえ」
「ボクだってクルマで箱根でも走りたいですよ」
「たまらんなあ」
「ですねえ」
ああっ、快晴!
夜は横浜に出て、天文ガイド新年号のためにJAXA/ISASの矢野創さんと対談の収録。矢野さんは「『はやぶさ』の運用当番とシンポジウムを生き延びまして」といって現れる、。「はやぶさ」の運用は、それこそサバイバルというしかない過酷なものなのだそうだ。
天ガのカメラマンである大田原さんに、矢野さんと並んだ写真を撮られる。矢野さんは、「世界で一番まつげの長い惑星科学研究者」の称号を持つ美男子なので、並ぶと私は明らかに煤ける。が、それもまたよし。終了後、天文ガイドの秋元編集長も交えて会食し、飲む。
帰途、桜木町へと歩く途中で矢野さんが言う。
「ランドマークタワーの高さが300mぐらいあるんですが、『はやぶさ』の向かう小惑星イトカワの短径がちょうど300mぐらいなんです」
矢野さんが、夜空に屹立する横浜ランドマークタワーを指さす。
「あの高さが短径で、長径が600mほど。つまり、横にランドマークタワー2つぶんぐらいの大きさがあるんですよ」そして「大体の大きさが思い浮かぶでしょ」。
見える。確かに見える。ランドマークタワーの背後に、タワーと同じほどの大きさで横にその2倍の大きさがある岩塊が浮かんでいるのをありありと思い浮かべることができるじゃないか。
そこに、あの大きさの小惑星探査機「はやぶさ」がとりつくとなると…うわあ、ぞくぞくする。
「惑星も衛星も、その大きさを実感するには大きすぎるけれど、イトカワは僕らの生活実感で想像できるぐらいの大きさなんです。そんな世界に探査機が向かうのは『はやぶさ』が初めてなんですよ」
適切な比喩は人間のイマジネーションを大きく飛躍させることができる。確かに私の酔眼にも見えた。ランドマークタワーの背後に浮かぶ岩塊に、小惑星探査機「はやぶさ」が接近していくのが。
背筋を走る戦慄とも予感とも付かないぞくぞくは、子供の頃に見た森永チョコべーのCMの衝撃と似ていた(同年代しか分かりませんね)。
すっかりいい気分で帰宅すると、ブッシュ再選のニュースが待っていた。
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