モトラの写真を掲載する

古い写真が出てきたので掲載する。学生時代に私が最初に乗ったバイク、ホンダ・モトラだ。1983年7月から8月にかけて九州を一周し、屋久島まで行った時の写真。確か途中、浜松の路上で撮影した一枚である。
「1982年、風が追い抜いていった」で書いたような経緯で買ったバイクだ。こいつで北海道も九州も走った。スーパーカブゆずりのエンジンの、カタログ上のパワーは4.5馬力。サブミッション付き3×2速リターンミッションと遠心クラッチの組み合わせだった。箱根を登るにはいい加減低いギア比の二速に落とさねばならず、しかも登り切る途中で熱だれを起こしてパワーが落ちた。
サブミッションはほとんど役に立たなかった。もともとパワーが無かったのでローギアードにして力で押し切るようにオフロードを走ることができなかったのだ。リアサスは車高調整機能付きだったが、これも基本的には役立たずだった。そもそも積んだ荷物でシビアに走りが変わるというようなバイクではなかった。
燃費は良かった。通常は60km/l程度で、北海道を走った時は80km/lまで伸びた。燃料タンク容量は3.5lしかなかったが、一回の給油で十分1日走ることができた。1982年当時、ガソリンはリッター150円しており、節約のためにガソリンスタンドは休日休業だった。北海道ではさらにガソリンは高く、リッター180円もしていたが、高燃費のせいで別に高いとは感じなかった。
実際このバイクで走った旅はどれも強烈に印象に残っている。
仙台まで一気走りした時は、いい加減走り疲れた福島付近で「仙台まで162km」という標識を見た。「お、これで仙台が射程距離に入ったぞ」と、うれしかった。
佐賀では雷雲に追いかけられて走った。バックミラーに稲妻が光るのが映る、雨が降り始めて飛び込んだ喫茶店で、カレーを注文すると、なぜか山のようにキャベツの入った味噌汁が付いてきた。
根室では夜、持参したラジオを聴いて過ごした。別に北方領土が近いからではないだろうが、なぜかモスクワ放送の日本語放送がよく入った。「日本の皆さん、これからかける曲は何でしょうか。局名が分かった方は答えを書いてはがきをお送り下さい。景品を進呈します」というアナウンスの次ぎに流れてきたのは「さくら、さくら」だった。思わず脱力した。何しろ冷戦まっただ中だったから、「こいつに返事を書いたら、KGBからスカウトでも来るのだろうか」と夢想した。
知床では台風にぶつかり2日ほどウトロのユースホステルに閉じこめられた。何人かのライダーと「今日は客が少ないぞ、ラッキー」というのが口癖のヘルパーの作る飯を食って、マンガを読んで過ごした。
屋久島では、山中のトロッコ鉄道の路線にモトラで突っ込んだ。釘かなにかでパンクし、その場はタイヤ修理剤でしのいだ。撤退することにして海岸に出てきたものの、そこで再度パンク。ずっしりと重くなったモトラを押して、工具のありそうなところを探して歩いた。通りがかった地元の小学生がずいぶんと親切に、バイク屋を探してくれた。
バイク屋を見つけてパンクを修理後、安房(あんぼう)という町で食堂に入った。ところが店のおばさんは、メニューにあるものは材料がないから何も作れないという。これなら作れると言って出てきたのがゴーヤの炒飯だった。当時は害虫のウリミバエがまだいたので、本土へのウリ類の出荷は厳重に規制されていた。ゴーヤという苦いウリを、その時初めて食べた。
今となってはこれほどまでに思い出深いバイクだが、当時の私の憧れは「クラッチのついたハイパワーバイク」だった。2年ほど乗って、私はモトラを売ってVT250Fに乗り換えた。
また乗りたい気もするけれど、妙に人気が出て、値段が高騰しているのが気にくわない。まあ、縁があるならば、またモトラに乗ることもあるだろう。無理することはない。
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Comments
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秋はツーリングの絶好の季節。東京から”もうバイクはたくさんだー”と言いたくなるのにぴったり?な距離に秋田がありますよ(-.-)ボソッ
もっとも秋田の場合、片道だけでバイクはたくさんだーという気分になっちゃうところが問題点ではありますが、しかしそこはあれ。日本有数の温泉県ですから、その体の疲れを癒してくれる温泉は数知れず、ですよ。私のぴかいちお薦め温泉である川原毛大湯滝を御紹介しておきます。もちろん、秋田にお越しの際は御連絡下さい。随行させていただきますので!<でも10/2までは土日無しですが(^_^;
ちなみに私は昨年の12/25に、東京から秋田までCB-R250で帰ってきましたが、、、上を走ったとはいえ7時間の行程、しかも雪空。死にました。高速は幸いにして積雪しておりませんでしたが、秋田に着いたとたんに大変でした<積雪
Posted by: akiaki | 2005.09.20 08:24 AM