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2005.05.25

前輪駆動・後輪ステアリングのリカンベントを夢見る

 私がリカンベントをいじくっているのは、いずれ自分で設計したリカンベントを乗り回してみたいと思っているからだ。時間ができると、よく「どのような形状がHPVとして最適なのか」と考える。HPVはHuman Powerd Vehicleの略。字義通りだと人力乗り物すべてが含まれるが、ほとんどの場合は飛行機などは除外して、地上を走る乗り物を意味する。

 つらつらと考える。
 リカンベントは仰向きに足を投げ出して乗る。だから後輪を駆動する為は長いチェーンかシャフトかの駆動系が必要となる。駆動系を短くするためには前輪駆動にすれば良い。

 前輪駆動にするとステアリングが面倒になる。大抵の場合はチェーンをひねるようにしてステアリングをするようになっている。例えばToxyZRのように。しかしこれではハンドルの切れ角が小さくなり、小回りがきかなくなる。
 中には等速ジョイントをかませて、ステアリングによるタイヤとチェーンの干渉を防いだモデルもある。が、できれば複雑な機構は避けたい。

 そこで後輪をステアリングすることにする。リカンベントでは前輪は足に近いし、腕をだらりと下げるならば後輪は手に近い。後輪をステアリングするほうが自然だ。

 おお、俺って天才か。自転車に代わる未来のHPVのコンセプトを思いついてしまったじゃないか!

…というのは嘘で、こんな簡単なことは誰でも思いついており、きっとなにかしら問題があるので実用化されていないに違いない。
 そう考えて調べてみたら、やっぱりなあ。ありましたがな、そのものずばりのページが。

Rear Wheel Steered Bike (RWSB) page
2. The idea of rear wheel steering

 さらには
This a description of how to build a Rear Wheel Steering Front Wheel Drive Trikeなどなど。

 かなりの人たちが私と同じことを考えて、あまつさえ実際の試作までやっていたのだった。そりゃそうだな。

 これらのページを読んでいくと、どうやら後輪ステアリングが問題含みであることが分かってくる。まず後ろ二輪の三輪車(トライクという)ならばある程度使えるものができるらしい。しかし、後ろも一輪の自転車タイプで後輪ステアリングを実現しようとすると、とたんに難しくなる。

 自転車は傾くと、傾いた方向にステアリングを切って姿勢を立て直す。つまり車体が傾いた時に、傾いた方向に進むようにステアリングが切れるようなモーメントがステアリング軸回りに発生する必要がある。これが後輪駆動だと難しいらしいのだ。操作面でも傾いた時に直感とは逆にステアリングを操作する必要があるのだという。

 このあたり、きちんと自転車の安定性は数学的に定式化されていると思うのだけれども、今のところそのような資料は見つかっていない。自転車工業会に問い合わせてみようか、amazon.comで参考書を探してみようかと色々考えている。どなたか二輪車の安定性の理論解析についてご存じの方は、資料をご教示下さい。ジオメトリを工夫すれば必ずしも不可能ではないような気がするのだが、実際はどうなんだろう。

 しかし、向こうの人たちはアクティブだ。理論がどうこうよりもまずは作ってしまって、それから「うまく走らないのはなぜか」と考えている様子が、上記ページの写真からうかがえる。それを思慮が足りないと決めつけるのは容易だが、手がよく動いているという意味では尊敬に値すると、私は思う。

 手を動かして楽しんだ者の勝ちというものだな。

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