巨大台風で、アメリカ京都議定書へ復帰、と妄想する
アメリカ南部を襲ったハリケーン「カトリーナ」はニューオリンズなどに甚大な被害を与えた。
- 米ハリケーン:死者は数百人規模 孤立し救出待つ住民も(毎日新聞)
- 米ハリケーン「まるで津波」 厳戒態勢、商店で略奪も(アサヒ・コム)
- ハリケーン被害で保険金3兆円?米経済に悪影響も(読売新聞)
などなど。
特に最後の読売新聞の記事に注目して欲しい。アメリカ経済に大きなダメージが発生している。
このハリケーンで、ほんの少し、まったくもってほんの少しだけれども、期待していることがある。アメリカが温室効果ガス削減の京都議定書に復帰はしないまでも、復帰しようとする機運が出てくるのではないか、と。
ご存じの通り、1997年12月、地球温暖化防止京都会議で温室効果ガス排出削減の枠組みを定めた京都議定書が採択された。これに対してアメリカは2001年3月、国内経済活動に悪影響を与えるという理由で京都議定書から離脱した。
現在人類は、年間240億トンの二酸化炭素を空気中へ放出している。アメリカは、そのうち57億トン(24%)を発生している。これはもちろん世界一だ。
二酸化炭素は、大気の窓を遮る形で地球に入射する太陽エネルギーが宇宙空間へ放射するのを妨げる。これは事実。そして、前世紀半ばに観測が始まって以来、連続的に大気中の二酸化炭素の濃度が上昇し続けている。これも事実。一方地球全体の平均温度も、観測が始まってから上昇し続けている。これまた事実だ。
では、温室効果ガスが、地球平均温度の上昇の原因なのか。色々な議論がある。が、少なくとも世界各国が顔を付き合わせて二酸化炭素ガス排出削減を議論しなければならない程度には、その因果関係は見えてきている。
(ここまで数値などの出典は、「<新>地球温暖化とその影響(内嶋善兵衛著 裳華房)」)
そして問題、地球温暖化によって巨大台風の数は増えるのか。
最近の一部の研究では、温帯域の降雨が増えるという結果が出ている。
国立環境研究所の江守正多室長の研究によると降水量は日本を含む中・高緯度地域と熱帯の一部で増え、亜熱帯で減る一方、大気中の水蒸気が増えることで豪雨は広い地域で激しさを増すことが分かった。降水量に比べて豪雨強度の変化が特に大きい北米の中、南部や中国南部、地中海周辺などは、一時期に雨が集中するため、水害とともに渇水の危険も高まる。
これをもって、すぐに「地球温暖化によって大型台風が増える」とはいえない。
が。もしそうだとしたら。
いや、因果関係をきちんと立証するより前に、アメリカ国内で「巨大台風襲来は、地球温暖化のせいではないか」とする世論が盛り上がったらどうなるか。
アメリカが京都議定書を離脱した理由は、「経済活動に悪影響を与える」だった。巨大台風が来ればそれどころではない悪影響が経済活動に及ぶとすれば、アメリカが京都議定書に復帰する合理的理由が生まれることになる。
それが事実であるというよりも、そうアメリカが考える、ということが重要だ。
温室効果ガス削減について、私は「地球温暖化防止」という以上に積極的な意味を見ている。これは人類が初めて試みる、全地球的気候改造ではないだろうか。二酸化炭素ガス排出は、気候改造を意図したものではなかったが、その抑制は立派な気候改造の試みだ。
その試みに、世界一の二酸化炭素ガス排出国であるアメリカが加わるとしたら。全く持って不謹慎だが、私はわくわくしてしまうのだ。
ところで、この件、タバコの害と似ている。かつて、タバコを規制すると税収が減少するという議論があった。実際にはタバコは喫煙者のみならず受動喫煙者の健康をも害し、健康保険財政に多大の損害を与えているわけだ。実は今、川端裕人さんの「ニコチアナ」を読んでいて、色々思うところもあるのだけれど、これはまた後日。