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2005.05.28

NHK技研の公開に行く

digitalmobile

 世田谷の砧にあるNHK放送技術研究所の一般公開に行く。ここ数年、タイミングが合わず行けなかったが、今後の放送技術の動向を知るためには是非とも押さえておきたい研究所だ。1992年の公開で、ISDNならぬISDBという名称で公開されたデジタル放送は、非常に衝撃的だった。それまでNHKは帯域圧縮にMUSEを使ったアナログ伝送のハイビジョンを推進していたが、ISDBの公開あたりから徐々にデジタルへと軸足を移していったのである。
 NHKが技術や企画で何かをやる場合には、必ずここの一般公開に前兆が出てくる。

 以前、5年ほど前に来た時よりもずっと活気がある。新しくなった建物の3フロアを使った展示は、非常に見やすく、説明も丁寧になっていた。若い研究者が以前よりも目立つ。ここ数年、積極的に若手を採用してきたのだろうか。
 かつてのISDBのような、「これで世界は一変するぞ」と思わせるような大ネタはなかった。が、それでも目を奪うに十分な展示が並んでいた。
 今年の目玉は、既存のデジタルHDTVを遙かに超えた7680×4320ドット、秒60フレームの「スーパーハイビジョン」と、2006年春からサービスが始まる携帯端末向け地上デジタル放送ということになるだろうか。

 「スーパーハイビジョン」は、4分のデモンストレーション映像を見た。既存の1080iの映像を「確かにNTSCよりはきれいだが、圧倒的な差は感じない」と評価している私だが、これはすごい。大相撲の映像が流れたが、比喩もお世辞も抜きで本当にそこに力士がいるかのような臨場感だ。ここまでやれば、視覚は完全にだますことができるということか。
 質問したところ、ビットレートは非圧縮で20Gbps、4分のデモ映像ファイルは1テラバイトとのこと。ただしハードディスクの帯域が足りないので、現在のシステムでは50台ものハードディスクを並列動作させているそうだ。
 家庭への伝送は、21GHz帯を使った衛星放送を考えているとのこと。実用化時期はと聞くと「20年とか30年は先でしょう」だそうだ。

 携帯端末向け地上デジタル放送は、AVC/H.264というコーデックで128bpsのデジタル放送を行い、携帯電話などの端末にデジタルテレビ放送を送り込むというもの。試作品をずらっと並べて来場者がさわれるようになっていた。 
 128bpsの画像は予想以上にきれいだが、驚くというほどではない。むしろデータ放送で、様々な文字情報も端末に送り込めるというところが重要ではないかという気がする。正直、これを使って屋外でスポーツ番組やらドラマやらを見る気にはならないが、間違いなく災害時の情報伝達に役立つだろう。

 その他では、音声合成の進歩が印象的だった。イントネーションも発音ももはや人間の生の声との区別がつかない。来年秋頃に気象通報と株式市況を合成音声化するという。

 やはり研究所公開には足を運ばねばいけないな、と思いつつ帰宅。

 写真は、地上デジタル放送を受信中の携帯電話。

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Comments

私も土曜日に技研の公開に足を運んでいたのですが、スーパーハイビジョンは音の方に圧倒されました。あの臨場感のいくたりかは、22.2chのサウンドによってもたらされているはずです。

個人的には、技研の公開技術が年々減っていると感じています。以前は海のものとも山のものともつかない技術が結構あって、3~5年くらいの間に進展したりぽしゃったりというのがあったのですが、ここ数年は順調な技術が多くて、デモンストレーションに重きがおかれすぎなのではないかと思ったりします。

私は万博で見ました。
行列に並んでいるときにカメラで撮影されて、あとで上映のときに行列に並んでいる自分を見ることになります。(なかなか笑えます)
13mのスクリーンでのスーパーハイビジョン、22.2chサラウンド、最高にすごかった。
正直、あまり期待していなかったのですが、これほどまでとは思いませんでした。
まだまだ先の技術でしょうが、最新映像技術に生で触れた感動は確かに残りました。

 確かにスーパーハイビジョンは音もすごかったですね。でも、私としてはまだ音の方はまだシステムレベルで詰めることができるのじゃないかと感じました。

>技研の公開技術が年々減っている
 私はあまりそういう印象は受けなかったのですが、実際はどうなんでしょう。以前の「海のものとも山のものともつかない」という印象は、古い高校のような以前の建物と雑然とした研究室によってもたらされていたのではないかと。
 実際には年次ごとの展示項目を比較しないとはっきりしたことは言えませんけれども。

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