大阪を見物する

原稿が押している。少しでも書き進まねばならぬ。しかしここんところ休みなしだぞ。こんな生活でいいのか、後ろめたさを振り切って、1日大阪見物することにする。
本日は他のメンバーと別れて単独行動、ジュンク堂書店にて時間をつぶした後、ビジネス街の昼休み、昨日の先輩と昼食を食いがてら、色々と話す。
その足で、大阪港にある水族館「海遊館」へ向かう。以前から行きたかったのだけれども、なかなかチャンスがなかった。
地下鉄の大阪港駅から歩いて数分、青と赤に塗り分けられた特徴的な建物が見えてくる。入場料は2000円、ちょっと高いぞ。
と思ったのがあさはかだった。ここは入場料分以上の価値がある。縦に深い巨大な水槽をいくつも作り込み、その間を上から下へ螺旋状に見学通路を設定してある。魚類のみならず、ラッコやペンギン、イルカに至るまでを水上から水底に至るまで見せてしまおうという仕組みだ。
これが素晴らしい。様々な水深で実際に泳いでいる生き物を見ることができる。マンタがいる、ジンベエサメがいる、マンボウもいる。すっかり夢中になってしまった。
公立学校のお休みでもあったのだろうか。子供がずいぶんと多かった。どの子も走り回りはしゃぎ回り、興奮状態だ。若いカップルも多い。これまた興奮状態。マンタが悠々とガラスをかすめるたびに、きゃあきゃあ声を上げている。
おじいちゃんおばあちゃんも大興奮だ。「あー、あれ、あれ」「うわあ、すごいねー」と声を上げている。
順路を一番下まで降りてくると、そこは「日本海溝」と命名された水槽。薄暗い水槽の中で多数のカニがうっそうとはさみを振り回している。さらに進めばクラゲの展示。様々なクラゲがライトアップ水槽の中で光る。
カニやクラゲを見るといつも、「こいつらが知性を持っていたら、どんな身体感覚で世界をとらえるのだろうか」と思ってしまう。それはよほど人間の世界認識とは異なるものとなるだろう。
いつか我々は宇宙の彼方で異なる進化の過程を経た生命と出会うだろう(私は楽観的だ)。そしてその中には知性体も含まれているはずだ(これまた楽観的である)。
我々はどんな知性と出会うのか。いずれにせよ先入観だけは持ってはいけないな、と思うのだ。
ちょっと時間があったので、小川一水さんの「登っちゃいました」発言を思い出し、通天閣へ行くことにする。ポートライナー経由で昨日と同じく地下鉄の恵比須町へ。
初めて通天閣というものに登る。大阪の街並みが見事に一望できる。高さ91mということだが、ずっと高いような気がする。ビリケンさんは、残念ながら東京の物産展に出張中で、なぜか代わりに渋谷のハチ公が鎮座していた。
東の遠くにけぶる生駒の山々を見ていると、急に涙が出てくる。小松左京「果てしなき流れの果てに」を思い出したのだ。
数奇な時空の冒険を経て、記憶を失い、年老いた主人公の野々村(正確には野々村だけではないのだが、かなり複雑な経緯は読んで貰うしかない)は、これまた老婆となった恋人佐世子のところに戻ってくる。かつての恋人すら認識できぬ彼を、佐世子は優しく迎え入れる。
確かラストは生駒山系を眺めつつだったのではなかったのかな。老野々村が佐世子に向かって「それは長い長い……夢のような……いや……夢物語です……」と語り始めるのではなかったか。
なんだろうね、そのラストと、眼下に広がる大阪の街並みとが妙にシンクロして、センチメンタルな気分になってしまった。
茅ヶ崎に帰り着くと、アスファルトには雨の跡が残っていた。やっと秋になったか、と感じさせる風が吹いている。
写真は海遊館のタコクラゲ。
小松左京さんの代表作といえば「日本沈没」ということになるだろうが最高傑作となるとこちらを推す人も多いのではないだろうか。白亜紀から始まった物語は時間も空間も超え、宇宙の歴史全体を駆けめぐる。私としては「いいから読め。絶対読め」と自信を持って薦められる一冊。
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