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2005.11.08

「はやぶさリンク」:DSNを使う

 はやぶさのニュースが出てこない時は今日のはやぶさを毎日チェックすることで、はやぶさの動きが見えてくる。

 降下リハーサルを中止して上昇したはやぶさは、一端は小惑星イトカワから9.6kmの位置まで離れたが、11月6日には、イトカワから7.5kmのホームポジションに復帰した。

 11月4日の降下リハーサル時、はやぶさはNASAの深宇宙ネットワーク(DSN)を利用して運用したが、途中約1時間ほど、NASAによるヴォイジャー探査機の運用が割り込んだ。
 これは、はやぶさ運用チームにとって、かなりストレスのかかる事態だったようだ。ヴォイジャーの運用は、直前になって突然割り込んできた。しかも、その時間帯、はやぶさは降下を中止して上昇している最中だったのだ。何が起こるか分からない上昇中、相模原の運用チームは1時間に渡って、はやぶさと交信できなかったのである。
 川口教授の記者会見によれば、はやぶさは、秒速50cmほどの速度で上昇したらしい。1時間では、1.8kmも上昇するということになる。その間の姿勢は崩れないか、はやぶさのカメラがイトカワを見失うことはないか——できれば連続して通信を確保したかったところである。

 もともとDSNはNASAの探査機運用が優先で、アメリカ以外の探査機はアメリカの探査機が使っていない時間を使わせて貰っているに過ぎない。

 そしてアメリカは多数の探査機を他惑星、惑星間空間に送っており、その運用はかなり過密である。
 まず、火星に4機の探査機がいる。火星周回軌道上の「マーズ・グローバル・サーベイヤー」と「2001マーズ・オデッセイ」、そして火星表面のローバー「スピリット」と「オポチュニティ」。今年8月には次の探査機「マーズ・リコナイサンス・オービター」が打ち上げられ、今現在、火星に向かっている最中だ。
 土星周回軌道には「カッシーニ」がいる。水星探査機「メッセンジャー」はスイングバイを繰り返して水星へ向かう途中だ。
 太陽系外には、2機のヴォイジャー探査機がいて、打ち上げから28年を経た現在も観測データを送ってきている。
 太陽系を南北に回る極軌道には太陽探査機「ユリシーズ」がいる。彗星のサンプルを採集した「スターダスト」探査機は、現在地球への帰途にある。
 今年7月にテンペル1彗星に銅の弾丸を撃ち込み、彗星の組成解析に成功した探査機「ディープインパクト」は、2007年末の地球フライバイを目指した延長ミッションを続けている。

 これだけで現在運用中の探査機の数は12機となる。日本は欧州と共に、これらNASAの探査機運用の隙間時間を借りるしかない。
 理想を言えば、日本は地球の反対側である、南米に独自の地上局を持つべきだ。南米局があれば、はやぶさの運用にかかっている制約はかなり緩和されたはずである。

 日本が惑星間に送った探査機は、過去20年で4機だ。1985年にハレー彗星に送った、「さきがけ」「すいせい」、火星を目指した「のぞみ」、そしてはやぶさだ。
 平均5年に1機というテンポをどう考えるべきか。12機を同時運用するアメリカとの差をどう考えるべきか。

 もちろん予算が少ないのは間違いないところだ。しかし単に予算を増やしても、現状では過労で倒れる者が増えるだけだろう。理学工学ともに、少数精鋭と言えば聞こえは良いが、あまりに人材の層が薄い。

 その少数精鋭のチームは、現在、再度降下を行うための準備を進めているはずだ。そろそろ具体的な方策や、11月4日に取得した画像などが出てくるのではないだろうか。

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Comments

少し前に、惑星学会の企画物として、学生諸氏に日本の過去・現在・未来の探査計画に関してインタビューをして貰った事があります。
その一環として、地上局を取り上げました。
http://www.as-exploration.com/mef/yuseijin/interview/interview08.html
地上局の設置は探査機半個分(100億円ちょっと)ぐらいで実現可能です。経度120度おきに全世界に最低3個、日本が自由に使える地上局設置が望まれます。これで探査機の運用時間は倍増ですから、その費用対効果はかなり大きいと言えましょう。

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