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2005.08.28

非電化冷蔵庫について、ほんの少しだけ考察する

 5月18日の面白いページを2つ紹介するで紹介した非電化冷蔵庫について。

 「<新>地球温暖化とその影響」(内嶋善兵衛著 裳華房)を読んでいて、使えそうなデータを見つけた。同書27ページの図2・4だ。
 地表に入射する波長別の太陽エネルギーと、地表からの宇宙への輻射の波長別エネルギーのグラフだ。実は「大気の窓」がどの程度のエネルギーを透過するか、今まで知らなかった。同書のグラフでは、本当にどかんとグラフが谷を描いている。これほどの割合で透過するならば、非電化冷蔵庫に応用できそうだ。

 波長8〜13μmの赤外線は、大気に吸収されない。「大気の窓」というやつである。だから、この赤外線は、宇宙から直接地表に届くし、地表から放射した場合はそのまま宇宙へと出て行く。
 つまりこの波長帯で夜空へ輻射すれば、宇宙を背景輻射3Kを低温熱源として利用できるということになる。この波長帯は雲も透過する。だから曇っていても構わない(嘘でした。コメント参照のこと。2005.8.29)。

 つまりこの波長帯の赤外線を集中的に放射する材質を放熱板に使うと、非電化冷蔵庫の冷却効率は上がることになる。

 と、ここまで考えて、ちょっと検索をかけてみたが、そのような材料を見つけることができなかった。なにかありそうな気がするのだけれども。前回の記事へのコメントで教えてもらったまず貼る一番はどうだろうと思って、資料をダウンロードしてみたが、「熱を遠赤外線に変換して放射」としか書いていなかった。遠赤外線というのはだいたい波長3μmから1mmまでのかなり幅広い領域を指す。ちょっとこれだけではなんとも言えない。

 ちなみに黒体輻射のピークは常温の300K(27℃)で10μm、273K(0℃)で11μm。都合がよさそうだが、実は大気の窓はこの波長付近にちょっとした“曇り”があって透明度が落ちる。オゾンがこの波長域の赤外線を吸収するためだ。
 できれば300Kで8.5μm付近、あるいは11μm付近に輻射のピークが来る物質が好ましい。得に300Kで11μm付近にピークがくる物質だと、273Kでもピークがうまく大気の窓に入りそうだ。

 ここ数日の考察はここまで。まあ、日頃、あれこれの日常の合間に、こんなことを考えているのであります。


 今回の参考書。地球という星の基本的な熱収支がどうなっているかを、わかりやすい言葉でまとめてあるのが便利だ。巻末に詳細な参考文献リストが突いているので、地球温暖化について、もう一歩突っ込んで調べるための出発点としても使える本だ。




追記:お、ポチは見た!が、少し更新しているぞ。あるある大事典のニセ実験と洗脳など、いいところを突いている。
 ネット利用者とそれ以外で、メディア・リテラシーに大きな格差が発生しつつあるような気がする。例えばみのもんたが、「奥さん、あれが体にいいっすよ。分かる?」とやると疑いもせずにスーパーに殺到する人々と、そうではない人と。

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Comments

こんばんは、ブリザドと申します。
(というか、本名を述べた方が、「あいつか!」となるのでしょうが...)

非電化冷蔵庫のアイデア、おもしろいです^^
ただ...

>この波長帯は雲も透過する。
大気の窓といっても、雲は赤外線を遮ります。例えば、気象衛星ひまわりでは、10.5~12.5μで昼夜の雲写真を撮っています。

また、この様な放射冷却による冷却能力は微少なので、他からの熱入力をできるだけシャットダウンする必要がある様です。

失礼しました^^

 う、つくばで宇宙で、苺ましまろのフィギュアに惹かれて電撃大王買っちゃう人って——申し訳ないです。心当たり多すぎて誰だか分かりません。

>雲は赤外線を遮ります。
 うわ、そうですか。こいつは誤解を振りまきそうなので本文を修正しておきます。そうか、やはり曇天はダメか。

今度の日曜日(9/18)のテレビ朝日23:00からの「素敵な宇宙船地球号」で非電化冷蔵庫とか出てくるそうです。
http://www.tv-asahi.co.jp/earth/midokoro/2005/20050918/index.html
いまだに信じていないのですが、、、。

 見ました。「星空の冷蔵庫」とか、テレビ受けするコピーを付けられていました。

>いまだに信じていない
 そんなに難しくないので自分で実験すればいいのですけどね。私もやんなくっちゃと思いつつ、現在はほったらかし中です。

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