「はやぶさリンク」:午後5時からの記者会見
午後5時から、宇宙科学研究本部にて、これまでの成果を総合的にレクチャーする記者会見が開催された。
疑似カラー画像を含む写真が大量に公開されている。数時間のうちにJAXA/ISASホームページに掲載されるだろう。
以下は記者会見の内容を聞きながらとったメモ。
「はやぶさ」は工学試験機であり、小惑星探査は「せっかく行くのに何もしないのはもったいない」という位置付け。
まず打ち上げ以降の工学成果から。
・イオンエンジンと地球スイングバイ
推力2gfのイオンエンジンで、500kgの探査機を約10ヶ月加速し、地球から3700kmの位置をスイングバイ。誤差1km以下。10億kmの航行後の誤差1km以下である。
・光学複合航法によるイトカワへの接近。
「はやぶさ」搭載の星姿勢計でイトカワを撮影し、事前の計算位置と比較、イトカワの軌道計算を更新。
20億kmを旅して、500mの小惑星に正確に到達。地上で例えると、東京から2万km離れたサンパウロの5mmの虫を撃ち落とすことに相当する。
・イトカワ上空の静止化
9月12日以降、イトカワ上空3.2kmに滞在。もしもイトカワと1cm/秒の相対速度があると、4日でイトカワと衝突。1〜2日に1回の頻度で、数mm/秒の修正を実施している。
・はやぶさの位置
9月12日:イトカワ到着
9月12日〜26日:ゲート・ポジション(イトカワから20km)に移動
9月27日〜29日:ホーム・ポジション(イトカワから7km)に移動
9月30日:ホームポジションに到達
降下には太陽輻射圧を使用、上昇はジェットを使用。
以下、理学観測について。
・イトカワの特徴
大きさは540m×270m×210m、体積は0.018立方キロメートル。地上観測による推定と1割ほどの差があった。自転周期は12.1時間。北極は黄道面座標の南極方向にある→逆回転。
密度は2.3プラスマイナス0.3(残念!金はないでしょう)。典型的な岩石よりやや軽い。内部に空隙がある可能性が高い。形状中心と質量中心がほぼ一致しており、自転軸のふらつきもほとんどない。内部の物質の偏りはほとんどないようだ。
・表面状況
レゴリス(砂礫)に覆われていない部分がある。砂礫に覆われていない、岩の露出した小天体表面が観測されたのは初めて。レゴリス表面にクレーターが極端に少ないので、年代が若いと推定される。レゴリスの粒子サイズは検討中。
特異な巨大岩塊が存在する。最大のものは長さが約50m。切り立った岩塊が存在する。イトカワ上の大型岩塊は、イトカワ上のクレーターの衝突によっては生成しないほど大きい。反射率の異なる岩塊が存在する。
・低重力下の特徴的な地形
レゴリスが表面重力に応じて集まっている様子が認められる。岩塊が集まって存在している地域がある。北極へのレゴリスの盛り上がり構造が存在する。
・クレーター
いくつかはっきりしたクレーターが存在するが、岩塊の中にクレーターがあるので見つけにくい。80m程度のものまで認められる。サイズ、数など調査中。
・反射スペクトル
輝石やカンラン石の特徴を持つスペクトルが見える。
・形状モデル、地図を作製中。
・イトカワ成因推定
大きな母天体が破壊した時にできた破片か、破壊ぎりぎりの衝突で放出された破片である可能性がある。
記者会見は続いていますが、まずはここまで。
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