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2005.10.14

ミヤタの方に質問する

 以前前輪駆動・後輪ステアリングのリカンベントを夢見るという記事を書いた。その後、私の興味は消えたわけではなく、色々考えていたのだが、昨日、たまたま縁あって宮田工業の方に質問する機会を得た。そう、ミヤタ自転車の会社だ。消火器と自転車の製造が主な事業で、茅ヶ崎に工場がある。

「自転車の開発にあたって、動力学的解析なんですが、なにか参考文献はありませんか」
「開発にあたって、解析はやってないです」

 へ?
 そうなのか?

「自転車というのは乗車する人も込みの系なんです。人は60kgとか70kgあるのに対して自転車はせいぜい十数kg。しかも人は均一ではなくて、千差万別です。だから事実上解析ができないんです」
「しかし、人が乗らない自転車が坂道を下るというような場合の安定性は、解析の対象ですよね」
「できますが、それじゃ実際の使用状況じゃないでしょ」
「じゃあ、自転車の開発というのは試行錯誤でやっているんですか」
「そうです。人は千差万別なんですが、それでもちょっとした設計変更による違いを感じ取るものなんですよ。それこそセンサーに引っかからないような微小な変化でも『なにか違う』ということで感じ取ることができる。だから試行錯誤をせざるを得ないんです」

 そうか…そういうものなのか。

 逆に言えば、試行錯誤でできるなら、私にも何かできそうだ。

 私の抱えているアイデアをぶつけてみる。「そんなことはとうの昔にやりました」と言われるかと思っていたが、そうは言われなかった。

「やってみなけりゃ分かりませんが、面白いですね」
「そうですか」
「いや、自転車って面白いですよね。色々なアイデアが次々に出てくる」

 そうだよなあ。最近だと、思い切り小さな6インチや8インチの車輪を使った折り畳み自転車があれこれ出てきているし(KOMAのようなものだ)、二輪駆動自転車も製品化されたようだし、まだまだ工夫の余地があるということだろう。

「今の自転車の形状ですが、これまでにさんざん工夫されてもう改良の余地がないような気がしますが、意外に『自転車はこんなもの』という先入観にとらわれているだけということはないですか」
「それは、あるかも知れませんね。最近だとリカンベントも面白いし」

 一つ言われたのが、人間の保守性だ。
「色々我々も工夫するんですが、すぐに『これは違う』ということになって売れないんですよ。乗り続ければ一週間で慣れるようなものなんですが、試乗ではそこまで分からない。とにかくお客様は保守的なものです」

 新しいシステムを提案するなら、違和感を最小にする工夫が必要がありそうだ。

 しかし、その道のプロに、無碍に否定はされなかったというのはうれしい。社交辞令の可能性はあるが、こういう時は調子に乗るほうが楽しい。

 時間を作ってちょいと頑張ってみるかな。

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Comments

「人も込みの系」とは、なるほどです。人間こそが姿勢制御の重要かつ唯一の”部品”なんですね。
そう思うと、最近話題になった「ムラタセイサク君」のような自転車ロボットとか電動アシストなど人力以外の要素が入り込む系を研究している人が解析しているかもしれないですね。

 ムラタセイサク君はすごいと思います。でも自由度は人体にはるかに及びませんよね。だからこそ解析できたんでしょう。

 このあたり、制御工学的に色々研究できそうな分野ですね。

暫く思考実験してみました。

結論から述べますと「後輪操舵の2輪車はたぶん実現可能」です。その操舵方法は通常の2輪車でトリックステアと呼ばれる方法に近くなると思います。

後輪操舵で最大の問題は、旋回を続けるためにはセルフステアと戦い続けなければならない事でしょう。前輪操舵ならセルフステア方向はバンクと一致してますが、後輪操舵だと逆ですし。安定性が負でいいと言うのなら話は別ですが。

# 人間の保守性と読んで「切らないと開かないし」と思った私は何かの重症なのかもしれません。

>旋回を続けるためにはセルフステアと戦い続けなければならない

 その通りです。逆に言えばセルフステアとバンクが一致するようなステアリング軸を設定してやる必要があります。

>セルフステアとバンクが一致するようなステアリング軸

これが曲者でして、そうするとロール安定性が負になってしまうんじゃないかと思います。バイクでバックするようなものですし。

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