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2005.10.28

「はやぶさリンク」を開始する

 JAXAトップページの頭に、小惑星探査機「はやぶさ」関連ページへのリンクが入った。しかし、まだニュース自体をトップページをどんどん書き換えて知らせていく体制にはなっていないようだ。インターネットでは変化こそが人を引きつける。頑張って欲しい。

 なかなか実態が出てこない「はやぶさ」の運用だが、やはり大変なようだ。姿勢を制御する3基のリアクション・ホイールのうち2基が故障してしまったので、「はやぶさ」を姿勢制御用の推進剤を使って姿勢を保ちつつ、地球まで帰還しなくてはならなくなった。姿勢制御用推進剤を可能な限り節約しなくてはならなくなったのである。
 「はやぶさ」は太陽電池パドルと高利得のパラボラアンテナが同じ面を向いて固定された設計になっている。基本的に太陽電池パドルを太陽に向け、地球と高速データ通信を行う時だけ姿勢を変えてパラボラを地球に向ける。
 当然リアクション・ホイールを使って姿勢を変えていたわけだが、故障が発生した今、「はやぶさ」は推進剤を使わないと姿勢を変えられなくなってしまった。

 そして推進剤は節約しなくてはならない。姿勢は極力変えたくない。

 しかし高速データ通信でデータを地球に送らなくては、そもそも観測をしている意味がない。搭載データレコーダーをオーバーフローさせるというようなことはしたくない。

 これは、パラボラにステアリング機構を持たせて、太陽電池パドルとは独立に地球方向を向けることを可能にした欧米の探査機ではあり得ないジレンマだ(正確にはステアリングに伴う反動トルクがあるが、衛星全体の姿勢を変える時ほどは、推進剤を消費しない…はず)。「はやぶさ」の場合、ステアリング機構をも省いて軽量化しなければ、小惑星イトカワに届かなかった。

 詳細は私も知らない。が、非常にアクロバティックかつ、地上のオペレーターの体力を消費する方法で、この問題に立ち向かっているらしい。いつものこととはいえ、泣けてくる。

 部外者がネットの片隅で泣いていても仕方ないので、当分、なにか新しい情報が出てきたら、このblogからリンクを張ることにした。題して「はやぶさリンク」。JAXAトップを見ても、「はやぶさ」最新情報が出ているか出ていないかも分からないなら、こっちで勝手にやってしまおうというわけ。

 とりあえず10月28日深夜時点の最新情報。

「はやぶさ」の今後の運用について
:10月27日

 推進剤は地球帰還まで持たせるメドがついた。どんな方法かについては、「新規に導入した制御策により、微小なジェットの噴射を精度よく管理して加える方法」としか公表されていない。

1. 11月4日 リハーサル降下
2. 11月12日 第1回着陸・試料採取
3. 11月25日 第2回着陸・試料採取

 着地・試料採取は日本時間の日中、つまり長野県・臼田町にある64mアンテナから、直接「はやぶさ」と交信できる時間に行う。

 リハーサル降下はイトカワに30mまで近づく。小惑星の30m上空ホバリングというのは、2000年から2001年にかけて小惑星エロスを探査したアメリカの小惑星探査機「NEAR」もやっていない。実現すれば世界初。ちなみに「NEAR」はミッションの最後にエロスにランディングしたが、その過程で120mの高度で表面を撮影している。高度30mで撮影が行えれば、これまた世界記録となる。

 搭載ローバー「ミネルヴァ」はリハーサルで放出される。

はやぶさ、イトカワの「衝」観測 に成功!:10月27日

 大気を持たない衛星や小惑星のほとんどが、太陽から真正面に光を受けるような角度に近づくにつれて、急速に明るくなるという性質をもっている。この性質の「衝効果」という。衝効果を利用すると、表面の組成、岩石部分と砂礫部分との区別などを調べることができる。

 イトカワにおいても衝効果が確認された、というリリース。

 衝効果を観測するためには、太陽——「はやぶさ」——イトカワを一直線に並べる必要がある。イトカワはせいぜい600mほどの大きさしかないから、「はやぶさ」は数百m程度の精度で位置決めしなくてはならない。今回の観測は、地球から3億km離れたところを飛行している探査機を、数百メートルの精度で誘導することに成功した、ということも意味する。

 もちろんこの精度で制御できなければタッチダウンなどできない道理だ。

 関係者の方にお願い:何か間違いがありましたら、指摘をお願いします。随時訂正しますので。また、待ってますのでがんがんリリースをお願いいたします。

 宇宙開発に興味のあるホームページ、日記、ブログなどの運営者の方にお願い;よろしければ、皆さんのページでも随時「はやぶさ最新情報」へのリンクを掲載していただけないでしょうか。慢性人手不足である日本の宇宙科学の広報を草の根で支援すると同時に、情報公開を外から促すという意義があるかと思います。

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Comments

こんにちわ。先日は心ゆくまで飲みながらいろいろとお話が出来てとても楽しかったです。どうもありがとうございます。で、早速始められましたね<勝手にはやぶさ解説 応援しております。

さて衝効果に関してです。日本語で書かれるとどーも妙な感じで、研究者はだいたいopposition effect(オポジションエフェクト)と英語呼びする効果です。実はこれで特許も取ってたりします、私(笑)
http://www14.big.or.jp/~akiaki/patent/T-2243.pdf
これは粉体層だと粒子の凸凹があるので、真っ直ぐ入った光は真っ直ぐ出て行くときには障害物にぶち当たらずに出て行くから他の角度に向かうより反射率が高くなると言う現象です。絵を一枚描けると簡単な話なんですが、多重層からなる粉体の中に、粉にぶつからずにおくまで入ってきた光というのは最後に粉にぶつかったところで様々な角度に乱反射をします。ところが回りは、光にとってはふかーい粉の中にいるわけですから、自分が入ってきた方向は確実に空間が空いていますが、それ以外はまた他の粉にぶつかってしまう確率が高くなり、出て行けない可能性が高くなるため、自分が入ってきた方向への反射率がその他の方向への反射率よりもずっと高くなる、という現象です。
原理はそんな感じですから、”大気があるとopposition effectは観測されない”かというと、そんなことは無いと思うんですよ。例えば、
http://www.sundog.clara.co.uk/atoptics/oppmars.htm
では、火星で観測されている例があります。すぐに出てこないんですが、地球観測衛星が撮った写真で、やはり、opposition effectが明確に表れていた画像を見た記憶もあります。もちろん大気があると光は様々に曲げられるので、そう言う意味では大気がない天体の方が観測されやすい現象だとは言えるんですけどね。あと、こちらで詳しく解説がありました。
http://homepage2.nifty.com/tm_amateur_astronomy/tm_documents/Heiligenschein/Heiligenschein.html
このopposition effectの原理がわかればわかっていただけると思うのですが、どの角度からopposition effectが表れるのかを観測できたりすると、その表層粒子に関する情報が得られることになります。小天体の表層は粉体以外にも地形的にも凸凹してたりするので、この影響を考えるときにはそのあたりも補正して考えないとダメですが。一般的な観測手法としては小天体の形状が厳密にわかっていれば、いろんな部分と探査機・太陽とがなす角度がわかるのでそこから厳密に何度でopposition effectが起こるかを測定すると言う方法もあります。またマクロに考えるのであれば、探査機ー小天体ー太陽とがなす角度でopposition effectがおこるかおこらないかぎりぎりのところで何度も観測を行って精査する手もあります。ただし探査機と地球の通信帯は太くはないので、出来れば前者ですめばダウンリンクしなきゃいけないデータ量も少なくてすむし観測時間も少なくてすむんですが、このあたりは形状データの精度と信頼性も絡んでくるので、実際の運用決定ではさじ加減が難しいところでしょうね。

日本惑星協会のメールマガジン(TPSJメールではなくwakuwaku メールの方)によると、ミネルバの放出は11月4日のリハーサル降下の時らしいです。

>ミネルバの放出は11月4日のリハーサル降下
 ありがとうございます。直しておきます。

はじめまして、賛同させていただきましたので早速リンクしてみました。
1個目のTrackbackは失敗してますので、削除していただけるとありがたいです。

 了解です。トラックバックを削除しました。

大変遅ればせながら、私のページにリンクしてみました。
私も はやぶさのために一つでも力になりたいです。
何か、もう一つでもできることはありませんか。

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